底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
敵の進行を食い止める事数十分――敵の進行の勢いが弱まった。
それを確認し、敵残存部隊を一気に殲滅。
ものの数分足らずで全てを掃討し。
私たちは速やかにバリケードを離れて、先生の元へと向かった。
私を含めて皆さんは先生ならば無事にボスを倒すと信じていた。
当然の結果であり、後はデータキーを回収すれば完了――そう思っていた。
障害物を避けながら、先生の元へと急行する。
が、全員が苛立っていて、先ほどの出来事を思い出し月島さんが叫ぶ。
《クソッ! あの女! やっぱり裏切ってやがった! あぁクソクソ!! 追い掛けましょうよ! とっ捕まえてボコのボコに!》
《月島! 奴を追い掛けても無駄だ! 報いは必ず受けさせる。が、今は根黒様の救援が先だ!》
全員が……いや、特に月島さんが苛立っている。
それは当然であり、あの女、毒蛇のランが――裏切った。
先生の元へと向かう道中。
レーダーの反応から高速で接近するメックを確認。
すぐに毒蛇のランであると認識し、武器を構えた。
『よぉっす! お疲れー! 私だよー!』
あの女は明るい声で話しかけてきた。
まるで、仕事が終わって皆で仲良く帰ろうと言わんばかりに。
奴の機体が視界に入った瞬間、私とコウとリリーは間髪入れずに攻撃しようとした。
が、奴は最初から攻撃が来ると予想し。
グレネードから閃光弾を放ってきた。
一瞬で視界が潰されて、奴はその隙に私たちの包囲網を突破。
月島さんがすぐに追いかけようとしたが私たちは止めた。
今も彼女は報復する事を考えているが。
そんな事よりも、先生の元へ急ぐ事が重要だ。
恐らく、ボスを倒して目的のものを見つけた後に何かしらの罠に嵌められた筈。
……考えられるとすれば、データキーの偽物による出現するNPCもとい戦闘用エネミーとの交戦……でも、アレは完全に運の筈。
私にも明かされていない条件があるのか。
分からない。が、分からないもであればそれを考察するのは後回しだ。
「……リリーの言う通りです。恐らく、毒蛇はこの作戦の前から逃げる算段を整えていた筈です。追ったとしても振り切られるでしょう……コウ、例の件は?」
《あぁ? やったよ。帰りの輸送艇ならもう待機してるぜ》
《え!? もしかして、裏切るって知ってたんすか!?》
月島さんは驚いていた。
が、それは違うと否定する。
裏切る可能性を考慮し、事前に保険をかけておいただけだと。
「……まぁ毒蛇を仕留める事が出来ればベストでしたが、此方の動きに気づかれれば保険が潰されていたでしょうからね……報いは受けさせる。えぇ当然です。何せ、あの方を――裏切ったんですからね♡」
《必ず殺す。四肢を千切り、腹を捌いて臓物事、豚の餌にしてやる》
《……せ、先輩? じょ、冗談ですよね? こ、このゲームでも、そ、そんなスプラッタな事は、ね、ねぇ?》
《……ゲーム?》
《すみませんでしたぁぁ!! もう何も聞きません!!》
月島さんが怯えていた。
私はリリーにガチな犯罪行為はダメだと注意する。
やるならルール内での処刑であり、コウにはそれとなく意思を示す。
彼女は鼻を鳴らすだけだったが、意図を理解してくれたようだった。
……勿論、リアルには干渉しない。ゲームの事はゲームで解決するのがマナーですからね♡
私はくすりと笑う。
そうして、今も一人で何者かと戦わされている先生を思った。
「……っ! 止まってください!」
レーダーが何かを検知。
叫んで全員をその場で停止させた。
私はサーチを開始し……やってくれましたね。
サーチを行えば、見えていなかったものが出現する。
それらは空中にて浮かんでいる――機雷だ。
《何だよこれ!? この道はあの女も!》
「……敵と味方の区別が出来るもののようですね。そして、私たちは完全に敵の扱いです」
《……吹き飛ばすか?》
