底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第5話:大御所とのコラボは突然に

 広大な森林地帯。

 ワールドの一部として公開されている“自由探索領域”。

 所謂、オープンワールド要素であり。

 そういった場所にて敵を倒して素材を得たり、マニーと呼ばれるゲーム通貨を稼いだりする。

 自由探索領域には、それぞれ推奨技量なるものが存在しているが。

 俺が最初に着たこの森林地帯は……“そこそこに”手応えのある場所だった。

 

「わぁぁ多いなぁ。弾、足りるかなぁ」

【俺なら死んでるな】

【ワイトもそう思います】

 

 両手に強襲戦闘用ライフルを持ち。

 襲い来る金属で出来た蜂のような外見の飛行型のエネミー“ホーネット”を倒していく。

 全長5メートルほどであり、針のように尖ったニードルを音速で飛ばして攻撃してくる。

 敵性エネミーの中では、中々に厄介な敵であると情報サイトでは紹介されていた。

 

 そのスピードは平均的な高機動モデルのメックと同じくらいの速度。

 が、高機動戦には眼が慣れてしまっているのでどうという事は無い。

 

 ブーストを併用しながら敵の放つニードルを回避。

 そのまま照準を定めて、サイトのフルロックが完了する前に仕留めて行く。

 ガラガラと音を立てて弾丸が飛び、レバーを通してリコイルの衝撃を感じる。

 俺の機体は超軽量級の機体だ。

 攻撃特化で無い敵の攻撃であろうとも、一撃貰えば大ダメージは確定。

 そんな危機的な状況であろうとも――燃える。

 

 敵の攻撃の音が耳に響く。

 風切り音であり、すぐ近くを通過していく。

 ブーストに加えて、小型の噴射口を常に吹かせる。

 細やかな姿勢の制御に加えて、小さな穴に糸を通すが如く。

 敵のニードルを丁寧にさばいて行けば、相手は攻撃後の硬直で0.3秒はその場にいる。

 その僅かな隙を見逃す事無く攻撃。

 相手は弾丸数発で体中に風穴を開けて、そのまま爆発四散する。

 

 敵の動きが変化。

 周囲一帯を取り囲みながら、時間差による攻撃――問題ない。

 

 眼球を常に動かしながら。

 モニターに映る情報を脳内で処理。

 そのまま作業のように仕留められる敵を順番に落としていく。

 

 回避、攻撃。

 回避、回避、回避、攻撃。

 ブースト、回避、ブースト、攻撃――繰り返しだ。

 

 指先からつま先まで常に動いている。

 休む暇などない。

 休ませればそれで終わりだ。

 故にこそ、五体を動かし敵を屠っていく――あぁ、同じだ。

 

 どんなに単純化しようとも。

 どんなに分かりやすくなろうとも。

 この面倒な操縦方法こそが体に馴染む。

 手間で無駄な動きの一つ一つが――戦いへの喜びを教えてくれる。

 

 俺は笑みを深めた。

 楽しい、心から楽しい……でも、俺だけではダメだ。

 

 この配信を見ているリスナーの方々を飽きさせないように解説なども挟む。

 こういった相手への対処法であり。

 俺はこのゲームでは初心者もいいところだが、前作の経験はそっくりそのまま活かせている。

 こういった経験は重要であり、少しでもリスナーの方々に還元出来たら嬉しい。

 そういう気持ちで、コメントを見つつトークを挟み。

 片手間で敵の攻撃を回避し、殲滅していく。

 

 弾丸が尽きれば、即時、腰にマウントさせたマガジンに交換。

 死角からの攻撃は回避後、肩部のキャノンの焼夷弾で一掃する。

 音を聞き、肌で敵の殺気を感じ。

 見えなくとも、勘で機体は動かしていく。

 前作での経験が、記憶が――まだ生きている。

 

