底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:オタリオン

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第87話:更なる可能性を秘めた英雄

 大都市の中を――翔け抜ける。

 

「――ッ!!」

《――》

 

 システムが“三体のメック”からのロックオンを検知。

 機体を左右に揺らし相手の攻撃を誘う。

 が、そんな事をしている間も、建物の上の機関砲台が此方に狙いをつけて攻撃を放って来る。

 舌を鳴らしながらも、紙一重でブーストにより回避。

 火薬のたんまり詰まった弾だ。

 俺の機体に触れる事が出来ないそれらが機体近くで爆ぜる。

 ド派手な花火であり、爆炎が仮想世界の空を彩る。

 

「――っ!」

 

 レーダーが警告を発した。

 自爆ドローンの群れだ。

 前方から迫って来たそれに対して、ショットガンの弾を連続で放つ。

 散弾が敵の包囲網を乱し、眼前で大爆発が起こる。

 爆発の衝撃波で機体が揺さぶられる。

 爆炎の中を突破し、背後をバックカメラで確認。

 敵も爆炎の中を突っ切り、じりじりと迫って来る。

 

 ビル群の中を高機動状態で翔ける。

 すぐそこに巨大な建造物が迫って来るのは軽いホラーだ。

 一瞬の判断ミスでぺしゃんこだ。

 スリル満点であり、手汗が滲む。

 システムの警告音も合わさって俺の体に流れる血が――沸騰する。

 

 既にフルコン状態だ。

 闘争本能はマックスであり、本気モードと呼べる。

 

 ペダルを踏みこみ、更に加速。

 風のヴェールを纏い、大都市の空を翔ける。

 右へ左へ、感覚のみで避けていく。

 ギリギリだ。ぶつかる寸前だ。

 ビルの表面を脚部の裏で軽くなぞるように飛行しながら、バックカメラで敵を見続ける。

 

 背後からは三機の機体が迫って来る。

 軽量級の機体であり、どいつもこいつも最新の高機動モデルだ。

 

 青く細身の翼のようなスラスターが特徴の単眼タイプ。

 赤と白のツートンで大きなバックパック型のスラスターを背負った三つ目タイプ。

 灰色で機体中に傷をつけたようなデザインの脚部がロケットのようになったスコープアイタイプ。

 

 青い機体がガトリングガンとエネルギーブレード。

 赤と白の機体がパイルバンカーにハンドキャノン。

 灰色の機体がリボルバー式ロングバレルのキャノン砲にエネルギーシールドだ。

 どいつもこいつも、肩部にもレアものを装備しており相当に殺してきたんだろう。

 

 敵は此方をロックオンし――攻撃を放つ。

 

 ガトリングガンにより斉射。

 機体を回転させながら流れるように躱す。

 横へと飛べば、キャノン砲が狙いを定めて轟音を立てる。

 追撃の砲弾を直撃間際にブーストで回避。

 目の前で爆発が起き炎が広がる。

 熱をコックピット内で感じながら、僅かに速度が落ちた。

 瞬間、パイルバンカーがスラスターを噴かせて横に躍り出る。

 

 濃厚な殺気。

 次の瞬間には機体に大穴が開く。

 そんなヴィジョンが一瞬見えて――スラスターを逆噴射。

 

 くんと一気に機体をさがらせる。

 敵はその動きに合わせられず。

 咄嗟にハンドキャノンによる攻撃を放つ。

 五発の連射、それが眼前に迫り――機体の姿勢を崩す。

 

 風に揺られて、機体が大きく回る。

 弾は僅かな隙間を抜けていき、背後から迫って来た敵の攻撃を察知。

 俺はそのまま機体を下へと降下させた。

 

 センサーのすぐ前をエネルギーの刃が通過していく。

 それを見ながら、更に姿勢制御用の噴射口を使い機体を操作。

 ふわりと機体が浮き上がり、轟音と共にキャノンの砲弾が機体のすぐそばを通過した。

 爆発音を聞きながら、俺はすぐに機体をブースト。

 そのままトップスピードへと入り、次は俺が敵を追いかけた。

 

 奴らは背面飛行をし、此方を攻撃する。

 肩部のランチャーやミニガン、レーザー砲を豪勢に放って来る。

 俺はそれらの攻撃の軌道を予測し回避。

 

 回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避回避回避――加速。

 

《――っ!》

 

 フルチャージしたエネルギー弾を放つ。

 敵は左右に散開した。

 俺は右へといった青い機体を追う。

 

 互いに音速であり、音が一気に細くなっていく。

 システムが警告を発するが無視。

 敵へとサイトを合わせながら敵を追い――ニードルスパイクを放つ。

 

