底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:オタリオン

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第73話:Shall we dance?

 風を切り裂き飛翔。

 連続して響く爆発音。

 敵のシルエットが一瞬だけ見えては消える。

 腕を振るい、ペダルを調整しながら敵の攻撃を回避。

 見えていない、感じるままに動かすだけだ。

 

 ヘルメットの下で汗が流れる。

 心臓はドクドクと鼓動し、吐息は熱を持つ。

 笑みを絶やす事無く意識を研ぎ澄ませた。

 加速。そこからのブースト。

 音を置き去りにし景色が一瞬で流れて――衝撃。

 

「――ッ!!」

《……》

 

 互いに展開したブレードを振るった。

 エネルギー同士が激しくぶち当たり閃光が迸る。

 一瞬の拮抗であり、次の瞬間には互いに後ろへ弾かれる。

 互いにショットライフルの銃口を向けて弾丸を発射。

 弾丸同士は寸分の狂いもなくぶつかり合い。

 そのままミニガンの斉射と共に横へとブースト。

 

 流れるように舞い、刺すように攻撃を行う。

 一進一退であり、流れる情景の中で敵の殺気だけを感じる。

 

 機体の進行方向を転換。

 連続してブーストし機体を回転。

 敵の殺気へと向かい、一瞬だけ姿を見せた敵へと迫る。

 互いに敵を睨み、ブレードで斬り付けあう。

 つばぜり合いは一瞬であり、エネルギーの衝突の衝撃で押し返された。

 

 もっと速く、もっと鋭く。

 常に眼球を動かし、相手の殺気を辿る。

 迫り斬り付け弾かれ。

 弾丸をばらまき敵を揺さぶり隙を探り一気に迫り――殺しにかかる。

 

 繰り返し。終わりが見えない。

 何度繰り返そうとも決定打は生まれない。

 互いに殺しきれるだけの隙は――存在しない。

 

 互いに思考は同じ。

 やる事も同じであり、殺し方も全く同じだ。

 だからこそ、互いの攻撃は当たらず。

 互いに同じ時を過ごして――思考を無にする。

 

 考えるな。考えてはいけない。

 本能を解放し、思うがままに舞え。

 もっと自由に、もっと理不尽に。

 思い描いた動きから、想像を超えた向こう側へと――至れ。

 

「――ハハァ!!」

【おぉ!?】

【くぉ!?】

 

 思考を覚醒させて、俺は笑った。

 そうして、腕とペダルを同時に操作し――連続ブースト。

 

 相手へと迫るのではない。

 相手から距離を離す。

 目指すべき場所は空ではない――地面だ。

 

 白い大理石のようなフィールドへと突っ込む。

 そうして、機体を回転させて足を地面へと当てて滑っていく。

 ギャリギャリと脚部から音が鳴り、火花が散っているのが分かる。

 俺はそのままエネルギーブレードを展開し――地面を削る。

 

 笑い声をあげながら、考えも無しに地面へと攻撃を繰り返す。

 大理石の破片が飛び散り、残骸の埃が空中に舞う。

 高速で地面を滑りながら、綺麗なフィールドをずたずたにしていく。

 

 傷だらけで穴だらけで亀裂塗れで。

 埃は煙となってフィールド全体に充満し。

 離れた位置で見ていたコピーが迫って来るのが分かった。

 俺はくるりと機体を回し、両手を広げて――叫ぶ。

 

「Come on!!」

《……!》

 

 ここからが本番。

 ここからが狂宴の――幕開けだ。

 

 奴は煙の中を突っ込んできた。

 煙は充満しているが、姿が全く見えない訳じゃない。

 完全な不可視の煙では無いからこそ互いに位置は分かる。

 奴はブレードを展開し、ブーストで死角に回る。

 

 俺はそんな奴の動きを認識し――上にジャンプする。

 

《……!》

 

 奴の動きが僅かに乱れた。

 が、ほんの一瞬だ。

 奴はすぐにミニガンを此方に向けようとし――俺のキャノンの砲弾が地面を抉る。

 

 轟音と共に地面に当たった砲弾が爆発する。

 奴はその攻撃を察知してその場から離れていた。

 俺は奴を追う事無く、次弾を装填し――更に同じ場所に放つ。

 

 再びの轟音。

 煙が一気に爆風と共に広がる。

 俺はそんな煙の中へと突っ込み。

 両手の武装を展開して――乱射する。

 

