底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第52話:ナンバーズ五番手からの接触

「……ぷはぁ」

 

 キンキンに冷えた麦茶を飲み、首にかけたタオルで汗を拭う。

 そろそろ暑くなっていく頃だ。

 まだ蝉は鳴いてはいないが、じわじわと暑くなっている。

 夏真っ盛りになれば、外は地獄だろうが。

 生憎と俺は室内でゲームをするのが仕事で……へへ。

 

 一仕事を終えて、俺は椅子に座る。

 ペットボトルを机に置いてから、俺は端末を開いてネットである事を検索する。

 それは、この前の配信の事で……やっぱり、盛り上がってるなぁ。

 

 セブンストリームのCEOからの発表は世界を震撼させた。

 タイタンシリーズにおける初の世界大会の事は勿論だが、その優勝者の願いは何でも叶うのだ。

 そう、何でもであり、誰しもがそれに喰いついた。

 

《ありえなくね? 絶対炎上するでしょ》

《なんでも叶うなら世界の支配者にもなれるんすか笑》

《俺なら願い事を100個にしてもらうけどなぁ》

 

 ネットでは信ぴょう性は無いという人間も多いが。

 タイタンシリーズは今や世界でもナンバーワンと言えるほどの人気だ。

 Eスポーツも盛んであり、会社自体も業界ではトップの業績を誇っている。

 資本金は相当な額であり、CEO自体も調べれば富豪ランキングでナンバーワンである。

 会社自体はゲーム開発以外にもAIによるビジネスを行っていて。

 中でもゲームのシステム維持に使われている高性能AIは未だに誰も真似は出来ない。

 

 ……強ち嘘ではないだろうさ。

 

 世界一の金持ちでも、不老不死でも。

 彼らの力であれば叶ってしまう。

 彼らには巨大なサーバーを維持できてしまえるほどの高性能AIがあるんだ。

 そんな事を少しでも考えてしまいそうになるほどにはあの会社はでかい。

 世界での影響力も高いだろうし、父さんたちも良くセブンストリームの話はしていた。

 

 世界中が今、タイタングリードに夢中だ。

 誰しもが世界で一番になろうと必死だ。

 メックのカスタムに、単純な技量の研鑽……俺もさ。

 

 必ず勝つ。

 全ての傭兵を倒し、俺が優勝する。

 どんな手も使うさ。

 ダーティプレイだろうとも上等だ。

 傭兵なんだ。どんな手を使ってでも勝ってこそだろう。

 

 俺は笑う。

 笑いながら、部屋に置かれた――椅子型の白いVR装置を見つめる。

 

「ふ、ふふ、40回払い。200万の最新VR装置……毎月5万円……くぅ!」

 

 涙を流しながら拳を握る。

 Vtuberとして人気が出て来た今。

 登録者数も30万人を突破した今であれば、何とかなる……気がする!

 

 リスナーさんたちにスパチャを強制させる事はしないが。

 広告収入などはそれなりに頂きたい。

 煩わしく感じられない程度にさりげなくなだ。

 切り抜きを作ってくれる人も現れていて、此方への同線はしっかりしていた。

 何故か、殺意に塗れた人たちも流れ込んできているが……まぁいいや!

 

「さぁ! 現実は忘れて、オニューのマシーンで早速、ダイブだ!」

 

 トイレはバッチリ、水分補給も済ませてある。

 最大稼働時間27時間の性能を――見せて貰おうか!!

 

 

 #

 

 

「いやぁ、流石は最新マシーン……感度が桁違いだ」

 

 自由探索領域での生配信を終えた。

 そうして、ゲームセンターのある酒場で一服する。

 ガヤガヤと騒がしく、パチパチと視界の端で光が凄いが。

 全てが鮮明に見えていて、指先の感覚までハッキリ分かる。

 

 音もクリアだ。

 本当に現実の世界にいるような感じだ。

 凄まじい技術であり、心臓に手を当てれば本物の鼓動のようで……これが200万の力か!

