底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす   作:ロボワン

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第9話:舐められる根黒の“普通”のプレイ動画視聴会

 高難易度の依頼は――無事に達成された。

 

 ポチさんは指定のポイントで機体をデッドブックに登録されているNPCへと渡し。

 俺たちが乱入者を倒せば、依頼達成のアナウンスが流れて来た。

 あの後、無事にリリアンさんたちも乱入者たちを撃破できたようで。

 中々に骨のある敵だと教えてくれた……プロなのかなぁ?

 

 配信としての映えは上々。

 大御所の方とのコラボとあって、同接数は驚くべきものだった。

 正に、神の領域であり……リリアンさんは全く動じてなかったなぁ。

 

 そんなこんなで配信を終えて――古代遺跡の自由探索領域内。

 

 俺は空を自由に舞う。

 後ろを見れば、涎を垂らしてぐひぐひと笑う――リリアンさんが座っていた。

 

 彼女の提案で配信の反省会をする事になり。

 それならばと、ゲーム内のカフェでしようと思ったが。

 彼女は何故か、俺の操縦を間近で見たいと申し出てきて。

 俺は少し困惑しながらも了承し、領域としての難度が低めの古代遺跡にやってきていた。

 

 最初は普通だった彼女も。

 俺が少しだけアクロバットな飛行をすれば……この通りだ。

 

「あ、あ、しゅ、しゅごぃぃ……これが、ホワイトレコード様の――テクぅ」

「やめません?」

 

 明らかに配信で言っていれば炎上していただろう言葉。

 俺は冷汗を掻きながら、どうしてこうなるのかと思った。

 

 ……彼女はホワイトレコードとやらのファンだったかなぁ?

 

 コメントでタライさんたちが言っていた気がする。

 それもかなりのファンであり、もしかしたら活躍し始めた頃から追っていたのかもしれない。

 よく間違われる俺としては、そのホワイトレコードなにがしについて知るべきだと思った。

 だからこそ、あひあひ言っている彼女に対して何となく質問し――

 

「えぇ彼は天才――いえ、神です」

「え、えぇ……そんなにですか?」

「当然です。寧ろ、神というチープな存在以上です。彼の素晴らしさを形容できる言葉はこの世に存在しません」

「へ、へぇ……それが、俺?」

「……? 最初から変だと思っていましたが……貴方様は何故、自らがホワイトレコードである事に疑いを?」

 

 彼女は疑心に満ちた目を俺に向ける。

 俺は少し悩みながらも口に出す。

 

「いや、だって、俺は別に自分でそう名乗ってませんし……そもそも、当時は配信とかもしてなくてですね? 至って普通の一プレイヤーとしてしかアレを遊んではいなかったかと」

「いえ、そんな筈は……プレイ動画と記録もとっていましたよね?」

「……? 動画なんて撮っていないですし、そもそも記録とは?」

「…………ご存じ、ないのですか?」

 

 彼女は目を大きく見開いて驚く。

 俺は敵性エネミーの攻撃を回避しながら、どういう事かと思った。

 すると、彼女はゆっくりと説明を始めた。

 

 先ず、プレイヤーがゲームを遊ぶ前。

 幾つかの規約を読まされる事になる。

 そこで、動画の配信に似た規約があり。

 同意すれば、自動で一部のプレイ動画が全世界に公開されるらしい。

 そして、もう一つの記録なるものは、公式が用意した一種のランキング要素で。

 これも記録と共に公開に同意すれば……ちょっと待てよ?

 

「え、あの、それって、絶対に同意しないと遊べないやつでは……?」

「いえ、同意しなくても問題ありません。現に、意欲の無いプレイヤーは公開などしません。よほど、腕に覚えのある方々だけで……ま、まさか、自覚がないまま、あの、技術を……あ、ああぁ、あああぁぁ!! しゅごぃぃぃぃ!!」

「……え、えぇぇ」

 

 俺は驚く。

 まさか、普通の利用規約ではなかったのかと。

 何時もの調子でぽんぽんと読まずに同意したけど……まさか、そんな事が……。

 

 

「……あの、因みにその動画とかってまだ残ってるんですか?」

「……いえ、運営によって非公開にされてしまいました……理由は不明で、公式からのアナウンスはありませんでしたが……噂ではあの動画データを悪用しようとした輩がいたとか何とか……今あるのは動画サイトで違法にアップロードされたものだけですね。それも、数は少ないですが……もしも、ゲームのデータがあるのなら、記録を漁る事は簡単だと思います……あ、そうだ!」

「え? ど、どうかしましたか?」

 

 急に声を上げたリリアンさん。

 思わず驚いてしまい。

 反射的に、遠くに離れていた敵に狙撃銃の弾丸を放ってしまった――命中。

 

「実は、アルテミスに五期生として入って来た新人の子たちがいるのですが……よろしければ、根黒様の過去のプレイ動画を教材として提供していただけないでしょうか?」

「え、きょ、教材? な、何故に?」

「……実は五期生は本格的なゲームプロ女子グループとして売り込む予定でして、今世界中で大流行しているタイタングリードは、メインのコンテンツとしてやり込んでいくのが事務所の方針なんです……ですが、メンバーの子たちは少々、性格に難がありまして……今までの指導者たちは彼女たちの腕や性格によって追い込まれて自主退職……恐らく、ホワイトレコード様である貴方様であれば、あの子たちも従ってくれるのではないかと」

「……そ、それって……動画の提供と技術指導を、って事ですか? お、俺がぁ!?」

 

 俺は驚く。

 まさか、リリアンさんとコラボ配信だけでなく。

 これから売り出していく事になるアルテミスの五期生の指導を頼まれる何て……で、でもなぁ。

 