《……!》

「ハハハァ!!!」

【何!? 何を!?】

【えぇぇ!!?】

 

 俺は笑う。

 狂ったように、否――狂っていた。

 

 踊るように機体を回転させて。

 考えなしに弾丸を放ち続ける。

 バラバラと弾丸をばらまく音だけが響き。

 敵が煙の先で狼狽えていたのが手に取るように分かる。

 

 普段の俺の動きじゃない。

 戦いだけを楽しむ俺の戦闘スタイルじゃない。

 意味がなく、理解できない動きで――そう、狂気さ。

 

 

 狂うからこそ道は開ける。

 狂気の中でこそ闘争の火は――燃え盛る。

 

 

「ハァ!!」

 

 

 俺はカッと目を見開く。

 そうして、地面を滑りながら連続でブーストする。

 

 俺の目には敵は映っていない。

 レーダーに映っている敵は遥か先だ。

 が、俺は関係なしにキャノンを――放つ。

 

《……!?》

 

 何の狙いもつけていない砲弾。

 それが敵のすぐ近くを通過した。

 煙は晴れて、敵の動きが少しかくついていた。

 

 動揺、怯え、恐怖――リアルだなぁ!

 

 俺はそれを感じながら笑みを深める。

 そうして、踊るように機体を回転させる。

 

 敵はエネルギーブレードを展開し。

 ブーストで俺へと迫る。

 俺はそんな敵を見る事無く、本当に踊るように手足を動かす。

 

 敵は真面な俺としてフェイントを仕掛けて来る。

 正面からの攻撃に見せかけて左へと回り。

 エネルギーブレードによる斬り付けと見せかけて上へと飛ぶ。

 そのまま上空からミニガンの斉射に入り――俺はバックステップを踏む。

 

 敵はその行動を読み既にキャノンの照準を向けていた。

 否、見ずとも分かる。

 明らかな俺の判断ミス――が、違う。

 

 俺の機体は前傾姿勢。

 キャノンの照準は地面に向けられていて――放つ。

 

《……!?》

【やべぇぞぉ!!?】

【はぁぁぁ!!?】

 

 瞬間、すぐ近くの地面に砲弾は当たり――爆発。

 

 爆風が俺たちへと襲い掛かり。

 奴はそのまま上へと吹き飛ぶ。

 キャノンの狙いは逸れて明後日の方向に砲弾は飛ぶ。

 俺も爆風によって機体が後方へと吹き飛ぶが。

 一瞬の判断でエネルギーブレードを盾のように展開していた。

 ダメージはそれなりだが、動きに支障はない。

 

 俺はそのまま地面に足をつけて、ノンストップで地面を滑っていく。

 

「――♪」

《……?》

【う、歌? え、何を?】

【こいつ歌ってやがる!!】

【はは!! いかれてんねぇ!!】

 

 歌を歌う。

 オペラか、ロックか。

 意味不明な歌であり即興だ。

 戦闘中に歌を歌いながら、俺は手足を動かして演技もする。

 

 気分なアイススケートの選手だ。

 トリプルアクセルも目じゃない。

 ロボだからこそ出来る無茶苦茶な演技だ。

 無駄だらけのその動きはきっと――狂おしいのだろう。

 

 奴が一瞬で迫る。

 そうして、エネルギーブレードを隙だらけの俺へと振り――胸部スレスレを通過。

 

《……!!》

「――♪」

【あぶ!?】

【踊ってる!?】

 

 歌いながら、機体をのけ反らせた。

 そのまま滑るようにショットライフルを敵へと向けて――発射。

 

 敵は回避が間に合わず被弾。

 が、軽傷でありそのまま向かって来る。

 

 奴を薄目で見ていれば一瞬で消える。

 一回と錯覚する轟音が空間を揺らす。

 超短距離での連続ゴーストジャンプ。

 気配をすぐ近くで感じた。

 が、俺は機体をその場で回転させる。

 軸足を起点にしての回転で、敵のエネルギーブレードが僅かに肩部の装甲を削っていった。

 

《……!》

 

 敵は隙だらけだ。

 俺は舞うように、そのまま敵の脇腹へと横蹴りを浴びせる。

 金属がかち合う音が響き、敵の姿勢が崩れた。

 俺はそんな敵に対してミニガンの銃口を向けて――斉射。

 

 バラバラと弾丸が放たれて、敵は咄嗟にブレードを展開し防御。

 ブーストでその場から後退し――俺が追いかける。

 