「いえ、それはやめた方がいいでしょう。情報はありませんが……崩落する可能性があります」
機雷を分析しながら、コウの荒っぽい手段を却下する。
全員がその場で滞空しながら、憎々し気に機雷を見つめる。
私はたらりと汗を流しながらも、ハッキングによって機雷の機能の停止を図る。
少し時間は掛るが、先生が無事であることを考えるのならば……ふふ。
私は笑う。
そうして、何処までも人をおちょくる蛇のにやけ面を想像し――
「この代償は……高くつきますよ」
《……ひぃ》
私は静かな怒りの炎を滾らせながら、機雷の解除を進めた。
○
迫りくる脅威。
黒い影が揺らめき、不可視の攻撃を放って来る。
右から左から。
上から下から。
視線を動かしながら、滝のように汗を掻き。
心臓がストレスで早鐘を打ちながら、フルコン状態で敵の攻撃を避ける。
避けて、避けて、避けて避けて避けて――避け続ける。
常にブーストを行い、常にトップスピードで。
一瞬でも速度を緩めれば即死級の攻撃で――死ぬ。
理解している。
理解したからこそ、一瞬も気を抜けない。
常に敵の影を警戒しながら、恐怖で震える体を無理矢理に動かす。
怖い、寒い、冷たい、苦しい――あぁ、何て素敵なんだ。
恐怖だ。
純粋な死への恐怖。
負ければ死に、データキーも失われる。
一度の失敗で全てが水の泡になる。
努力が全て無駄になり、友人たちからも失望される。
相棒や今は無き友との約束も果たせない。
10本の内、3本が偽物で。
負ければデータキーが奪われる。
3本分か、それとも全部か。
何方にせよ、数は足りない。
運が良くても……1人分はまた集めなければならない。
「は、は、はは、は」
笑えて来る。笑えて来るほどに――プレッシャーだ。
俺には分かる。
この機会を失えば、自力でデータキーを獲得する事は不可能だろうと。
どれだけ探しても、データキーを見つける事は出来ない。
次のチャンスは訪れない。そうなれば、転売ヤーから買う手段しかない。
が、それすらも確実性があるとは到底思えない。
負けたら終わり、負けたら何も出来ない。
どん底で、クズで、ゴミだ。
そう感じるからこそ、死への恐怖が俺の心臓を締め付けて――得体の知れない熱を感じ始める。
《――》
「……ッ!」
敵のセンサーが光る。
瞬間、俺は大きく機体を後退させた。
が、黒い靄が噴き出して空間全体に広がっていく。
視界が全て黒に染まり、レーダーが全方位に敵がいると知らせて来る。
ジャミング、誤作動、レーダーが使えない。
うるさいほどになる警報を聞きながら、俺は勘のみで機体を操作し――悪寒が走る。
「ぅが!?」
瞬間、不可視の攻撃が――片腕を抉り取っていった。
システムが警告を発する。
損傷が大きく、オートバランサーが自動で修正を施した。
見えない。何も分からなかった。
が、致命傷は避けられた。
パイルバンカー事吹き飛び残骸が宙を舞った。
その直後に別の攻撃を察知し、一気に横へとブーストし――強い衝撃を感じた。
「く、うぅ!!」
機体が大きく後ろへ吹き飛ぶ。
システムの警告音を聞き、カメラで確認すれば――残りの腕が切断されていた。
何だ、何なんだ。
一体何処から、何がこれを。
激しく困惑しながらも、両腕を失った事を認識する。
その瞬間に黒い靄は晴れていき、化け物たちはカタカタと動きながら俺を包囲する。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
呼吸が乱れた。
両腕の切断面からオイルが漏れてバチバチとスパークしている。
スラスターの性能には影響はない。
が、攻撃手段が肩部のミニガンとランチャーのみになった。
俺は両腕を失った状態で敵たちを見つめる。
残り時間は……まだ、3分もある。
たった2分で、両腕を失った。
そう、たったの2分でだ。
笑える状況であり、不甲斐ない結果で――だから何だ?
俺はまだ生きている。
俺はまだ戦える。
たかが両腕を失っただけだ。
俺の闘志はまだ――死んじゃいねぇ!
