底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第8話:遊びの根黒と絶望のカタギリ(☆)

 システムが敵の攻撃を感知。

 アラートが鳴りっぱなしで、俺は常に視線を動かし続ける。

 右から左から、上から下から――面白い!

 

 ビット兵器――それはロマンの武器。

 

 子供の頃、ビットを積めるだけ積めば強いと思っていた。

 だからこそ、ヘブンフォールで積めるだけビットを積んで――楽しかった。

 

 空を彩る光たち。

 その無数の光が敵を執拗に追い。

 無数の光線を放てば、敵は羽をもがれた蝶のようにバラバラになる。

 その光景は美しく。同時に、その戦い方は――飽きが早いと思った。

 

《根黒ぉぉぉぉぉ!!! 手も足も出ないだろぉぉぉ!!!? うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!》

「カタギリさぁん。どうして俺を襲ってきたんですかー? 対戦だったら、暇な時にしたのに」

《……暇な時、この俺を、プロを相手に、暇な時、だと? ふ、ふひ、ふひゅ――聞かせてやらぁぁぁお前への復讐を!!!》

「ふ、復習? 俺は別に何も教えて……聞いてないや」

 

 カタギリさんは勝手に語り始める。

 そんな中でもビットの攻撃は止まず。

 俺はブーストにより回避に専念しながら、カタギリさんの話を聞く。

 

《あの日、お前に敗れた日……俺のマネージャーが事務所に連絡をした。プロである俺が、素人なんぞに連敗したんだ。それも完敗だ……俺はクビを覚悟した。当然だ。プロが素人に完敗するなんて許されない。結果が全ての世界……が、違った》

「……?」

《あの後、お前がホワイトレコードであるという事が明るみになって、事務所の人間たちの反応は一変した……あ、ホワイトレコードさんだったんだねぇ。なら仕方ないね! だ……どいつも、こいつも、仕方ないと俺に吐き捨てて……ふ、ふふ、ふふふ――ふざけるなぁぁぁぁ!!!》

「わ! ビックリしたぁ」

 

 俺は叫び声に驚きながらも、死角から迫った光線を回避。

 そのまま垂直に上昇すれば、カタギリさんもビットと共に追って来る。

 

《プロだぞ!! 名の通った有名人だ!! 紫電のカタギリを知らない奴はいねぇ!! その俺がぁぁぁお前に負けるのは必然だとぉぉぉぉクソがぁぁぁぁ!!!!?》

「え、えぇ、そ、そんな事言われても……そもそも、俺はホワイトレコードじゃ」

《俺は醒めない悪夢にうなされてんだ!!! あの日の光景がずっと脳裏を過る!!! お前が俺を殺して勝利しぃぃぃ!! 世間にちやほやされてぇぇぇ!! この俺を踏み台にしたテメェの憎たらしい顔がなぁぁぁ!!! ほぉぉぉぉぉ!!!》

「……へ、へへ、話聞いてくれないや……へへ」

【カタギリの闇堕ちで白飯三杯いける】

【カタギリは泣いていい】

【もう寝かせてやれ根黒】

 

 カタギリさんは金切り声を上げながら両手を振るう。

 そうして、指揮者のようにビットたちを操り――それが凄まじい勢いで迫る。

 

 通常であれば予測不能の機動。

 それらを目で完全には追えないが――大体分かる。

 

「……タイマーセット――“3分30秒後”」

《根黒ぉぉぉぉぉぉ!!!! 死ねぇぇぇ!!!》

 

 光線が死角から飛び――両手からライフルを離す。

 

 それはくるくると回転し、遠くまで飛んでいく。

 無数のビットによる攻撃が開始されて。

 俺は高機動状態で、ブーストを連続して行い回避。

 無数の光が目の前を通過し、カタギリさんの叫びと風の音が混じり合う。

 それらを聞きながら、ボタンを押して――ボックスをパージ。

 

 ガシャリと音がして、固定が外れたそれが追って来たカタギリさんの機体に迫り――光線によって焼かれる。

 

《舐めるなぁぁぁ!!!》

「そりゃそうだ!!」

 

