底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:オタリオン

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第56話:雨と共に来るは鋼のミミズたち

 曇天の空。

 ぽつぽつと雨が降り始めていた。

 リリアンさんの情報では、数分後には土砂降りらしい。

 俺は山のギリギリを飛行しながら、通信を全員に繋げた。

 

「……皆さん、調子はどうですか?」

《問題ありません》

《わ、私も大丈夫です!》

《右に同じですぅ》

《俺もいけますよ?》

 

 機体に乗り込み、自由探索領域にある山岳地帯を飛ぶ。

 全員の武装はハンドガンのみであり、それ以外は何も装備していない。

 他のプレイヤーとの戦闘を避ける為、大型エネミーまでのルートは遠回りに設定した。

 シップでの移動は目立つから論外であり、現地までは機体によって移動だ。

 態々、低空飛行の上に山肌に沿うような移動だ。

 俺を含めて全員慣れているからこそ心配はしていない。

 

 全員の予定があった日。

 水曜日の午後7時であり、今日から連続で大型エネミーを討伐していく。

 期限は一週間であり、ノルマは一日一体だ。

 最短で四日であり、長くても六日以内には終わらせたい。

 

 先ずは、作戦会議としてグリード内で全員で話し合いが出来る場所へと集まり。

 そこで、みっちゃんとリリアンさんからこれから討伐していく事になる大型エネミーの情報を聞いた。

 何故か、二人は愛称で呼び合うほどに仲良くなっていたが……何かあったのかな?

 

「……“サウザンドワーム”か」

 

 最初に討伐する事になった大型エネミーの名前だ。

 サウザンドワームなんて大層な名前から分かるように。

 この大型エネミーはミミズのような体で、おまけに群体型のエネミーだ。

 地表深くにて基本的には眠っており、滅多な事では姿を現さない。

 しかし、天候が荒れた日……つまり、どしゃぶりの雨が降れば自然と地中から姿を現すらしい。

 

 二人がそれを知ったのは掲示板での情報で。

 詳しい事をグリード内の情報屋に聞けば、倒し方についても“特殊な条件”があるようだった。

 それは地中から現れるワームの弱点を精確に潰さなければならないことで。

 もしも、全ての弱点を“時間内に”潰す事が出来なければ、即死級の攻撃が飛んでくるそうだ。

 その攻撃はエネルギー攻撃ではなく。

 どちらかと言えば物理攻撃の類であるからこそエアゾーンなどは使えない。

 だからこそ、失敗すれば死ぬ事は確かだ。

 

『討伐の仕方は確かなようですが。現在確認されている中で、それを討伐したと言っている傭兵はいませんでした。動画での情報によれば、出現のパターンは完全なランダムの上に、武器の性能による攻撃パターンの変化も確認されているので……』

「……これってか」

 

 武器の性能によって敵の攻撃が激しくなる。

 強力な兵器を使えば、それだけ敵の弱点を突く事が難しくなるらしい。

 が、近接武装で挑めるような相手ではない。

 だからこそ、武器の中で最低限の威力があり、尚且つ携行性と連射性能を考えるのなら……ハンドガンになってしまった。

 

 全員が装備したハンドガン。

 竜一に作って貰った装備であり、名前は“DZ(デイジー)”。

 ダメージがZ級なんて意味不明な理由でつけられた名前だが。

 その威力は本物であり、一般的なハンドキャノンほどの威力があるが。

 リコイルを極限まで抑えた上に、装弾数も100発と通常のハンドガンほどはある。

 予備のマガジンを合わせれば、6マガジンで総弾数は800であり十分だろう。

 射程距離に関しても距離を置いて戦えるほどには確保されている。

 それに、今回の相手は一つのエリアにて動き回るタイプだからこそそれほど射程のデメリットは感じない。

 

 大型イベントでの報酬。

 その潤沢な資金によって作ってもらった。

 イベントでの素材の一部も使っているからこそ、中々の性能だ。

 勿論、基本性能以外にも特徴がある。

 それはリンクシステムの機能を流用した事によって、弾丸そのものを敵へと誘導する事が可能となった事だ。

 竜一曰く、現時点ではハンドガン程度でしか使えないらしいが。

 行く行くは、対艦ライフルであろうとも使えるようにしたいらしい。

 

