底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第51話:オーズ・フロンティアの開催宣言

 午後8:00――幕が上がる。

 

 パッと照明が付き、ステージ下から紙吹雪が飛ぶ。

 ジャンプと共に現れたのは、爆発したかのような黒いアフロヘアーに。

 黄金のスーツを着て、グラサンをかけた色黒の男性アバター。

 彼はマイクを小指を立てて持ちながら、二ッと笑って金ぴかの歯を見せびらかす。

 会場では無数のアバターたちが拍手で彼を出迎える。

 

 彼は背筋を正し、彼らに手を振ってから司会者としての客へと言葉を贈る。

 

「レディスエンドゥジェントルメェェン!! 今宵、我らがステージに上がるは伝説の傭兵たち!! 数ある傭兵の屍を超え、大型イベント“屍たちの狂宴”にて栄えあるトップランカーに上り詰めし史上最高の傭兵たちだぁ!! 力の為、名誉の為、ただただ殺戮の為に!! 理由なんて関係ねぇ!! 強いからこそ彼らはトップだ!! 組織だってそうさぁ!! 彼らには人を魅了する力がある!!! 故にこそ、多くの傭兵が彼らに従って戦ったぁ!! 個の力じゃなくとも、彼らには群の力がぁぁぁあああぁぁるぅぅぅ!!! 我らがタイタングリードは力こそが正義!! パワーオブジャスティス!! さぁさぁそろそろ呼ぼうかァ!!? ではでは、血気盛んな傭兵諸君――カモォォォォン!!!」

「「「――――ッ!!!!」」」

 

 彼が指を鳴らせば、俺たちの前のカーテンが開かれる。

 そうして、眩いばかりのスポットライトが俺たちに向けられる。

 下からはスモークが焚かれていて、ゆっくりと足を進めれば無数のアバターの視線を感じた。

 俺は少しだけ狼狽えながらも、気を引き締めて笑みを浮かべた。

 手を振れば、何故かきゃあきゃあと騒がれるが。

 警備の人らしき機械人のアバターのスタッフさんたちが抑えてくれていた。

 

 ゲストとして呼ばれた俺たちはそのまま席に座る。

 両隣を見れば、髑髏のような仮面をつけたぼろを纏う人型ロボットのアバターに。

 包帯のようなものを全身に巻き付けて、黒と銀を基調としたスーツを着るミイラ男?女?がいる。

 

 別の方向を見れば、白髪のオールバックに眼鏡を掛けたインテリっぽい濃い青色のスーツを着た男性のアバターと。

 坊主頭で仏教の袈裟のようで西洋のカソックのような要素も取り入れた変わった服を着る糸目の男性アバターもいる。

 そして、白い特攻服のようなものを着た赤い髪の長髪で眼帯をした歯がぎざぎざな爆乳のお姉さんアバターもいる。

 

 インテリの人は東亜財団の代表で、坊主の人が聖天の代表だろうか。

 あのお姉さんは孤狼団の代表者っぽい感じで中々に癖が強そうだった。

 

 因みに髑髏仮面はブラックレコードらしい。

 ミイラ人間はサンドブルームさんだとスタッフさんが教えてくれた。

 何方も謎深い存在であり、性別も何も全く分からない。

 唯一、俺だけが何時もの根黒万太郎としてのアバターで……一応、スーツは着ている。

 

 そのせいもあってか、逆に目立っているような気がする。

 こんな事なら、俺も仮面でもつけてくれば良かったと思って……司会者の人がマイクを握りしめて黄金の歯をきらりと光らせる。

 

「さて! 始まりました! セブンストリーム主催のタイタングリード公式生配信! 今回のゲストはぁ! 大型イベント“屍たちの狂宴”にて個人の部と団体の部にてランキング1位から3位になられた方々にお越しいただきました! 因みに、団体の部は代表者の方のみの出演となります! まぁ言わなくてもそれくらいは分かるよなぁ? はは!」

 

 司会者のアフロにサングラスの色黒の男性は軽々なノリで場を盛り上げる。

 アバターの目を通して視聴している人たちも笑っているようだ。

 すると、彼は早速俺たちに自己紹介をお願いしてくる。

 先ずは、団体の人たちであり、東亜の――“サカキさん”がマイクを握る。

 

