超オタ公奮闘記!   作:平成生まれ、令和育ち

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学生の頃に聞き漁ったボカロをはやみんが歌ってくれる、ただそれだけで救われるオタクもいるんですよ……


セツナにトリップ

「──太陽が沈んで、夜がやってきます」

 

 ──そして再び、私はツクヨミ初ログインの時間に巻き戻っていた。

 

「……ヤチヨ?」

 

「はいはい、ヤチヨさんですよ~?」

 

 初ログインユーザーを出迎えるチュートリアル用のヤチヨの分身体が、いつもの優しい笑顔で私を出迎えてくれている。

 

 その笑顔に、ついさっき見たばかりの泣き顔が重なった。

 

「あ……ヤチヨ、わたし……」

 

 なんて声を掛ければいいのか。分からなくて言葉が詰まって、思わず手を伸ばしてしまいそうになる。ギリギリのところで踏み止まったけど。

 

「どうかしたのかな? ヤッチョに会えて感極まっちゃった〜……とは、ちょっと違うかな?」

 

 私の奇行にヤチヨが心配したように擦り寄り、そっと顔を覗き込んでくる。普段ならば推しとの急接近に歓喜乱舞しているところだが、今はヤチヨの顔を至近距離で見ることができない。どうしても、天守閣で見た涙がフラッシュバックしてしまうから。

 

 反射的に身を引いて距離を取る。離れた瞬間、ヤチヨが一瞬だけショックを受けたような表情を浮かべたような気がしたけど、多分気のせいだ……多分。

 

「……ごめん、なさい。ちょっと体調が悪くて、今日は落ちます」

 

「え……そっか。うんうん、体調が悪いのなら仕方がないよね。むしろ具合が悪いのにヤチヨに会いにきてくれて感謝感激雨アラモード! 今はじっくり身体を休めて、元気一杯になったらまたツクヨミに来てね♪ ヤチヨはみんなのことをいつでも待ってるからね~」

 

 私の口から出任せを疑うことなく、ヤチヨは驚きつつも私の体調を心配してくれた。優しい、世界で一番のお姫様。

 

 でも、ごめんなさい。今は、ファンサにお礼を返す気力すらなくて、おざなりに頭だけ下げて仮想空間から逃げるようにログアウトした。

 

 意識が仮想の世界から生身の現実へと戻る。目を開けば見慣れた自分の部屋が広がっていて、でも心が休まるようなことはない。ただ目を逸らし続けた現実と向き合う時間がきただけだ。

 

 スマコンを外してふらふらとベッドに寝転がる。眠気はない、むしろ頭が良くも悪くも冴えてしまっている。自分が置かれている状況を整理するには丁度良かった。

 

 冷静に考えよう。私を取り巻いている状況を、この与太話としか思えない非現実を。何も考えずに同じ道を歩んで、また逆戻りしてしまうのは懲り懲りだ。

 

 大きく息を吸って吐いて、脳内会議を開始する。

 

 まず、私が体験しているこの巻き戻しについて。拙い創作やSF知識から照らし合わせてみて、恐らくはタイムリープ現象に該当するものだと思う。俄かには信じ難いけど。

 

 私をタイムリープさせているのは、十中八九手首に巻き付いて外すことのできないこのブレスレット。月人が私に押し付けた謎の品。私の意思を無視して現実と仮想、両方に存在している時点で常識の範疇に収まる代物ではないだろう。

 

 正直、なんで私にこんな代物を押し付けたのか、理由がさっぱり分からない。ツクヨミの崩壊に巻き込まれて何処にも行けなくなっていた私を助けるため? ……案外ありそうかも。雰囲気ちょっと優しそうだったし。

 

 理由は一先ず置いておこう。問題はタイムリープしてしまう原因だ。物語とかでも重要な要素で、原因を解決できないと私は延々にタイムリープを繰り返す羽目になってしまう。

 

 原因、原因……そう言えば、一番最初に月人と接触した時に色々と情報を流し込まれたんだ。その情報の中に、何か原因に繋がる手掛かりがあったかもしれない。

 