 アイツの技術の進化は留まる事を知らない。

 弾丸そのものの誘導機能なんてなぁ……スゲ。

 

 特殊弾であり、値は通常の弾丸よりは張るが。

 グリード内でリッチになった今の俺であれば痛くも痒くもない。

 まぁそれでも、今後、装備をじゃんじゃん作っていけば無くなるだろうが――システムが目標地点への到達を告げる。

 

 俺は思考を戻す。

 そうして、仲間たちと共に開けた場所へと降り立った。

 

「……此処?」

《えぇ間違いありません。此処が――“大型廃棄場跡地”です》

 

 リリアンさんの言葉に周りを見る……うげぇ。

 

 周りを見れば、ゴミだらけだった。

 生ごみではなく、産業廃棄物の類で。

 さび付いた鉄くずだったり、危険な薬品が漏れ出したタンク。

 特殊な運搬車の残骸などがある。

 

 コックピッド内にいて、ヘルメットをしていても。

 独特な臭いが僅かに感じられる。

 外に出れば、吐いてしまうかもしれない。

 月島さんも吐き気を堪えるような吐息をしていて……あ。

 

「降ってきましたね……来ますかね?」

《ふふ、信用してください。裏付けは取ってますから♡》

「……深くは聞かないでおきますね。へへ」

 

 みっちゃんの意味深な発言はおいておく。

 そうして、空を見ていれば雨の勢いは一気に強くなっていった。

 あっという間に、視界が雨で満たされて行った。

 ボタン操作でカメラを調整しつつ、周囲を警戒し――!

 

「うぉ!」

《揺れて……何か来ますよ!?》

 

 月島さんの言葉に、全員が武器を構えた。

 互いに背中を合わせて警戒し――ゴミ山から何かが突き出て来た。

 

《――――!!!!!》

「アレが、サウザンドワーム! でっけぇぇ!!」

 

 うねうねと動いている金属の塊。

 天高く伸びるそれは目算で優に100メートルを超えていた。

 それは全体のほんの一部であり、全てを合わせればどんでもない長さになるだろうか。

 分厚そうな装甲は雨に打たれて鈍い光沢を放つ。

 何層にも重なった装甲の隙間から音を立てて蒸気が漏れ出していた。

 ゆっくりと敵が頭と思わしき先端を俺たちへと向ける。

 そこには六眼の丸いセンサーカシャカシャと回転して真っ赤に光っていた。

 装甲はまるで竜の鱗のようであり、それらが波打つように動いていた。

 奴は俺たちを敵であると認識し、不快な金切り音を出しながら――俺たちへと突っ込んでくる。

 

「散開!!」

《――了解!!》

 

 指示を出せば全員が散らばる。

 奴はそのまま俺たちがいた場所へと突っ込んで地中へと一瞬で潜っていった。

 その間に確認すれば、確かに弱点だと思われる――アンテナがあった。

 

 体内にて生成された過剰な電気を体外へ流す為のアンテナだ。

 恐らくは、体内で無限に等しい電気を生み出し続けているんだろう。

 ほとんどオーパーツの類であり、巨大で群体であるアレを高速で動かしているのなら納得だ。

 

 リリアンさんたちはゴミ山の上に立ち。

 俺だけが地上にて待機する。

 レーダーの反応では、俺の下を移動していて――俺はその場から前方へ飛ぶ。

 

《――――!!!!》

 

 奴が俺がいた場所から飛び出してきた。

 瞬間、奴の頭部から稲妻のように激しい閃光が迸った。

 耳をつんざく爆音であり、俺は少し頭をくらくらさせながらも――弾丸を放つ。

 

 三発の弾丸は、正確に敵の側面にて伸びていたアンテナに命中。

 一気に三つのアンテナを破壊して、同時にリリアンさんたちも攻撃を放っていた。

 

「3つだ!」

《――こちらも同じです!》

「了解! このまま俺が囮になる! 残りは任せたよ!」

《はぁい!♡》

 

