底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
灼熱の太陽の下、無限に思えるほどに広がる砂漠地帯。
かさかさと動き回る巨大な鋼のサソリ。
何十体も存在する分身の隙間を縫うように飛行し――対艦ライフルの弾丸を放つ。
轟音と共に放たれた一発の弾丸。
それが不可視のヴェールを貫き、隠されていた存在へと命中。
ノイズが走り、姿を現したのは他のサソリと同じ存在で。
違いがあるのであれば、それこそが奴らの本体であり。
奴らのオリジナルとでもいうべき、真なる王だ。
化け物は真っ赤なセンサーをパチパチと光らせる。
が、精確にコアを撃ち抜いた。
その結果、砂漠に存在していた奴の影たちは霞のように消えて行く。
仲間たちは僅かに呼吸を乱し、機体も傷だらけであったが。
全員が無事であり、ゆっくりと傍に降下して来た。
俺たちは真っすぐに天を仰ぎ見て、最期の力を方向を上げる化け物を見つめた。
《――――…………》
「……ふぅ、あちぃ」
鳴き声を上げながら、砂地に倒れる巨大なエネミー。
まるで、サソリのようなそれは日中にしか現れない特殊なエネミーで。
強力な酸による攻撃の他に加えて、実像分身による連携攻撃も仕掛けて来る厄介な存在だった。
本体をさくっと倒さなければ、無限に分身が増えて行くといういかれ具合で。
今の今まで、熱源センサーを使っても探せなかったが。
リリアンさんの機転によって、敵の分身がある場所を中心に円を描くように展開されているのを発見。
そこから彼女たちが敵を引き付けてくれている隙に一気に接近し仕留めた。
中々に厄介な相手ではあったが。
カラクリさえ分かればどうという事はない。
……そもそも、“美女”がパーティ内にいなければ出ないというへんてこな条件は何なんだよ?
情報屋から聞いた時はまさかと思ったが。
実際にリリアンさんたちのようなリアルで美女な人たちがいるからこそ。
敵は興奮状態で地中から出てきて、そのままヘイトは彼女たちに向かってくれた。
情報屋からのお墨付きもあったし、まぁ心配はしていなかったが……クレーム案件じゃねぇか?
情報屋の話によれば、自称美女では姿を見せなかったとか。
男だけであったり、そもそも自信が無い傭兵は戦いを挑まないらしい。
だからこそ、このエリアは比較的、他のプレイヤーがいなくて安心できた。
まぁ特殊な条件であったが、俺としては戦いやすかったと思う。
月島さんはかなり疲れている様子だったが……まぁ何とかなったな!
ぴろんと音が鳴り、ゲーム内の実績が解除されたと通知が入る。
こんな実績は見た事が無かったが。
恐らくは、予選に参加する為の条件クリアのものだろう。
実績の有無で判断すれば、確かにやりやすいな。
俺はコックピッド内で手を叩く。
そうして、配信を見ている人たちに対して締めの挨拶を……笑みが引きつる。
「は、はぁい! という事でぇ……ぶ、無事に五体の大型エネミーの討伐が完了しましたぁ!」
「「「……」」」
【根黒君……何か隠してない?】
【根黒氏……狙われてますなぁ】
リスナーさんの内の何名かは気づいていた。
が、俺は敢えて気づかないふりをする。
そうして、そのまま配信を終える……はぁ。
俺はため息を零す。
そうして、これでノルマは達成したからと。
データキーの捜索は明日からにしようと伝えた。
俺はさっさと帰って、気晴らしでもしようと……ん?
メッセージが入っていた。
三件であり、見れば……。
《先生、明日会って話がしたいです♡》
《先生、話がしてぇんだが……明日、時間あるか?》
《根黒様、お話があるのですが、明日リアルで会っていただけませんか?》
「……ふへ」
俺は戸惑う。
もしかしたら、何か気づいているのか。
俺は少しだけ考えて……彼女たちに返事を送った。
#
「「「……」」」
「そ、そのぉ……そ、粗茶です」
一夜が明けて、早朝の時間。
インターホンが鳴って、彼女たちをマンションの中に入れて。
扉を開けて彼女たちを自宅に招きいれた。
みっちゃんは青を基調として大人っぽい装いで。
コウちゃんは黒と白のツートンでラフな感じであるが、ばっちりと決めている気がした。
オリアナさんは黒いパンツに緑のおしゃれなものを着ていた。
全員、俺と会うだけなのに凄くおしゃれにしてくれていた……対して俺はぁ。
上下共に青いジャージだ……中学生?
俺は黙って座っている三人の前にお茶を置く。
俺も断りを入れてから座り、全員で小さなテーブルを囲む。
「「「……」」」
「へ、へへ……あ、ゲームでもする? 皆で出来るものも一応ありますけど……し、しないですよねぇ。は、はは」
俺が適当に転がっていたソフトを掲げれば。
三人は視線だけを向けてきて無言だった。
何故か、途轍もない圧を感じるが……は、吐きそうだ!