 ぐっとベッドから起き上がって机に向かう。広げっぱなしになっていたノートの一ページを利用し、頭がパンク寸前になるまで詰め込まれた情報を一つ一つ整理しながら箇条書きに書き出した。

 

 ・かぐやは月から逃げ出した月の住人。

 ・仮想空間『ツクヨミ』は月の世界と構造が似通っている

 ・月人は思念生命体

 ・月人の目的はかぐやのお迎え

 ・迎えの儀式は失敗した

 ・輪廻が崩壊、原因は不明

 ・歴史が修正された

 ・タイムパラドックスが発生した

 ・タイムトラベルを誰かがしている

 ・トラベラーの正体は不明

 

 思い出せる限りの情報を片っ端から書き出し、改めて内容と睨めっこする。なんというかこれ、荒唐無稽もいいところというか、私が夢だと現実逃避してしまうのも仕方がない内容だと思う。

 

 でも二度もタイムリープを経験した以上、夢と決めつけて現実逃避することはもうできない。覚悟を決めて目の前の現実と向き合おう。

 

 まず色々と突っ込みどころ満載だけど、かぐやがリアルかぐや姫だとか月に先住人がいることに関してはそういうものだと受け入れよう。でないと話が進まない。

 

 月の住人はタイムリープを可能とするテクノロジーを有する、なんか凄い思念生命体集団。そんな彼らがツクヨミへと介入してきたのは、逃亡したかぐや姫を月に連れ戻すため……まんまかぐや姫だ。

 

 恐らく卒業ライブでかぐやを月に連れ帰ろうとしていた……いや、コラボライブの時点でかぐやに接触してきてはいた。ヤチヨが追っ払わなければコラボライブの時点でかぐやは月に帰ることになっていたのかもしれない。

 

 でも月人によるかぐやのお迎えは失敗した。いろPを中心としたブラックオニキス、ROKA &まみまみによるチートまで行使した決死の抵抗によって。

 

 月人から流し込まれた情報からして、本来であれば月人陣営が敗北することはあり得なかったみたい。でも現実は一度目も二度目も失敗、かぐやを月に連れ帰ることに失敗している。

 

 そしてそれが何故か輪廻の崩壊、歴史の修正に直結する……ここだ、ここが今一つ理解できない。

 

 そもそも輪廻の崩壊ってなに? 輪廻といえば、仏教やインドの思想にある輪廻転生が思い浮かぶ。端的に言えば、命は巡り無限に繰り返すというもの。その輪廻が崩壊するって、いったいぜんたい何事という話だ。

 

 歴史の修正に関しては、後に出てきたタイムパラドックスと密接に繋がっているので理解できなくはない。確か親殺しのパラドックスだったかな。タイムトラベルして自分の親を殺そうとすると矛盾が生じるというお話。

 

 つまり、あの卒業ライブにて親殺しのパラドックスに該当する、或いは類似する事象が起きていた。そう考えるのが自然だと思う。具体的にどんなパラドックスが起きていたのかはさっぱり分からないけど。

 

 というかタイムトラベルって、何処の青い狸なんだろう。いやまあ、タイムリープを身を持って経験している以上、タイムトラベルだって十二分にあり得るのだろうけど。月のテクノロジーは何処までぶっ飛んでいるのだろうか。

 

 いけない、話が逸れた。月の技術力よりも重要なのはパラドックスを引き起こしている人物が誰なのか、どんな出来事が原因なのか。論ずるべきは此処だ。

 

 トラベラーの正体は月人も分かっていなかった。いや、推定対象はいたみたいだけど、私には教えてくれなかった。確固たる根拠がない情報は明かさない主義だったのか、それとも私には伝えられない理由があったのか。

 

 でもそうなると困るのは私だ。誰がトラベラーで、何が原因でパラドックスが起きたのか、一人で答えを出さなければならない。

 

「パラドックス……かぐやの卒業ライブが、原因?」

 