 高速で飛行し、包囲網を突破。

 追いかけて来る敵へと攻撃。

 敵は四方へ飛び散るが、一発であろうとも外しはしない。

 全ての弾丸が敵へと吸い込まれていく。

 敵は回避を諦めて、加速して俺を追って来る。

 その動きに合わせるように旋回して敵へと突っ込む。

 敵はニードルを放つが、俺は機体を回転させて回避。

 そのまま攻撃の隙間を縫うように通過し、背中を向けた敵の一団に向かって焼夷弾を撃ちこんだ。

 瞬間、焼夷弾が爆ぜて爆炎が広がり、敵性エネミーたちは悲鳴を上げながら落下して……終わった。

 

 百体はいたであろうホーネットの群れ。

 それらは全て森林地帯へと残骸として降り注ぎ。

 一部で燃えている木々を眺めながら、俺はレバーを握ったまま息を吐く。

 

「ふぅ……さぁコアも温まってきましたよぉ。この調子でどんどん素材とマニーを集めていきましょう!」

【お、おぉ!】

【……やっぱり理解できねぇ動きだなぁ】

【よく喋りながら動けますよねぇ……チートじゃないっすよね?】

 

 リスナーの中には、俺のチート疑惑を想像する人も出始めていた。

 が、俺は真顔でそんな訳ないと説明する。

 どんなに有名になりたくとも、俺はこのゲームにだけは真摯でいたい。

 チートなんて使えば、神聖な戦いに泥を塗る事になる。

 前作でも、チーターという存在は嫌われていた。

 そんな輩がいれば、データを持って突撃しに行こうとする人もいたくらいだからな。

 

 ……まぁその点、今作からはオンラインの対戦機能も実装されてるし、平和といえば平和かなぁ。

 

 俺は便利になったものだと感心し……ん?

 

 通知音が響く。

 俺はマップの中を移動しながら、誰からかと開いて……え?

 

「……マジかぁ」

【ん? どうしたの?】

「え、いやぁ……以前、コラボした方からお誘いが来てましてぇ……三日後かぁ……喜ばしい事なんですけどねぇ」

 

 コラボのお誘い。

 以前までなら全くなかったが。

 バズり始めてからはちょくちょく誘われるようになっていた。

 

 二回ほどコラボはやってみた。

 が、実際にはコラボと言うよりは助っ人として呼ばれたようなもので。

 勝てないエネミーに対しての切り札的存在として俺は招集されていた。

 

『いやぁ!! 流石はホワイトレコードさんですね!! マジ神っす!』

『い、いや、あの俺はそのホワイトさんじゃなくてですね? 根黒万太郎で……あ、いえ、何でもないです』

『また次もお願いします!!』

『え、あぁ、ははは……は、はいぃ』

 

 ……まぁバズっても、俺の登録者数は2000人ちょいだし、雑に扱われるのも仕方ない。

 

 同接数一万の時は興奮してしまい。

 早々に配信を切ってしまったけど。

 今にして思えば、少し勿体ない事をしてしまったような気がする。

 

 ……にしても、同接数はあっても登録者数がそんなに増えないのって……と、トーク力が弱いのか?

 

 俺は自らのセンスに疑いを持つ。

 確かに、今まで別に尖った個性なんかも発揮した事は無い。

 Vtuberというのは個性を爆発させてこそであり。

 大人しい目立たない存在なんて淘汰される事だろう。

 

 運が良かっただけだ。

 ちょっとゲームが上手かったから注目されているだけで。

 もしも、このまま何事もなく進んでいけば……飽きられてしまう。

 

「こ、個性を……個性を爆発させないと……でも、コラボしてもまた!!」

【お、また通知音だ】

 

 今度は誰かと見て――うぇぇぇ!!?

