底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:オタリオン

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第75話:ドS様の愉快な処刑法

 謎の美女の奴隷となり――30分ほどか?

 

「はぁはぁはぁはぁ!!」

「……遅い」

「――ぅ!」

「くぅぅぅ!! 羨ま……妬ましぃぃぃぃ!!!」

 

 現在、真夏の太陽の下で美女を背負って街の中を走っていた。

 俺の装いは昔のギリシャ人のような白い布を羽織った姿になっている。

 足にも変わった編み込みのサンダルを履いているが……趣味か?

 

 背中は横向きのくそ重い豪華な椅子のようなものを背負っていて。

 そこに座っているフーロンさんは水着から一変し豪華な赤を基調としたチャイナドレスを纏っている。

 さきほどからキセルを持って紫煙を優雅に吐いていた。

 目指すべき場所は“ブルーサーキット”と呼ばれるメックの――“競機場(きょうきじょう)”だ。

 

 彼女はセンスをパタパタとしスパスパとキセルを吸っているだけだ。

 それなのに、俺に対して遅いと罵ってくる。

 天性のドエスであり、怖いところは彼女の責め苦の飴と鞭が半端ない事だ。

 

 彼女自体は恐らくは軽いだろう。この椅子のようなものがクソ重いだけだ。

 そして、競機場まではそう遠くはない。

 何時もなら走っていれば10分ほどで着いていたかもしれない。

 が、夏休みシーズンであるからか街の中も人は多い。

 群衆を掻き分けて、大衆の好奇の目を躱しつつ俺は走って……背中の感触もやばい。

 

 彼女が耳元で遅いと囁けば、彼女の生暖かい吐息が耳をくすぐる。

 キセルは煙草の葉を燃やしているからこそ、臭いはあると思ったが。

 彼女の吐く吐息は何故か花の蜜のような甘い。

 上品であり、彼女自体の匂いも爽やかで……これじゃ俺が変態みたいじゃないか!?

 

「くぅ!」

「ほれ、もっと速く。遅れたら――股のそれを切るわよ?」

「ひぃ!」

 

 ドスの効いた低い声。

 が、囁くような声だからこそ耳が疼く。

 そうして、囁く時に彼女が姿勢を変えれば彼女の豊満なバストが俺の背中に押し付けられるのだ。

 理性が今にも決壊しそうであり、息があがって仕様がない。

 そう、これこそが彼女の飴と鞭だ。

 今までにない責め苦であり、眼が血走ってしまいそうだ。

 

「ぐぅぅぅぅぎぃぃぃぃぃ」

「ひぃ!」

 

 美女からの飴と鞭。

 そして、別ベクトルの美女からはばしばしと殺気を浴びせられる。

 見ないようにしている。

 が、チラリと隣を見たら真っ赤に眼光を開かせて血管を顔中にむき出しにしたワンチンさんがいた……こ、こえぇ。

 

 頑張って走っていれば――後方より声が聞こえて来た。

 

「お兄ちゃん! あの! いい加減、お兄ちゃんをですね!?」

「童がうるさい。相手をしなさい」

「「「了ッ!!」」」

「え!? ま、またぁ!? もぉぉぉ!!」

 

 久遠先輩の声が聞こえた。

 が、フーロンさんが虚空にぼそりと言葉を吐けば。

 何処からともなく声がして、風の音と共に先輩の気配が遠のいていった。

 

 俺はとんでもない人にまた目をつけられたのかと恐れながらも。

 競機場を目指して走り続けて……み、見えた!

 

 ようやく目的の場所まで着いた。

 巨大なコロッセオのようになった白と青で色を塗られた競機場。

 彼女を入口の前まで運び、俺は膝をついて彼女を優しくおろした。

 彼女はこつこつとヒールの音を鳴らして地面に足をつく。

 彼女がキセルを消して指を鳴らせば、俺の背中の椅子が消えた――はぁぁ!

