底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:オタリオン

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第84話:おはようクソボスさん

 グリードへとログインし、試験場内を飛ぶ。

 現在は東エリアから北エリアを目指していた。

 

 ゲーム内時刻は午前8時。

 濃い霧が立ち込める湿地帯のエリアの上を飛んでいるが。

 広大な沼地には巨大な鋼鉄の亀のようなエネミーが何十体もいる。

 エネミーたちは目を真っ赤に光らせて、がばりと甲羅の装甲を展開。

 そこから伸びた砲から砲撃してきていた。

 

 霧が濃くて最初は見えなかったが。

 火薬の一瞬の爆ぜる音と光で位置や姿が一瞬だけ見える。

 

 砲弾の弾道を予測し、危なげなく回避。

 あまりギリギリ過ぎれば、砲弾が爆ぜた瞬間に鉄片が機体に当たりダメージを負う。

 だからこそ、砲弾が放たれるタイミングを見極める。

 攻撃はせず、そのまま避けながら移動を続ける。

 

 何発もの砲弾が空中で爆発し、霧の中でどんどんと音が鳴り響く。

 レバーを操作しながら、俺は周囲を確認し……。

 

「……はぁ」

「……おい。さっきからため息ばっかやめろよ。超うぜぇんだけど?」

【なんかあったの?】

 

 配信は既に開始済みだ。

 ため息をついていると指摘されて俺はハッとした。

 

 すぐに笑みを浮かべて何でもないと嘘をつく……言える訳ないよね。

 

 昨夜から親友の妹と同棲を始めただなんて言えない。

 信じてくれるかも怪しい突飛な話だ。

 信じてくれたとしても、死ぬほど心配されるだけだろう……もしくは炎上する。

 

 俺はため息をつくのを我慢しながら空を飛ぶ。

 同棲の件は、もうどうしようもないだろう。

 彼女は強引であり、意思が強い女性だ。

 俺は意思が弱い方の人間で……彼女が飽きて帰るまで待とう。

 

 ブラックレコードさんが彼女を引き取りに来てくれるのがベスト。

 俺はそう考えながら、空を飛び……ん?

 

「あれ、光ってる……何だろう?」

「……お」

【チカチカ光ってるねぇ。お宝?】

【行って見よう!】

 

 リスナーさんたちも興味があるようだった。

 俺は試しに行って見る事にした。

 敵の砲撃を回避し、そのままスピードを上げる。

 

 光の発生源は、まるで信号でも送っているようだ。

 霧の奥で何度も光っては消えてを繰り返していた。

 ピを見ればにやにやとしている……まぁ悪いものではなさそうだ。

 

 警戒はしつつ、光の発生源である場所を目指す。

 近づけば、光が強くなっていき、段々とその場所も見えてきて……ん?

 

「……アレは……天文台か?」

「ご名答! お前、運が良いぜぇ。ふふふぅ」

【ピの反応からして……良いものかなぁ?】

 

 リスナーさんたちも予想している。

 俺は周囲をサーチして敵が潜んでいないこと確認し。

 そのまま天文台の破壊された壁から中へと侵入する。

 

 床を滑りながら着地。

 そのままセンサーを前に向けて……ん?

 

「金属のサークルに……何かの装置か?」

「ふふぅ。分からないだろぉ? 分からないよなぁ。じゃ教えてやるよ……これこそが! 昨日お前に教えてやったぁ――転送装置だぁ!」

「……! これがか!」

【転送装置? つまり……一瞬で場所を移動するやつ?】

【あぁ、そういえば他の配信者のアドバイザーも言ってたな。へぇこれがねぇ】

 

 知っている人と知らない人がいるようだ。

 取り敢えず、見つけたのなら使ってみたいと思うが……でもなぁ。

 

「北のエリアを探索する予定だったんだけど……うーん」

「おいおい、折角見つけたのに……使わないのかよ。ありえねぇ」

【使っちゃいなよ!】

【折角だしさ! ね!】

 

 リスナーのコメントを見れば、使ってみろという意見が多い。

 俺としては予定通りに進めたいけど……いや、でも、そうだな。

 

