底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
高層ビルの一室。
早朝の時間であり、天気は快晴。
白い壁に専用の大型モニターがあって、おしゃれな長い机を囲むように椅子が並べてある。
適度な観葉植物に、雰囲気を出す為にリアルの俺たちはスーツを着ている。
40階であり、開放感のある窓から見る街の景色が絶景だ。
広い会議室は、俺が電話でレンタルした部屋で。
今日一日は貸し切りであり、この場には――歴戦の猛者たちが集まっていた。
「「「……」」」
「えっと、それじゃ……始めましょうか?」
俺が提案すれば、彼女たちは頷く。
俺はリモコンで部屋の明かりを暗くし、自動で窓にカーテンをかける。
瞬間、大型のモニターには光が灯り――昨晩の映像が流れる。
《……それでは時間となりましたので、セブンストリーム公式世界大会オーズ・フロンティアに関する情報をお伝えさせていただきます》
「「「……」」」
そこには、きっちりとした黒いスーツを着る眼鏡に黒いきっちりとしたスーツを纏う女性がタブレットを持って立ち。
俺たち傭兵にとって重要な世界大会への参加条件の説明を始めていた。
俺たちは改めてそれを黙って聞く。
オーズ・フロンティアは、先ず世界各国にて参加を表明する傭兵を募る。
方法は、公式からのメッセージに応えるだけだ。
それに関しては、俺も含めてこの場の全員が既に済ませてある。
大会に参加の表明をした傭兵たちは現時点で――50万人だ。
そう、50万人でありこれからもっと増えて行くだろう。
いよいよ大会への参加を得る……という訳じゃない。
当然ながら、50万人もの傭兵をトーナメント式に戦わせる事なんて出来ない。
出来るだろうが、そんな時間も無ければ、そもそもエンタメとして成立しないだろう。
素人同士の泥試合を見て、観客たちがゲロを吐く姿しか見えないしな。
公式の発表では、本線と予選があるらしい。
が、それ以前に予選に参加する資格があるかもテストされるようだった。
それが、全ての参加表明を行ったプレイヤーに与えられる――“特別課題”である。
世界観的には、傭兵協会から傭兵たちに対して。
最も優秀な傭兵をピックアップする為に用意された課題で。
それをクリアした者のみが、協会が用意した“大規模試験場”。
つまり、大会の予選へと出場が出来る、という感じだ。
予選から本選に進めるのは、僅か“64名”となる。
予選にどれだけの数が集まるのかは不明だが。
恐らくは、1000人くらいはいるんじゃないかと俺は予想している。
映像は淡々と流れていき、質問も無いままに最初の発表は終わる。
電源を消し、明かりをつけてカーテンも開いていく。
俺は皆に視線を向けて、意見を聞く事にした。
すると、リリアンさん……いや、オリアナさんは手を上げた。
「どうぞ」
「……先ずは、課題についてそれぞれの考えを明かすべきでしょうか。私から申し上げるのであれば……随分とハードな条件だとは思います」
「た、確かに……これ、本当に予選まで残る奴……いるんですか?」
オリアナさんの言葉に島月さんが同意する。
みっちゃんやコウちゃんの同じことを思っていそうだが。
内部の事情を多少は知っているだろうみっちゃんだけは涼し気な顔だ。
特別課題の内容とは、大まかに五つある。
一つはランクに関してであり、最低でもAランク以上に達していなけれはならない。
これに関しては、俺自身はそこまで難しいとは思っていない。
本気を出せば、今日か明日にでも片付くだろう。
二つ目は、対戦した数だ。
最低でもBランク以上の傭兵と100回戦い。
100勝している事が最低条件だ。
まぁこれに関しては、俺自身は既にクリアしているので問題はない。
島月さんたちも恐らくはクリアしているだろう。
問題なのは三つ目からだ。
三つ目の課題は、大型エネミーの討伐……それも“特殊なエネミー”の討伐だ。
エネミーの中には、特殊な条件でのみ出現する個体が存在する。
そういった存在たちは特殊個体として記録されており。
それぞれによって条件は違う。
日中や夜間にしか出現しないものや、単独で探索している時にのみ現れるもの。
他にも、近接装備のアセン限定の時や逆に遠距離武器限定の時やらエネルギー兵器固定など。
そういった条件をクリアした時のみ、戦う事が出来る個体が特殊個体だ。
運営は、それらの特殊なエネミーの討伐を最低で――“新たに5体”狩ってくるように言っていた。
それも、これに関してはある縛りがある。
それは一体の討伐から五体目を討伐するまでの期間が一週間以内という事だ。
つまり、一週間以内に大型のエネミーを五体狩る必要がある。
ダメ押しとばかりに、その五体の討伐では――死亡回数0という条件付きだ。
特殊な条件で出現する大型エネミーを合計で五体だ。
準備する事も多い中で、たったの一週間だ。
それに加えて、一度のミスも許されない。
