底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
タイタングリード内にある街の大通り。
ヨーロッパ風の石畳の街であり、多くの傭兵やメカニックが集まる場所。
私はそんな大通りを歩きながら、目当ての人物を探す。
「根黒っちぃ、根黒っちぃ……何処かなぁ?」
バニラシェイクを飲みながら、金のなる木……いや、愛しい童貞君を探す。
なっちんからの情報で、彼がこの辺りを散策していると聞いた。
何時もと少し調子が違うようでやけに興奮していたが。
きっとアイツも根黒万太郎という謎めいた男について知りたいんだろう。
もしも、フレンドになる事が出来れば。
暫くの間は彼の好感度を上げる事に専念しよう。
そこから少しずつ情報を引き出し、それを外部の人間に高額で売りつける。
趣味、趣向、年齢から好きな食べ物まで。
ありとあらゆる情報が金になる。
それだけの大物であり、逆に今まで彼へと接触する人間があまりいなかったのか不思議なくらいだ。
「……ふふ、まぁそのお陰で独占も夢じゃないけどぉ……お! いたぁ!」
私は彼らしき人物を見つけた。
背中しか見えなかったが、背格好や動き。
服装に至るまで完全に彼であり、私は笑みを深めて追いかける。
すると、彼は人込みを掻き分けて、そのまま路地裏の方に入っていった。
「んー? 何であっちに……気づかれたか?」
いや、流石にそんな筈はない。
この人の多さに距離だ。あり得ないだろう。
もしかすれば、誰かと会うのか、それとも怪しい取引か。
私は金の匂いを感じて更に口角を上げる。
最初からラッキーなイベントに出くわすなんてなんて運が良いのか。
私は気づかれないようにフードを被り、そのまま小走りで彼が入っていった路地裏へと向かう。
「……いたいた……さぁて、何かなぁ?」
壁に隠れて様子を伺えば、彼はそのまま右の方に進む。
私はあからさまに挙動不審だった彼に舌なめずりをする。
益々、怪しい取引の可能性が高い。
もしそうであれば、幾らでこの情報は売れるのか。
私は頭の中でそろばんを弾きながら。
彼を追いかけて右の方へと曲がり――――…………
…………――――頭が、揺れる。
「ぇ、ぁ……ぇ?」
何が、起きたのか……。
いや、そもそも、私は、何、を……?
激しく混乱していた。
頭がぼぉっとしている。
が、徐々に頭の中のもやが晴れて行く。
思考が定まっていった。
確か、彼を追いかけて進んでいった時に。
背後から何者かによってスタガンで気絶されたんだ。
若干、首の当たりが痛いのはそれが原因だろう。
私は汗を流しながらも、ゆっくりと目を開けた。
すると、私の目の前には――笑みを浮かべたドレス姿の女が立っていた。
「……!? なっ!?」
「ふふ、グッドモーニングですね。気分はどうですか?」
縦ロールの女はニコニコと笑う。
美しい顔の女であり、立ち振る舞いから上流階級であるとすぐに分かった。
その傍には、軍服姿の――リリアンが立っていた。
冷ややかな目。
否、汚物を見るような目だ。
何の感情も無い。
手にはナイフを持っていて、今にも私を殺しそうな雰囲気だ。
この女が此処にいるということは、十中八九が……しくったねぇ。
「へ、へへ……気分はどうって? そうだね。悪くない……ただ、ちょっと縄がきついかなぁ? 緩めてくれない?」
「ふふ、申し訳ありませんが、それはまだ出来ません……少しお話しませんか?」
「んー? お話ってさぁ。人を縛った状態でするものなの? お姉さん的にはもっと親しみを――あがぁ!?」
私がへらへら笑いながら話せば。
ドレスの女はカツカツと歩み寄って来て――バカでかい拳銃を私の口に入れて来た。
「お話、しませんか? しないのなら――大きな穴が出来ちゃいますよ?」
「ふ、ふざへ……へ、へへ、やりなよ! どうせ、死んだら解放だしさぁ! さぁ、さぁさぁ!」
私はチャンスだと思った。
一度の死、たった一回の死だ。
それだけでこの危機的状況から解放される。
そうすればまた仕切り直しであり、もうへまをする事はない。
そうだ、こいつらをおちょくってやれば何れ……リリアンがいつの間にか横に立っていた。
奴はナイフをゆっくりと上げて――私の足に突き刺す。
「いぎゃぁぁぁ!!?」
「ふふ、痛いですよねぇ♡」
「はぁはぁはぁはぁはぁ……う、嘘だ。この痛みは! で、出来る、訳……! あ、あの女、か!!」
鋭い痛みだ。
ゲームで感じる事が無い激痛。
これほどまでに痛覚が出るようなパラメータにはしていなかった。
――が、思い出した。
こんな事が出来るのは運営側の人間だけだ。
そして、遂最近、敵に回してしまった運営側の人間がいると。
執行官であり、実行部隊の人間で……アイツが!