「……ここでこれを使う事で……良い流れに繋がる、かも?」

「お? 使うのか? いいじゃんいいじゃん! そうこなくっちゃね!」

【責任は持てないけど……根黒さんなら大丈夫っしょ!】

 

 リスナーの人たちが喜んでくれている。

 俺は転移装置の使い方についてピに尋ねた。

 

「先ずはあのサークルの中に入れ! あの中心で暫くホバリングしてな! 後は、僕がやってやるからさ!」

「……因みに、転移先は完全にランダムなんだよな?」

「当然ね! 行ってからのお楽しみ! 良い場所に繋がっている事をパパに祈れよ!」

「……パパって誰だよ」

【パパ……創造主的な意味かな?】

 

 ピは俺の質問を無視し、げしげしとヘルメットを蹴って来た。

 俺はため息を零し、言われた通りにサークルへと向かう。

 ホバリングをしながらサークルの中心にて待機。

 すると、ピが短い手を動かして空中にディスプレイを投影する。

 

「――――」

「……?」

 

 もの凄い高速で何かを喋り始めたピ。

 聞き取れないほどの早口であり、何かのコマンドを打ちこんでいるようだ。

 待っていれば、サークルから起動音が聞こえて来た。

 点滅していた赤い光は青に変わり、ゆっくりとサークルが回り始める。

 

「おぉ」

【……この時に敵来たら最悪だね!】

「それ、俺も思いました!」

 

 リスナーさんのコメントに反応する。

 敵が来ない事を祈りながら待つ。

 すると、サークルは高速で回り始めてスパーク音が鳴り響く。

 

 転送が開始されて、機体全体が光の包まれて――……

 

 

 

 ……――視界が元に戻る。

 

 瞬間、周りの景色が――真っ赤に変わる。

 

「え、あつぅ。なぁにこれぇ?」

【燃えてるねぇ。見たところ、戦場後っぽいけどぉ?】

【へぇこんな場所もあるんだなぁ】

 

 炎だ。

 見渡す限り炎の海だった。

 シップか何かの残骸はどろどろに溶けている。

 メックらしきものも何体も転がっているが生体反応はない。

 

 エリアに設置されたオブジェクトか。

 将又、プレイヤーだったものなのか……なんかすげぇ嫌な予感が?

 

「取り敢えず、此処は……あぁぁ」

 

 マップを確認して……中心に近い西のエリアってとこか?

 

 まずまずの結果か。

 そんな事を考えて――警報が鳴り響く。

 

「え? な、何?」

「――おいおいおい! 大当たりじゃん! やったなぁ!」

 

 俺が突然の警報に狼狽えていれば、ピはばしばしとメットを叩き興奮する。

 俺は大当たりというワードに期待で胸を膨らませた。

 

「え!? 大当たり!? どんなお宝が」

「――デスパレードだァ!!」

「――へ?」

 

 

 ピが狂気的な笑い声をあげて――瞬間、空気が振動するほどの音が響き渡る。

 

 

「上ッ!」

 

 俺は瞬時に上空にセンサーを向ける。

 すると、黒い雲の中から数十機のメックが飛び出してきた。

 どれも機体がボロボロで、何体かは炎を纏いながら飛んでいた。

 

《――で、あれ――そこ――まえ!》

「え、何?」

 

 何かと交戦している。

 そして、此方に気づいたプレイヤーらしき人間が通信を繋げようとしてきた。

 が、ノイズが多くて何を言っているか聞き取れない。

 

 ノイズを除こうとし――強烈な白い光が発生した。

 

「――ぇ?」

 

 一瞬の閃光。

 そして、轟音が響き渡り地面が大きく揺れる。

 が、光はが晴れれば――全てのメックが爆散していた。

 

 何が起きた。

 何がメックたちを殺した。

 

 ひらひらとメックだったものの残骸が落下していく。

 周囲を見れば、幾つもあったオブジェが消失していた。

 

 

 何が、どうして、どのように――瞬間、雲からそれは姿を現した。

 

 