現在、大勢の傭兵たちが掲示板サイトなどを使って情報の交換を行っているが。
既に、比較的、簡単に狩る事が出来るような大型エネミーは他の傭兵たちが雪崩込んでいるだろう。
如何に無限に等しい世界があったとしても、大型エネミーの数は限りがある。
それも、討伐の方法が確立されているような個体であれば猶更だ。
特別課題が終了するまでは90日であり、狩りやすい敵を待つほどの余裕はない。
故にこそ、これに関してはある程度、腹を括る必要があるだろう。
4つ目の条件は、ある物品の回収だ。
それは予選に参加する為のチケットともいえるだろう。
傭兵協会のメッセージによれば、特別なデータキーのようであり。
これを使う事によって、大規模試験場へと入れると言われた。
データキーは自由探索領域の何処かに存在するらしい。
詳しい情報は当然ながらまだ何も分かっていないが。
中には、既に手に入れたとネットで報告している傭兵もいた。
彼らの説明によれば、単純にエネミーを狩った時にドロップしたという人間もいれば。
ダンジョンのような場所を探索している時に、普段はいかないような場所に置かれていたなどというプレイヤーもいた。
協会から出ている情報によれば、データキーは数に限りがあるらしい。
最初の内は簡単に見つかるようだが。
数が少なくなれば、発見できる確率は下がっていく。
だからこそ、最初にデータキーを人数分手に入れる事も考えたが……こればっかりは皆の意見を聞いた方が良いだろう。
既に、デッドブックやゲーム内に存在する転売ヤーたちも動いている。
奴らは、データキーを手に入れた人間たちを襲ったり。
手に入れた人間たちを買収し、データキーをかき集めて。
独占したそれを高額で売りさばこうとしている。
デッドブックに関しては、どうしようもないが。
転売ヤーに関しては、金で何とかなるのならそれもいいだろう。
が、安易な道を選んで課題をクリアするのは――最終手段だ。
そして、最後の課題は……これも特殊だよな。
「……特殊エリア“白き湖畔”にて……己を打ち倒す、か」
「……自分自身との戦いってことか……はは、燃えるねぇ」
コウちゃんは挑戦的な笑みを浮かべる。
が、島月さんは怯えているようだった。
当然だ。大型エネミーやデータキーに関しては、他者との戦いだ。
単純な殺し合いで奪い合いで……だからこそ、己との戦いこそが一番の難関だろう。
自分の事は自分が一番理解している。
それは裏を返せば、自分の事を知り尽くした自分自身こそが最も厄介であるという事の証明だ。
どんな技もフェイントも意味が無い。
そもそもが、思考する能力も技量も同じであれば。
どんな手を使おうとも、相手にはバレバレなんだ。
明らかに敵としてはこれ以上ないほどにやり辛いだろう。
……まぁ相手からしても、厄介な事に変わりはないが……打ち倒す事が目的だからなぁ。
「他のプレイヤーの出方を伺うってのも、これは出来ないからねぇ……何せ、この条件に関しては最終日の“1時間だけ”出来るから」
「……何故、この課題だけが最終日なのでしょうか……恐らく、そこに関しても何か条件はありそうですね」
「うん、恐らくね……まぁ兎にも角にも、俺たちは5つの課題の内、最終日までに4つをクリアする必要があるって訳だ。俺としては、先に大型エネミーを討伐してからデータキーを集めるべきだと思う……まぁ先ずは、俺はランクをAにあげなきゃいけないけどね。はは」
「ふふ、先生ならぁAランクくらいあっと言う間ですよぉ……まぁ私も、それでいいと思いますよぉ?」
みっちゃんは俺の考えと同じらしい。
ぶっちゃけセブンストリームの社員である彼女であれば。
何か詳しい情報を持っているかと思った。
しかし、公式の大会に参加できて、俺たちの集まりにも参加できているのであれば……十中八九、情報は伏せられているのか。
「……ふふ、先生の考えている事、分かりますよ……えぇ、私はセブンストリームの社員ですが。今回の事に関しては何も聞かされていませんよ。今回の世界大会に関する情報は上の人間のみしか知らなくて、私のような実行部隊には絶対に情報は伝えられませんから……まぁ、絶対に参加しないという誓約書にサインをしていればぁ。不正を取り締まる側になっていましたけどねぇ」
「つまり、みっちゃんは俺たちプレイヤー側として参戦するって事だね? 心強いよ」
「ふふ、優勝すれば何でも願いが叶うので、今回ばかりは参加しないとぉ」
「お? 何か意外だね。みっちゃんにも叶えたい願いがあるんだ」
「ん? それはありますよぉ。大抵はお金で解決できますけどねぇ」
「へー因みにどんな願いなの? もしかして、世界の支配者とか? はは」
「……ふふ」
「……みっちゃん?」
「「「……」」」
どんな願いかと聞けば、彼女は目を細めて笑うだけだった。
心なしかその瞳に浮かぶ光が危険なものに見えた。
寒気を感じて周りを見れば、何故か視線を感じる。
彼女たちは真っすぐ前を見ているが、誰しもが不穏な空気を発していた……え?
