底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
耳が痛みを発するほどの音波攻撃。
脳を揺らしながら飛行すれば、高速で光の玉が迫る。
ブーストで回避し、避けられないものは弾丸で撃ち落とす。
機体を常に動かし、敵を視界に収めながら滝のように汗を掻く。
「はぁはぁはぁ――クソ過ぎでしょぉぉぉぉ!?」
「ぎゃははは! 最高! でも、死ぬんじゃねぇぞぉ!」
【戦闘開始から30分くらい? えげつねぇな】
照準を定めてショットガンの弾丸を放つ。
リコイルを感じながら、フルコン状態で空を舞う。
無数の光の玉。それらが、まるでビリヤードの玉のように弾かれる。
他の光の玉と反発しあい。
それらが機体目掛けて迫って来るのだ。
弾丸で四散させる事は出来るが、数が多すぎる。
攻撃、回避――加速し回避。
機体の加速でシートごと体が揺れる。
近くでスパーク音が響き、嫌な汗が流れ出る。
心臓は激しく鼓動し、吐く息は熱を持つ。
右へ、左へ。
高機動戦状態に突入し――まだ終わりが見えない。
あれからどれだけの時間が経ったか。
何とか敵のギミックを攻略し。
一度はあの謎の宝石に触れる事は出来た。
後は引き抜くだけだったが……問題はその後だ。
後少しというところで奴は体を激しく回転させた。
俺は溜まらず、奴から離れたがそれが間違いだった。
奴はそのまま無数の光の玉を体中から放出し。
それらは浮遊している状態から動き回るように変化していた。
更に、敵の移動速度も跳ね上がり、一撃必殺攻撃のモーションも大きく変化した。
一撃必殺には確かなタイミングがあったが。
その発射のタイミングは0.1から1秒ほどの間隔でずれが生じていた。
その間隔のズレに関しては、光の発光具合で何とか判別は出来る。
が、一瞬で判断しなければ蜂の巣だ。
ストレスはマッハであり、禿げそうになっていた。
更にだぞ?
やけくそ弾幕に関しては、弾の数ほど増えていないものの。
弾そのものが改造されたものに変わっていた。
全部ではない。展開された弾幕のほんの一部。
五千分の一かもっと下か。
その程度の割合で――スタン弾が混じっている。
接触型じゃない。
近接感知であり、近くを通っただけで起動する。
スタンに触れれば最期であり、その場に少なくとも数秒の間、硬直する。
傭兵にとっての数秒は運命が決まるには十分すぎる時間だ。
見分けはつく。
弾丸の形状も違えば、大きさも少しでかめだ。
つくけども、濃い弾幕の中で回避だけならまだいける。
が、正しい回避ルートをその場で決めるスキルが求められる。
全てがその場での判断。
間違えればゲームオーバー。
気の抜けない時間であり、それが何十分もつづいて……ふ、ふふ。
「クソ、クソクソクソクソ……た、楽しいぃ」
「……は?」
【……あ】
【スイッチ入った?】
俺は汗を流しながら笑う。
そうして、再び敵が弾幕の展開を開始する。
それを見ながら俺は機体を回転させて――弾幕の中へと飛び込む。
見れば、レーダーが別の機体の反応をキャッチ。
弾幕を避けながら、あの宝石を目指しているのが分かる。
協力する気はない。
敵対する気も今は無い。
が、折角のプレイヤーの参戦だ――利用しない手はない。
俺は敵から敢えて距離を取る。
弾幕を回避し、スタン弾を避けながら上昇。
そのまま上空から戦況が確認できる位置に入る。
「機体は4機……2機は余裕がある。もう2機は……いや、1機だな」
スタン弾に接触し、1機は硬直。
そこへ弾丸が殺到し、派手なカラフル機体は爆散した。
熟練のパイロット2機は最短距離でボスへと向かっている。
何方も重量級の機体だが、見た目以上に動きは軽やかだ。
ブースト性能が高く、運動性能も上げているのか。
黒を基調とし単眼で丸みを帯びた装甲にバズーカを装備しているのがやや先頭。
白と青のツートンで手足の装甲が厚く。
三つのセンサーを持つチェーンソーとサブマシンガン装備の機体がその後ろからついていっている。
中々の連携だ。
恐らくはリアルで繋がりがあるんだろう。
アレであれば、宝石まで届くかもしれない。
俺はそう判断し、彼らの飛行を観察する。
「……10……30……いや、60か」
「は? 急に何言って――うひ!?」
【仕掛けるのか?】
俺は観察を止める。
敵は電波攻撃をしながら、一撃必殺のモーションに入る。
あの二機は動きを僅かに乱しながらも迫っていく。
避ける自信がある。そういう動きだ。
俺は口角を僅かに上げる。
そうして、次の瞬間には――強烈な閃光が走る。
俺は機体を加速。
激しく回転させて――右へとブースト。
瞬間、勢いよく見えない何かが機体の傍を通過。
光は収まり、あの二機は敵の背中に到達していた。
背中へと着地し、武装をサブアームでマウントさせる。
そうして、ご丁寧に敵の体にアンカーを打ちこんでいた。
オプションであり、普段使いで砲撃でもしているんだろう。
そう思っていれば、二機は背中の宝石を抜こうとし――敵が激しく回転する。