《……!?》

「ハッハァ!!」

 

 奴がぎょっとしたのが分かった。

 が、奴の本能がブレードを振らせた。

 驚異的な反応速度で――残骸が舞う。

 

 それは俺の機体ではなく――ショットライフルだ。

 

 手から離したそれが奴のエネルギーブレードによって両断された。

 そうして、その場で爆発し――逃れた奴に肉薄する。

 

 すぐ近くで、奴が攻撃をする前に奴の手を空いた手で掴む。

 奴がもう片方のエネルギーブレードを振ろうとし。

 俺はそうはさせまいとその手を掴んだ。

 

《――!?》

「Shall We Dance?」

【喜んで!(強制】

【ひやぁぁ!!】

 

 笑みを深めながら奴の手を握りしめて。

 互いのスラスターの噴射によって機体が激しく回転。

 上昇、からのきりもみ回転。

 脳が激しく揺さぶられて、眼が飛び出しそうになり激痛を感じた。

 

 頭が割れそうで、ゲロをぶちまけそうで。

 耳や鼻や目から何かが流れていて――歯をむき出しにして笑う。

 

「もっとだァァァ!!!!」

《――!?》

 

 俺は更に回転のスピードを上げる。

 瞬間、互いに機体の制御が効かず。

 そのまま地面へと落下し――ぶち当たる。

 

 奴の機体が偶然下であった。

 が、それでも俺の機体もダメージを負った。

 バチバチとスパークし、コックピッド内でも火花が散る。

 システムが警告を発し、出力が低下し――俺はブーストした。

 

 機体がやめろと言っても――俺は進む。

 

 敵も動き出し、そのまま横へとブースト。

 ショットライフルとミニガンを此方へと向けて――俺は奴へと突っ込む。

 

 奴はそのまま弾丸を放ち。

 俺はエネルギーブレードを上に掲げた。

 敵の弾丸が機体に命中。

 衝撃音と共に機体内が激しく揺れた。

 システムが警告を発し、機体の損傷が増す。

 俺はそのまま鼻息を更に笑みを深めて――その場で回転しようとした。

 

 瞬間、敵の機体が視界から消えて――俺のブレードが敵を切り裂く。

 

《……!?》

「あたりぃぃ!!」

 

 考えていない。

 何も狙っていない。

 単純にダンスでも踊るようにブレードを展開して回転させただけだ。

 その結果、背後で武装を展開していた奴の機体の装甲を――削ってやれた。

 

 敵が驚愕している。

 意表をついた動き、連続の超短距離ゴーストジャンプによる死角への回り込み。

 二度も出来ない筈の超高難度技であり、俺でさえも躊躇うその技。

 命削りの策を――“運で破った”。

 

 バチバチとスパークし、そのまま奴は後ろへと飛んでいた。

 攻撃が当たる一瞬。

 驚異的な反応速度で回避行動を取っていた。

 だからこそ、致命傷は避けられた。

 運のいい奴であり、凄腕の傭兵で――が、足りない。

 

「足りない足りない!! ――もっと狂おうぜぇ!!! 兄弟!!!」

《……!!》

【気持ちぃぃぃぃぃ!!!】

【やってんねぇぇぇ!!】

 

 俺は血を垂れ流しながら笑う。

 常識なんて捨てちまえ。

 此処では道なんてものは存在しない。

 命の取り合いであり、命をド派手に輝かせた奴が――最強だ!!

 

 俺は飛ぶ。

 地面を蹴りつけて走る。

 そうして、そのまま地面を滑り奴へと銃弾を放つ。

 ミニガンの斉射でありロックはしていない。

 奴も同じように地面を滑りながらミニガンを放って来る。

 

 互いに装甲に弾丸を軽く掠めて行くのを感じながら。

 俺たちは更にスピードを上げて走行する。

 互いに接近し、敵はブレードで斬りつけて来る。

 俺は機体の上体を逸らして回避し。

 そのままエネルギーブレードを展開し攻撃。

 が、敵はそのまま横へとブーストし回避。

 その直後にキャノンの砲弾が放たれて、俺は前方へのジャンプで回避した。

 

 着地をする一瞬。

 奴の機体が消えた。

 ゴーストジャンプであり、気配を完全に消していて――地面にキャノンを放つ。

 

