底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす 作:オタリオン
乱戦を終えて、曇天の下を翔ける。
ハイエナ行為をしていた連中だったが、それでも中々の手練れたちだった。
全機を仕留めるのに10分で……かけ過ぎだな。
「……月島さんは大丈夫かな」
思う事は月島さんの事だけだ。
彼女は無事に逃げられたのか。
そして、今も予選で生き残っているのか。
不安や心配……なのかな?
彼女はプロでゲームの腕もちゃんとある。
俺なんかの弟子ではあるが、センスはぴか一だ。
有象無象が相手なら間違いなく生き残れる……が、これは世界大会の予選だ。
強者ばかりで、ナンバーズも参戦している。
ランカーの中でも上の人間と当たれば、彼女であっても……はぁ。
「……信頼、してないよな……先生失格だよなぁ」
「……お前、あの女の師匠なのか?」
「え? あぁうん。一応ね……まぁこれといって何かを伝えられてる気はしないけどさ。はは……」
「ふーん……ま、お前なんかの弟子なんて真面な奴じゃないと思うけどね」
「言ってろ……はぁ」
彼女は強い。
プロの中でもセンスだけなら上澄みかもしれない。
が、現在の力量でトップランカーたちと戦って勝てるとは……“全く思えない”。
少なくとも、月島さん自身も力の差は理解している筈だ。
理解しているからこそ、今も予選で生き残れている。
彼女の声色から何か怯えているように感じたが……まぁそれはいい。
先生として弟子の力を信じるのが当たり前かもしれない。
嘘でも絶対に勝てると勇気づけるべきだったのか。
でも、タイタンシリーズを遊んできた俺としては、そこは嘘でも勝てるとはいえない。
いや、言っちゃいけないんだ。
誤魔化しが効かないゲームだからこそで、残酷な嘘で彼女の成長を止める訳にはいかない。
負けてもいい。
俺は絶対に負けたくはないし負けるつもりはないが。
彼女は俺よりも若くて、まだまだ経験が浅い。
だからこそ、沢山の経験を積む必要がある。
それは勝利だけじゃなく、惨たらしい死と敗北も味わう必要がある。
怒りや憎しみ、悔しさや羞恥。
それらがあるからこそ、人は強くなろうと思える。
今度こそ勝つと思う人間ならば、絶対に負の感情だって持っているんだ。
あのカタギリさんが正にそれで……って。
「……何でカタギリさんの事を……変だな」
「おい。なにぶつぶつ言ってんだよ。気持ちが悪いなぁ」
「ん? あぁごめん。ちょっとね……」
思考が逸れた。
操縦も僅かに乱れていた。
姿勢を修正しそのまま荒れ果てた都市の中を進んでいく。
結論から言えば力不足だ。
月島さんだけじゃない、俺自身もであり、それをひしひしと感じていた。
恐らく、神崎ソフィアさんの言った事は正しいだろう。
俺には欠けているものがあり、ブラックレコードは余裕で予選を突破できると。
そのどちらもが真実で……だからこそ、だな。
俺は負けない。
死んでも勝ち続ける。
例え、イデアールを何度も破壊させて大金を失おうとも。
俺は勝ちを掴み取り、必ず世界大会にて――優勝する。
飢えるんだ。
勝ちに拘れ。
生半可な覚悟じゃ、猛者たちには勝てない。
10年ものブランクだ。
そう簡単には超えられないが、それでも俺は自分自身のセンスと――狂気を信じる。
「殻を破れ。もっともっと狂え。殺し合いに、命の奪い合いに――マジになれ」
「……へぇ」
俺は自信の心に言い聞かせる。
命令であり、従うしかない望み。
俺は笑みを浮かべて、休止状態だった配信を再開する。
リスナーさんたちは待ってましたと次々とコメントをしてくれる。
「はい! それではぁ、配信を再開しましてぇ。次なる敵を」
【そのまま真っすぐ進めば――危ないよ?】
「……ん? タライさん、どういう事でしょうか?」
「……こいつ……?」
タライさんのコメントが見えた。
危ないとはどういう事か。
ピもタライさんのコメントを見て何かを考えていた。
【そのままの意味だよ。危ないから、ね?】
【タライ氏? 何を言ってるのですか?】
【アンタも予選に参加してんのか?】
【今予選の参加者で配信してるのは根黒と……いや、誰もやってねぇけど?】
リスナーさんたちがタライさんの事を疑う。
ただの目立ちたがり、意味深な事を言って注目を集めただけ。
古参の方々すらも、どういう意図でそんな発言をしたのかと聞いている。
「……」
「……従った方がいいと思うよぉ? 危ないって言うなら、別の方向に――お、おい!」
ピが忠告してくる。
が、俺はそれを無視して機体を加速させる。
リスナーさんたちは俺の行動に色々と言ってくる。
俺は微笑む。
そうして、タライさんに対して――感謝を伝えた。
「ありがとうございます。俺の為に――戦場を示してくれて」
【……うーん? 何の事かなぁ?】
【タライ氏? マジで危ないって言うんだたら……な、何がいるんでうすかぁ!?】
タライさんの言葉を信じて敢えて戦場へと向かう俺。
他のリスナーさんたちはタライさんが何者かと考察を始める。
彼はそれ以上は何も言わなかった。
「……やっぱり、こいつは……っ」
「……?」
ピはぼそりと何かを呟く。
その目は少し怯えているようにも見えたが――レーダーが敵を感知した。
「敵の数は――三体か!」
三体の敵の反応だ。
それも、凄まじい速度で戦っているのかマーカーが激しく乱れていた。
ついたり消えたりを繰り返している。
相当に強いプレイヤーたちの動きだ。
タライさんの言葉は真実だった。
それによってリスナーさんたちは益々、タライさんが何者かと考え始めた。
俺はその話は後だと言って――見えた。
一気に降下していき、地面を滑りながら着地。
そのまま半壊したビルの影に隠れる。
敵は俺の接近に気づいてるかもしれない。
が、奴らは凄まじい速度で空を翔けて戦っている。
俺は敵の動きを必死においかけて分析を……!
