底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:オタリオン

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第79話:予選の始まりは騒々しく

 予選開始――15分前。

 

「……」

 

 パイロットスーツに着替えてヘルメットを被る。

 バイザーはまだ閉じずにそのままで。

 俺はブーツのつま先を床で叩いて調整する。

 グローブもしっかりと嵌めてから……いよいよだな。

 

 遂に始まる。

 世界大会の予選であり、その次はいよいよ――本選だ。

 

 挑戦するプレイヤーの数は数千人にも及ぶだろう。

 その中の64名だけが本選に進める。

 たったの64名であり……たまらねぇな。

 

 この緊張感と心臓の高鳴り。

 全てが心地よく、全てが俺を楽しませる。

 どれだけの猛者が集まったのか。

 いや、どれだけの狂気に満ちたプレイヤーたちと戦えるのか。

 

 楽しみで、楽しみで――興奮が収まらない。

 

「く、くくく……あぁ、始まるぜぇ」

 

 俺は笑う。

 そうして、此処にはいない仲間たちの顔を思い浮かべる。

 

 此処からは全員がライバルだ。

 助け合いは無しであり、全身全霊で殺し合う。

 それこそが傭兵であり、戦友としての在り方だ。

 

 時間は進んでいき、残り数分。

 俺は自らの手の平を見つめる。

 この手で、絶対に勝利を掴む。そして、俺は……ん?

 

 メッセージが入る。

 誰からかと見て……アイツめ。

 

 

《本選――楽しみにしてっからな!》

「……あぁ、楽しみにしてろよ。特等席で、見せてやっからな!」

 

 

 世界の裏側にいる親友。

 メッセージだけなのに、それを通して奴の心が伝わった。

 俺は拳を握り、もう片方の手に打ち付ける。

 

 瞬間、開始時刻となる体の転移が始まった。

 俺は笑みを深めて――

 

 

「さぁ――闘争の時間だァ!!」

 

 

 

 

 

 …………――――転移が終わる。

 

 体はコックピッドの中であり、周りを見れば……洞穴か?

 

 薄暗いが、壁の謎の鉱石が青く光っていた。

 ひとまずはレーダーに敵の反応はない。

 が、俺は周りを警戒しながら機体を操作し移動を――

 

「こぉぉんにちぃぃぃはぁぁぁ!!」

「うぎゃ!?」

「わぁぁ!!?」

 

 突然響いた明るく高い声。

 それに驚いて俺は変な声を出してしまった。

 すると、声の主も驚いて俺の目の前でくるくると回っていた……な、何だこいつ!?

 

「びっくりしたぁぁ! もぉおっきな声出さないでくださいよぉぉ。ぷんぷん!」

「な、何? え、し、白いクマ? いや、たぬき?」

「たぬきじゃないよぉぉ!! 僕は貴方のアドバイザー!! 名前はP09! 今日から試験の間だけ、僕がなぁんにも知らない貴方の為に! 色々と教えてあげるから心配しないでねぇ!」

「あ、アドバイザーって……いや、そんな事、言ってたな」

 

 俺は取り敢えずは納得する。

 P09は俺の前でふよふよと浮きながら質問は無いかと聞いて来る……なら。

 

「……試験はもう開始されたんだよな? じゃログアウトをする場合はどうしたらいいんだ?」

「良い質問だね! 本来なら、ログアウトは安全な場所。つまり、街の中にある部屋で行うものなんだけど。此処には安全な場所なんてほとんど無いからね! でもでも! ログアウトをする為に、特別なアイテムを用意したんだよ! それがこの――“安全地帯”って訳!」

 

 奴が小さな鞄から取り出したもの。

 それはキラキラと光る謎のキューブだった。

 俺はそのアイテムを見ながら、ひねりの欠片も無いネーミングにぷっと噴き出した。

 

「……名前、そのまんまじゃん」

「むー! ひねくれてるよぉ! いけないんだぁ! ……て、そんな事はどうでもよくてね!? 要するに、このアイテムを使えばどこででも安全にログアウトが出来るって訳! まぁ時間の制限はあるけどね!」

「……ステージには入ってねぇけど……まさか、現地で手に入れなきゃならねぇのか?」

「うーん。少し違うかなぁ? 手に入れるっていうよりは――ノルマを達成してもらう必要があるって事!」

「ノルマ? そんな説明は聞いてないけど……」

 