 

 羽のような軽さに感謝する。

 すると、競機場から走って来る青と白を基調とした制服に身を包むスタッフさんたち。

 フーロンさんの前に立った彼らは、深々と頭を下げて彼女を笑顔でもてなしていた。

 

「よ、ようこそブルーサーキットへ! 本日はお日柄も良く」

「――御託は結構。案内して頂戴」

「は、はぃぃ。き、君たち! フーロン様をVIPルームへ!」

「「は、はい!」」

「……フーロンさんって何者なんですか?」

「ふん! 貴様のような下等生物は知らなくていい。いいからとっとと失せろ!」

「――何を言ってるの? それは私の奴隷よ?」

「へぁ!? で、ですが! こんなクソ雄と関わっても頭目にはメリットは」

「――二度、言わせる気? この私に」

「もももも申し訳ありません!!! ……ぐひ、お、お叱りを受けたぁぁ」

 

 フーロンさんは無言で俺を見つめる。

 そうして、踵を返して職員の案内の元、先に行ってしまった。

 ついて来いと言う事かと思っていれば、ワンチンさんに頭を叩かれる。

 

「ぐずぐずするな! さっさと行くぞ!」

「え、えぇ……わ、分かりましたよぉ!」

 

 抵抗しようとすれば拳を握られた。

 俺は殴られてはかなわないと思って渋々従う。

 

 運営側の人間であるサーキットのスタッフ。

 そんな人間たちが態々、一プレイヤーを出迎える事なんて……あるのか?

 

 

 #

 

 

 ブルーサーキットで行われる事。

 それは小型のメックを使った――“特殊なレース”だ。

 

 通常の車などのレースとは違い、ブルーサーキットではメックを使う。

 速さを競う点は同じであるが、ゲームならではのギミックがステージには用意されている。

 障害物の設置や随所に用意されているエネルギー補給用のアイテム。

 その他にもその場で新たな武装の獲得やスラスターの強化ができる専用のアイテムなんかも設置されているのだ。

 

 速さを競って一番になる事が勝利条件の一つ。

 が、競う相手がいなくなれば残った人間が勝者となる。

 潰し合いありのデスレースであり、これだけをやっているプレイヤーも多くいる。

 

 密かに人気のコンテンツで、似たようなゲームも作られているが。

 やっぱり、タイタンシリーズのメックを使ったこれが一番で……意識を戻す。

 

「……何で、こうなるの?」

 

 目の前に置かれた小型メック。

 全長8メートルのサイズであり、余分な装甲を削ぎ落したスピードモデルだ。

 全体的に丸みを帯びていて、頭部もつるつるだ。

 十字にスリットが入っていて、年季の入った単眼のセンサータイプが取り付けてある。

 塗装は全体的に剥がれてくすんだ白色をしていた。

 武装は片腕が武器と一体化している。

 リボルバーがついていて、装弾数は六発。

 短めの銃身であり、単発式のライフル……いや、マグナムか?

 

 もう片方の腕は三つ目のクロータイプで、武器というよりは新たな武器に換装するまでの仮腕のようなものか。

 背中のスラスターは三つのノズルがついたタイプだ。

 カタログスペックを見たが、飛行性能が高いだけで他はそれほど性能が高い訳じゃない。

 耐久力はあってないようなものであり、スピードを出す為に色々とピーキーになっていた。

 

「……コアは小型だから滞空時間が短いのは分かるけど……それにしてはエネルギーの消費率が高いなぁ?」

 

 メンテもチューンもされているが、旧式一歩手前の古い機体だ。

 元々は工事現場で使う為に作られた設定の機体らしいが。

 その影響もあって、元々出力が高く設定されているのだろう。

 それをレース用に改造したからこそ、ドラッグマシーンのようなものになっているのか。

 

 改造された正規モデルであり、既に名前は変わって――“ネイトロ”か。

 

「……名前の由来はニトロからか? 他の機体は最新式っぽいけど……もしかして、出来レース?」

「――よぉ新人! 調子はどうだ?」

 

 背後から声を掛けられて振り返る。

 ネイトロが置かれた選手用の個人ガレージには。

 何故か、部外者であろう髭面の大男が入っていた。

 パイロットスーツの胸元のジッパーを開けていて、胸毛がむわりと飛び出していた。

 黒髪のツーブロックにマゲのように髪を後ろで結っている。

 目つきの鋭い山賊のようないで立ちの大男で俺はどちら様と問いかけた。

 