俺は震えていれば、オリアナさんが咳払いをする。
「……私としては、データキーを集める方が先決であると思います……既に、データキーの独占を狙うコミュも出現し、データキー狩りなるものも始まっているといいます。最初の内であれば、データキーを探す難易度も比較的簡単な筈です。データキーを集めてから大型エネミーを狩っていけば効率が良いと思います」
「わ、私も! 先輩に同意です!」
二人からの意見だ。
コウちゃんを見れば、顎を摩って何かを考えていた。
みっちゃんは何も言わなそうで、代わりに俺からそのルートでの危険性を教えた。
「確かに、効率の観点でいえばデータキーから探した方が簡単だろうね。数に限りがあるのなら尚の事だ……ただ、それはあくまで表面上での場合だね。今回の事でいえば、データキーは取得してからずっと所持をしている体になる。謂わば、機体とセットになって、単純に街を歩いている状態でも肌身離さず持っている状態だと考えてた方がいい。サーチに優れた機体だったり情報屋だったら、一瞬で所持しているかどうかはバレてしまう。情報が出回るのは早いだろうし、俺自身の懸賞金を抜きにしても狙われるのは必須だ。そんな状態で、大型エネミー戦を狙って襲撃されてしまえば……分かるよね?」
「……確かに、襲撃者からすれば大型エネミー戦の時を狙えばこちらを比較的容易に撃破出来る可能性が高い。我々からすれば、アセンに縛りを設けた状態での戦闘ともなれば確実に撃墜のリスクが高まる……いや、もしかしたら特殊個体を出現させる事とデータキーの両方を狙って……すみません。盲点でした」
「いやいや、全然いいよ! ……まぁそれに、奴らが独占を狙っていたとしても、“複数のデータキーを48時間以上”、保有し続ける事は出来ないからね」
「……あぁ、あれですか? データキー同士の電波干渉効果で、自動でデータキーが破壊されるっていう」
コウちゃんの言葉に流石だと指を鳴らす。
そう、運営もしっかりと対策を考えていた。
それこそが、48時間の制約であり。
一人の人間がデータキー2つ以上所有している場合、48時間経過すればデータキーは自動で消滅する。
協会としての言い分でいえば、不用意に予選メンバーを操作させない為の処置だったか。
「そうですねぇ。まぁそもそも“あのAI”による完璧な判断によって、独占何て事は初めから不可能ですけどねぇ」
「……というと?」
「ん? 過去の膨大なログだったり、そもそもゲーム内での経歴に関してもAIのデータバンクには記録されているのでぇ。不正とかチートは勿論、ゲームを盛り下げるような事も出来ないんですよぉ……あ、これって情報漏洩かな? ふふ」
「……さらっとスゲェ事言いやがったぞこいつ……まぁそれなら安心じゃないですか?」
「ま、まぁね……監視されてたのか。ひぇぇ」
抜け道はないらしい。
つまり、別の人間を雇って、データキーの譲渡をする事は可能だが。
高性能AIによる24時間365日の監視によって、データキーの独占を計る人間かどうかは選別されるのか。
“完全な独占”による転売事業は確実に潰されるのであれば。
彼らに残された道は、資産を守ってくれるところへ預けるしかない……そう、“銀行”と呼ばれるところだ。
「……確か、銀行には預けられるんだよね? 実際に預けている人もいるらしいし」
「えぇ、それは問題ないと思いますよぉ。何せ、銀行は守ってはくれますがぁ――襲撃のリスクがありますからねぇ」
「……何ですか、それ? え、銀行強盗って事ですか?」
「……あぁ、島月さんは知らないか。まぁ俺も実際に見た訳じゃないけど。えっとね――」
俺は島月さんに説明する。
銀行と呼ばれる“場所”では、現実と同じようにお金やら大事なものなどを預ける事が出来る。
契約した人間の資産を守る為の場所であると同時に。
資産を増やす為の場所とでもいうべきだろうか。
銀行に金を預けていれば、一定の時間が経過すればその金は増えて行く。
現実でいう利子であるが、ゲーム内の利子はアホみたいな速さで増える。