 俺は訝しむようにP09を見つめる。

 すると、奴は奇妙な笑い声をあげながら「そりゃそうでしょ」と言う。

 

「1から10まで説明したら、君たち、すぅぐ悪い事考えちゃうでしょ? だからこそ、これはトップシークレット! まぁ参加してくれたからある程度は教えるけどねぇ」

「で? ノルマってのは?」

「それは勿論――プレイヤーを殺した数だよ!」

 

 奴は真っすぐな目で俺を見つめる。

 可愛らしいキャラが殺すというワードを言ってくるのは……ちょっと怖いな。

 

「ノルマはね! 最初は数人程度だけど、安全地帯……長いから安地って言うね! それを使うごとに増えて行くの! だからね。時間があるうちに、より多くの敵を殺しておかないと後が大変なんだよねぇ。数が減っていけば、消極的な動きをする人たちは増えるしぃ。そうなったら、彼らはログアウトをする事も出来なくなるって訳! 面白いでしょ!」

「……いや、ログアウト出来ないってのはまずいんじゃ」

「分かってるよぉ。こっちだってね? リスクヘッジは万全なの! どうしてもっていう人に限り、リタイアシステムってのを使う権利があってだね? 要するに、僕はもう戦いたくないんだぁってなった時に使えば、一瞬で元の世界へ帰れちゃうの! ただし……その時点で失格だけどね! へへ」

「……要するに、人がいるうちに積極的にぶっ殺しに行けって事か……はは、消極的であれば生存の可能性が低くなるってそういう」

 

 中々に考えていた。

 悪魔的なシステムであり、これならば戦闘に積極的に参加せざるを得ない。

 

「因みに! 安地を悪用したらダメって聞いてたよね? それは、簡単にいえば時間いっぱいまで使うような真似の事だよ! 露骨な事をしたら、最悪は強制失格だけど。それ以外でも、こぉぉそりと僕たちがシステムを弄って……ノルマ、増やしちゃうからねぇ。ぷぷぷ」

「……ただでさえ強者揃い。そんな中で、最低でも狩らなければならない人数が増える、か……時間いっぱいまで使っちまったら、それだけ次を獲得する難易度が跳ね上がる……やべぇほど、戦闘狂に有利だな」

「うんうん! 気に入ったかな? まぁ、頑張ってずっといようとしてくれる人たちもいるんだろうけど……メタ的な事言っちゃうけど、機械がね? 許さないでしょ。だから、こそこそとしている事も出来ないからぁ……ま、必死こいて頑張ってよ」

「……へいへい」

 

 奴はあくどい顔で笑う。

 俺は乾いた笑みを零し、言われずとも戦ってやると心の中で悪態をつく。

 

 機体を動かし、両手の武装を確認。

 最初の説明通りハンドガンとブレードのみだ。

 ハンドガンは予備のマガジンは無しであり、弾が尽きればブレードで何とかしろという事だろう。

 ブレードも破壊されれば、素手と蹴りによる戦い。

 泥沼であり……いやだなぁ。

 

 俺は首を左右に振る。

 そうして、そうならない為にも頑張ろうと呟き――生配信を開始する。

 

「はい! みなさぁん! お待たせしましたぁ! 根黒万太郎! たった今! 世界大会の予選に参戦しましたぁ! いぇい!」

「……は?」

【わぁい!】

【待ってましたぁ!】

【此処が、祭りの会場か?】

【なんか、変なのいね?】

 

 俺は笑顔で手を振る。

 すると、P09が勝手に配信画面に映って来た。

 

「ちょおい!」

「えぇ何々!? 配信してるのぉ!? 随分と余裕だねぇ! はいはぁい! 僕はこの人のアドバイザーのP09だよぉ! ぴーちゃんでもナインちゃんでも好きに呼んでねぇ! にゃぴ!」

【あざとい熊だねぇ】

【何だこいつぅぅぅ!!】

【P09? 贅沢な名だね。今日からお前の名は――ピだよ!】

【おっす! ピ!】

【ピ!】

 