「あぁ? このサーキットでこの俺、テンクウを知らないってか? さてはお前……ド素人か?」

「えぇっと、サーキットの経験はそんなにないですけど……」

「何だよあたりかぁ!? おいおいおい、あの女の紹介だからどんな凄腕かと思ったが……お前、何やらかしたんだ?」

「……その、不可抗力で、フーロンさんの胸を、こぅ、むぎゅっと……へ、へへ」

「……命知らずな野郎だな。その場で処刑されなかっただけでも神様に感謝だぜ……まぁいい。ド素人ってんなら……よし、少しだけアドバイスしてやるよ!」

「え? で、でも、テンクウさんも選手ですよね? 俺の事なんて」

「気にすんなよ! 俺くらいになると余裕があっから! それよりも、初めての奴がド派手にクラッシュしてトラウマで寝込むって考えた方がぞっとすんだよ! いいか? 緊張するのは分かるが、先ずは落ち着けよ。最初はドンケツでもいいからゴールする事を考えろ。いくらあの女でも、初めての野郎が一番を取る事なんて考えていねぇからな!」

 

 テンクウさんは親切にアドバイスをしてくれる。

 コースは基本的にランダムであるが。

 気をつけるべきコースは今日のレースで設定された六つの内二つだけで。

 それさえ覚えておけば、後は気楽な気持ちでゴールを目指せばいいと言ってくれる。

 アイテムは無理に使う必要はなく、常に前だけを見て機体を操作する。

 

「あ、でもな! エネルギーの補給だけは怠るなよ! 如何に最新のメックでも、小型はそこまで長くは飛べねぇからな。エネルギーの残量が最後まで保たねぇんだよ。誰かと競ってんなら尚の事、補給は欠かせねぇよ」

「なるほど……あ、でも、俺、頑張って1位にならないといけないようなんですよね」

「はぁ? 何の冗談だよ。どういう事だ?」

 

 テンクウさんに話せと促された。

 俺は先ほどまでのやり取りを思い出しながら話していく。

 

 

 ▽

 

 

 VIPルームに通されて、フーロンさんは豪華なソファーに座る。

 足を組めば、綺麗な生足が晒されて。

 俺は目のやり場に困りながらも、彼女の前で正座していた。

 

「え、お、俺がレースに出場するんですか?」

「そうよ。出なければ、貴方を性犯罪者として運営に報告するわ」

「う、嘘ですよね? い、いや、俺が悪いですけど……ま、まさか、その為に俺を此処に?」

「ぷぅくく! ざまぁみろぉ」

 

 フーロンさんは真顔でワインを飲む。

 傍に控えるワンチンさんは口元に手をあてて俺を嘲笑う。

 

 先ほど、スタッフの方がやって来て。

 何故か、出場予定であった選手が謎の腹痛によって出場できない状態になったと言ってきた。

 出場予定であった選手は最後のレースに出場予定で。

 そのレースを見る為に、他にもVIPたちが来ているからこそ中止も出来ないと焦っていた。

 その結果、彼女は俺を出場させると勝手にスタッフに言った。

 スタッフは彼女の言葉を拒否する事もせず。

 そのまま俺を選手として登録すると言って去ってしまった。

 

 俺は困惑しながらも、これが彼女なりの――処刑なのだと実感した。

 

「奴隷は奴隷らしく。主人を楽しませなさい?」

「そ、そんな……で、でも、出るだけなら別に!」

「――1位以外の結果は認めない。それ以外でも、性犯罪者として貴方を突き出す」

「えぇぇぇ!?」

「ざまぁぁぁ」

 

 血の気が失せた。

 ゲーム内でもやってはいけない事は色々とあるが。

 セクハラやら痴漢行為は、運営が認めた瞬間に罰が下る。

 軽ければ短い期間でログインが出来なくなる事。

 重ければアカウントバンやら、最悪の場合は現実でも影響が……うぅ!

 

 まずい、まずいまずいまずいまずいまずい――最悪、社会的に死ぬぅ!!