「い、いや、プロゲーマーなんですよね? だ、だったら、素人の俺が言える事なんて何も」

「――貴方が素人であれば、私はカスですが?」

「え?」

「ん?」

 

 また、何か汚い言葉が聞こえた気がした。

 振り返れば、リリアンさんは微笑んでいた……あ、圧。

 

「……まぁ元々の技術は彼女たちの通っていたスクールで身についていますが……所詮は基本的なもので、型に嵌まった戦い方ではタイタングリードの“本物の傭兵”たちには敵いません……貴方様しかいないのです。私が、いえ、世界が認めた最強である貴方様が指導してくだされば、きっとあの子たちも立派な――傭兵になれます」

「よ、傭兵に……は、はぁ」

 

 目指すべきはプロのゲーマーじゃないのかと思ったが。

 彼女の熱の籠った視線に圧倒されて何も言えなかった。

 俺はもう此処まで来たら、頼みを受けるしかないと腹を括る。

 

「わ、分かりました……で、でも! 本当に人に教える事なんて一人二人しか経験が無かったので期待は」

「――ありがとうございます!」

「あ、は、はい」

 

 彼女は食い気味に礼を言ってくる。

 俺は冷汗を流しながらぎこちない笑みを浮かべた……どうしようかなぁ。

 

 俺は悩む。

 滅茶苦茶に悩む。

 高速回転する金属の貝を纏う謎の敵性エネミーの集団に追われながら。

 それらのウィークポイントを弾丸で射貫きながら、俺は若い女性への接し方に心を悩ませた――

 

 

 #

 

 

 リリアンさんとのコラボを無事に終えて――二週間後。

 

「え、えっと……は、初めましてぇ! み、皆さんの指導を任された。ね、根黒、ま、万太郎でぇす……は、はは」

「「「……」」」

 

 勉強の為だけに用意されたアルテミスの配信準備ルーム。

 簡素な机が設置されて、座り心地の良さそうなクッション付きの椅子を配置。

 壁は白であり、窓の方からは陽光が差していた。

 所謂、会議室のような装いのそこには――五人の美少女が集まっていた。

 

 くちゃくちゃとガムを噛んでいる白を基調とした制服を改造したものを纏う美少女。

 綺麗な赤い瞳だが、目つきの悪い金髪に白いメッシュが入ったサイドテールの“月島サラ”。

 

 微笑んではいるものの俺をフルシカトする黒髪ロングヘアの大和撫子。

 黒を基調とした和服のような変わった制服を着る“五十嵐麻衣(いがらしまい)”。

 

 ピンク色のヘッドフォンを耳にあてて、スマホを弄っている色素の薄い美少女。

 目の下にクマのあるハイライトの消えた深海のような目をしてショートの白髪だ。

 凄まじい胸部装甲であり、全体的に肉付きが凄いアバターで。

 白いワイシャツのボタンは幾つか外れて、短いスカートも目に毒である“大桃ミーニャ”。

 

 カチャカチャとゲームをして遊ぶ双子の姉妹。

 この中では恐らくは一番の最年少であり。

 見た目は完全に小学生低学年……いや、五年生くらいか?

 

 青い髪と銀色の目であり、やんちゃそうな顔つきの美少女二人。

 何方もフリルのついた可愛らしいメイド服のようなものを着ている。

 長いポニーテールの子が“愛須ネモ”。

 短いポニーテールの子が“愛須ニモ”。

 

 資料で見た時以上に……こ、個性的だなぁ。はは。

 

 俺は涙を流しながら微笑む。

 すると、机の上で足を組んでいた月島さんがにやりと笑う。

 

「せんせー。自己紹介は良いんで、さっさとはじめてくださーい」

「え、い、いや、でも、皆の事、知らないと」

「私たちはぁ別にーアンタの事興味ないしー。そもそもぉ? どうせ、すぐに辞めるんだからどうでもいいっしょ」

「ふふふ」

「……だるい」

「そこそこ!」

「いけぇ!」

「へ、へへ、そ、そうかもね……は、始めまーす」

 

 俺は涙を流しながら、部屋の照明を落とす。

 彼女たちは完全に俺を舐めている。

 今時の若い子であり、おっさんである俺には刃向かう勇気すらない。

 

 取り敢えず、リリアンさんにお願いされた事。

 俺の過去のプレイ動画を見せるだけ見せておこう。

 

「そ、それじゃ、リリアンさんからお願いされた事……お、俺のヘブンフォール時代の動画を見て……ちょ、ちょっとでも学んでください」

「……はぁ、先輩も何考えて……何で、こんな冴えないおっさんの動画なんか……帰りてぇ」

「お茶を入れましょうか?」

「お、サンキュー。うぅんと渋いやつねー」

「私はコーヒー。ブラック……ねむい」

「あ、ネモはオレンジ!」

「ニモはピーチね!」

「はいはい」

「あ、俺……へ、へへ」

 

 勝手に席を立つ月島さん。

 俺の事など眼中になく。

 俺のリクエストは聞かず、部屋の脇にあった冷蔵庫やポッドなどを漁り始めた。

 

 悲しい。

 これが若い子に翻弄される会社員の気持ちなのか……うぅ!

 

 俺が涙を流していれば、サラさんはニヤニヤとしていた。

 あの子は絶対にいじめっ子だ。

 俺の本能が警戒している。

 無難に終わらせよう。

 そう思いながら、興味無さそうな新人たちの先ずは手始めにと――戦争の最前線で高機モデルの“150機”との空戦の動画を流す。

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