 カタギリさんは怒りのボルテージを上げる。

 そうして、彼のマントがひらりと上がり――更にビットが射出された。

 

「え!? まだあるんですか!?」

《ふひゃひゃひゃひゃ!! お前を殺す為にビットの訓練を積んだぁぁぁ!! この俺が操れるビットの数は――30だァァ!!》

 

 全部で三十基となったビット兵器。

 それらが不規則な動きをし――攻撃の速度が跳ね上がる。

 

 四方八方から光線が飛び。

 それらをブーストで回避。

 逃げた先でも光線が迫り、機体の姿勢をずらして避ける。

 まだ終わらない。攻撃は休む事無く続く。

 

 スラスターを限界まで稼働させて。

 機体内の熱が上昇していく中で。

 ハイスピードの戦闘に――欲が生まれる。

 

「……もっと、もっとだ」

《あああぁぁぁ!? 聞こえねぇよォォォ!!!》

 

 俺は二ッと笑い――スモークグレネードを上空へと放つ。

 

 連続してスモークを放つ。

 高速移動中に全てのスモークを放てば。

 周囲一帯が濃い白煙に包まれた。

 カタギリさんの機体は消えて、ビットの駆動音が微かに聞こえる。

 すると、カタギリさんが笑みを深めて――

 

《見えてんだなぁぁぁこれがぁぁ!!!》

「……!」

 

 ビットの攻撃を察知し――後方へと飛ぶ。

 

 目の前にクロスするように光線が飛び――横へと連続ブースト。

 

 頭上から光線がスレスレに飛ぶ。

 見えている完全に此方の位置を把握していた。

 不可視の状態での索敵力の高さは――高性能レーダーを積んでいるからか。

 

「やっぱり、プロの財力は違うなぁ」

《お前に勝つ為ならぁぁぁ何だってしてやるぜぇぇぇ根黒ぉぉぉぉ!!》

 

 カタギリさんの本気。

 それを真面に受けてしまえば――欲は抑えていられない。

 

 

「――リミッター解除」

《――あぁ?》

【リミッター解除!?】

 

 

 音声コマンドによって機体のリミッターが外れて――スラスターから甲高い音が鳴る。

 

 瞬間、ブーストの出力が跳ね上がる。

 カタギリさんのビットの攻撃は大きく外れて。

 俺は不可視の状態の空で、限界を超えて――翔ける。

 

 カタギリさんは叫びながらビットを操作。

 ビットは俺を追い攻撃を放つが――届かない。

 

 全ての攻撃が空を切り。

 俺は両手のソーを展開し――斬り付ける。

 

《……!! 根黒ぉぉぉぉ!!!》

「まだまだぁぁぁ!!!」

 

 更にブースト――体から悲鳴が上がる。

 

 息が苦しい、意識が飛びそうだ。

 シートに体が埋まり、手が離れそうで――楽しい!!

 

 俺は笑う。

 大きな声を出して笑って――大空を舞う。

 

 限界の更に向こうへ。

 機体は一条の光となり。

 俺へと攻撃を放つビットを――切り刻む。

 

 一つ、二つ、三つ四つ五つ六つ――もっとだッ!!

 

 機体内の熱は最高潮に達する。

 肌が焼けるような痛みが走り。

 スーツの中は汗だくで。

 アラートが鳴り響き、生体への危険を知らせて――無視。

 

《エネルギー残量――20%》

「ハハハハハ!!! さいっっっっこうだぁ!!!」

《根黒ォォォォォ!!!!》

 

 ビットの動きが変わる。

 俺から離れていき――赤い光が見えた。

 

 瞬間、待機していた筈のカタギリさんの機体が迫る。

 速い、桁違いの速さで――ビットの推進力!!

 

 自らの装備する事で、更なる推力を得た。

 彼は俺を追い掛けて来る。

 そのまま俺たちは煙から飛び出す。

 

 引き離せない――なんて速さだ!