「――! アイツは!」
【夜叉の機体! それに、あの二機は!?】
【サンドブルームにアルディラだぁ!?】
「……!」
夜叉とサンドブルーム。
何方もナンバーズであり、アルディラと呼ばれたプレイヤーも――ナンバーズだ。
機体を覆い隠すほどのボロボロになった灰色の外套を羽織った機体。
そこから覗く機体のカラーリングは深海のような青。
ちらりと見えた口元にはパイプと接続されたマスクのようなものをつけていた。
二つの双眼センサーがエメラルドのように光る。
背中の部分には銀色の船の舵のように見える形のスラスターが浮いていた。
脚部は逆関節であり、それは禍々しい獣のように形をしていた。
黒く長大な銃身のライフルのようなものを二丁装備し、腕もまるで異形のように歪で攻撃的だ。
外套を纏った機体はサンドブルームの機体――“アンダーブルー”だろう。
夜叉の斬撃を紙一重で躱し、銃弾を放つ。
火薬の爆ぜる音は強烈でリコイルは凄まじいと遠く離れていても分かる。
そんな化け物級の得物を使っていても、その銃弾は迷いがなく綺麗だった。
あんな高機動戦状態でも、精確に敵の関節を狙っている。
余裕がなければ出来ない芸当……いや、息をするようにやっているが正しいな。
夜叉はそんなサンドブルームの攻撃を刃で弾いていた。
その装備は初期装備のブレードではなくなっていた。
刀身が真っ赤に赤熱しているものが一本と高音を響かせるブレード……高周波か?
背中にはもう二本ある。
激しい攻防で、その中にはアルディラという――ナンバーズ序列6位の機体もいる。
白を基調とし赤いラインの入った機体カラー、手には長く大きな白いランスを装備し。
もう片方には円形になった鉛色の盾を装備していた。
剣闘士を思わせる特徴的な頭部に青い単眼センサー。
太くたくましい牛の足のような形状の脚部。
腕は細くしなやかであり、背中には真っすぐに後方へと伸びるメインスラスターが一つ。
機体の各部にはサブスラスターもあり、動きは俊敏で美しさすら感じる。
三機が空中で激しい攻防を繰り広げていた。
激しい動きであり、地上から見ていても目で追うのが大変と感じるほどだ。
リスナーさんたちも奴らの戦いに魅入っている様子だ。
このまま何もせずやり過ごす事は出来る。
明らかにトップのプレイヤーたちだ、楽な戦いには決してならない。
確実に此方も何かしらの損害を被るだろう。
最悪の場合は大破であり……だから、どうしたってんだよ。
「はは、美味しい美味しいご馳走が目の前にあるんだ――俺は欲深いからなァ!」
【行くのか!?】
【正気じゃねぇよ!?】
「……っ! 馬鹿野郎! 何考えて――っ!?」
俺はペダルを踏みつける。
そうして、スラスターを噴かせて――飛び上がる。
敵たちは此方へとセンサーを向けて来た。
俺はそんな奴らに狙いを定めて――チャージガンを放つ。
フルチャージのエネルギー弾が真っすぐに飛ぶ。
が、奴らはそんな攻撃は瞬時に躱す。
エネルギー弾は宙で爆ぜて――俺はサンドブルームを追う。
「はは! 俺も混ぜてくださいよぉ!!」
《――死に急ぐか》
サンドブルームが銃を構える。
そうして、間髪入れずに弾丸を放って来る。
俺はそれらの弾丸をひらりと躱してブーストで接近し――横へと更にブースト。
「……!」
腕の装甲を何かが掠めていく。
それは弾丸であり――隠し弾か!