必死に竜一に助けを求めるが。
俺の心の中の竜一は邪悪な笑みを浮かべてカメラを回している。
俺はどうしたものかと考えて――
「最近――厄介なストーカーに追われているようですね。加賀様」
「え!? な、何でそれを……ぁ」
「……やっぱりか。だろうとは思ったけどよ……で、誰なんだよ?」
「先生、正直に言って下さいね。大丈夫です。私たちがちゃぁんと――排除、しますから♡」
三人はどうやら、俺のここ最近の問題を知っていたようだ。
だからこそ、態々、自分たちの時間を削ってまで聞きにきてくれた。
こんな俺なんかの為に……い、良い友人をもったなぁ。
俺は嬉しくて涙が出そうになる。
すると、オリアナさんはそんな俺の様子を見て。
思い詰めていると勘違いしたのか、湯飲みを持っていた俺の手を掴む。
「安心してください。我々は加賀様の味方です。えぇ、例え相手がどんな悪魔であろうとも――貴方をお守りします」
「ふふ、オリーちゃん。良い事を言っていますがぁ……抜け駆け、ダメですよぉ♡」
「……えぇ分かっています。平等に、ですよね。そちらの方も、ね?」
「……チッ」
「……? えっと……ま、まぁその……確かに、最近はストーカー被害っていうのかな? あってるとは思うよ」
「具体的には?」
オリアナさんに聞かれて俺はゆっくりと今までの事を伝える。
ストーカー被害を受け始めたのは、実は俺がまだバスり始めた頃で。
その頃は何となく熱心なファンの方がいるものだとしか思っていなかった。
欲しいものリスト。
他のVの人が面白半分でやっているのを見て。
俺もVとして活動を始めた頃に適当に設定していたが。
何故か、設定したものが届くようになった。
俺自身も“ほしいも”を設定していたなんて忘れていたが。
米やら調味料やらが定期的に届き始めて。
楽と言えば楽であり、それとなしに配信でもお礼を伝えていた。
が、その時は名乗り出る人はいなかった。
そこから、ちょくちょくおかしい事が起こり始めていた。
街を歩いている時に視線を感じたり。
カフェとかで食事をして会計をしようとすれば、既にお会計が済んでいたり。
後は、欲しかったけど何処にいっても売っていなかったソフトが匿名で家に届いたり……。
「……どう、かな? やっぱり」
「――ストーカーですね。間違いないです」
「そ、そっかぁ。ま、まぁ、勝手にお会計される事はよくあったけど。やっぱり」
「……あぁ? よく、あったって?」
「え? あ、うん。外でお茶を飲んで帰ろうとしたら、レジでお会計は済んでいますって言われてね。外に出たらスカウトマンとか年上のお姉さんがいたり」
「――ストーカーですね。間違いないです」
「えぇ!? そ、それも!? 嘘でしょ!?」
「――ストーカーです。埋めましょう」
「いや!? ダメだよ!?」
オリアナさんが真顔で恐ろしい事を言い始める。
が、みっちゃんは冷静に何かを考えていた。
「……心当たりは、あるんですよね?」
「……うん、実はそれらを含めてストーカーかなって思い始めたのが最近なんだけど。ちょっと過激なファンがいてね……えっと、この人何だけど」
「……これは、ニューチューブのアカウント……! この国章は!」
みっちゃんが驚いて目を丸くする。
やっぱり本物だったのかと思って聞けば、彼女はそうだと即答した。
「……この国章は南の島国である“エルレック王国”のものです。私が知る限り、国章を一般人が使う事は重罪に当たります。もしも、私が使っても国際問題になるでしょうね……登録者数からしても、まず間違いなく本物だと思います」
「……えっとね。本人が言ってたんだけど、そのエルレック王国の王女様が……俺の、ファンらしくてさ。た、多分、今までの事も、その王女様の関係者かなぁって、へ、へへ」
「……根拠はあるのか?」
「う、うん。一応、会計の時と、プレゼントの発送元のが書いてある伝票も残ってて……あ、これだ!」
俺は伝票を見せる。
すると、そこには海外からの発送である事の証明が成されていた。
みっちゃんとオリアナさんはムッとした顔をしながら何かを考えている。
「………なるほど、敵はかなりの大物ですか……相手にとって不足はありませんね」
「え?」
「えぇ、一国の御姫様なんて――潰し甲斐がありますね♡」
「へ?」
「……はぁぁぁ、簡単に言いやがって……まぁバレなきゃいいか」
「ふぇ?」
三人が邪悪な笑みを浮かべている……あ、ダメだ。
完全にヤル気に満ちた顔をしていらっしゃる。
王族とか関係なしに、目的の為に手段を択ばない人たちだ。
凄味というのか、俺は彼女たちの顔を見て小便を漏らしそうになっていた……こ、怖い。
裏家業の人間だったのかと錯覚し――チャイムが鳴る。
「ん? 誰だろ……はぁい」
《あ、Hamazonです! 加賀さんにお届け物です!》
「あ、ご苦労様です! どうぞ!」
《どうもぉ!》
「……もしかして、例の?」
「た、多分……何故か、毎回、無くなるタイミングで届くので」
「……カメラ仕掛けてんのか?」
コウちゃんが周りを見る。
そうであれば恐怖だが。
俺はそれは無いだろうと言いながら、宅配が来るのを待ち……え、もう?