 奴は地中へと潜り、そのまま地面を盛り上がらせながら俺を追ってくる。

 俺は敢えてスピードを落とした状態で奴の攻撃を待ち――奴が飛び出す。

 

 瞬間、奴は再び先端で電気を集めて――俺はブーストで回避。

 

 瞬間、凄まじい電流が前方のゴミ山に命中。

 電気による熱でゴミはドロドロに溶けていた。

 が、僅かな隙によってリリアンさんたちは華麗に攻撃を当ててくれていた。

 

《また三つです!》

《よ、よっしゃあ!》

「良い調子ですね! この調子で……とは、行きませんよねぇ」

 

 奴は地中に潜る。

 が、先ほどまでのように攻撃を仕掛けて来ない。

 見ればレーダーに反応する敵影が――増大していた。

 

《10、20――まだ増えるか?》

《ふふ、楽しくなりますねぇ♡》

《はは、踊り食いだぜ!》

《う、嘘? うぅ!》

「気をしっかり! 始まったばかりですからねぇ!」

 

 俺は月島さんをフォローする。

 が、彼女の言葉を聞く前に――奴らが地面から飛び出してきた。

 

 無数の敵。

 天高く伸びるワームの群れだ。

 目算だけでも軽く三十は超えていた。

 それらが電気を迸らせて――俺は連続ブーストする。

 

 奴らが帯電させた電気が雨を伝って此方に向かってきた。

 一瞬の攻撃の動作を見抜き、そのまま地面を滑るように回避。

 連続して電流による攻撃を繰り返し、俺は溜まらずゴミ山へと弾丸を連射し残骸を散らばらせた。

 俺へと迫ってきていた電流が別の金属へと吸い寄せられて行った。

 俺はそのまま遮蔽物を盾に移動する……厄介だな。

 

「雨のせいで電気の流れが読みにくいな。一発喰らっても問題ないけど……スタン状態になるよなぁ」

《先生? 各個撃破に切り替えますか? アンテナがある個体と無い個体が私には見えましたが》

「え? そうなの? うーん……よし、それじゃなるべく俺が敵の目を引き付けるから! 皆は攻撃に集中してくれ! 出来たら、アンテナがある個体にはマーキングを!」

《了解しました……月島、やれるな?》

《……! ばっちこいですよォ!! 見ていてください先生!》

「はは、期待してるよ!」

 

 俺はそんな事を言いながら、上へとジャンプし。

 ゴミ山を吹き飛ばして現れたワームの攻撃を回避。

 見ればアンテナは無さそうであり、俺はそのまま敵の群れへと突っ込んでいく。

 奴らは再び体内で貯めた電気を――放ってきた。

 

 俺はそれを確認し、奴らの攻撃に合わせて弾丸を放つ。

 瞬間、弾丸に電流が命中し。

 攻撃が僅かに弱まった事で、俺はギリギリで回避できた……よし。

 

 弾丸を当てれば多少は攻撃の速度が弱まる。

 だったら、それを繰り返しながら奴らのヘイトを集めていこう。

 恐らく、何度もしていれば奴らも学習して攻撃パターンを変えて来るだろうが。

 その間に、四人がアンテナを半分以上削ってくれれば――下から別の敵が突き出してきた。

 

「おっと!!」

 

 俺はその場からブーストで飛ぶ。

 敵は電気を迸らせて――周囲に放った。

 

 無差別の攻撃だ。

 咄嗟に、弾丸を乱射する。

 瞬間、弾丸が敵の攻撃を受けてくれた。

 僅かに電流が機体の足に触れて、システムが軽微な損傷を伝えて来る……あぶねぇ。

 

 掠めただけでもシステムに異常をきたす恐れがある。

 俺は集中しながら、地中へと潜り込み。

 俺の様子を伺っている奴らを警戒した。

 俺は敢えて地面に着地し、その場にとどまって奴らへと攻撃を誘発させようとする。

 

「さぁ来いよ。どんどん来い。俺が相手してやるよ、化け物ども」

 

 ハンドガンを左右に構える。

 薄い笑みを浮かべながら、俺は雨音と僅かな振動を聞きながら。

 たらりと汗が頬を伝っていくのを感じた。

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