「は、はは、ははは――ハハハハッ!!!」
《――》
俺は笑った。
大きく笑って――かちりと己の中で何かが噛みあう。
その瞬間に、視界に映る全ての情報が鮮明に見え始めた。
まるで、今まで見ていたものがテレビの映像だったかのようで。
あの時の感覚だ。いや、何度もこの感覚を体験した。
俺は不思議な感覚を味わいながら――機体を僅かに横にズラす。
瞬間、何かが機体のスレスレを通過。
壁に大きなクレーターを作っていた。
俺はそれを見ながら――機体を操作する。
床を滑りながら、不可視の攻撃を予測。
まるで、踊るように機体を操り。
全ての攻撃をギリギリで避けて行く。
見えていない、何も分からない。
が、こいつは分かっている。
全ての攻撃がどこから来るか。
どれほどの大きさで、どう動けばいいか。
意志疎通何て出来ない。
喋る事なんてないからな。
それでも、コントローラーを通して――意思が伝わる。
「イデアール――お前、やっぱ最高だよ」
俺は目を細めて笑う。
まだまだ発展途上。
フライハイトと比べてしまえば、性能差は歴然だ。
弱い機体だと“彼女”は言って俺は否定できなかった。
が、今までの戦闘の経験が積み重ねた記憶が――こいつを成長させた。
一緒だ。
俺が成長するように、こいつも成長している。
負けられない、負けたくない。
そうだ。俺は、俺たちは――
「こんな奴らに――負けてられねぇよなァ!!」
俺は歯をむき出しにして笑う。
イデアールの瞳が強く発光する。
互いに意識が混ざり合った気がした。
イデアールと俺は――戦場を舞う。
一瞬にして迫りくる攻撃。
衝撃波のようなそれを回避。
そのまま宙を舞い死角から迫った敵のクローをブーストで回避。
敵が黒い靄を全身から放ち、再び周りが見えなくなった。
亡者の声のようなものが響く。
精神に不調を来すが如き不協和音。
心が乱れて恐怖が増大し、迷いを生みそうになる音だ。
俺は暗闇の中で――目を閉じる。
どうせ見えないんだ。
瞑った方が集中できる。
神経を耳と手に集中。
瞬間、暗闇の中で微かな――金属音を聞いた。
フルコンの接続によって鋭敏になった感覚で、機体に僅かな粉のようなものが触れたのを感じた。
ほんの小さな感触。暴風の中で舞う一粒の砂ほどだ。
俺はその微かな音と感触を頼りに――機体を動かす。
後方からの衝撃波、それを右へのブーストで回避。
真下からのクロー、左へとブーストして回避。
正面から特大の衝撃波、後方に下がりながら降下。
目を瞑った状態で、鋭敏のなった感度で全てを察知。
音と僅かな感触の情報で、俺は機体を動かしていく。
一瞬だ。瞬きほども無い合間に連続して攻撃が飛ぶ。
掠めれば機体は大破。
機動力が落ちれば避けることさえ出来なくなる。
そんな状況下で、俺は瞼を閉じ――イデアールに全てを預ける。
分かる、分かるぞ。
全ての攻撃が音で感覚で分かる。
そして、心無き敵の殺意が感じられる。
俺は自由に機体を動かす。
俺の心が俺の手を通してイデアールに伝わり。
俺の意思を受け取ってイデアールが、俺の心を動きに昇華させる。
黒い殺意の暴風の中で。
俺は宙を舞う木の葉のように機体を舞わせた。
敵の理不尽な攻撃が俺の機体に触れる直前に、イデアールは軽やかに躱していく。
満身創痍、両腕を失った状況で――輝いていた。
見えていない、俺にはイデアールの全てが見えていない。
が、こいつと心を通わせて共に戦う今ならば心が分かる。
コアという心臓が強く鼓動し、激しい熱が俺の体を熱くさせる。
暗闇の中で、イデアールという機体が一等星のように輝いている。
見える、見えているぜ。
今のお前はどんな機体よりも、フライハイトよりも――綺麗だぜ!
凄い、凄いなぁ!