 彼は席から立ち上がり、客席の人たちに対して綺麗なお辞儀をしていた。

 

「ご紹介に預かりました東亜財団の代表を務めております。サカキと申します。この度は、このような華やかな舞台に呼んでいただき誠にありがとうございます。とても名誉ある事であります……が、聖天のカスと同じ空気を吸う事になった事だけはとても残念で不快に思っております」

「お、ぉぉ」

 

 淡々と自己紹介をしながら、聖天をディスっている。

 トークの8割が、聖天へのディスである。

 中々の切れ味であり、聖天の人を見れば――笑顔ではあったが血管が浮き出ていた。

 

 やべぇと思っていれば、司会者の方がぎこちない笑みのままお礼を伝える。

 そうして、マイクを受け取ってから聖天の代表者――“テンザンさん”にマイクを渡す。

 

「……あぁすみません。色々と挨拶を考えていたのですが、どうも緊張してしまいまして忘れてしまったようです……ですので、私が今最も伝えたい事だけをお伝えしようと思います……私の名はテンザン。聖天連合会の代表です。そして――東亜はとっとと死んでください」

「……あぁ?」

 

 テンザンさんは笑みを浮かべながら、親指を下に下げる。

 恐らく、運営は全力で彼の手にモザイクをかけている事だろう。

 見れば、サカキさんは血管ビキビキであり、テンザンさんは椅子に座る。

 すると、互いに足の踏みあいを始めて――取っ組み合いの喧嘩を始めた。

 

 乱闘事件であり、どうするのかと思えば――司会者は孤狼団の代表であるホムラさんにマイクを渡した。

 

「うむ! 私は孤狼団を束ねる者! 名はホムラという!! 今回、我々は残念ながら3位となったが、もしも次があれば必ず1位になってみせる! 我々は常に新しい風を求めている! 自らの腕に自信があれば、何時でも我々の元へ来るがいい!! 因みに、そこにいる3人であれば大歓迎だ!! 相応のポストを用意する!! 是非、検討して見てくれ!! いや、もう此処で決めてくれてもいいぞ!! 特に、そこの君!! 根黒万太郎君!! 私は――君が欲しい!!」

「……あ、ははは……か、考えておきます」

 

 俺は頬を掻きながらやんわりと断る。

 すると、ホムラさんは腕を組んで自らのバストを持ち上げる。

 そうして、眼を細めながら笑みを浮かべていた。

 

「ふむ、フラれたか……だが、私は諦めないぞ!! 絶対に私は――君を手に入れる!!」

「……あぁ、こほん! ホムラさん? スカウトはほどほどに! 何故か、コメントが荒れ始めたので……彼には“熱狂的な女性ファン”が多いようですしぃ?」

「お? そうか! それはすまなかった!」

 

 ホムラさんは司会者の人に頭を下げる。

 そうして、彼は俺たちにもマイクを渡そうとし。

 先ずはサンドブルームさんだが……彼は無言で断った。

 

 それならばとブラックレコードへマイクを渡すが……無言で動きもしない。

 

 彼は困りながらも、残った俺へとマイクを渡して来る。

 俺はマイクを受け取り、簡単な自己紹介などをする。

 

「初めまして! 根黒万太郎です! イベントでは友人たちの協力もあり、無事に1位を取る事が出来ました! この場を借りて彼らに心からのお礼を伝えさせて頂きたいです。本当にありがとう……そして、もう一つ、どうしても伝えたい事があります」

「……それはぁ?」

 

 司会者の人が困惑する中。

 俺は椅子から立ち上がる。

 そうして、此方を向いているカメラへと指を指し――挑戦状をたたきつける。

 

「俺はあのイベントで1位になった事で最強になった――そんな事は全く思っていません」

「……ふむふむ」

「たかだか数だけの敵を潰していくだけの競争。多くの獲物を狩る事が出来る存在が、果たして本当に最強と言えるのか? 傭兵たちは有象無象を倒す事に喜びを感じるのか。ただ殺す事だけで満足するのか――否です! 断じて否です!」

 