《――!?》

「ぐがぁ!!?」

【おいおいおいぃ!!!】

【自滅するぞ!?】

 

 爆風がダイレクトで機体を襲う。

 灼熱の熱さであり、軽く体が火傷した。

 が、レーダーには敵の反応が出ていた。

 俺はダメージも気にせずに反応のする方向へとブーストで迫る。

 すると、爆風によって機体が吹き飛ばされている敵を発見。

 俺はそのままエネルギーブレードを展開し、刺突の姿勢でブーストで迫る。

 敵の機体はがら空きで隙だらけで――俺は軸足を起点に機体を回転させる。

 

 瞬間、隙だらけの敵はキャノンを放ってきた。

 その砲弾は俺の機体のスレスレを通過。

 後方で爆発音が響き、俺はそのまま奴へと迫っていき――敵の攻撃を回避。

 

《……!?》

【嘘だろ?】

【はぇ?】

 

 敵の攻撃。

 その軌道は見えなかった。

 が、俺であれば腕の出力を一瞬で底上げし――“斬撃を放つだろうと予見した”。

 

 ピンチからの反撃の策。

 逆境からの起死回生、逆転の一手であり――が、回避した。

 

 出来る筈がない。

 否、しようとも思っていなかった。

 そもそも、このスローの時間にそうだったろうなと思い出しただけだ。

 避けられたのは偶然。

 今の俺は踊りを踊っているようなもので――“ただのアドリブ”だ。

 

 俺はそのまま敵の背後に回って――瞬で斬撃を浴びせた。

 

「チェストォォォォ!!!!」

【ほぉぉぉぉぉ!!!】

【エキサイティングゥゥゥゥ!!!!】

 

 エネルギーブレードで敵の胴体部を通過。

 俺はそのままくるくると回りながら奴の後ろで停止。

 ブレードの展開を解除して、タップを踏んで手を上に掲げた。

 

 

「――Finish!!」

【100点!!】

 

 

 言葉の終わりと同時に、敵の機体が爆ぜた。

 が、火薬やエネルギーの爆発音ではない。

 水がそのまま破裂したような音だった。

 振り返れば、水が一体に飛び散っていた。

 

 俺はそれを見つめて――お?

 

「転送? てことは、クリアした――」

 

 俺が最後まで言い終わる前に転送が――完了した。

 

「……おぉ……お?」

【此処が、予選の会場ですかね?】

【……結構いるじゃん】

 

 転送された場所は広い空間だった。

 何処かの建物の内部とは思うが。

 その空間には様々な機体が目算だけでも……軽く千機以上はいそうだな?

 

 これが全て、先ほどの試練を超えて来たのか。

 中々に、凄腕ばかりなんだと思いながら俺は舌なめずりをする。

 

《根黒様!》

「……あ! リリアンさん! それと……あぁ良かった! 全員無事にクリア出来たんですね!」

 

 通信が繋がった。

 俺が周りを見ていれば、すぐ近くにリリアンさんたちの機体が降りて来た。

 彼女たちに試練は中々に難しかったといえば彼女たちも同意してくれた。

 

《まぁ“絶対に倒せない相手”なので。どうすればいいのかを考えて……武装を捨てて、相手を捉える事だけに集中すれば何とかなりましたね》

《えぇ、“アレを倒そうだなんて思いません”からね。となると、相手が水から生まれた存在である事も考えれば、捕まえてそのまま強い衝撃で潰すのがもっとも簡単だとは分かりますね♡》

《まじそうっすよね! 武器で攻撃した時は結構硬いんですけど。こう思いっきり機体に力を込めれば何とかなるレベルですし……あれって、武器で攻撃した場合はって条件だったんすかねぇ?》

《そうじゃねぇか? 倒そうってなったら武器使うし。武器捨てて素手で掴みにいくっていう判断をするのは中々に度胸がいる。多分だけど、そういう一発勝負が決めれるのかってのを見てたんじゃねぇか? ……何で黙ってんだよ先生?》

「…………そうだね!」

【此処に倒せない相手を倒した変態がおるぞ!】

【根黒君は運営の想定を超えて行く変態だもんね!】

【流石、変態の中の変態である根黒さんだ!】

 

 だらだらと汗を流していれば、リスナーさんたちが俺を変態だと連呼する。

 リリアンさんたちは様子のおかしい俺に対して疑問を抱いていたが。

 俺はそんな事は良いからとこれから何が起こるのかと時を待ち――ブザーのようなものが鳴り響く。

 