激痛、焼けるような痛み。
今まで感じた痛みの比じゃない。
が、ギリギリ気を失わないレベルに調整されていた。
「こ、こんな事して、許されると……リークしてやる! 訴えるぞ! お前ら全員ただじゃ!」
「――どうぞぉ♡」
「へ、ぁ?」
女はゆっくりと何かを差し出す。
それは端末であり、外部との連絡手段だった。
私は目を瞬かせながらそれを見つめる。
すると、女はニコニコと笑いながら説明を始めた。
「貴方の事は調べさせて頂きました。リアルでの名前は
「お、おま、それ、どうやって……お前たち、何者だよ!! そ、そもそも! それが何だってんだ! 私のツレだったら、絶対にこんなおいしいネタを見逃す筈が!」
「だから、どうぞ――お掛けになってくださいよ♡」
奴はニコニコと笑いながら掛けるように言ってきた。
私は舌を鳴らし、どうやって繋げるのかと叫ぶ。
すると、女は音声入力で自動で掛かると言ってきた……罠、か?
悩む。
悩んだが、私は番号を音声で入力する。
絶対にこいつらが知らない相手で、信用の出来る相手だ。
今までのディープなネタを売り込んでやった奴であり。
アイツには私に数え切れないほどの恩がある。
だからこそ、すぐにこの明らかな職権乱用は瞬く間に広がり――繋がった。
《……はい。SSRネットニュース。編集部の大沢です》
「お、大沢!? 私! 明沢だけど! 凄いネタを仕入れたよ! 何とあのセブンストリームの執行官様が善良な一般プレイヤーを拉致して拷問紛いの」
《――どちら様ですか?》
「……は? え、だ、だから! 明沢! 毒蛇のランだよ!! アンタに何度も美味しいネタを提供してやった!」
《すみませんが、誰かと勘違いしているようですねぇ。私は忙しいの失礼しますよぉ》
「あ、ちょ!? ……き、切りやがった……ま、まだ当ては!!」
「どうぞぉ♡」
私は次の記者友に掛ける。
同じ女性ジャーナリストであり、プライベートでも交流のある女だ。
すぐに電話は繋がり、私が名を出せば――奴は秒で切りやがった。
私は焦り戸惑う。
そうして、あらゆる伝手へとかけまくり……全て切られた。
「な、何で……あり得ない……こんな事って……お前!!」
「はい。何でしょうか?」
「一体、何を!! どうやって、こんな!?」
「それは簡単な事です――お金、ですよ♡」
「……っ!?」
奴はハッキリと言った。
リリアンがコネクションを築き、このドレスの女が多額の出資をしたと。
今では日本に存在する全ての記者が自らの支配下で。
明沢蘭子というジャーナリストは――ブラックリストに入っていると。
私は震える。
あり得ない、あり得ないあり得ないあり得ない――これは、夢?
そもそも、此方の情報をどうやって掴んだのか。
ジャーナリストとして情報の大切さは知っている。
だからこそ、敵に知られないような工夫はしてきた。
うちにはなっちんという凄腕の情報屋兼ハッカーがついている。
少なくとも情報が盗まれる前に気づける筈だ。
なっちんから連絡は無かった。
それどころか、何時も通りの……いや、違う!