 

「凄いです!! カタギリさん!! そんな事も出来たんですね!」

《だぁぁぁまぁぁぁれぇぇぇぇ!!!》

 

 彼は機体をカタカタと震わせて――回転。

 

 マントが舞い上がり、その中から無数の光線が放たれる。

 一直線に伸びる光線。

 カタギリさんの回転に合わせて流れ。

 俺はそれらの攻撃を回避し――逆噴射。

 

 彼はそのまま俺を追い越し――彼は垂直に降下した。

 

 あり得ない。

 あの速度で急激な方向転換は体への負荷が凄まじい。

 が、カタギリさんは笑っていて――すごい。

 

「――良いぃ!!」

《かはぁ!!! うぎひゃひゃひゃひゃ!!!》

 

 彼はそのまま出鱈目な動きで動き。

 光線による広範囲への攻撃を続ける。

 今までの戦いで経験したことが無い狂気。

 狂っていなければ出来ない異常な動き。

 新鮮な戦闘であり、待ち望んだ闘争で――心が熱を持つ。

 

 俺たちは互いにトップスピードで駆ける。

 互いに迫り、攻撃する。

 俺のソーをカタギリさんはマントで弾き。

 カタギリさんのゼロ距離での光線をブーストで回避。

 

 俺たちは互いに離れて――突っ込む。

 

「カタギリさん!!!」

《根黒ォォォォォ!!!!》

 

 彼は光線を貯めて、俺はソーをクロスさせて――装甲が吹き飛ぶ。

 

 互いにすれ違えば――カタギリさんの装甲が舞う。

 

 彼の光線は俺のランチャーを破壊し。

 俺はカタギリさんの機体をマントごと切り裂いた。

 彼の機体はそのまま落下していき、俺は地面へと降下する。

 そうして、気が付けば雪が降っている中で。

 雪原の上を滑るように移動し……停止した。

 

《オーバーヒート――強制排熱開始》

「ふぅ」

 

 装甲が開かれて、中に溜まった熱が出て行く。

 この間は俺は移動も攻撃も出来ず――背後から凄まじい殺気を感じた。

 

 

 

《油断したなァァ!!! 終わりだァァァ根黒ォォォォォ!!!!》

 

 

 

 カタギリさんの声。

 彼の機体はボロボロだが、死んではいない。

 残された二つのビットの銃口は俺の機体に向けられていた。

 エネルギーを限界まで溜めて、それを放とうとし――俺は礼を伝えた。

 

 

 

「ありがとうございました」

《――――ぁ?》

 

 

 

 言葉を伝えたと同時に――破壊音。

 

 バックカメラで確認すれば、カタギリさんの機体の上半分が吹き飛んでいた。

 バラバラであり、コックピットがむき出しの状態で。

 下半身と共に、彼は落下した。

 

 雪が舞う中で。

 視線を向ければ、遠く離れた山の中腹にて此方を見つめる対艦ライフルが見える。

 俺は自らの仕込んだタイマーのズレを認識した。

 

「うーん。やっぱり人相手だと難しいなぁ。今のでコックピットを潰すつもりだったけど」

【…………え?】

【…………何が…………どういう?】

【理解不能!】

 

 コメントを見れば困惑していた。

 俺は彼らの為に説明する。

 

「今のはライフルを設置して、タイマーで攻撃したんですよ! 昔はよく使ってて、上手くできるようになった時は凄く興奮しましたよー! 誘導さえ出来れば、結構、簡単に真似できますよ!」

【かん、たん……?】

【タイマーって……え、全部、計算して……?】

【やべぇよ鳥肌がすげぇんだけど!?】

 

 俺はリスナーさんたちが盛り上がっているのを確認した……よし!

 

 今日の配信もばっちりだと思った。

 そうして、帰ろうとして……そういえば。

 

 カタギリさんの機体に目を向ける。

 見れば、彼はコックピットのシートに座っていた。

 ヘルメット越しに真っすぐに俺を見つめていた……分かっていますよ。

 

「……また、バトルしましょうね! それじゃ」

【……え、そのままは……え?】

【か、カタギリ……ぶふ!】

【カタギリ氏、見逃される】

 

 俺はエネルギー残量を気にしつつ。

 リンクシステムで対艦ライフルを引き寄せて両手で掴む。

 機体の姿勢を低くし、飛び上がろうとした。

 すると、コメント欄が後ろと言っていて……ん?