 「――っ!」

 

 一言でいえば――蛾だ。

 

 鋼鉄の体の巨大な蛾だ。

 大きさは軽く100メートルを超えている。

 二対の羽を生やし、体中に無数の穴が空いていた。

 傷ではない。何かを発射する為の穴だ。

 胴体部には人間の手のようなものが六本生えていて、印のようなものを結んでいた。

 蛾の顔には奇妙な仮面のようなものがあり――奴はセンサーを真っ赤に光らせた。

 

「戦えよ。そして――奪い取れ」

「奪い取れ? 一体、何を――っ!」

 

 ピに質問しようとし――怖気が走る。

 

 俺は瞬時に空へと飛び立つ。

 その直後に、蛾が羽を羽ばたかせて――体中の穴から青白い光の線が放出された。

 

 それらは奇妙な軌跡を描きながら、空を覆い尽くす。

 瞬く間に、周りの空間へと広がって――強烈な白い光が発生した。

 

 俺は理解するよりも早く機体を操作する。

 瞬間、勢いよく機体の隙間を何かが通り過ぎていった。

 

 発光は一瞬で収まる。

 俺は空を翔けながら地面を見て――絶句した。

 

「何だよ、あれ」

 

 地面には無数の――風穴が開いていた。

 

 100や200ではない。

 万を超えるほどの小さな穴であり、地面が溶けていた。

 先ほどの光は攻撃だ。

 そして、あの攻撃が当たれば――ほぼ即死。

 

「逃げれると思うなよ? アイツと会った時点で、やる事は決まってるんだからね! アイツの体にあるものを奪わない限り――お前は此処から逃げられないんだよ」

「……はは、嘘だろ? それのどこが大当たり何だよ」

「大当たりさ! 無事に奪う事が出来れば、ね? ふふふぅ。さぁ、頑張ってよ。死なないようにねぇ!」

【こんなのおかしいよ!】

【根黒氏、運が無さすぎるよ……(愉悦)】

 

 俺は宙を舞いながら、武装を構える。

 ピはその間も必要な説明を一方的に話して来る。

 

 弾薬の消費は気にするな。

 奪えさえすれば失った弾薬は元に戻る。

 機体のダメージも即時回復で、奪えばその上に報酬まで貰える。

 

 接敵するのは稀であり、本当に運が良かったらしい。

 目的さえ果たせれば、今後の予選の戦いで有利に事を運べるものが手に入るとピは熱弁する。

 

 超危険な任務だが、挑戦する甲斐はある。

 地面に転がっていた残骸などは恐らくは戦闘で殺されたプレイヤーたちのもの。

 プレイヤー同士の殺し合いの他に、こんな間引き方まで用意しているとは……お、恐ろしい。

 

 他のプレイヤーたちが来る可能性もある。

 その前にケリをつければ総取りらしい……はは。

 

「意味わからねぇけどさ――や、やってやるよォ!!」

「やったれやったれぇ! ひゃははは!」

【血祭りじゃぁぁ!!】

 

 毎回毎回、どうしてこうなるのか。

 蛾のような何かは空を舞いながら、今度は光の粒子を胞子のように巻き始める。

 レーダーが高熱源反応だと警告し、触れてはいけないものだと一瞬で理解した。

 

 理解したが――どんだけ撒くんじゃぁぁぁ!?

 

 空が光の粒子で覆われていく。

 俺はこのままでは移動すら出来なくなると悟った。

 急いで目的のものを奪う為に、奴へと向かって移動を開始する。

 

 ぐんぐんと距離を縮めながら、危険な光の粒子を避けていく。

 そうして、奴の体をサーチしようとし――瞬間、超音波が発生した。

 

「ぐあぁぁ!? 何だよこれぇぇ!!?」

「アイツの超音波攻撃だ!! 機体にダメージは無いけど、操縦者に精神的ダメージを耳が痛いぃぃぃ!!」

【頭がぁぁぁ!?】

【あああぁぁぁ!!】

 

 視界が揺れる。

 脳がシェイクされているようであり、吐き気がこみあげて来る。

 瞬間、奴から殺気を感じて――ブーストする。

 

 その直後、爆発音が連続して響き。

 奴の穴という穴から無数の弾丸が放たれた。

 俺は視界を揺らしながらも、感覚のみで弾幕の中を縫うように移動する。

 

 右へ左へ、下へ上へ。

 回避、回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避――まだ続く。

 

 機体を回転させてブーストも多用。

 ガラガラと響く発射音とむせ返るような火薬の臭い。

 頭がシェイクされた直後で頭が回らないのに。

 馬鹿見てぇな一斉砲火の中を飛び回り――嘘だろ!?