アイツは何時もよりも興奮していた。
が、あれは興奮じゃない――怯えだ。
「お、お前ら、お前らは……何だ、何なんだよ……私は一体、何に、喧嘩を……っ」
あの時点でなっちんの居場所も特定されていた。
そして、脅されたうえで私をこいつらに売らせた。
全て計画の内であり、どれだけの金を払えば数多いる記者たちに首輪を……女はドレスの裾を掴む。
「いえいえ、私はただの――王女、ですから♡」
「私はただの――配信者だ」
「王女、配信者……ふざ、けるな! 何が、何が!!」
私は震える。
王女なんて嘘だ。
配信者というのは理解できる。
そもそも、リリアンの情報は知っていた。
が、これほどの事を出来るなんて知らなかった。
理解できない。分からない。
こいつらは何だ、こいつらは一体――ドレスの女が手を叩く。
「さて、それではそろそろ……ゲームを致しましょうか!」
「げー、む? 何、言って……ひぎぃ!?」
私が戸惑っていれば、リリアンが私の足からナイフを抜く。
どくどくと血が流れていき痛みが走る。
リリアンはそのまま私の手と足の拘束を解く。
そうして、指を動かしてスプレー型の傷薬を出した。
奴はそれを私の傷口に吹きかけて……傷が綺麗になくなった。
「何を、私に、一体、何をさせようって……っ」
「簡単な事です。これから私たち二人がメックに乗ってお相手をします。貴方はただ5分間、逃げるだけでいいのです。そうすれば貴方は解放されて、貴方がしたい事が出来るのですよ。訴える事も、あの方に近づく事も、お好きな事を、ね? 勿論、ブラックリストも撤回させます。貴方が勝てば全てが元通りになるのですよ!」
「信用しろってか。アンタらみたいな人間の、言う事をさ。ふざけてる?」
「ん? ふざけてはいませんが……そもそも、貴方には選択肢などありませんよ? 受けて明日を生きる希望に懸けるか。断って、我が国の“再調整”を受けて真人間になるか……どうしましょうか?」
「……っ!」
女は笑みを浮かべたまま聞いて来る。
理解した。こいつとは話が出来ないと。
人の面をしていても、話している事は狂気に満ちていた。
再調整とは何だ。そもそも、ゲームでそんな事が許されるのか。
そもそも、運営側の人間たちはこれを知っているのか。
知っていながら放置しているのであれば……本当に、王女とでも言うのかよ?
私は喉を鳴らす。
どうやら、私はとんでもないものに関わってしまったようだ。
根黒万太郎という人間は想像以上に――危険な存在だ。
もう過ちは正せない。
修正不可であり……だったら。
「……やって、やるよ。あぁやるよ! 五分だね!? それと、チートは無しだから! ゲーマーなら分かってんだろうな!?」
「ふふ、勿論です。我が国において神聖な戦いにおいて不正をする事は殺人と同レベルの重罪ですから♡」
「私も正々堂々とお前に挑むと誓おう」
「言質取ったぞ……ふ、ふふ」
簡単だ。
簡単すぎる。
如何にステージが狭かろうとも、たかが二人の相手だ。
今までだって何度もやってきた事だ。
アセンさせ逃げに特化させれば、5分間、生き残ることなんて造作もない。
Sランクに至る傭兵ならば、そんな状況何てどうとでもなる。
奴らは部屋を立てたと言ってきた。
私はそれを承諾し、すぐにアセンについて変更を始めた。
機動力特化であり、牽制用のミニガンとスタン用のランチャー。
後は相手の動きを封じるパルス兵器と全方位展開型のバリア生成装置。
バリアはエネルギーの消費量が大きいが。
5分間という制約であれば十分にもたせられる。
私は勝ちを確信しほくそ笑む。
そうして、すぐに体の転送が始まって――――
――――転送が完了した。
目を開けば、想像していた通りの箱庭のようだ。
碌な障害物も無い。広さはそれなりでも何処までも自由なステージではない。
どこぞのシミュレーションルームのような簡素なステージだ。
私の機体の前には、私の機体よりも明るさのある紫色の機体がいた。
二脚型であり、本体は軽量か中量級の機体で。
拡張兵装を纏っていて、まるでゴリラのような手足となっていた。
近接特化のパワー型か。殴り合いを想定しているのだろうが、その手には乗らない。
あと一機はどこかと探し――上から光が差す。
「な、何……っ! あれ、は!」
天より降りし機体。
祈りを捧げるように合掌し、奴の周りをドローンが飛んでいた。
そのドローンの映像がステージ中に投影されて嫌でもその機体の全貌が見えて来た。
純白の機体であり、丸みを帯びたそれは女性のようなシルエットをしていた。
脚部は太く腰は細い、腕はすらりとし頭部はセンサーが見えないフルフェイスだ。
装甲の接合部の各所には金色の固定具を嵌めていて。
首のあたりから真っすぐに蛇腹になった何かが背骨のように背面を這っていた。
脚部の先はブレードのように鋭利なものになっている。
スラスターらしきものが見えないが、恐らくは機体の内部に推進装置の類が埋め込まれているのか。
が、それよりも特徴的なのは――頭部の上に展開された真っ赤に輝くサークルだ。
「天使の輪ってか……ふざけんじゃねぇよ」
《天使の輪。それは素敵な考えですね♡ 我が名はカトリーヌ・エルレック。我が半身の名は――
《死ぬ気で逃げろ。出なければ――お前は終わりだ》
奴の機体が降り立つ。
そうして、腕を広げれば武装が出現した。
何が出るのかと思えば、巨大なチェーンソーだ。
長く太く、刃が3連になった凶悪な見た目のそれだが。
赤錆び塗れで、今にも朽ち果てそうなおんぼろだ。
デカさと人を不快にさせる音を奏でるだけの骨董品。
派手なだけの機能性の無い欠陥品だ。
警戒すべきは、やはりあの拡張兵装だと認識し――ゴングが鳴り響く。
私はブーストし、一気に奴から距離を取る。
すると、奴はその場で留まっていて――え?