 

「ううううう嘘!? こここコラボってあの大人気Vtuberの星見リリアンさんとぉぉぉ!!?」

【嘘!!? リリアン様と!!?】

【ええぇぇぇ!!? 登録者数百万人越えの大御所と!?】

【すげぇぇぇぇ!!!】

 

 うっかり漏らしてしまったが。

 それほどの衝撃であり、俺はどうしたものかと考える。

 

 大御所とのコラボは嬉しい。

 それもVtuber事務所でも最大手と名高いアルテミス所属の人気ライバーだ。

 どう考えたって、コラボするだけで新規のリスナーさんの獲得は簡単で……でもなぁ。

 

「……断ろう」

【は? え、は、え? は? 何で?】

「え、いや、だって、先に誘ってくれたのは別の人ですし。リリアンさんも三日後が良いらしいので……順番は守らないとですよね。ははは」

【うーん。それはそうだけど……勿体ないなぁ】

 

 タライさんが少し残念そうにしていた。

 が、流石に人気に目が眩んで仲良くしてくれた人たちをないがしろにはしたくない。

 いや、予定を調整すればいいだけの話かもしれないけど。

 大御所を後回しにしたと知られれば、流石に相手だって……ん?

 

「あれ、今度はコールが……サカさんだ。何だろ? はい、もしも」

《ねねねねね根黒さん!? わわわわ悪いけどコラボは無しで!!! ごめん、本当にごめん!!! もう関わらないから!! ごめんなさいごめんなさい許してぇぇぇ!!!》

「え、あ、あの、何が…………切れた。え?」

 

 俺は激しく戸惑う。

 すると、古参メンバーたちが何かを考察し始めていた。

 

【リリアンさんの圧だな。間違いない】

【アルテミスに喧嘩を挑む愚か者はいないですからねぇ】

【それにリリアンさんって……噂ではホワイトレコードの信者らしいし、まぁ妥当だな】

「え、え、え? な、え?」

 

 あのリリアンさんが……圧?

 

 信じられない。

 何度か切り抜きで見た事はあったけど。

 清楚な人であり、美しい声で人生相談なんかもしていたと記憶にある。

 歌姫とも言われていて、誰かに圧力をかけるようには……じょ、冗談だよね。

 

「……あ、まただ……。リリアンさんから……は、はは」

【なんてぇ?】

「え、あぁ……何時でも良くなったので、是非、コラボしてくださいって……よくなった?」

【そりゃうるさいハエがいなくなったから……なぁんちゃって!】

【リリー必死過ぎてユニコーンたち息してねぇぞ】

【お前をムッコロス】

 

 アンチが湧きに沸いてる気がするけど……き、気にしないぞぉ。

 

 俺はゲームに戻り、死角から砲撃して来たエネミーの攻撃を回避。

 そのままブーストで接近し、脚部のマルチポッドを展開しミサイルを放つ。

 ミサイルはそのまま敵に命中し、亀のような見た目の“バスタータートル”は木っ端みじんに吹き飛ぶ。

 

 素材を自動で回収し、マニーも溜まって来た。

 これならば、新しい武装に加えて機体も少し手が加えられそうだ。

 

「えっと、コラボのお誘いありがとうございます。此方も何時でもいけますので、ご希望の日があれば――え、通知?」

 

 何かと思えばリリアンさんで……え、明日?

 

「明日、コラボしましょうって……え、俺、まだ送ってないけど?」

【リリーもよう見とる】

【今日からリリーも家族だ】

【お前をムッコロス】

 

 俺は取り敢えず、明日で大丈夫だと口で言ってみた。

 すると、秒で返事が来て細かい段取りなどが……へ、へへ。

 

「これはまた、バズる気が……いや、燃える気が……ふ、ふへ」

【お前をムッコロス】

【ネクロサンオンドゥルウラギッタンディスカ!!】

【薪をくべるぞー】

 

 アンチかファンかも分からない。

 彼らはコメントで炎を燃やしていた。

 俺はさめざめと泣きながら、急遽決まった明日のコラボの無事だけを祈っていた。

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