振り落とす気だ。
が、アンカーをさした事で簡単には振り払えない。
奴らは宝石を手に入れた瞬間にアンカーを抜き、一気に戦場を離脱する筈だ。
そうして、報酬を総取りする気で……させねぇよ。
敵は鳴き声を発しながら空中で回転していた。
俺はそんな敵へとブーストで接近し――ショットガンを放つ。
リコイルと共に弾丸が放たれた。
弾丸は敵の体に命中――把握した。
誤差を修正。
その間も敵は宝石を抜きに掛っている。
抜かれれば狙いは失敗。
外しても失敗だ。
チャンスは一度きりであり、当てるのであれば――距離を縮める他ない。
俺はペダルを踏みこみ加速。
暴れまわる敵へと接近し、回転するボスの体を撫でるように飛行する。
羽が広がっており常に動いている。
隙間を縫うように回避するが、突風で機体が激しく揺さぶれる。
少しでも動きを変えればお陀仏だ。
緊張が走り、心臓がどくどくと鼓動する。
ターゲットサイトを手動に切り替えて、視点による補正をかける。
「……すぅ」
その間も、空中では光の玉が漂っている。
俺は機体の微調整しながら、高速で回転する敵を見つめる。
突風によって機体が揺れていて、視界に映るサイトは乱れていた。
肩部のニードルスパイクは発射体勢に入る。
スパーク音とサイトからのピピピという音を静かに聞き――
「――ここだ」
「……!」
俺はニードルスパイクを放つ。
電流と火薬の爆ぜる音と共にニードルが発射された。
音を置き去りにし、そのまま高速で回転する敵へと向かい――撃ち抜いた。
敵たちは宝石から手を離す。
スローモーションの中で胴体に風穴を開けた“二機”は機体をスパークさせていた。
《――な――ばか、な――》
《冗談だ――こんなこと――嘘だ――》
敵たちの声が一瞬聞こえた。
そうして、敵はセンサーを激しく点滅させて――爆発四散した。
一発で二体を葬る。
狙ったが、ギリで成功した。
ボスは敵の反応が消えた事で回転を止める。
俺はその瞬間にショットガンの一つをサブアームで固定。
連続ブーストで迫って――露出した宝石を掴む。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
「おぉ!?」
【今じゃぁぁぁぁ!!】
ブチブチという音。
宝石に巻き付いた血管のようなものが千切れていき――完全に抜き取った。
敵は絶叫し、俺はそのまま離脱する。
ぐんぐんと距離を離していきながら後方を確認すれば――敵はゆっくりと地上に落下していく。
死んだのか。
そう思っていれば――ファンファーレが鳴る。
【ボスエネミーから宝珠の奪取を確認。報酬を与えます】
「お、おぉ!?」
機体が光に包まれる。
手にしていた宝珠と呼ばれたものは消えてなくなった。
瞬間、今までのダメージが全て回復した。
その上、武器の弾薬なども即時補給される。
エネルギーまで満タンだ。
これだけでも嬉しい報酬だが――空いていた肩部に何かが搭載された。
「これは……永久炉搭載のエネルギーチャージガン……自動照準式で、エネルギーのチャージもオート……え!? ほぼ重さがない!? 何これ!?」
「ふふぅ。凄いだろぉ? どうだぁ?」
【積載量がほぼ関係ない上に永久炉って……無限に撃てる高火力装備ってコト!?】
【こいつはいいぃ拾いもんだぜぇ】
【ぶっ殺しタァイム!】
かなりのレア装備だ。
ここで手に入れる事が出来たのは超ラッキーだろう。
俺はぐふぐふと笑いながら、予選で無双する自分を想像する。
「これさえあれば、もう何も怖くはない」
「……いや、調子にはのるなよ?」
【根黒氏ほどの腕があれば、そりゃ……ね?】
俺はピとリスナーさんの言葉にハッとする。
油断や慢心は死を招く。
このゲームで何度も学んだ事だ。
俺はそれを思い出し、正気に戻って戦闘域を離れていく。
「……まぁ、これは多分、予選が終わるまで使うとして……ちゅ、中心に行きましょうか?」
「いや、お前が決めろよ! てか、やっぱ調子にのってんだろ! このクソボケ!」
「い、いや!? だって、こんなレア武器が手に入ったんだからさ――強い人たちを殺さないと!」
「……マジで引くわ。バーサーカーかよ」
【頭バーサーカーな根黒君は誰にも止められない!】
【やめろ根黒! 戻れ!】
【所詮は先の時代の――狂傭兵じゃけぇ(諦め)】
皆が何故かドン引きしていた。
俺は何でなのかと狼狽えながらも、目標を中心エリアに切り替える。
「少しだけ、ほんの少しだけ。ね、ね?」
【必死過ぎて草】
【どんだけ殺したいのよぉぉ!?】
【仕方ないにニャァァ】
俺は目を輝かせながら中心エリアに向かう。
この活かしたレア武器でどれだけの戦闘が出来るのか。
より強い強敵を、より手強い相手を――
「殺した瞬間は――堪らないんだぁ!」
「ひぇ」
【ひぇ】
俺は強敵を求めてペダルを更に踏む。
フィールドには暗雲が立ち込めており、中心から強い気配をビンビン感じる。
俺は目を細めて舌で唇を舐めて、少し心を高揚させた。