「アイツは――――っ!」
背後から気配を感じた。
瞬間、私は一気に下へとブーストし――何かが機体を掴んできた。
見れば、純白の機体が――私をチェンソーで挟んでいた。
「まず!?」
私はすかさずにバリアを展開。
僅かな隙間が生まれてその隙に逃げようとし――凶悪な叫びが響く。
「……ぇ?」
一瞬の拮抗。
瞬間、砕けるような音が響き――バリアが破壊された。
次の瞬間には、機体をズタズタにする嫌な音が響き。
すぐにコックピッドにも刃が到達し。
私の体はずたずたに引き裂かれて――――…………
…………――――ッ!!
「はぁ!! はぁはぁはぁはぁ……な、何、が!?」
《一回戦は終了です。続いて――第二回戦になります♡》
「は、はぁ!? な、何が!?」
私は戸惑う。
が、奴は私の言葉を無視してゴングを鳴らさせた。
機体は元通りであり、すぐに戦いが始まる。
私は次はあの女を警戒した。
見れば、奴の機体が宙に浮き――姿が消えた。
「……!!」
一瞬の殺気。
それを感じた瞬間に全力で前方へとブーストする。
瞬間、ギリギリのタイミングで奴のチェーンソーの音を聞いた。
《あぁ、惜しい♡》
「はぁはぁはぁはぁ!! 何度も喰らって――うぐぅ!?」
レーダーが警告を発した。
気づくのが僅かに遅れた。
瞬間、横から何かが飛び出し――強い衝撃を感じた。
腕の装甲が木っ端みじんに吹き飛ぶ衝撃。
機体が一気に横へと飛び、迫りくるそれに対してパルス兵器を構える。
奴はそれを真面に受けて機体の速度を遅らせた。
のろまになった敵に対してミニガンを向けて――背後からまた気配がした。
「何で!?」
《あぁん♡》
瞬時に連続ブースト。
奴のチェーンソーの音が響く。
あり得ない、あり得ないほどの超スピードだ。
どうやって移動した。レーダーにも反応は無かった。
ゴーストジャンプのそれを遥かに超えていた。
私は激しく戸惑い――バリアを展開した。
瞬間、前方から凄まじい衝撃を浴びせられた。
それは巨大な腕を振るったあの女の機体で。
バリアがビリビリと振動し、私の機体は後方へと吹き飛ぶ。
が、攻撃は防げた。後はこの調子で数分耐えるだけで――ガガガと音が響く。
「ふ、ぇ?」
《はぁい――捕まえた♡》
見れば、奴のチェーンソーがクロスして――私の機体を挟んでいた。
「やめ――」
私は叫ぼうとした。
が、それよりも早く奴はチェーンソーを起動し、バリア事私の機体を木っ端みじんに――――…………
…………――――意識が、戻る。
「――――」
目を見開き、放心状態で五体満足の敵たちを見つめる。
リリアンは無言で、あのいかれ女は――明るい口調で試合を告げる。
《はい、これで285戦目が終了しました。それでは――286戦目を始めましょうか♡》
「あ、あぁ、あ、あぁ……ふざ、けるなよ、ふざ、ふざ……こんなの、こんなのって! おかしい、おかしいだろぉ!!」
私は叫ぶ。
アレから何度も何度も闘った。
何度も何度も負けて、何度も何度も殺されて。
痛みと苦しみを感じ、吐き気がするほどに死を感じ。
狂ったように奴の声を聞いて――地獄から抜け出せない。
アセンを変えた。
戦術も変えた。
が、まるで歯が立たない。
今までの知識も経験も役に立たない。
たった五分、逃げるだけでいいのに――クリア出来る気がしない。
奴は何度もチャンスをくれる。
何度でも戦ってくれる。
恐らく、1000を超えようともこいつは戦い続けるだろう――狂っている。
バトルジャンキー、戦闘狂い。