《収容可能数に達しました。これより、大規模試験場での試験内容の説明を始めます》

「……いよいよかぁ!」

【ワクワクだなぁ!】

 

 全員が視線を上に向ける。

 そこには機体ほどの銀色の大きさの球体のようなものが浮いていた。

 そこから声が出ており、扉の先で行われるであろう試験という名の予選の説明が開始された。

 

《これより行われます試験は、事実上、無期限の試験となります。皆様方、傭兵の方々には大規模試験場にて生き残りが64名となるまで戦ってもらいます。試験場にて使われる武装に関しましては、初期装備としてハンドガンとブレードのみを最初にこちらから支給させていただきます。試験場内には様々な武装をボックスにて保管しております。発見者はその武装への換装も破壊も譲渡も自由です。また、諸事情により長時間での戦闘行動が不可能な場合。一度の離脱によるセーフティタイムを24時間と設定して、その時間を超えても戦闘の意思が無いと判断した場合は残念ながら失格とみなします》

「……セーフティタイム……ログアウト時間か……いや、でも、そうしたらちょこちょこログインしているだけで」

《疑問を検知。お答えします――ちょこちょこログインをして逃げに徹する行為は認めません》

「……ぅ!」

【流石は高性能AI様だぜ!】

 

 口にしただけでバレてしまった。

 AIは説明してくれる。

 

 もしも、少しだけログインをし24時間のセーフティタイムを多用した場合。

 戦闘を行う意志が無いものとみなしこれも失格とすると。

 誰かが疑問に思ったのか、それをどうやって判断するのかもAIは説明を始める。

 

《戦闘を避け続けるような行為、明らかなセーフティタイムの悪用。その他、試験に反するような行為は確認次第、対象の傭兵を失格とします》

「そんなのどうやって判断するんだよぉ!! 100パーセントなんてあり得ねぇだろ!!」

 

 プレイヤーの一人が皆にも聞こえるようにスピーカーでAIに意見する。

 すると、何人かもそれに同意するように声をあげていた。

 が、別に普通に戦っていればそんな意見する事でもないと俺は思ったが……。

 

《100%の判断は可能です。我々にはここに存在する傭兵の皆様のデータがあります。普段の戦いにおける姿勢や戦闘スタイル。思考ルーティンや細かな趣味趣向に至るまで我々は知っています。今、ご意見を頂いた傭兵の方は特に悪用の可能性が高いと此方は認識しております。勿論、それはあくまでもデータでの話になります。試験に積極的に参加し、我々の意に沿うような行動を心掛けて頂けるのであれば――我々は貴方様の成長を嬉しく思います》

「……っ」

「はは、見透かされてるってか……やべぇ」

【AIこえぇ】

【人類がAIに支配される時代も近いか?】

 

 セーフティタイムは、あくまで日常生活に影響が出ない為の措置。

 AIは積極的に参加すればメリットが多く。

 逆に、消極的であれば生存の可能性が減っていくと忠告していた。

 

 恐らく、試験場内でもエネミーはいるんだろう。

 そういったものに襲われやすくなったり、強い武装が手に入らなくなるとかだろうか。

 どういったタイミングで失格を言い渡されるのかは分からない。

 が、俺としては積極的に参加するつもりなのであまり気にはしてはいない。

 

 ……まぁ学生の方や社会人の方もいるし……社会人の人は有休をとったりするのかな?

 

 何時、終わるのか分からないのであれば気が気じゃないだろうが。

 朝に見たニュースでは、割と本気でこの大会に臨もうとした人もいた。

 休みの申請をしていたり、会社が協力して送り出したり。

 Eスポーツが盛んに行われるようになった時代ならではの配慮だ。

 

《皆さま、疑問はあると思います。その疑問については、大規模試験会場への入場と同時に送らせて頂きますアドレスにて質問内容を送ってください。また、参加者の方々には専用のアドバイザーをお付けいたします。メールでの質問が不可能の場合、アドバイザーに質問をして頂いてもほぼ同じ回答が得られます。それでは、皆さま第一班の方々のご説明と登録を完了し――大規模試験場への入場を只今より許可いたします》

「……扉が!」

 

 AIの説明が終わり、巨大な扉が両横へとスライドしていく。

 俺たちはその先を見つめて、ただじっとその時を待つ。

 光が強くなっていき、俺は目を細めて――――…………

 

 

 

