底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
予選開始――五日目。
空は分厚い雲に覆われて。
バケツをひっくり返したかのような大雨だ。
機体に大粒の雨が当たり、センサーから見える視界は不良。
スラスターを噴かせて飛ぶ。
そうして、迫りくるビッドに対して強襲用ライフルの照準を定めて弾丸を放つ。
フルバーストによる射撃によって放たれた弾丸がビットに当たり爆ぜた。
残骸が周囲に飛び散り、俺は地面に着地する。
そのままぬかるんだ地面を滑るように移動。
空を見上げて――システムが警告を発する。
「おっと!」
手足を操作して連続ブースト。
流れるように上空から放たれた散弾を回避。
そのまま上空の敵に向かって両手の強襲用ライフルの弾丸を放つ。
ガラガラと音が鳴り響き、赤熱する弾丸が放物線を描く。
敵は機体を回転させながら俺の射線から逃れる。
そうして、生き残ったビットを操作してレーザーによる攻撃を開始した。
俺は駆ける。
泥を弾きながら地面を走行。
屈んで回避、飛んで回避。
まるで、スケートでもするように攻撃を回避する。
上空の敵を警戒。
が、そんな事をしていれば――その場から大きく飛び上がる。
「――――ッ!!!!」
「出たぁ!!」
「気をつけろよ!」
【でっかいミミズぅぅぅ】
鋼鉄の体のミミズ。
その口は大きく展開されている。
中では真っ赤に赤熱するブロックが幾つもあった。
アレは歯であり、中へ取り込まれた瞬間に奴の体は一気に収縮する。
一瞬でプレスの上に高温の金属によってドロドロに溶かされるだろう。
奴は地面から体を出しながら、周囲に対して掃除機のように吸い込みを始めた。
強力な吸引であり、俺は連続ブーストによって奴の間合いから離れる。
奴から離れようとして――後方から気配を感じた。
俺は咄嗟に銃口を向ける。
間髪入れずに弾丸を放てば、何かに命中し空間が歪む――光学迷彩だ。
姿の見えない暗殺者。
漁夫の利を狙ったのだろうが殺気でバレバレだ。
俺はにやりと笑いながら、地面を蹴りつけて大きく飛ぶ。
空ではビット使いが待ち構えていた。
十個のビットを操作して、レーザーを放って来る。
俺はそれらの攻撃を回避し、そのままブーストで接近。
俺が迫れば、奴は腰に装着していた何かを掴む。
そうして、奴が腕を振るえば畳まれていたそれがガチャリと音を立てて展開された。
刃は真っ赤に赤熱し、真っすぐに此方へと向かって来る。
俺は強襲用ライフルの弾丸を盛大に放った。
奴は機体を回転させて回避し、避けられないものは刃で斬る。
ブーストにて一瞬で距離を縮めて――俺は下へと降下した。
ギリギリであり、敵の刃が胸を僅かに切り裂く。
俺はライフルの銃口を敵へと向けて乱射する。
奴はブーストによって回避し、そのまま円を描くように空を舞う。
俺は舌で唇を舐めてから、戦いかこれかだらと悟る。
ぬかるんだ地面では無数のワームが出現。
他のプレイヤーたちもやって来て混戦状態だ。
そこらじゅうで火薬の爆ぜる音が聞こえる中で。
俺は笑みを深めながら、敵へと向かっていった――
#
「はぁ、はぁ、はぁ……今、何人が生き残ってるんだ?」
「さぁねぇ。まぁエリアの縮小具合から見て……今日か明日までにはケリがつくんじゃねぇ?」
「……信じるからな」
【にしても、皆、すごい奴らばっかりだったね】
俺はリスナーさんのコメントに同意する。
一筋縄ではいかない相手ばかりだった。
最初こそ、楽にやっていけるのではないかと思っていたが。
日が経つにつれて出会うプレイヤーたちの腕は格段に上がっていった。
弾丸を斬るのは当たり前で、俺が習得している技を使うプレイヤーも多くいた。
リペアはかなり消費したと思う。
エネルギーの補給も何度もした。
敵の罠に掛かった事も何度もあり、それでも何とか生き残っていた。
武装も変更して、今は強襲用ライフル二丁に火炎放射器とチャージガンだ。
強襲用タイプは携行数は低いものの攻撃力が高い。
火炎放射器は敵に懐へと入られた時に使い勝手が良く。
これで一時的にひるませたり、敵のロックを外させる事が出来る。
積載量も低めだからこそ、ニードルランチャーからこれに変更した。
まさか、火炎放射器のような武器も配置しているとは思わなかった。
敵との交戦を終えて、運悪く蟻のようなエネミーの群れと遭遇したかと思えば。
まさか、その群れが出て来た洞窟の巣にこれが置かれているとはな。
「やっぱり、頻繁にインしてる恩恵なのかな?」
「さぁねぇ。僕には分からないけど。ま、運が良いんじゃね? 知らないけど!」
【いよいよ本選への出場が見えてきましたぞぉ!】
【確実に半分以上は脱落してるからねぇ。気を抜かないで!】
「はは、分かってますよぉ……ふぅ」
天気は大荒れだ。
今は半壊した建物の中で休んでいた。
風が凄まじく、雨の音は激しい。
リペアを使っての機体の修復は既に完了している。
エリアが縮小した事で、自然と全員が中心エリアへと集まっていた。
中心部へ行けば行くほどに、接敵のリスクが高い。
「……安地の数は……2つはあるな」
後半からは入手の手段が限られて行った。
ギリギリまで戦える日はログインをしていたが。