インターホンが鳴る。
俺は急いで扉の方に駆け寄る。
覗き穴から外を見れば、宅配のお兄さんだった。
俺はすぐにロックを外し、扉を開けて外に出る。
お兄さんからニコニコと笑っていて、彼から荷物を受け取ろうと――何かが横から向かってきた。
「へ?」
驚きながらも、咄嗟に体に当たったものを抱きしめる。
やわらかくてふわふわで、良い匂いがした。
さらさらの桃色の頭髪に、俗にいう縦ロールで。
身長は175ほどあるのか背が高い。
俺の胸板にはむにゅりと弾力のあるものが押し付けられて。
視線を落とせば、純白のドレスを着て頭に銀のティアラを着けた――深海の如き目をした少女と目が合う。
「あぁやっとお会い出来ましたぁ。加賀芳次様。いえ――ホワイトレコード様」
「へ?」
俺は目を点にする。
少女は頬を赤らめて、弧を描くように笑みを浮かべる。
彼女の腕の力が強くなり、更に強く抱きしめられて――殺気を感じた。
「あ!」
「――」
視線を横に向ければ、眼をかっぴらき。
明らかに改造してそうなごついスタンガンを掲げるオリアナさんがいた。
殺気に溢れて一部の迷いもない。
彼女はスタンガンを謎の少女へと振り下ろし――彼女の体が吹き飛ぶ。
「え!?」
「失礼。お嬢さん」
「かはぁ!?」
見れば、宅配のお兄さんが掌を突き出していた。
オリアナさんの体は吹き飛び、そのまま机を破壊して転がる。
見れば、みっちゃんは包丁を握っていて。
コウちゃんはポケットに手を入れた状態で立っていた。
一触即発の状態で――場違いに明るい声が響く。
「ホワイトレコード様! 私と一緒に――ゲームをしましょう!」
「……え? あ、いや……え?」
「ね! ね! お願いします! 何でも致します! 結婚も致しますから! ね!」
「「「……ッ!」」」
彼女は深海のような目で俺を見上げる。
彼女の発言で、明らかに友人たちの空気がぴりつく。
みっちゃんに至っては、包丁の柄がバキバキだ……はは、やべ!
俺は激しく戸惑いながらも、理性でもって彼女を離す。
そうして、咳払いをしてから先ずは二人が何者かと問いかける。
すると、宅配のお兄さんは彼女の後ろに立ち、ドレスの御姫様のような少女は優雅に礼をし――
「申し遅れました。私、エルレック王国第一王女――カトリーヌ・エルレックと申します」
「…………ぇ」
俺は再び目を点にする。
そうして、そういえば外が騒がしいと思って下を見て……う、嘘だろ?
無数のパトカー。
マンションの一帯に警戒線を張っている。
何故か、完全防備の兵士まで徘徊していた。
何が起きているのかと俺は戸惑い――王女様が俺の手を握る。
「積る話もありますが、先ずは中へ! 一緒にゲームをし、友好を育み。それから……未来のお話を致しましょう♡」
「あ、ぁあ、ぅ、ぁ……ふぁい」
「……」
綺麗な笑みを浮かべる王女様。
その背後で笑っているが明らかに殺気を放つお兄さん。
断れば物理的にも社会的にも死ぬ。
そう理解したからこそ、俺は目に涙を浮かべながらも承諾する。
彼女は俺の手を引き、何故か、隣の部屋の扉を開けて中に入る。
そこには確か入居者がいた筈だが……き、聞かない方がいいか!?
部屋の中にはVRマシーンは勿論。
レトロゲームも多く置いてあった。
彼女はドレスをあげながら、中にあるゲームソフトを一つずつ見て行く。
「んー? どれにしましょうか。ホワイトレコード様との記念すべきプレイ……おすすめはありますか?」
「ふぇ? え、えっと……こ、これとか?」
「まぁ! “バーバリアン・ハザード”ですか!? 最初から激しいプレイをご所望なんて……ホワイトレコード様は中々に大胆ですね♡」
「え!? い、いや!? ゲーム!! ゲームだからね!? ふぇ!?」
「うふふ、顔を真っ赤にされて……可愛い♡」
「……!?」
俺は激しく戸惑う。
彼女は終始俺を圧倒しながら。
ソフトをVR装置にいれて、ヘッドギア型のそれを俺に渡して来る。
見れば、お兄さんが既にベッドの準備を整えていた……え、一つ?
「さ、此方へ♡」
「あ、あぁ、ぅ、ぅぁ……ふぁい」
「……ふっ」
俺は涙と鼻水を垂らしながら。
両手を広げてベッドに横たわる彼女に近づき――床で寝る。
「……むぅ」
「ゆ、許してぇ」
俺は彼女に背を向けながら泣く。
すると、お兄さんがそっと俺の頭に枕を置いてくれた。
「……少々強引ですが……お相手、頼みます」
「ふ、ふぁい」
俺はヘッドギアをオンにする。
そうして、突如始まった王女様とのプレイに集中しようと――出来るわけねぇぇだろうがぁぁぁ!!?