俺の相棒は、どんな機体よりも――
「――自由だァ!!」
俺は目を見開く。
瞬間、暗闇は晴れて――全方位から敵の攻撃を察知。
俺はそれを感じながら、僅かな攻撃の隙間を察知し――飛び込む。
肩の装甲が取れた。
肩部の武装も剥がれて、バラバラと残骸が舞う。
装甲に亀裂が走り、システムが警告を発する。
これ以上は危険、これ以上は戦えない。
が、生きている。生きていて――まだ、俺たちは舞える。
「ハハハハッ!!!」
俺は笑った。
そうして、敵の攻撃速度が高まり。
一撃必殺の攻撃が四方八方から飛んできた。
俺は目を輝かせながら、それら全ての攻撃を――紙一重で回避する。
屈み、ズレて、滑り。
飛び、ブーストし、降下し。
フェイントをし、揺さぶり、逆に迫って。
荒れ狂う暴風。
耳元で聞こえる命を刈り取る風の音。
装甲に傷がつき、システムが警告を発し。
刻一刻と限界が迫っていくのを感じながらも――俺たちは舞う。
あらゆる策を、あらゆる行動を。
俺の理想と俺の夢と、限界を超えた俺の全てを。
俺の考えうるものを実行に移し――ゲームを楽しむ。
思った通り、想像していた通りだ。
イメージが現実となり、俺が願いが形になる。
こういう時は何度もあった。
現実の俺と仮想世界の俺が完全に混ざり合い。
不可能な動きも、実現不可能な策も――形に出来る。
敵たちは咆哮を上げる。
空間を激しく震わす怒りの咆哮だ。
そうして、尻尾を回せばそれがビットのように浮遊する。
銃口が俺へと向けられて――レーザーが飛ぶ。
俺は機体を動かし、それらをその場で避けた。
焦りはない、恐怖は無い。
今はただ、この戦いを――全力で楽しもう。
楽しい――楽しいよ!
何時だってそうだ。
理不尽な戦いの中、ギリギリの戦いで負けそうな状況。
絶望に染まりそうになり、全てが嫌になりそうになる中で。
自分自身が思い描く理想に至れた時。
人は、ゲーマーは――
目まぐるしく変わる光景。
レーザーが飛び、衝撃波が飛び。
クローによる斬撃に、視界を奪って不可視の攻撃が迫る。
避ける、俺はただ避け続ける。
戦っている。が、やっている事は逃げているだけだ。
が、それでいい。
今は逃げる事こそが戦いとなる。
逃げて、逃げて逃げて逃げて――俺は勝利を手にする。
「ハハハハハッ!!! さいっこぅぅぅに――気持ちいい!」
《――!》
新たな楽しみを見つけた。
死の恐怖を乗り越えて、裏切りの果てに見つけた――新たなゲームだ。
呼吸を忘れてしまいそうになるほどの激しい攻撃。
四方八方から迫りくる一撃必殺の攻撃の数々。
エネルギーの残量なんて見ていない。
この時、この瞬間を全力で楽しむ為だけに――俺は舞狂う。
床を蹴りブーストし。
壁の表面を走行し、エネルギーを噴射して敵の攻撃をかく乱。
死角から迫る敵の攻撃を機体をのけ反らせて回避。
鉄球の残骸を足で弾き飛ばして、ビットの攻撃をずらし。
無茶苦茶な動きで敵の攻撃を躱し続けた。
踊りだ。
これはもはや戦闘を超えて――踊っている。
「ハハハハハ!!!」
負けたら終わりなのに、失敗したら失望されるのに。
今までの努力が掛った大事な局面なのに――楽しくて仕方がない!
ストレスを感じて息が詰まりそうだったのに。
今は体が軽くて勝手に笑いが出て来た。
楽しくて嬉しくて、ハイになっていて狂っていて……あぁもう!
最高だ、最高だよ!!
裏切られたって言うのに、怒りも何もかも消えて――ただただ楽しい!
俺は敵と戦いながら感謝する。
俺に恐怖を感じさせてくれた敵たちに。
そして、俺を裏切り“素敵な逆境”へと追い込んでくれた――毒蛇のランに。