 

「はは、これなら、もっと楽しいバトルが……良いな」

 

 俺は笑う。

 そうして、機械人の女の子が持ってきたビールを一気に飲む。

 酒の味もリアルであり、味覚もかなり強化されている。

 本当に酔っぱらいそうになるかもと思って……気配を感じた。

 

「……ん?」

「やぁ」

 

 振り返る。

 すると、そこには――おじさんが立っていた。

 

 無精髭によれよれの黒いスーツ。

 白髪交じりの黒髪は後ろで結んでいて、ほりの深い顔は渋みがある。

 たれ目がちの目は青く、身長は175ほどか。

 体はそれなりにがっちりとしていて、声も渋いからこそイケおじ感が凄い。

 腰にはホルスターを巻いていて、リボルバーを差し込んでいた。

 

 彼は俺の対面を指さし「そこ、空いてる?」と聞いて来る。

 他にも席は空いていたが、俺に用があるんだろうと思って空いてると伝えた。

 彼は片手を上げて礼を伝えてから、俺の対面に座る。

 

「あ、すみません。ビールください」

「はぁい!」

 

 流れるようにビールをオーダーし。

 彼はニコニコと笑いながら、胸ポケットから煙草の箱を出す。

 

「吸っていいかな?」

「どうぞ」

 

 断る理由も無いので勧める。

 すると、彼は「悪いね」と言って一本を口に咥えてライターで火をつける。

 目を細めながら、指でつまんで煙を吸い。

 横を向いて煙を吐いていた……かっこいいなぁ。

 

「……君が根黒万太郎君……いや、ホワイトレコードと言った方が良いかな」

「……俺に何か用ですか? 対戦の申し込みなら」

「あぁいや、対戦は“今は”良いんだ……君の事が気になってね。挨拶だけでもしておこうかって思ってさ」

 

 彼は煙草を吸ってから、それを灰皿にこすりつける。

 そうして、笑みを浮かべながら手を差し出してきた。

 

「初めましてだね。俺はキリヤだ。傭兵としてのキャリアは――“ナンバーズの五番手”といったところかな?」

「……! 貴方が、ナンバーズの……そんな方に挨拶される何て、光栄ですね。是非とも対戦したいですが……今はダメですね」

「ん? どうしてだい? ……いや、俺もその気はなかったけどさ。君は何時でも対戦を受けるっていうスタンスだろう? 違ったかな?」

 

 彼は笑う。

 笑ってはいるが、その瞳には闘志が灯っていた。

 今この瞬間にも、イメージの中で俺と戦っている。

 それほどまでに闘争心がむき出しの男だった。

 俺自身の中にも、ナンバーズと戦いたいという気持ちはある。

 が、それ以上に俺には選ぶべき――“行動がある”。

 

「何時か戦いましょう。もし、貴方が世界大会に出るのであれば――そこが“相応しい場”ですから」

「……へぇ君は……昇る気、なんだね? 強いよ、俺も他の奴らも……それでも?」

 

 俺は彼を見つめながら、彼の手をしっかりと握る。

 握りつぶすほどに手に力を込めながら俺は彼を見つめる。

 そうして、少し口角を上げて応える――

 

 

「強くなくちゃ意味ないでしょ? そいつらを全部殺すからこそ――最強なんですよ」

 

 

 俺は伝える。

 今の気持ちを、目指すべきものを。

 すると、彼は笑みを深めた。

 

「はは! 最強か! 良いね。自分の事が分かっていない腑抜けかと思ったが、訂正するよ……君は正しく君を認識し、あるべき姿を取っている。最強、是非目指してくれ。俺が全力で――潰してあげるよ。新人(ルーキー)

「えぇやってみてくださいよ。口だけじゃない事を祈っていますよ。先輩(オールド)

 

 俺たちは互いに固い握手を結ぶ。

 これは友好の証とはほどとおい。

 敵となる人間に対する――マーキングだ。

 