どれも違う。こいつは最初から――蹂躙する事だけが楽しいんだ。
私が狂う瞬間を、私がボロボロになっていく姿を。
壊れ果てて、私が叫び続ける姿を――こいつは見たいだけなんだ。
「狂人、お前は、狂ってる……サイコパスの、人間のクズだ!!」
私は奴から逃げながら激しく罵倒する。
せめてもの抵抗。もう私に出来る事はない。
だからこそ、奴の心を揺さぶり隙を作ろうと――
《えぇそうですが――何か?》
「へ、あ?」
奴はハッキリと――肯定した。
《私は狂っています。えぇそうですね。あの日、あのお方のプレイを見てから私は狂いました。だからこそ、私は今の私を――愛しているんです♡》
「あ、あぁ、ぁ、ぁぁ」
《狂うほどの愛に目覚め、相手を狂わすほどの戦いに魅入って。この手で相手をめちゃくちゃにする快感を覚えたら……堪らないでしょう♡》
「ぅ、うぅ!」
私は恐怖する。
こいつは人間じゃない。
こいつと関わってはいけない。
こいつは人の道から外れた――“人外”だ。
私は逃げる。
銃を乱射し、ブーストを使いまくる。
兎に角逃げる、必死で逃げる。
格好悪くてもいい、ただあの化け物たちから距離を――強い衝撃を感じた。
「ぐぇ!?」
頭上からの衝撃だ。
機体は一気に地面に落下し――激突。
パラパラと残骸が舞い。
私は機体を動かしてその場から逃れようとする。
必死に手を動かし、這うように移動して――二体の悪魔が目の前に降り立つ。
「あ、あぁ、ぁ、ぁぁ……助け……国、が……私、を……ぅ、ぁぁ」
私はガチガチと歯を鳴らしながら救いを求める。
こんな事が許されて良い筈がない。
これはゲームであり、これは現実じゃない。
だからこそ、こいつらの悪行が世間に知られれば、すぐにこいつらは――何かが表示された。
【毒蛇のラン……今日がお前の命日だ】
「へ、ぇ?」
【リリーと王女の怒り……素敵だぁ♡】
【通報は……必要ないな】
【今までの報いだ。存分に悔いて――いっちゃいな!】
何だ、これは……これは、配信の……?
私は戸惑う。
すると、リリアンが――絶望を告げた。
《全て、戦いの始まりから映していた。隠す必要なんてない。これは我らの――復讐だからだ》
「ぅ、ぁ、ぁあ、ふざ、ふざ……おい! おい!! こんなの、こんなのって……誰か、誰かぁぁ!!」
《無駄だ。お前には敵はいても――味方はいない》
【因果応報……全てお前の過ちの結果だろう?】
【人を騙して幸せだったんだ……さぁ清算の時だ。毒蛇のラン】
コメント欄の奴らは正気じゃない。
全てが毒されていて、全てが狂気で。
誰も味方はおらず、真面なのは私だけで――嘘だ。
嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘……ウ、ソ?
私はチェーンソーをクロスさせた悪魔を見上げる。
ギャリギャリと音が鳴り響き、火花が激しく散っていた。
命を狩り取る音であり、心をずたずたに引き裂く形で。
奴は私の機体を挟みながら――絶望を告げた。
《えぇ、救いましょう。何故ならば、私こそが――国家、だからです♡》
「――ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
私の中の何かが――“ぶつりと切れた”。
狂ったように叫ぶ。
体からありとあらゆるものが出て行った。
汗と涙と、何から何までが勝手に出て行く。
私は悪魔共の笑い声を聞きながら――――“もう二度と、悪い事はしない”と――――…………