 一度目も二度目も、かぐやの卒業ライブの直後にツクヨミが崩壊、タイムリープが発生している。

 

「月人に勝ってはいけない? それとも、卒業ライブを開催すること自体がダメ?」

 

 月人に勝ってはいけないとなると、それは即ちかぐやを月に送り返さなければならないことになる。チートを抜きにしてもあそこまで必死に引き留めようとしたいろPたちの思いを否定するのは、人としても一ファンとしても心苦しい……。

 

 ……卒業ライブをしない。いや、それよりも前。ヤチヨとのコラボライブがなくなれば、どう? 月人が介入するタイミングがなくなり、タイムパラドックスの推定原因たる卒業ライブもなくなる。案としては悪くない?

 

 コラボライブをなくすのは、ヤチヨカップでかぐや&いろPが優勝しないように手を回せばいい。自分で言うのもなんだけど、今まではかぐや&いろPにかなり肩入れした発言や行動をしていた。『NEWS TSUKUYOMI!!』で注目株として話題に挙げた回数も少なくない。

 

 その贔屓をなくし、それとなく他の参加者に注目を逸らす。具体的には僅差で二位に甘んじたブラックオニキス。元より優勝するだろうと目されていたブラックオニキスを多少援護するくらいなら、贔屓と非難されることもないだろう。

 

 ヤチヨに次いで推しているかぐや&いろPに対する裏切りにゲボ吐きそうだけど、これもタイムリープを終わらせるため。延いてはツクヨミの崩壊とヤチヨの消失を防ぐため。私は覚悟を決めた。

 

 ──脳裏を過ぎる、ヤチヨの涙から目を逸らしながら。

 

 

 

 ▼

 

 

 その後、私は今までと同じようにツクヨミの広報を始めた。

 

 やることは分かりきっている。ツクヨミのライバーとしてヤチヨの魅力を拡散し、ツクヨミの知名度向上に奔走する。既に二回も歩いた道だ。迷うことも間違えることもない。

 

 前回と変わらない、でも明確に未来を変える意思を持って日々を歩む。今までと同じようにヤチヨからツクヨミ広報担当の公認を貰い、一心不乱にヤチヨとツクヨミを現実の世界に広めていった。

 

 ツクヨミのユーザー登録数が一億人を突破すると、ヤチヨからヤチヨカップの企画を持ち込まれた。もちろん反対する理由もなく、広報担当としてイベントの盛り上げに貢献することを約束した。胸中で誰にも明かすことのできない思惑を抱えながら。

 

 いつものミニライブの終わりにヤチヨがヤチヨカップの告知をする。ライブ会場に集ったユーザーたちが沸き立ち、誰もがヤチヨとのコラボを夢見て声を上げた。

 

 そんな熱狂を掻き分け、超新星が名乗りを上げる。リアル月のお姫様たるかぐやだ。

 

 衆人環視に身を置きながら高らかに優勝を宣言する。誰もが面白いものを見たとばかりに笑みを浮かべる中、私はヤチヨの顔色を窺っていた。

 

 前回のタイムリープの時に抱いた違和感。かぐやを見るヤチヨの目に宿る正体不明の感情。今この時も、かぐやを見つめる目にはただの認知以上の感情が渦巻いている。

 

 ヤチヨ、この世界を作り上げたお姫様。あなたの瞳には、かぐやはどんな風に映っているのですか?

 

 疑問を心の中に封じ込めて、私は暗躍を始める。かぐや&いろPがヤチヨカップを優勝しないように、忠犬オタ公としてイベントを盛り上げながらさり気なくブラックオニキスに注目を集めていく。

 

 今この時ほど、現実(リアル)と掛け離れたアバターを作ってよかったと思ったことはない。

 

 ヤチヨに次いで推しているかぐやといろPに対する裏切りを働きながら、それをおくびにも出さずにいられるのは忠犬オタ公のキャラクター(ガワ)があるから。素の自分のままだったら間違いなくボロやら何やら出ていた。

 