 敵はブーストで回避。

 俺はそれに合わせるように連続ブーストを行う。

 敵のすぐ横に張り付き、ショットガンを構えた。

 そうして、間髪入れずに弾を放ち――敵はブーストによる上昇で回避。

 

 が、その行動に――合わせる。

 

《……!?》

 

 敵が息を呑む。

 が、流石に玄人だ。

 慌てる事無く、背後の俺にスラスターによる牽制をしてきた。

 俺はそれを――予測していた。

 

 スラスターを噴かせるまでの0.1秒。

 機体を回転させて、奴の横へと回る。

 敵はスラスターを噴かせたが効果は無く。

 逆に、その行動の動作によって一手が潰されて――俺はショットガンの弾丸を見舞う。

 

 ガスガスと連続して命中音が響く。

 軽量級だからこそ、ゼロ距離での命中で装甲は貫通。

 砕けた装甲の一部が吹き飛び、オイルが噴き出す。

 配線が千切れてスパーク音を立て漏れたオイルに火がつく。

 奴は一矢報いようと手を動かし――俺は機体を動かす。

 

「――シィ!」

《――ッ!?》

 

 機体をバネのように縮ませてからの鋭い蹴り。

 スラスターを噴かせてのブーストにより瞬間的な威力が増す。

 敵のコックピッドは派手な音をたてて大きく凹む。

 敵のセンサーからは光が消えた。

 そうして、風に吹かれてひらひらとに落下していき――爆散。

 

 流星のように燃え上がった残骸がビルに激突した。

 口笛を吹き、追って来る二体の敵へと視線を向ける。

 奴らは互いに寸分たがわない連携を披露する。

 お互いに一定の速度で迫ってきて大きく回転。

 此方のターゲットサイトを大きく乱し、残像を生み出して――攻撃を放つ。

 

 ほぼ同時の攻撃。

 一瞬で迫る弾丸や砲弾。

 俺は機体の姿勢を変えてそれを紙一重で回避。

 敵はそのまま連続ブーストで迫り、俺を回転の中心へと追い込む。

 逃れようと試みる。が、ブーストを合わせて来た。

 あっという間に囲いの中で、俺は減速を試し――これも合わされた。

 

 攻撃が来る。

 そう察知し、一気に加速。

 爆発音と共に砲弾と弾丸が回避行動を取った俺の機体の隙間を通過。

 奴らは俺を逃す事無く檻の中に閉じ込めた。

 そうして、連続で攻撃を放って来る。

 

 砲弾の連射は出来ない。

 が、ハンドキャノンは連射が出来る。

 ハンドキャノンを回避し続ければ、キャノン砲による攻撃が来る。

 肩部のミニガンやランチャーもタイミングをずらして放って来る。

 常に敵は回転し、どのタイミングでどこから来るのかは予測不可能。

 同士討ちを狙うが、相手はプロだ。

 巧みな操縦で、互いの機体に攻撃が当たらないように攻撃している。

 俺は直前の閃光と音。後は殺気でのみ回避の判断をするだけで――脱出不可能。

 

「――ハハァ!! 良いねぇ!!」

「お、お前! 何を!?」

【もっとだァ!! 心を! 魂を!! 燃やせェェェ!!!】 

 

 俺は覚悟を決めた。

 リミッターを解除。

 出力の限界値を排して――加速。

 

「……っ!」

 

 シートへと体が押し付けられる。

 びりびりと手足が振動で痺れる。

 敵たちを見れば、それにすら合わせて来た。

 俺は汗を垂らしながら、にやりと笑い。

 

「何処までついてこれる? さぁ――飛ぶぞォ!!」

《……!!》

 

 俺は歯を食いしばる。

 そうして、機体を加速させていく。

 中心エリアで、ビル群を避けていく。

 迫るスピードは跳ね上がり、もはや形が見えなくなるほどに一瞬だ。

 それらを己の本能を信じて避け続ける。

 

 避けて、避けて、避けて避けて避けて避けて避けて避けて――上昇。

 

「ぐ、うが!?」

 

 急な進路の変更。

 機体が大きく軋むような音を立てる。

 装甲が今にも剥がれて空中分解しそうで――問題ない!