「ビール、お待たせしましたぁ!」

「……ありがとね」

「……ふっ」

 

 機械人の女の子は、そんな俺たちの空気を壊すように現れる。

 ビールの注がれたジョッキを置いて去っていった。

 彼はゆっくりと手を解きジョッキを掴みふらふらと揺する。

 

「何れは殺し合う、が……今は呑まないかい?」

「良いですよ。楽しい酒の席なんですからね」

 

 俺はジョッキを持つ。

 そうして、彼と軽く打ちあってから飲む。

 アルコールが体をほてらせて、ほどよい苦みと甘みが口内を幸せにする。

 俺たちは幸せな吐息を吐き――

 

「あ、そういえば……サンドブルームとブラックレコードにはもう会ったよね?」

「え? あぁまぁ……結局、何も話してませんけど」

「そうかそうかぁ……まぁブラックレコードは問題ないけど……サンドブルームには気をつけた方が良いよ」

 

 彼はビールを飲みながら忠告してくる。

 どういう意味かと聞けば、彼はデッドブックの事を教えてくれた。

 

「君、載ってるだろ。アレをさせるように誘導したの……アイツだよ」

「え? でも、あれは被害者の会が」

「……まぁそうなんだけど。焚きつけたのはアイツ……君、アイツに相当目をつけられてるよ」

「……ランキングの事かな?」

 

 俺は考える。

 ブラックレコードは勿論、サンドブルームさんも抜いての一位。

 それで恨みでもかわれたのか。

 俺は顎に手を添えて考える。

 すると、彼は「違うよ」という。

 

「……此処だけの話だけどさ……アイツ、ブラックレコードの信者なんだ」

「……へぇ」

「お? あんま驚かないんだね……まぁそれは良いけど。アイツはブラックレコードを崇拝しているからこそ、対になるようなアンタを激しく敵視しているって訳だ。気をつけな? アイツ直々には来ないだろうが、世界大会への出場を阻んでくるかもしれないからね……今日、発表だったでしょ?」

「え? あぁ……そうですね」

 

 彼が言った発表とは、世界大会に出場する為の条件などだ。

 年齢性別出自は関係ないが。

 全員が本選に参加してしまえば、色々と負担が大きい。

 だからこそ、予選とかそんなものでふるいに掛けるんだろう。

 

 どんな条件かは分からないが。

 予想するとすれば、ランクやら戦歴などだろうが……うーん。

 

 彼はビールを一気に飲む。

 そうして、テーブルに硬貨を置いた。

 

「ま、警告はしたよ。精々、殺されないように立ち回りな。得意だろ?」

「え、ま、まぁ……もしかして、それを伝える為に?」

 

 思ったよりもいい人なのかと思った。

 が、彼は目を細めて邪悪な笑みを浮かべる。

 

「くだらねぇ理由で獲物を取られたくねぇだろ? 俺とやるまで――絶対に死ぬんじゃねぇぞ? 小僧」

「あ、はい」

 

 イケおじかと思えばバーサーカーだった。

 彼はそれだけ伝えて去っていく。

 気が付けば、周りから凄く視線を感じる。

 何か写真を撮られたような気もしたが、気にしないようにする。

 

 ナンバーズの五番手キリヤ。

 そして、裏で俺を潰そうとしているナンバーズの末席であるサンドブルーム。

 色々な思惑はあるだろうが、始まるとすれば明日からだろう。

 

 ……今日は発表を聞いて、明日、皆で集まるかな。

 

 明日は丁度祝日であり、月島さんも学校は休みだろう。

 仕事があるのなら仕方ないが。

 皆の知恵を出し合って、全員で世界大会に出場できたら嬉しい。

 どういった事になるかは未知数であるが……楽しみである事に変わりはない。

 

「ナンバーズか……おもしれぇな」

 

 ビールを静かに飲む。

 そうして、体に熱を帯びて行くのを感じながら。

 俺は強者たちの気配を感じて興奮を高めていった。

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