 代わりに仮想から戻った現実でストレスマッハになってしまっているけど。三度目なので講義やレポートを落とすような失敗こそないけど、一周目だったら間違いなく潰れていた。根暗モブオタク女子の貧弱メンタルをあまり甘く見ないでほしい。

 

 メンタルに多大なダメージを受けながら、特別推しでもないブラックオニキスのファンを煽りつつ新規ファンを誘導する日々。しかしやはりスターというものは当てられるスポットライトが一つ減ったくらいで陰るようなことはなく、かぐや&いろPは凄まじい勢いでランキングを駆け上がっていく。

 

 ああ、やっぱりすごいなぁかぐやといろP。本音はもっと応援したいし、なんなら路上ライブ時代からおっかけしたかったのになぁ……。

 

 最近はヤチヨにもどうしてか絡み辛くて、心の潤いが圧倒的に不足している。何故に私は大して興味のない男どものおっかけをしているのだろうか。ちくせう……。

 

 私が夜ごとに枕を涙で濡らしながらもブラックオニキスの援護活動を続けた成果は、ほんの少しだけあった。ヤチヨカップ終了を目前としたランキング、その順位が今までよりも低かったのだ。それでも無名から一月未満でトップライバーたちに並ぶレベルなのは流石としか言いようがないが。

 

 でも、これならヤチヨカップの優勝にはギリギリ届かないはず……なんて私の甘い考えは、援護射撃しているブラックオニキスがかぐや&いろPにコラボを持ち掛けるという敵に塩を送る行為によって吹き飛んだ。

 

 いや、今までの周回でも黒鬼はかぐやといろPにコラボを持ち掛けていた。だから別に不思議な話ではない。でも今までよりもランキングも知名度も下がっているはずのかぐや&いろPに手を差し伸べるようなコラボを企画するのは──あ、そういえば帝といろPってリアル兄妹……。

 

 一度目の周回では私も驚いていたけど、それを上回るファンタジーに見舞われてすっかり頭の中からすっぽ抜けていた。もしかしなくてもコラボの目的ってかぐやじゃなくていろP目当て? そりゃ分からないし、どうしようもないわ~。

 

 というかオレ様キャラでファンを子ウサギ扱いしておいてシスコンって、新解釈が過ぎてちょっと推してしまいそう……いやいや、今はそれどころではない。

 

 帝からの竹取物語をなぞったかぐやへの求婚、そこから始まるコラボKASSEN。前回も前々回もかぐやといろPは多くのユーザーの心を鷲掴み、劇的な大逆転優勝を飾ってきた。それが運命だとでもいうように。

 

 私のちっぽけで姑息な工作なんて気にも留めず、かぐやといろPは戦場でブラックオニキスと手に汗握る激戦を演じる。ツクヨミ中の注目がこの一戦に集まっているのを肌に感じた。

 

 実況解説席でオタ公のキャラを被りながら、胸中でかぐや&いろPの敗北を願っている……ああ、ほんと最悪の気分。今すぐにでも吐き出してしまいたい。

 

 ブラックオニキスVSかぐや&いろPwithヤチヨの戦いに幕が下りる。勝者は変わらずブラックオニキス。でもヤチヨカップの勝敗の行方は、まだ分からない。

 

 試合会場から消えたヤチヨがツクヨミの空高くに浮かび上がる。無数のスポットライトを浴びながら、肩に乗ったFUSHIが吐き出した巻物を受け取り、勢いよく開く。その瞬間、ヤチヨの表情が一瞬だけ強張ったように見えた。

 

 夜空に巨大なスクリーンが投影され、新規ファン獲得数を可視化した棒グラフが伸びる。数多くのライバーの棒グラフが伸びては止まり、予定調和のように二つの棒グラフが凄まじい勢いで伸び続ける。ブラックオニキスとかぐや&いろPだ。

 

 ぐんぐんと伸びていく棒グラフに私は胸の前で手を組み合わせて祈る。今までなら願ったのはかぐや&いろPの優勝。でも今回は、今回だけはブラックオニキスの勝利を願う。

 

