おしっこを我慢するほど強くなる個性。   作:ひつまぶし太郎

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えーっと、はい。
怒られたら消します。


盛大に何も始まらない

 

 

季節は春。

桜が舞い、青空が似合う季節。 

鳥は歌い、バカは浮かれて、街は爆発。

 

平和なんてねえよ、黙れよ、暴力こそが正義と言わんばかりの治安をヒーローという存在が護っているというのはあまりにも有名なこの世界での常識。

 

「続いて、新入生代表挨拶です」

 

そして、そんな世界で最先端ともいえるこの雄英高校に入学する新入生が期待に胸を膨らませているのもまた、ある意味で自明の理だった。

 

───なんでか僕の周りに学友がいないけど。

 

もちろん春になったからといって、皆が皆期待感に胸を膨らませているなんてことはないことは重々承知している。

新環境と聞いて喜ぶのは、未知な道が輝いてると無邪気に信じて進める子供くらいなものだ。

 

自分の人生が前に進んでしまうことに絶望してるやつだっていることを、僕はよく知っている。

 

「御疾狐ヶ万出喜多祢、前へ」

「───はい(絶望)」

 

だって、僕がそうなんだから。

 

僕の名前は御疾狐ヶ万出喜多祢(おしっこがまんできたね)

 

聞こえなかっただろうか。

ならもう一度言おう。

 

僕の名前は御疾狐ヶ万出喜多祢(おしっこがまんできたね)だ。

ちなみに御疾狐ヶ万出が苗字で、喜多祢が名前である。

 

…いや、正気かて。

おくすり飲めたねみたいに言わないでほしい、切実に。

 

あと、『あれが御疾狐ヶ万出喜多祢…歴代最高得点を出した…』とかざわざわするな。

後ろでざわついてる全員バカばっかか?

つーか世界がバカだろ。

いくらこの世界が個性と名前が結びつきやすいからって限度がある。

 

噛みしめるように僕の名前を呟くんじゃない。

なんで僕の名前呼んで真顔なんだよむしろ笑うか貶せよ。

意味深に呟かれても赤ちゃんプレイでもさせられてんのかって気になるから本当に勘弁してくれ。

おじさんに名前呼ばれた時の悪寒とかもはや拷問だから、ほんとに。

 

そもそも司法はどうなってんだ司法は。

市役所に提出された時点で通すなそんな名前。

もっと言うなら母の『御疾狐ヶ万出機内』も父の『御疾狐ヶ万出黄真下』もなんで許されてんの?

思いは繋ぐものとかやかましいわ。

脈々と継ぐんじゃないそんな名前。

 

そんでもって、雄英高校はこんな名前のやつを新入生代表にしてよかったのだろうか。

いくら推薦でぶっちぎりの一番だったとはいえ、雄英高校の品位が問われるだろうに。

いやまぁ僕がヒーローを目指した理由として、一番に選ばれるのは喜ばしいことなんだけど。

 

僕はヒーローになりたい。

というか、ヒーローにならないといけない。

しかもめっちゃ強くて頼りになるヒーローにならなくてはいけない。

 

 

なぜなら、僕の名前が御疾狐ヶ万出喜多祢だからである。

 

 

だって想像してみてみてほしい。

こんな名前のやつが会社の同僚にいたら笑うし、トイレで顔合わせたら爆笑するだろう。

そして、仮に闇落ちしてヴィランになってもテレビで『凶悪犯御疾狐ヶ万出喜多祢』と紹介されて爆笑されるのだ。

 

だが、ヒーローならどうか。

このテストの時に書く画数考えるとディスアドすぎるとかよりシンプルに生きにくすぎだろ…もうダメぽ…となる名前でも、ナンバーワンヒーローの称号の後ろについていれば、少なくとも後ろ指さされずに生きていける。

表立って笑われることも減るはずだ。

 

ていうかほんとよく今までいじめられてこなかったな。

心優しくまっとうに接してくれたクラスのみんな、学校のみんなほんとありがとう。

こんな僕を仲間に入れてくれてありがとう!

おかげで僕はこの学校でヒーローになります。

 

 

…で、僕の新しいクラスメートはなんで入学式に来ないの?

リハーサルがあるとかで教室集合じゃなかったから何が起こってんのかわかんないんだけど。

 

やばすぎだろ。

17席の空席に囲まれた新入生代表とか新手のいじめですか?

名前か?

名前のせいか?

 

それとも個性が名前にちなんで『おしっこを我慢するほど強くなる』だからか?

ちなまないでほしいよなほんとに。

世界はもっと僕に優しくするべきそうすべき。

 

最初に医者から自分の個性の話を聞いた時に思った。

何を真面目にガキに向かって『君はおしっこを我慢するほど強くなるんだよ』『でもおしっこを我慢しないとだから事前にいっぱい水分をとろうね』等々を滔々と説明してるんだよ舐めんな、と。

 

君はヒーローになれる、とか言わないでほしい。

やだよ、おしっこ我慢しながらヒーローするの。

絶対『おしっこマン』とか呼ばれるじゃん。

やだよ。

 

 

「春の息吹が感じられる今日、私たちは雄英高校に入学いたします───」

 

 

 

───これは最低な個性を持つ少年が最強のヒーローになっちゃう話だ。

 

 

10代から尿路結石に怯える、別におしっこ我慢しなくても残り火オールマイトと同じ事ができる、世界最強なヒーローの卵は、後にこう呼ばれることになる。 

 

 

おしがまチャレンジヒーロー『おしがマン』と。

 

 

大いなる力には、大いなる責任が伴う。

 

なら、誰よりも無意味に最強な彼もまた、大いなる責任を果たさなくてはいけない。

 

 

 

最強で最低な少年と、最弱で最高な少年。

 

 

二人の物語が、今交差する。

 

 

 

 





この小説は大いなる力には大いなる責任が伴う、という1単語のみで作者が思いつきで書いた一発ネタです。
もしこの小説で笑ってくれる人がいるのなら、この小説とは真反対のまじめなヒーロー物の『米花町には犯罪者が多すぎるって話。』もよろしくお願いします。
それか過去に書いた『米花町でちんちん出したら逮捕された件について』もよろしくお願いします。

ランキングに乗ったら続くかもしれません。
つまりは続かないしたぶんそのうち怒られて消えるってことです。
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