 

「長すぎるぅぅ!! 弾幕が濃いぃぃ!! てか、アイツ距離を取って!?」

「アイツは嫌らしいからな! 死んでも距離を取らせるな!」

「いや簡単に言うけどさぁぁ!?」

【やけくそ攻撃に嫌がらせ音波に即死級のフラッシュぶっぱ……極悪すぎる!!】

【こいつはぁクソボスですね!(白目)】

 

 奴は距離を取りながら弾幕を展開する。

 何とか接近しようと試みて――再び超音波が発生した。

 

「ぐぁぁぁ!! 頭がぁぁぁ!!?」

「ぎぎぃぃぃぃぃ!?」

【ひぎぃぃぃぃ!!?】

 

 音波攻撃によって感覚が狂う。

 瞬間、奴の体からの銃撃が止み――光の線が空を覆う。

 

 まずい。

 そう認識し――強烈な閃光が迸る。

 

 俺は何とか攻撃があたる寸前で機体の姿勢を変える。

 瞬間、またしても何かが一瞬で機体の隙間を通過していく。

 光が晴れれば、地面にまた新しい穴が無数に出来上がっていた。

 

「はぁはぁはぁはぁ!! くそがぁぁぁ!!!」

「頑張れ頑張れぇぇ!! ひゃっはー!」

【早く終わらせてくれ! 頭が痛い!】

【二日酔いの俺にはじごおろろろろ】

【めでぃぃぃくぅぅぅ!!

 

 俺は奴へとブーストで迫る。

 超音波による攻撃が再び発生したが。

 気合と根性で耐える。

 

 俺はそのまま奴の背中の方へと回り――アレか!

 

 センサーを拡大させる。

 すると、奴の背中の中心部に埋め込まれたような赤い宝石を見つけた。

 そこから根のようなものが伸びている。

 大きさは機体の手で掴めるほどの小ささだ。

 

 俺はすぐに背中のそこへと迫り――悪寒が走った。

 

 瞬間、キィンという謎の音が響き渡り――“システムが完全停止した”。

 

「はぁぁぁぁ!!?」

【まずいまずいまずいまずいぃぃぃ!!】

 

 俺は驚き叫ぶ。

 が、体だけは瞬時に反応し復旧のプロセスを1秒以内に完了させる。

 

 瞬間、モニターに映像が戻り――センサー一杯に敵のシルエットが。

 

「あああぁぁぁぁ!!?」

 

 俺は驚異的な反応即で機体を連続ブーストさせた。

 シートに体が押し付けられて、呼吸が一瞬止まる。

 無理矢理な加速によって、迫りくる巨体をギリギリで回避する。

 

 眼前に迫っていた敵。

 奴は風を纏いながら、突進からの逃げの行動を取る。

 ご丁寧に、再び光の粒子を空に散らばらせてもいる。

 俺は呼吸を大きく乱しながら、何と邪悪な敵なのかと戦慄した。

 

「システムの完全停止って……が、害悪過ぎる!」

「性格の悪さはトップクラスだよね! 生まれた事が罪な奴なんだよ! ぺっ!」

【ボブは中指を立てた】

【ファック!(挨拶)】

【こんな奴ばっか! まいっちゃうよね! ハハ!】

 

 奴は空を舞いながら再び距離を取っていく。

 俺は予選で突如始まったクソボス戦に狼狽えながらも。

 これも俺の成長の糧になると信じて――雄叫びをあげて敵へと向かっていった。

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