アイテムに関しては増えるような事はないが。
時間経過で品質が落ちるものを預ければ、品質の劣化の心配は無くなる。
特殊な環境下で保管しなければならないものも、預けた場合、面倒な手間は向こうが引き受けてくれる。
単純なインベントリではなく。
メリットのあるインベントリと考えればいいか。
そう考えれば、誰もが銀行に預けようと思えるだろうが。
実際には、銀行に金などを預ける人間は限られている。
幾つかの要因があるが。
最も大きなデメリットを上げるのであれば――“襲撃のリスク”が伴う事だ。
そう、銀行は襲撃される。
その銀行に珍しいアイテムや膨大な金があれば高確率でデッドブックの傭兵たちが襲いに来る。
襲撃を受けて、金やアイテムを奪われればそれらの所有権はデッドブックに移る。
だからこそ、銀行を利用しようとするプレイヤーは限られている。
資産を増やすにしても、それほど大きな額は預けない。
少額であり、決して積み立てにはしない。
利子は全てポケットマネーとして受け取るのだ。
アイテムに関しても、よほど貴重で管理が難しいもの以外は預けない。
死ぬほど管理が面倒だが貴重だったり、個人のインベントリで保管出来ないものならば。
彼らは多額の金を振り込んで最も厳重なセキュリティランクで銀行と契約するだろう。
銀行のセキュリティランクにも格差があり、金さえ積めば誰でも最高ランクで預けられる。
最高ランクは一月であろうとも、およそ3000万を超える金が必要となるが。
その金に見合った鉄壁のセキュリティーであると言える。
銀行はそもそも一国家に存在するものではない。
銀行そのものが都市であり、その都市の中に多くの人間の財産を管理している。
最も安価であれば、最低限のセキュリティで。
最も高いランクであれば、都市の最深部にて守られる事になる。
都市そのものには様々な防衛装置があり。
最深部を守っているお抱えの警備兵たちの中には、噂では“元Sランクの傭兵”がいるらしい。
まぁ設定でありNPCであるが、恐らくは相当強いんだろう。
可能性があるとすれば、転売ヤーの元締めが銀行と最高ランクの契約を交わし。
収集したデータキーをそこへと集める事だろうな。
データキーは個人が複数を持った状態であれば48時間で破壊されるが。
銀行に預けている状態であれば、48時間の制約を受けないらしい。
だからこそ、一部のプレイヤーは複数のデータキーを銀行に預けたんだ。
「……多分だけど……傭兵たちが結託して、何れ銀行には襲撃に行くんじゃないかな」
「えぇ恐らくは……先生もそれに参加を?」
「ん? いやいや、流石にデッドブックに載ってても明確な犯罪行為はしないよ。バレたら正式なお尋ね者になっちゃうし」
「……では、データキーに関しては実質的に独占は不可能であると?」
「うん、そうなるね……ただ、元締めは確実に最高ランクで集めたデータキーを守ると思うよ。アレって、一度契約さえすれば後から幾らでも入れられるらしいし……誰もデータキーを手に入れられなくなれば、一本のデータキーであろうとも恐らくは数百万……いや、下手したら数千万の価値がつくかもしれない」
「……願いが叶うなら、数千万も安いものってことか……人間の欲望は底なしだな」
コウちゃんの言葉に苦笑する。
転売ヤーは人の弱みに付け込む存在だ。
他の課題をクリアしていようとも、肝心のデータキーが手に入らなければ誰だって焦る。
腕に自信があり、大会で優勝できる見込みを持つ傭兵であれば。
高い金を出してでも、何とかして参加資格を得ようとするだろう。
たかがゲーム、されどゲームだ。
どんな願いでも叶うのであれば、世界中の富豪も動くだろう。
俺は椅子に背を預けて小さく息を吐く。
「……大型エネミー戦の課題をクリアした後ともなれば、データキーの取得条件は確実に上がっているだろうけどね。単純に考えて、大型エネミーの討伐が……そうだね。五日で終わらせるとしようか。そのタイミングであれば、恐らくは、データキーを集める事に専念しているプレイヤーたちが豊富な在庫を抱えているかもしれない。その全てを銀行に預けた状態でね……もしも、データキーが手に入らなかったら彼らから買う事も手段だろうけど……まぁ莫大な金が必要になるのは必須だろうねぇ」