 リスナーさんたちが何時ものノリになる。

 きゃぴきゃぴしていた熊は勝手に名前をピにされて放心していた。

 俺は後ろでピをほくそ笑みながら見つめる。

 

「良かったね! 名前つけてくれたよ! よろしく、ピ!」

「え? 殺すよ? いや、死ねよ」

【口悪いっすよこいつ!】

【あざといからの腹黒か……良いね!】

【もぉ怒んなよぉピ!】

 

 ピはリスナーさんたちの玩具になっていた。

 面白くてくすくす笑っていれば、奴はげしげしと俺の頭をヘルメット越しに蹴って来る。

 

「おい、消せよ。ブロックしろ! ゴミ人間たちがうぜぇんだよ!! ねぇ、ねぇ!!」

「あぁもう、気にすんなって! 悪かった! 悪かったからぁ!」

「本気で思ってんのか? 舐めてんじゃねぇのか? AI様なめんじゃねぇぞボケカスゥ!」

【本性表したね?】

【いいぞいいぞぉ!】

【……行かなくていいのか? 襲われるんじゃ?】

 

 ピを強引に画面外に押し出す。

 そうして、気を取り直して配信を続けて――レーダーが敵の接近を感知した。

 

「はは! ざまぁないねぇ!」

「……数は二機か……手を組んでるのかな? まぁどうでもいいか」

【戦うの!】

【予選の戦いが始まる!】

 

 俺はレバーを握る。

 そうして、そのままスラスターを噴かせて洞窟内を飛ぶ。

 向こうは完全に此方に気づいているようで――笑みを深める。

 

「さぁ――殺し合いだァ!」

【いい顔だね!】

【惚れるぜ♡】

 

 

 #

 

 

 迷路のような洞窟を飛び回り。

 光が差し込んできた場所を目指して加速。

 そのまま光の先へと飛び込み――崖の前で着地した。

 

「うーん。洞窟から出れたのはいいけど……すげぇ広いなぁ」

「……こいつ、何?」

【秒殺からの切り替えはや!?】

 

 敵との遭遇。

 そこから戦闘にはなったが。

 相手は既にボロボロの状態だった。

 通信を繋げてきて命乞いをしてきたが。

 俺はそんな言葉は無意味だとさっさと二機ともブレードで始末した。

 

 外に出れば、広々とした世界が広がっていた。

 大自然であり、森や大きな滝に、遥か遠くには海らしきものもある。

 他にも、シップを超えるほどの巨大な船の残骸が大地に刺さっていたり。

 空では機械と島が融合したような謎の物体が空に浮遊している。

 

 此処が大規模試験場の世界で……にしても。

 

「……始まってまだそんな時間経ってないのに……あの人たちは誰に襲われたんだろう?」

【エネミーの群れか。ナンバーズとか?】

【ナンバーズの群れだったら確殺だし……何だろうなぁ?】

【ま、死んだ奴の事はどうでもいいしょ!(外道)】

 

 リスナーさんたちの意見を聞きつつ、俺は考えても仕方が無いからと崖の上からジャンプする。

 

 空を飛んでいくのは危険だろう。

 姿を晒せば無用な戦闘ばかりになってしまう。

 殺せるだけ殺しておけば、それだけで有利ではあるけど。

 今は初期装備であり、もしも連戦になれば、流石にこのままでは危ない。

 特にナンバーズほどのプレイヤーなんかと鉢合わせれば、それこそ生き延びられる保証はない。

 

 ……武装を整えるまでは、戦闘は最小限に。

 

「……いや、漁夫の利を狙うか?」

「……お前、良い性格してんじゃん。気に入ったよ」

【漁夫の利は分かるけど……どうやるの?】

 

 俺はリスナーさんの質問に良い作戦があると伝えた。

 とっておきであり、忍耐が必要になる作戦だが。

 ハマればクソほどに旨味がある作戦だという事だけ伝える。

 

「その為にも、先ずは――餌を探さないといけませんね!」

【……餌って言った?】

【正々堂々の勝負が好きだと思ってたけど……立派な傭兵様じゃねぇか】

【リアリストになれ! 根黒!】

 

 俺は鼻歌を歌う。

 そうして、早速、多くのプレイヤーを引き寄せる事が出来る上等な餌を求めて――狩りに出かけた。

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