銃弾を放ってから瞬時にもう一発を放つ。
それによって相手に射撃弾数を誤認させる技だ。
出来たとしても、精確に敵に命中させられるほどの精度は無い。
が、敵はそれをやって俺の腕に弾丸を霞ませた。
奴は距離を取りながら銃弾を放ち続ける。
俺はその弾丸を回避し――弾丸同士がぶつかり合う。
「――ッ!」
弾丸同士が触れての跳弾。
更に別の弾丸に当たって弾道が変わり――機体の装甲を削っていった。
システムが軽微なダメージを知らせる。
俺はそれを受けながら――笑った。
敵の弾丸の軌道を予測。
機体を操作して躱していく。
跳弾ありで隠し弾もありだ。
何でもありであり、俺は全ての軌道を予測していく。
連続ブーストからの攻撃へと繋げる。
放たれたチャージガンは敵には当たらない。
奴は避けながら此方を攻撃してくる。
俺もその攻撃を回避し、そのままサンドブルームへと迫り――急下降。
瞬間、得体のしれない音が響く。
そうして、頭上を何かが通過していった。
肝が冷えた何かは――斬撃だ。
見れば、夜叉の機体がブレードを振っていた。
此方が戦っている時に様子を伺っていたのだろう。
奴の相手はアルディラがしているが。
奴自身も此方を見ていた。
全員が同じ戦場に立ち。
互いの隙を伺いながら命の取り合いをしていた。
凄まじいほどに濃厚な殺気に包まれて、むせ返るような熱を感じる。
俺は笑みを浮かせて――機体を加速させた。
フルコン状態に切り替える。
そうして、サンドブルームへと迫っていく。
奴は機体をブーストさせて激しく回転する。
弾丸を連続して放てば、弾丸は奇妙な軌道を描いて迫って来る。
回転を利用しての弾丸の軌道を強制的に変える技。
軌道が変わった弾丸は、まるで俺の機体に吸い寄せられるように向かって来る。
俺は機体を加速させてその攻撃を回避する。
回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避――攻撃。
敵の攻撃を回避して、一瞬の隙を狙って弾丸を放つ。
俺自身も奴と同じように機体を回転させて弾道を曲げる。
奴のもとへと弾丸は殺到し、奴はそれらを――撃ち落とす。
精確なショットだ。
目が良く、勘も働ているのか。
類まれなる才能であり、末席であってもナンバーズだ。
俺は笑う。
嬉しくて堪らなくて――目を輝かせた。
「もっともっと――楽しもうぜェェ!!!」
《――狂犬が》
【ふぉぉぉぉぉ!!】
機体のセーフティを解除。
限界を超えて加速し、俺は奴を殺す為だけに意識を集中させる。
俺の放つ弾丸を避けて撃ち落としながら、奴も俺へと攻撃を放って来る。
その攻撃を回避し攻撃を繰り出そうとすれば、夜叉からの斬撃が飛んでくる。
ブーストによって回避し、ランスを突き出して突進してくるアルディラの攻撃も回避。
そのまま背中を向けるアルディラを殺そうとし――奴の機体が消える。
「――ッ!」
遅れて響く爆発音。
瞬時に機体を上に飛ばす。
瞬間、アルディラの機体が俺がいた場所を通過。
奴へと視線を向ければ再び一瞬で機体が消えた。
遅れて響く爆発音。
奴を探そうとすれば――殺気を感じる。
俺はその場から連続ブーストで飛ぶ。
瞬間、蛇のように弾丸が曲がって迫って来る。
回避できない弾丸を撃ち落とし、死角から迫る敵を感知。
派手にスラスターを噴かせて敵の狙いを乱す。
そうして、一瞬の隙をついて下へと降下。
そのままブーストによって軌道を変えて飛んでいく。
背面飛行をすれば、今度はアルディラが迫ってきていた。
俺は真っすぐに奴の機体をロックオンし――怖気が走る。
俺は考えるよりも早くに一気に横へとブーストする。
瞬間、肩の装甲が何かに触れてはじけ飛ぶ。
システムが損傷を知らせて俺は歯を食いしばる。
姿勢を制御しながら、更にブーストで距離を取る。
見えなかった。
分からなかったが――アレはブーストだった。
通常のブーストではない。
ゴーストジャンプに近かった。
が、ゴーストジャンプよりも明らかに速さが異常だ。
まるで瞬間移動で……そうか。
「“血染めの暴牛”の異名……はは、すげぇな!」