 

 急激なGにより体からも嫌な音が鳴り響く。

 口内に鉄錆の味が広がり、俺はそれを唾と共に飲み込む。

 相手はそれすらも合わせて共に上昇。

 が、明らかに機体の動きが鈍っている。

 攻撃のタイミングもずれが出てきていた。

 

 意識が朦朧としている。

 俺もそうであり、辛うじて繋げているだけだ。

 システムが警告してくる。

 急激な上昇によって酸素の供給が間に合わないと。

 意識レベルが低下しているとも言っていた。

 

 スピードを上げ続けて、雲を抜けていき。

 空の青みが濃くなっていく。

 空気が冷たくなっていき、センサーの端から氷結が出始めた。

 

 

 寒い、寒い……眠ってしまいそうだ。

 

 

 俺は目を細めていく。

 

 鼻から何かが垂れている。

 

 

 段々と心地よくなっていく。

 

 

 

 このままぐっすりと眠って――唇をかむ。

 

 

 

「……!」

 

 鋭い痛みが走る。

 瞬間、意識が僅かに戻った。

 システムが異常を知らせていた。

 俺はすぐにボタンによって操作し、凍結状態を装甲の僅かな動きで解除。

 そのまま装甲を戻し、振り返って――加速。

 

 敵たちは遅れていた。

 回転はしているが、意識はほとんどない。

 そんな敵を見ながら、俺はニードルスパイクとチャージガンで狙いをつけて――放つ。

 

 瞬間、二機の機体は――爆ぜた。

 

「いや、違う!」

《――ッ!》

 

 ニードルスパイクは敵の赤と白の敵のコックピットを撃ち抜いた。

 が、チャージガンの方は咄嗟に敵が回避した。

 咄嗟にエネルギーシールドを展開した事で致命傷は回避できていた。

 装甲の半分は焼けているが――生きている。

 

 奴はそのまま地上へと降下していく。

 限界を超えての急降下であり、此方へとキャノンの銃口を向けていた。

 

「――チキンレースか!! 面白れぇ!!」

「……ぅ!」

【先に動いた方が死ぬ。シンプルで良いね!】

 

 相手は全力でスラスターを噴かせて降下していく。

 互いに成層圏を超えて、熱のコートを纏う。

 システムが再び警告を発し、機体内が熱くなっていく。

 サウナ状態であり、目に汗がかかるが決して閉じない。

 俺は奴へとニードルスパイクとチャージガンを向け続ける。

 

 どんどん地上が迫っていく。

 大都市は目前で、それでも奴は動きを変えない。

 此方も一切進路を変えずそのままだ。

 

 ビル群が迫り、地面がハッキリと見えて来た。

 それでも動かず、降下していく。

 

 まだ、まだ、まだまだ、まだまだまだぁ――まだッ!

 

 俺は鼻血を出しながら笑う。

 瞬間、すぐそこに迫る地面に怖気づいて――敵が動く。

 

「――ふぅう!!」

 

 俺はそれに合わせるようにスラスターの向きを変えた。

 そうして、同時にニードルスパイクによって攻撃を放つ。

 

 敵は咄嗟にシールドを展開。

 が、貫通性能を高めてあるニードルスパイクは完全に防げない。

 シールドを貫通し、敵の腕を破壊した。

 俺はそのままフルチャージのエネルギー弾を放つ。

 奴は生き残る為に、最後の力を振り絞って連続ブーストし――避けた。

 

「まだまだァ!!!」

 

 俺は叫ぶ。

 そうして、すぐそこに迫った地面から――機体を逸らす。

 

 僅かに脚部で地面を擦る。

 システムが損傷を知らせて、姿勢が乱れた。

 が、勘だけを頼りにサブスラスターと噴射口によって姿勢を立て直す。

 一秒のディレイも無く、そのまま回避した敵へと迫り――ゼロ距離で敵の背中に二つの銃口を突き付けた。

 

 

「――Good night!」

《――ハハ、最高――――…………》

 

 

 何かを言っていた。

 が、一瞬だった。

 連続して散弾を放てば、敵は機体を穴だらけにする。

 そうして、そのまま地面にぶつかり手足をバラバラにした。

 ゴロゴロと派手に転がって――爆散。 

 

 俺はそのまま地面に脚部をこすり付ける。

 激しく火花を上げながら、アスファルトの地面を滑っていき――停止。

 

 瞬間、システムが全ての装甲を緊急展開し排熱。

 俺は熱した体に一気に空気を取り込む。

 機体内の熱は一気に下がっていき――俺は笑った。

 

「超!! 気持ちぃぃぃぃ!!!」

「はぁはぁはぁはぁ……い、いかれてる。こいつは絶対に……まともじゃ、ねぇ!」

【何処までも自由に。そして理不尽に……素敵だ】

【ナイスファイト!】

 

 俺は笑う。

 心臓はまだバクバクとしているが。

 これはストレスや疲れからではない。

 最高に楽しいバトルが出来て勝利する事が出来たからこその――トキメキだ!