「……っ、ヤチヨカップの優勝者は~~~☆」

 

 一際眩い光が常夜のツクヨミを白く染め上げ、優勝者の名前を眩く照らす。その名前は──ブラックオニキス。

 

 僅差だった。本当に、千票も差がないほどの僅差だ。それでも勝者はかぐや&いろPではなく、ブラックオニキスが掴み取った。今までと違う未来が、訪れた。

 

 ブラックオニキスの勝利に沸き立つファンの歓声とかぐや&いろPの健闘を称える声が飛び交う。熱狂に包まれながら、私は未来を変えられたという事実に安堵していた。

 

 かぐや&いろPとヤチヨのコラボライブがなくなったことで月人は介入するタイミングを失った。必然的に卒業ライブも行われず、ツクヨミの崩壊とヤチヨの消失は避けられた。

 

 

 良かった、本当に良かった────本気でそう思っていたの?

 

 

 ブラックオニキスの優勝を称える巨大スクリーンの後ろに浮かぶミラーボールに亀裂が走った。

 

「──あ」

 

 引き攣った声が喉から零れ落ちる。見間違えるはずもない、三度目のツクヨミ崩壊が始まった。

 

 ミラーボールから亀裂が夜空へと広がり、あっという間に地上を蝕む。ヤチヨカップの結果発表に沸き立っていたツクヨミは悲鳴が飛び交う地獄へと変わった。

 

 世界の崩壊から続々とユーザーがログアウトしていく光景を横目に見ながら、私は未だに目を逸らし続けていた現実と対面する。

 

 かぐや&いろPとヤチヨとのコラボライブを阻止したところで月人はいずれかぐやを迎えに来る。卒業ライブだって、規模が落ちたとしても今のかぐや&いろPなら実施できるだろう。そしてそこで今までと同じようにかぐや陣営VS月人の戦いが繰り広げられ、月人の敗北と共にツクヨミは崩壊する。

 

 目を向けるべき対象が最初から間違っていた。否、この期に及んでまだ、私は目を背けていたのだ。

 

 崩壊するツクヨミの夜空に浮かぶお姫様を見上げる。

 

 ヤチヨカップの優勝者を発表してからツクヨミが崩壊を始めるまで、普段の優しい笑顔とは裏腹の悲し気な表情を浮かべていたヤチヨ。崩れ落ちる自らの世界を見下ろす瞳は涙に濡れ、しかしもはや避けようのない運命を粛々と受け入れようとしている。

 

 その身体は、存在ごと揺さぶられているかのようにゆらゆらと揺れていた。

 

 そうだ、逆だったんだ。ツクヨミが崩壊してヤチヨが消えるんじゃない。ヤチヨが消えるから、ツクヨミが崩壊するんだ。タイムパラドックスの鍵を握っているのはかぐやでもいろPでもなく、八千年の時を生きると公言する電子のお姫様だった。

 

 分かっていた。今回のタイムリープで最初にヤチヨの顔を見た時から、心の片隅で理解していた。でも考えたくなかった。

 

 私の推しで、恩人で、世界で一番のお姫様が世界崩壊の原因だなんて……信じたく、なかった。だから見当外れな理屈を捏ねて、目を背け続けたまま未来を改変してしまった。

 

 その結果が──かぐやの卒業ライブを待つことなくヤチヨが消失、ツクヨミの崩壊が訪れた。

 

 馬鹿だったなぁ。こんな分かり切ったことから目を背けて、何がしたかったんだろう……。

 

 音を立てて崩れ落ちていく世界にヤチヨと私だけ。自分の馬鹿さ加減に自嘲しながら、空の上で涙を零すお姫様に懲りずに手を伸ばす。

 

 ──ねえ、ヤチヨ。あなたはどうして、そんな風に……。

 

 問い掛ける言葉は崩壊するツクヨミに遮られ、私の意識は手首のブレスレットから溢れ出した眩い光に呑まれて消えた。

 




ほぼなかった書き溜めはここで終了。此処からは一日一話投稿、できたらいいなぁ。
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