流石にずっとはいられない。
ログインを控えていれば、最悪の場合、強制的に失格にされてしまう。
どういう判断基準かは分からないが。
実際に、ログインを控えていた人間たちはそれなりの代償を支払っていた。
エネミーの出現数が増えたり。
敵との交戦が増えたなど。
後半は恐らくは気のせいだと思うが……俺は良い方って事だよな。
強敵とは何度も戦ったが。
そこまで苦戦するほどにエネミーとは出会っていない。
精々が移動中に妨害を受けたりする程度だ。
そして、レアな敵と戦って武装も理想的なものにできた。
これは恐らく、積極的にプレイヤーと戦っているからこその恩恵か。
贔屓にされていると指摘する奴らもいたが、実際、本選に行く為には戦う他ない。
引きこもっていれば、それこそ大会の趣旨を組んでいないと同義だ。
戦う人間たちが優遇されるのは当然で。
戦う事を避ける人間たちは罰を受ける。
シンプルであり、傭兵にとってはありがたいシステムだ。
軽く水分補給し、俺はレバーを握る。
そうして、待機状態から移動状態までシステムを戻し。
建物の影から顔をのぞかせて周囲をサーチする。
敵はいない。
此処もそろそろ危険エリアになる。
制限を受けたエリア内にいれば、ダメージが蓄積し機体は破壊される。
ピから聞いた確かな情報で――レーダーが複数の機体の接近を感知した。
「数は……四機か」
俺はここでの戦闘を避ける為に身を隠す。
敵のレーダーに探知されないように出力を限界まで落とす。
そうして、影から様子を伺い――俺は目を見開く。
「あの機体は……月島さん?」
先頭を翔ける赤と金のカラーリングの機体。
彼女が予選の為に新調した機体だ。
武装は両手持ちのガトリングガン。
肩部にグレネードランチャーとエネルギーシールド装置か。
彼女の機体はボロボロだ。
明らかに手負いだ。
そんな彼女を執拗に追いかけて攻撃を仕掛ける三機の機体。
完全に月島さんをターゲットに定めていて――どうする。
俺はスローに感じる時間で思考する。
月島さんを始め、他の皆とも約束していた。
予選では敵同士であり、会っても助け合いは無しだと。
全力で戦おうと約束していたんだ。
が、今の月島さんはボロボロで何もしなければ恐らくは死ぬ。
今、何人が生き残っているのかは分からない。
が、今、俺の目の前で戦っている彼女は――俺は戦闘システムを起動する。
瞬間、敵が此方にセンサーを向けた。
俺は建物から飛び出して、敵へと向かっていった。
すると、敵たちが俺に通信を繋いできた。
《おい! やめろ!! 俺たちはこいつを狩ったらここを離れる!! お前は襲わない!! だから》
「関係ないね。俺の獲物は――アンタらだよ」
《……! 予定変更だ! こいつを先に仕留めるぞ!》
奴らは月島さんへの攻撃を中断。
その場で散開し俺へと攻撃を仕掛けて来た。
俺は空中でその攻撃を避けながら敵へと攻撃し――
《邪魔を!! しないで下さいッ!!!》
「……! ごめんね。でも――今は俺の獲物だ」
《……っ! 先生、貴方は、私を……っ!!》
月島さんは今にも泣きそうな声だった。
が、俺は彼女に何も言ってやれない。
後で殴られてもいい。嫌味だって沢山聞くさ。
だからこそ、今はただ、生き残る為の行動を取って欲しい。
俺がそう願えば、彼女は今の自分の機体の状態を察して――離脱する。
《……! おい! 逃げるな!!》
「何処に行くんですか?」
俺は月島さんに視線を向けた阿呆にチャージガンを放つ。
間抜けはハッとして慌てて回避。
少しだけ掠めて装甲を焦がしていた。
他の機体が月島さんを追おうとするが、俺がすかさず回り込んでからライフルを乱射する。
奴らはイライラとしていて、俺へと殺意を向けて来る。
これで完全にヘイトが俺へと移った。
俺は空を翔ける。
後方からは奴らが俺の機体を追って来た。
俺はケツを振りながら敵の攻撃を誘発し無駄弾を撃たせる。
イライラしているのはフラストレーションがたまっていた証拠。
恐らくは、もっと大勢の仲間がいたんだろう。
それを失った時に月島さんを見つけて憂さ晴らしってとこか。
「明らかに、数の暴力って感じの追い込み型だったしなぁ」
《あぁ!? テメェ!!》
「あ、まだ繋がってたか。すみませんね! はは!」
《ぶっ殺すッ!!》
奴らは怒りに任せてブーストを多用する。
俺はその動きに合わせて回避行動を取る。
それにしても、相手は俺と月島さんの関係を知らないようだ。
日本語の話し方も微妙に違和感を抱く。
恐らくは、システムの自動翻訳機能を使っているんだろう。
外国のプレイヤーであり、操作にも癖が強いのがよりリアル感を高めている。
「どこの国の人ですか? アイムジャパニーズ!」
《黙れッ!! とっとと死にやがれやッ!!》
「わぁお! 口悪!」
敵は俺の煽りにまんまと乗って来る。
精神攻撃なんてそんなに得意ではないが。
これで月島さんの事は完全に頭から消えただろう。
俺はレーダーからも消えた彼女を思う。
リペアなら持っている筈だ。
装備からして、彼女も多くの戦果を挙げた筈だ。
もし無かったとすれば……その時はどうしようもない。
俺が出来るのは敵を引き付けるだけだ。
これだけだ。後は彼女の実力に――運に任せよう。