死んでも転売ヤーからは買いたくないが。
データキーが手に入らない状態になっていれば。
そうせざるを得なくなるだろう。
確実に、複数のオークションに出品するとかだろうけど……はぁぁ。
ゲームでも転売ヤーは恐ろしいと思って……みっちゃんが「あっ」と声を出す。
「……これは、私が聞いた“噂”なんですがぁ……データキーは最初こそドロップしたりもするんですけど。数が減っていけば、取得条件は勿論あがりますけどぉ――明確な取得条件が見えて来る、かもしれないです」
「……より明確な取得条件だって? それってよぉ……要は、どこどこのエネミーを倒したらとかか?」
「うーん。どちらかといえばぁ……宝の地図? みたいなぁ」
コウちゃんの言葉にみっちゃんは答える……宝の地図か。
要するに、データキーの場所を示した何かが出る可能性がある。
それさえあれば、取得が難しくなった状況であろうとも。
確実にデータキーを手に入れる事が出来るという訳か。
……まぁあくまでも噂だ。そもそも、その地図がどうやって手に入るのかも不明だしな。
みっちゃんは少し申し訳なさそうな顔をして謝る。
俺は片手を振って謝る事は無いと伝えた。
「寧ろ、何も情報が無い中でその情報はありがたいよ! ……取り敢えず、データキーに関してはその可能性も念頭において……先ずは、大型エネミーを狩る事からでいいかな? 勿論、ランク上げがまだの人は俺と一緒にあげて行く事になるけどさ」
「……私は異論ありません……まぁ島月さんも今はBなので、今日中にAになってもらいますが」
「ひぃ! きょ、今日中ですか!? え、えっと……い、いえ! 頑張ります! 異論ありません!」
「……俺も問題ねぇよ。こいつと俺は既にAだしな」
「私も先生の提案で問題ありませんよ♡」
「……よし! じゃ、そういう事で! 俺も頑張って明日までにAランクに昇格しておくから……取り敢えず、特殊個体の中で倒していく五体のピックアップを任せたいんだけど……誰かやってくれないかな?」
「……俺は無理だぜ? そういうのは苦手だからよ」
「わ、私も、ちょっと難しいです……ごめんなさい!」
コウちゃんと島月さんは無理らしい。
コウちゃんは武闘派だからこそ向いていないのかもしれない。
島月さんはそもそも学校の事があるからこそ任せられないしな。
残ったのはオリアナさんとみっちゃんで――二人が頷き合う。
「でしたら、私と……そこの方で探しておきましょうか」
「ふふ、共同作業ですねぇ。まぁ良い機会なので、“仲良くおしゃべり”でも、ねぇ?」
「えぇ、私も貴方とは“お話”がしたかったので。アカウントの交換をこの後に。日程と場所は私が……構いませんね?」
「ふふふ、えぇ勿論。楽しみですねぇ♡」
「ふふ」
「うふふ♡」
「……こ、怖い」
「……へへ」
二人共笑顔であるが、眼は全く笑っていない。
殺気すらも感じるが、島月さんがガチガチと歯を鳴らしているので気のせいではないだろう。
俺は目に涙を浮かべながら、二人が仲良くなってくれる事を願った……さて!
「取り敢えず! 今日は細かい日程の調整とそれぞれの担当を決めて……この後、早めのランチで解散かな?」
「「「異議なし!」」」
「ふふ、それじゃ――」
俺は身振り手振りで話す。
彼女たちは真剣な顔で聞いてくれていた。
互いの予定を話し、日程を決めていきながら。
俺はゲームの事でこんなに真剣になれる友人が出来た事を嬉しく思った。
かけがえのない存在たちで。
俺には勿体ないほどにキラキラとした友達たちだ。
この場には竜一はいないが、いたらきっとアイツも同じことを思っていただろう。
……雄吾。お前もいたら……もしかして、お前はまだ、あの世界に……。
『頂点に至れ。真なる伝説となり――――“命と誇りを懸けて戦おう。友よ”』
「……」
アレはアヴァロンの言葉か。
それとも――お前自身の言葉なのか?