【アイツのブーストは異常だ! 間合いに入られたら死ぬぞ!】
《むぅん! この私の攻撃を避けるとはぁ――君、良いセンスをしているよ! ハッハァ!》
「そりゃどうも!」
まるで、髪でもかきあげたかのような上機嫌な声。
それはアルディラの声だ。
男であり、若いとは思うが、その経験も技量も並みのプロを遥かに超えている。
アルディラは機体を加速させて迫って来る。
俺は奴から一定の距離を取りながら攻撃を放つ。
奴は盾を素早く動かして全ての弾丸を弾いていた。
アイツも目が良いようだ。
そう感じながら、俺はたらりと汗を流す。
今やこのエリアは地獄に近いだろう。
激しい殺し合いであり、他が死ぬまで終わる事は無い。
予選でもっとも危険な勝負で、負けすらも見える緊張感が走る。
俺は心臓をバクバクと鼓動させながら、手足を動かし敵を見据える。
「さぁ死ぬまでやろやァ!!!」
《むぅぅん!! 君の情熱がぁぁこの私を滾らせるよぉぉぉ!! ハッハァ!!》
奴がランスを回転させる。
そうして、その姿が消えた。
遅れて響く爆発音。
俺は瞬時に連続でブーストし距離を取る。
センサーを動かすが相手の機体は見えない。
何処だ、何処だ――殺気を感じた。
俺は一気に上に飛ぶ。
瞬間、稲妻のように激しい電流が駆け抜けていった。
《惜しい!!》
「くっ! 何てブースト性能だよ!」
《イタリアの風を感じるがいいさ!!》
奴はそう言って機体を消す。
遅れて爆発音が――連続して響く。
連続ブーストであり、あの化け物級のブーストを連続で行っている。
いかれている。そもそも、体への負荷はどうなっているのか。
俺は一瞬そんな事を思って――敵の攻撃を回避。
《――!》
「面白れぇ!!! だったら俺も――やってやらァ!!」
一瞬で機体のパラメーターを調整。
ブースト性能を極限まで上げる。
機体の安定度が大幅に下がるが問題ない。
俺はそのままペダルを踏んでブーストし――鼻から血が噴き出す。
「ぅぁ」
意識が飛びかけた。
今までの比じゃない程の負荷だ。
一瞬だけ心臓が止まったようにも感じた。
俺の機体は空中で動きを止めて――再びブースト。
《――何と!?》
奴が俺を攻撃してきたのが分かった。
だからこそブーストして回避した。
が、一気に強烈な負荷が体に掛かり――俺は笑う。
「かはっ! かはは! 慣らして――みせらぁ!!」
【ひぃ!】
俺は更に機体をブーストさせた。
敵も合わせてブーストしてくる。
互いに限界を超えてブーストを繰り返す。
一瞬で敵の機体が迫るが回避。
俺も敵へと迫ってチャージガンを放つが、敵も回避する。
互いに互いの姿を一瞬だけ見ながらもその姿を捉えきれない。
が、殺意だけで敵の位置を特定して攻撃している。
奴は慣れているだろうが、俺の頭は割れるような痛みを出し続けていた。
鼻からはどばどばと血が出ていて目が死ぬほど痛い。
それでも俺はアドレナリンで無理矢理に意識を繋ぎとめる。
そうして、限界を更に超えて――狂気のブースト飛行をおっぱじめた。
爆音が一瞬で響き景色が変わる。
線ではなく、ほぼ点と点の移動。
が、互いに相手の動きを予想して飛行する。
互いの影を追いかけて攻撃を繰り返す中で。
夜叉やサンドブルームも攻撃を放ってくる。
此方の移動ポイントを予測しての攻撃だ。
一瞬でも意識を飛ばせばそれで終い。
極限状態の戦闘の中で――俺の心は滾っていた。
最高だ。最高に――気持ちが良いぃ!!
熱いバトル、痛みも苦しみも楽しみに変わる。
俺は掠れた声で笑い血反吐を吐く。
笑おう。笑って、笑って、今この瞬間を全力で楽しもう。
今だけは本選の事は忘れて――
「――ハァ!!」
《ぬぅぅん!!!》
互いに迫り――獲物が触れ合う。
ギャリギャリと音を立てて銃の表面とランスが削れて行く。
そうして、互いに頭部を勢いよくぶつけ合う。
互いに機体のセンサーを通して殺気を飛ばす。
奴が満面の笑みを浮かべていると感じた。
俺も歯をむき出しにして笑い、激しく抵抗する腕を押し込んでいく。
ガンを飛ばして殺気を混じらせて――ブーストによって互いに弾かれるように後方へと飛んだ。