 …………――――光が消えた。

 

「……へ?」

【あ、れ?】

【え、此処って……根黒のマイルーム?】

 

 目を開ければ、何故か自分の部屋に戻っていた。

 何故なのかと疑問に思っていればメッセージの通知音が聞こえた。

 急いで確認して……あぁ、なるほど。

 

「……あぁ、どうやら、アレで予選の参加が決定しまして……予選の開始は三日後らしいですね。ま、そりゃそうですよね。急にはしないですよね。はは」

【なぁんだ……まぁ、時間も時間だしな……また公式からも俺たちにアナウンスが来るだろうし。気長に待つかなぁ】

【お疲れさん! 三日後を楽しみにしてるよ!】

【リリーたちもそうだけど。根黒も寝坊しないように、前日は早めに寝ろよ?】

「ははは、分かってますよぉ……ま、そういう事なんで今日の配信は此処までにします! それでは皆さん……お休みなさい!】

【おやすみー!】

 

 リスナーさんたちに手を振る。

 そうして、コメントを見てから配信を切る。

 俺は静かに息を漏らし、ベッドに倒れ込んだ。

 

 運営からのメッセージでは大規模試験場での試験……予選は朝の9時から開始するらしい。

 

 海外勢もいるだろうが、彼らは彼らで合わせる他ない。

 広大なマップのようであり、千を超える機体であろうとも十分に戦えるだけの舞台のようだ。

 補足説明では、武装の他にもエネルギーの供給ポイントや戦闘において使える兵器が置かれているらしい。

 それらを駆使して、64人になるまで殺し合いを行う……バトル・〇ワイヤル?

 

「はぁ、64人かぁ……後で、久遠先輩と神崎さんにも連絡しとこうかな」

 

 彼女たちであれば予選まで進めているだろう。

 俺はそんな事を考えながらあくびをする……眠いな。

 

 今日は中々に頑張った。

 何せ、自分自身と戦ったのだ。

 何時も以上にハッスルしたせいで後からの倦怠感が凄い。

 俺はすぐにログアウトのボタンを押して――リアルに帰還した。

 

「ふぅ」

「……」

 

 チェアから起き上がる。

 肩を鳴らしながら、俺は冷蔵庫の方へ行く。

 台所を見れば、神崎ソフィアさんが鍋からシチューをおたまで掬いカップに注いでいた。

 俺は冷蔵庫を開けて中から水のペットボトルを取り出す。

 蓋を開けて飲んでいれば、神崎ソフィアさんは机の上に料理の配膳をしていた。

 彼女は黙って座り俺を見て来る。

 

「あ、うん。待てってねー」

「……」

 

 俺はペットボトルを冷蔵庫に戻す。

 そうして、彼女の元へ急ぎ、対面へと座った。

 

「うわぁ! 良い匂いですね! 美味しそうです!」

「そう」

 

 俺は両手を合わせる。

 そうして、スプーンを持ってクリームシチューを飲む。

 クリーミーな味わいに、濃厚な味だ。

 だが、疲れた体を温めてくれて胃に優しい味付けだ。

 

 俺は久しぶりの手料理を喜びながら食していく。

 そうして、ゆっくりとスプーンを机に置く。

 

「うん。で……どうやって入ったの?」

「玄関」

「うん、そうじゃなくてね……鍵は!? 掛けてたよね!? ねぇ!?」

「……?」

「いや、何言ってんだって顔じゃなくてさ!? おかしいでしょ!? 俺がおかしいの!?」

「落ち着いて」

「あ、うん……てぇ違うでしょぉぉぉ!!?」

 

 彼女から渡されたコップを受け取り水を飲む。

 飲んで冷静にとはならず、激しく困惑する。

 彼女は真顔で俺を無視してシチューを食べていた。

 

「……わ、分かったよ。か、鍵を渡すから今度からは」

「――もう持ってる」

「………………ふぇ?」

 

 俺の思考は停止寸前だ。

 俺は目を瞬かせながら食事をする神崎ソフィアさんを見つめる。

 彼女は何も疑問を抱いておらず、自分自身の行動にも迷いがない。

 それが動揺する俺の心を更に動揺させていて……も、もういいやぁ!

 

「ふ、ふへ、お、美味しいなぁ」

「……そう」

 

 俺は涙を流しながらシチューを食う。

 色々と言いたいし、何もかも飲み込めないが――俺は考えるのを止めた。

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