 俺は歯を見せながら笑う。

 そうして、これを見ている傭兵たちに――闘争心を植え付ける。

 

「お前らは最強になりたいか? 自分たちの力こそが頂点であると証明したいのか? ……いや、悪かった!! そんな事なんてどうでもいいよなぁ! 最強だとか伝説だとか、そんな憧れなんて心底どうだっていいもんな!!! 肩書も経歴も、この世界では意味なんてねぇ!! どんな最低のクズでも、どんなに慈愛に満ちた聖者だろうとも!!! 強くなければこの世界で生きて行くことなんざ出来ねぇ!! 強くて当たり前、強さを求めるなんざ生きる事と同じだ!!! だからこそ、俺から言わせてくれ――俺は兎に角、強い奴らと戦いたいッ!!!!!」

「「「……っ!」」」

 

 俺は両手を広げる。

 心臓は強く鼓動し、アドレナリンが駆け巡る。

 考えて来たセリフとは違う。

 全てアドリブだ。

 でも、言うべき事は――全部吐き出してやらぁ!!

 

 

「俺は負けた!!! ホワイトレコード何て呼ばれてたが、あの不滅の王に!!! 俺は負けたんだ!!! 死ぬほど悔しかった!!! 惨めに言い訳しそうにもなったぜ!!! 悔しくてムカついて、何もかもがどうでもよくなった!!! でもな!!!! 俺の心はまたアイツと――闘いてぇって叫んでんだよォ!!!」

 

 俺はカメラに指を指す。

 弧を描くように笑みを浮かべながら、見ているだろうアイツに……いや、全ての人間に伝える。

 

「俺は諦めが悪いんでな!!! アイツにだって必ずリベンジしてやる!! あぁ土下座でも靴舐めでもなんでもしてやるぜ!!! それだけ俺はアイツとの再戦を強く望んでるんだ!!! ……でもな、きっとあの生配信を見ていた奴らなら……傭兵なら絶対に思った筈だ――あぁ、俺も闘いたいってな」

「「「……!!」」」

 

 観客は喉を鳴らす。

 俺は会場に緊張が走るのを感じながら――硬く拳を握り天に掲げた。

 

 

 

「やろうぜぇ!! 頂点を決める最高の闘争を!! そして、最強最悪のラスボス様に――俺たちの中で一番強い奴が挑戦するんだよ!!!」

「「「オオォォォォォ!!!」」」

 

 

 

 俺は最高の闘争をしたい事をこの場で伝える。

 これは俺からの挑戦状だ。

 全ての傭兵に対してであり、運営に対する挑戦状でもある。

 俺は逃げも隠れもしない。

 だからこそ、この挑戦状を受けて欲しいと俺は手を天高く掲げながら大いに笑った。

 

 配信は始まったばかりだ。

 それでも、俺の挑戦状が会場のボルテージを上げて行く。

 すると、司会者の人は激しく戸惑っていた。

 

「あ、あの! そ、そんな事は台本に……え? 何ですか……え、あ、はい……分かりました」

 

 司会者の人が俺の傍に近寄る。

 マイクを渡してほしいとお願いされて、俺は素直に渡す。

 すると、彼はこほんと咳払いし――大物の名を告げた。

 

「ななななんと! たった今!! タイタンシリーズの産みの親であり、セブンストリームのCEOであらせられるあのお方!! ――早乙女修(さおとめしゅう)氏と連絡が繋がっております!」

「「「……!?」」」

「……早乙女?」

 

 早乙女というワードに、俺は強く引っかかりを覚えた。

 今まで、セブンストリームの産みの親の情報なんて知らなかった。

 そもそも、ゲーム情報誌でも早乙女の名前なんて出ていなかった。

 噂では、本人が名前を出されるのを嫌っていたという話は聞いていたが……早乙女って……偶然じゃねぇよな?