 

「あ、カタギリさんだ……何してるんだろ?」

「――――!!」

 

 何かを叫んでいる。

 そうして、手に持ったハンドガンで俺の機体を攻撃していた。

 が、そんなものでは大したダメージにはならない。

 

「……ま、いっか!」

【カタギリは今日も寝れないね!】

【カタギリは泣いていい】

 

 俺はそのまま空へと飛び上がる。

 チラリと見れば、カタギリさんは地面に膝をついて何かを叫んでいた。

 本当に面白い人だと思ったが。

 彼の成長は凄まじく、もし次があるのなら……ふふ。

 

「また、戦いたいなぁ」

【そういうところだゾ】

【厄介なファンが増えちゃうなぁ】

 

 コメントで何故か心配されながらも。

 俺は更なる闘争を夢に見て、心をぽかぽかとさせていた。

 

 ○

 

 負けた……完敗だ。

 

「は、はは……何だよ。お前……マジで、意味が……は、はは」

 

 バチバチとスパーク音が鳴る。

 露出した配線から火花が散り。

 俺はシートに背を預けながら、俺に視線を向けて来る根黒の機体を見つめた。

 

 灰色の何処にでもある量産型。

 が、チューニングはピーキーで。

 一撃でも当てられたら、絶対に破壊できる筈だ……それでも、出来なかった。

 

 強い。圧倒的なまでに奴は……勝てねぇよな。

 

 世は広い。

 プロとして腕を磨いてきたこの俺が。

 あの男との戦いで初めて、壁というものを知った。

 

 思えば、此処までマジになったのはいつ振りか。

 あの男との戦い、その敗北で火がついて……尊敬って、やつか?

 

 恨んでいた。

 激しく怒っていた。

 が、俺は奴の腕だけは認めていた。

 

 力をつけて再戦して。

 結果、負けたっていうのなら……認めなきゃならねぇ。

 

「負けたよ。完全にな……さぁ、殺せ。それで、幕を引いてくれよ。戦友」

 

 俺は笑みを浮かべて目を閉じる。

 これで、ようやく、俺は眠りに…………ん?

 

 機体の音がした。

 動いている。

 目を開ければ――背を向けていた。

 

「……おい、何してる……俺は、生きてる……戦いは、幕は……おい、おいって……待てよッ!!!!!」

 

 

 奴は俺を――見逃した。

 

 

 戦いにおいて、傭兵がトドメを刺さずに見逃す事。

 それは即ち、相手に対しての慈悲と――憐れみ。

 

 奴は俺を憐れんだ。

 殺してしまえば、俺にとって不都合が起きてしまう。

 可哀そうだから見逃してやろうと――ふざけるなよ。

 

 俺はシートベルトを外す。

 そうして、転がるように機体から飛び出した。

 そうして、走る。

 

 走って、走って、走って――奴へとハンドガンを向ける。

 

「根黒万太郎ォォォ!!!! 逃げるなァァァァ!!!!!」

 

 俺は何発も撃つ。

 奴に対して、俺へと意識を戻すように警告する。

 叫んで、叫んで、叫んで――奴がちらりと俺を見る。

 

 

 俺は薄く笑みを浮かべて――絶望した。

 

 

 奴は空を見上げる。

 そうして、そのまま――飛び立った。

 

「あ、あぁ、あぁ、そんな、そんな――――ああああぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 雪が降る中。

 俺は膝を屈する。

 

 最強の傭兵、ホワイトレコード。

 そして、俺の宿敵となった男、根黒万太郎は――“俺を辱めた”。

 

 

 

「俺を見ろォォォォ!!!! 根黒万太郎ォォォォォ!!!!!」

 

 

 

 奴はもう俺など見ていない。

 あっという間に空の彼方へと消えて行った。

 俺は空に見える奴の影を見つめて――血の涙を流した。

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