 

 やっぱり、ゲームは最高だ。

 タイタングリードは神ゲーで……あぁ、ダメだ。

 

「もっと、もっと……強い人と、戦いたい。ぐふ、ぐへ」

「……薬やってんのか?」

【電子ドラック?】

【最高にハイってやつだぁぁぁ!!】

 

 俺は涎を垂らして笑う。

 そうして、正気に戻って早く次の獲物を探しに行こうと――瞬間、レーダーが敵影をキャッチ。

 

「お! 本当はエネルギーの補給をしたいけど、まぁもう一回なら――ッ!!」

 

 

 俺は楽観的に一体だけならと向かおうとし――心が警鐘を鳴らした。

 

 

 凄まじいプレッシャー。

 

 おぞましいほどの闘争心。

 

 みのけもよだつほどの何かを感じ取った。

 

 

 隠れる。逃げるか――否、間に合わない。

 

 

「……上!?」

 

 

 レーダーから敵の反応が消えた。

 不具合かと思ったが、俺は反射的にビルの上を見た。

 すると、そこには――――“伝説がいた”。

 

 

《――――》

「ぅ、ぁ……嘘、だろ?」

「……っ」

【おいおい、マジかよ……これはダメだ】

 

 手にしている装備はただのブレードだ。

 二本のブレードであり、肩部には二つのエネルギー兵装。

 装備だけであれば、確実に此方が上だ。

 勝てる筈で――――が、心は逃げろと叫んでいた。

 

 闇のように黒い装甲。

 くすんだシルバーが所々にあり、ライン状になったセンサーは鮮血のように赤い。

 魔王のように圧倒的な恐ろしさを感じさせながらも、神の如き神々しさも感じる。

 異質な魅力を放つ機体であり、今まで見た事がないほどに――危険を感じる。

 

 勝てるヴィジョンが全く見えない。

 相手の装備は明らかに此方の下だ。

 が、あの纏う空気から予選だけで何十ものプレイヤーを殺してきたのは一目瞭然だ。

 その筈なのに、ブレードには一切の刃こぼれが無い。

 それどころか、敵の装甲には傷らしきものはまるで見えない。

 

 

 無傷であり、ノーダメージで――それほどまでの強さという事だ。

 

 

「ブラック、レコード」

《――――》

 

 

 気づけば、奴の名前を呟いていた。

 奴はゆっくりとブレードの切っ先を俺に向ける。

 殺意は感じない。闘争心も欠片も感じない。

 奴から漏れ出すのは奴そのものの強さなのか。

 俺は体を震わせながらも、武器を構える。

 

 やるしかない。

 逃げても無駄だ。

 アイツに背を向けた瞬間に――死ぬ。

 

「は、はは……まさか、此処で、とはな!」

「やめろ。今の状態じゃ、お前でも!」

【根黒!!! 逃げろ!!!】

【逃げて!!! お願いだから!!!】

 

 ピとリスナーさんたちが逃げるように言ってくる。

 が、皆も気づいている筈だ。

 既に奴の視界に入った時点で退路は断たれたと。

 

 やってやる。

 本選を待たずして、此処で決着を――通信が繋がされる。

 

《……去れ》

「……! 何を、言って」

《去れ――次は、無い》

「……っ!」

 

 瞬間、奴は殺気を放つ。

 今までに感じた事が無いほどの濃厚な殺気。

 歯がガチガチと鳴り響き、手足が自分でも抑えられないほどに震える。

 俺は奴の言葉を受けて、奴の殺気を感じ取って――気づけば、背を向けていた。

 

 俺は後ろを振り返らない。

 決して奴の姿を見ず。

 わき目もふらずに中心エリアから離脱する。

 奴から距離をとっていけば、あのおぞましいプレッシャーは消えていき……。

 

「……クソ、クソ、クソクソ……俺は本当に、アイツに……ブラックレコードに……勝てるのか」

「……お前」

【……信じろ。それだけだ】

 

 リスナーさんたちは俺に言葉をかけてくれる。

 が、俺は自分自身の弱さを認識した。

 

 およそ十年もの間、離れていた俺と。

 最強と呼ばれるまでこの世界で戦ってきた存在。

 その力の差は歴然で……強くなるしかない。

 

 俺は俺の可能性を信じる。

 例え、フライハイトが無くても、俺は――

 

 

「勝って見せる。死んでも勝つ――俺はもっと強くなるッ!!」

「……へ」

【君らしいよ。だからこそ、君は英雄になれる】

 

 

 ピは鼻で笑ったが、その目は温かい。

 リスナーさんたちも俺を鼓舞してくれる。

 タライさんも、俺の事を認めてくれていた。

 

 俺は折れかけた心を奮い立たせる。

 そうして、先ずは予選を絶対に生き残って見せると再度――決意した。

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