 

 

 

 早乙女、その苗字は――“雄吾の苗字と同じだ”。

 

 

 

 俺が考え事をしていれば、司会者はCEOとの連絡を繋げる。

 瞬間、彼のアバターが立体映像で投影される。

 狐の面を被ったスーツ姿の男であり、彼は優雅に礼をし自らの名を名乗った。

 

「初めまして、私がセブンストリームのCEOを務めています。早乙女修です……根黒万太郎さん。素晴らしいスピーチをありがとうございます。貴方のお陰で――我々も決心が出来ました」

「……決心って?」

 

 彼は仮面の下でくすりと笑う。

 そうして、革靴の音を鳴らしながら舞台の前に移動する。

 全てのスポットライトが彼に向けられて、背後にはでかでかと何かが表示されて――ッ!!

 

 

 

「この場を借りて発表させて頂きます。タイタングリードで初となる公式の世界大会――“オーズ・フロンティア”を開催する事を」

「「「……!?」」」

「世界大会……はは、マジか!!」

 

 

 

 彼の宣言を聞いて、俺はたらりと汗を流す。

 俺の発言は運営も無視できないとは思っていたが。

 こんなにすぐに、デカい大会が……それも世界大会が開催されるなんて思わなかった。

 

 彼は説明する。

 世界大会への参加権は全てのプレイヤーに与えられると。

 此方が提示する条件さえクリアすれば、どんな人間であろうとも参加を許すと。

 

「世界大会はただの対戦にあらず。知恵と力、勇気……時には狂気すらも利用して互いの命と誇りを賭して戦っていただきます」

 

 ただの対戦じゃない。

 つまり、あらゆる条件下での戦い……特殊な対決方式も採用されるのか。

 

 凄い、凄すぎる。

 俺の願いが――叶った!!

 

 全てのプレイヤーが、傭兵たちが集結する。

 全力で戦い、全力で殺し合い。

 ただ頂点を目指す為に、死力を尽くして戦うんだ。

 

 日本だけじゃない、あらゆる国の猛者が集う。

 想像を絶する戦いになるだろう。

 ナンバーズも参戦する事は確実であり……あぁ、ダメだ。

 

 興奮して来た。

 ふつふつと体温が上昇していく。

 見れば、俺だけじゃなく。

 この場にいる全てのプレイヤーたちも闘志を燃やしていた。

 

 CEOである早乙女さんは告げた。

 頂点に達した者には、それに相応しい――“奇跡が起きる”、と。

 

 

 

「私が全責任を負います。優勝者には、我々の持てる全ての力を使い――“望みを一つ必ず叶える”と」

「「「……っ!!!」」」

「富み、名声、地位に愛……貴方方が望む希望を胸に……必ずや、頂点へと昇り詰めてください。奇跡は必ず起きるのですから」

「……!」

 

 

 

 彼は説明を終えて一礼する。

 そうして、くるりと振り返り――俺に視線を向けて来た。

 

 時間にすれば、1秒も無かった。

 ほとんど一瞬であり、すぐに視線は逸れた。

 そうして、彼はステージの上を歩いていき、そのまま光の粒子となって消えた。

 

 司会者の方は、カンペのようなものを一瞬出していた。

 が、すぐに消して全ての人間たちに補足説明をする。

 

「詳細につきましては後日! 改めて発表させて頂きます! 今も運営へのお問い合わせが殺到していますが、必ず説明させていただくので何卒! 今は気持ちを落ち着かせてお待ちくださぁい!」

「……ふ、ふふ……手が、震える!」

 

 恐怖じゃない。

 未知の闘争を前にして、武者震いしていた。

 アイツへのリベンジが俺にとっての望みで。

 頂点になればそれが叶うんだ。

 でも、それまでに立ちふさがる壁は大きく分厚いだろう。

 

 苦戦は必至であり、負ける可能性だって大いにある。

 だが、相手が強ければ強いほどに――俺は燃えて来る。

 

 理不尽上等であり、強ければ強いほどいい。

 ギリギリの戦いこそが最高に熱くなれる。

 ヌルゲーなんて興味はない。

 やるならとことん楽しめるように……竜一、見てるか?

 

 何時か、語った夢物語。

 タイタンシリーズが今よりも人気になって。

 何時か、世界大会が開かれたのなら。

 その時は三人でてっぺんを目指そうって話したよな……その夢、叶うぜ?

 

 司会者は軽快なトークをする。

 が、俺は拳を硬く握りしめて――静かに闘争の炎を燃え上がらせていた。

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