 

《根黒万太郎ッ! ゲーム内で痴漢行為ッ! 極悪非道ッ!》

『この度は、誠に申し訳ありませんでしたぁ!!』

「ぅ、ぁ、お、終わった」

 

 連日連夜、ニュースが流れるのか。

 記者に追いかけまわされる毎日で。

 親からも絶縁であり、それだけは回避しなければならない。

 が、絶対に簡単には1位を取らせないだろう。

 

 俺はフーロンさんを見る。

 すると、彼女は目を細めてセンスで口元を隠しながら――笑っていた。

 

「ふふ♡」

「ど、ドエスだぁ」

 

 他者を苦しめて喜ぶタイプのお人のようだ。

 俺はそう認識し、やっぱり関わってはいけない人だと再認識する。

 その直後に、部屋をノックする音が聞こえて。

 フーロンさんが入るように促せば、屈強な体の大男たちが入って来る。

 彼らは俺の周りを取り囲み、指を鳴らすだけで俺の服装を選手用のパイロットスーツに変えた。

 両脇を抱えられて俺は連れていかれる。

 最後に部屋の中を見れば、ワンチンさんが邪悪な顔で首を切るジェスチャーをする姿で――

 

 

 ▽

 

 

「――と、いう感じです」

「……その、何だ……ま、まぁ捕まりはしねぇよ! ヤッた訳じゃねぇしな! アカウント消されたって、また作ればいいしな! は、はは!」

「……フォローになってませんよ。はぁぁ」

 

 俺はため息を零す。

 テンクウさんは俺の肩を叩いて慰めてくれた。

 

「まぁ気休めにもならねぇが……一応、そのレースでの優勝候補の事だけは教えといてやるよ」

「優勝候補ですか……あぁ、そういえば大物が出るって言ってたような?」

「そ! その大物こそが、ナンバーズ序列4位の弟子の一人――海林( ハイリン)だ!」

「……今思ったんですけど、中華系の人たちは本名を使う風習でも?」

「ん? いや、アイツらは自分たちの名に誇りがあるから、ゲームでも同じ名前を使うとか……いや、そんな事は今はいいんだよ! 兎に角、奴のテクは半端じゃねぇ! メックも専属のメカニックお手製の“飛燕(ヒエン)”! カタログスペックでの性能なら……まぁ純粋な速度の勝負ならお前にも勝算はギリあるかもしれねぇが、そこそこの技量でどうこうなるレベルじゃねぇ! 何せ、デスレースなんだ! 何でもありの勝負だからな!」

「……他の選手はそれほど警戒する必要はないんですか?」

「あぁ? んな訳ねぇだろ! ハイリンがずば抜けてるだけで、他の奴らも一流さ! まぁ俺様ほどではないがなぁ……て、そうじゃなくてだな! お前、余裕ありそうだけど……まさか、勝つつもりか?」

 

 テンクウさんは汗を垂らしながら訝しむような視線を俺に向けて来る。

 俺はにへらと笑いベストを尽くすとだけ言った。

 

「そ、そうか……うし! なら、これも何かの縁だ……俺の今月の給料。お前が勝つのに賭けてやるよ! もしも勝ったら、そん時はお前にたらふく美味いもんをご馳走してやっからな! 頑張れよ、新人! はははは!」

「え、あ、あの……言っちゃった……まぁ悪い人では無かったかな?」

 

 勝手に話して勝手に帰ってしまった。

 俺はまぁリラックスする事は出来たと心の中で彼に感謝し――彼がまた入って来た。

 

「そう言えば、名前は? 登録名は何だ?」

「……チュウズーらしいです」

「ちゅうずー? 何て意味だぁ? あぁまぁいっか。頑張れよぉ!」

 

 彼はそれだけ聞いて去っていく。

 俺は小さくため息を零し……レースまでは時間はあるな。

 

 最後のレースだからこそ、順番はまだまだ先だ。

 その間は暇であるが、部屋の外には監視している人間がいる。

 抜け出すのは不可能であり、それならば練習をしようと決めた。

 少しでもネイトロの事を知る為に――“シミュレートで遊ぼう”。

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