直哉の兄で十種持ち   作:七罪の王

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禪院直久①

「…ドブカスじゃねえか」

 

ふと口から漏れたのは、目の前の弟が自分を害することはできないという油断か、もしくは慢心だろうか。

 

「にいちゃんどうしたん?顔色悪いで」

「…なんでもない」

 

禪院直久。それが俺の名前。

呪術界御三家の一つである、禪院家の現当主、禪院直毘人の息子にして、後の炳筆頭禪院直哉の異母兄である。

 

「俺が術式使えるようになったから羨ましいんやろ?でもあんま気にせんでいいと思うで、呪力多い人は術式の自覚遅なることもある言うし」

 

一つ下、5歳と半年になるだろうか。弟の直哉は直毘人と同じ、投射呪法を発現した。相伝の術式として歴史はそこまで深くないが、呪力も多く、時期当主候補として早くも家内での注目を集めていた。

 

「術式ならさっきわかった」

「…!ほんま!?なんやったん!?」

「先に親父だ、お前にも後で見せてやる。」

「約束やからな!」

 

直哉との会話をそこそこに、当主の間へ向かう。

この家において、呪力、術式の有無はそれ即ち人権の有無を意味する。

これは比喩ではなく、日々の生活、寝食、他者からの扱い…、呪術師としの活動である呪霊討伐任務の適切な配分など、生き死に直結する。要はハードモードである。

まかり間違っても呪力が少なく、術式が使えないなどあっては、快適さとは程遠い生活を送ることとなる。

 

「…親父殿、少しよろしいでしょうか?」

「直久か、どうした、入れ。」

 

昼間から飲んだくれている、和装の男。しかし、鍛え上げられた肉体に、呪力操作から、消して侮ることなどできない男であると多くの呪術師は一目で理解するであろう。もし敵対すれば、未熟な呪力操作しかできない俺では手も足も出ずに殺されることになる。

 

「術式が判明しました。」

「…!でかした!術式はなんだ?お前の呪力量なら下手な術式でも、そこらの1級術士は相手にならんだろう。」

 

よほど機嫌が良くなったのか、酒を煽りながら、矢次早に話す、親父殿。はっきり言って息が酒臭い。あんまり近づかないで欲しい。

 

「十種です。」

「…は?」

「…十種影法術です。」

「…今なんと?」

「…玉犬」

 

影より生ずるは白黒2体の犬型式神。

 

「………。っ!!!!でかした!!!!!!」

「うるせぇ、あと酒くせぇ。」

 

今生で見たことがないレベルの叫びをあげる親父殿。

 

「これで五条家のやつらにでかい顔をされずにすむわ!いや、直久の呪力量なら禪院家が呪術界の頂点に立つことも…!!」

「親父殿…。もう報告はすみましたからおいとまします。」

「待て待て待て、一応念の為確認だ。十種影法術で間違いないな?」

「…ここでアレを出しましょうか?」

 

やかましので、もう部屋に戻っていいだろうか。

 

「いやいやいや、わかった。であれば十種影法術の間違いない。本当によくやった。」

「では、これで。」

「直久。これよりお前を禪院家次期当主筆頭候補とする。いいな?」

「構いません。」

「では、行って良い。ああ、明日より次期当主に相応しい訓練を行う。今日は早めに休め。」

「望むところです、では。」

 

襖を閉め、部屋を後にする。襖の向こうからは、よっしゃー!これで勝った!我々の勝利だ!などどこかで聞いたようなセリフが聞こえてくる。

 

「アニオタじじいが…。」

 

テンションが上がると、語録出るところには多少の親近感がもてる。まぁ、呪術師は大概が人格破綻者なので、一般の尺度で測り、距離を詰めるのはオススメしない。アニメの話もしない方がいい。父親の性癖など聞くに絶えない。

 

「やることは多いな、とりあえずは、1級。そして特級呪霊を祓えるようになる。」

 

遠くない未来、禪院家は壊滅することになる。当主、並びに最高戦力である炳壊滅および禪院直哉の死亡。そしてそれらを成すのは天与呪縛のフィジカルギフテッドである禪院真希。

 

「未来が憂鬱すぎる…。まるでテーマパークのアトラクションだな。テンション上がってきたぜ。」

 

禪院直久は転生者である。

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