『トーデン三兄弟』   作:笹熊餅

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出発前。

私マルシル・ドナトーにとってファリンの姉のミミル・トーデンはファリンとは正反対な人物だと思う。ファリンは物腰柔らかでフワフワしていて可愛い。身長は高いし、ガタイもいいけど、こう何というかゆるふわな雰囲気を全身から出した感じがする。

 

ファリンは勉強はあんまり好きじゃないみたいだけど、才能はある。特に霊に関する除霊は私よりも遥かに巧いと言わざるおえない。まぁ私がエルフ魔術の体系でノーム魔術の感覚的な魔術使用に対して違和感があるせいかもしれないけど。

 

おっと、脱線したわね。

 

ファリンの姉、というか長女のミミル・トーデン。

ファリンと同じく魔術才能と弓の才能を持った人。ファリンは霊の言葉が幼少から聞こえるけど、ミミルは幼い頃から魔力の流れが感覚的に“見える”らしい。そのせいか彼女は目を瞑っていても遠くの存在や近くの微細な姿形を感覚的に把握できるとの事。

 

その魔力眼とも呼ぶべき目によって彼女は幼少から霊のようなもの、空を飛ぶ鳥を深く知覚できたらしい。

だから彼女が言うには「何で弓を当てられないか分からない、引いて、待ち、放つ。それで当たるでしょ?」との事。

何とも感覚派なところは姉妹揃ってらしい。

 

見た目は長髪のファリンと同じ金髪。私でも嫉妬するくらい美しい長髪は良く手入れされ、魔術的保護もかかっている。

彼女が個人的に売っている、ヘアオイルは魔術師だけでなく、高い身分の人にも大人気。私が友達じゃなかったらきっと買えない。

それだけ手入れをしてあるのに本人は長髪を「邪魔、切りたい」とバッサリ言ってしまう性格!なんと勿体ない!

 

性格は真面目。それでいて合理主義的で理想主義者、彼女の目標は「すべての魔術を納めること」一笑に伏すような無謀な夢。

そこは私も同じ、すべての種族の年齢差を無くすというスケールの目的と何らからわない。

 

そんな大きな目標のために好きでもない髪を伸ばして、保護して、何なら商売も始めちゃう。それが彼女を説明するに十分な話だよね。

 

見た目はファリンにそっくり!ファリンの場合は目を細めているけど、ミミルは目を閉じている。あまりに魔力眼が見えすぎるから視覚情報をできるだけ減らしているらしい。そらに訓練の一つとか何とか。

 

身長はかなり高い、ファリンよりも高くても190センチはある。

そのせいかファリンの隣に立つと細身で華奢なお姫様みたいな印象で正直羨ましい。何でそんなに身長が高いのと聞きたら「鳥ばっか食べてたから」との事。幼少の頃、狩りに出掛けては鳥を堕としてきては家族で食べていたらしい。だったらファリンも身長高いはずなんだけど・・・。それとも隠れて食べていたのかしら。

 

よく、「食事は大切。PFCバランスを考え、カロリーをコントロールし、栄養素をしっかり取る、これが心身ともに健康」が口癖、PFCバランスって何だろう。

 

 

杖は短い手に収まるもので装飾は少なく全体に刻印が緻密に彫られたかんざしのような見た目をしている、それにミスリル製、正直羨ましい!

ヘアオイルを売った時に優先契約をしたお貴族様から貰ったとの事。

 

 

彼女は真面目と言ったけど、正直言って怖いくらい魔術に傾倒している。食事や睡眠、狩りや商売を除いたすべての時間を魔術に使っている。

彼女の魔術眼と他者の何倍もやっている努力によるものだろう、私があまり手をつけていない精神魔法や幻術に関しては知識や経験で負けている。

 

何十年も生きてきた私が負けるなんてどんな量の勉強と試行錯誤をしてきたのだろう、普通のトールマンなら追いつけないと諦めるのに彼女は私に追いつくどころか抜いた。

その凄さをみんなはあんまり理解してないみたいだけど。

彼女は非常に繊細な魔術を得意とする、特に転移術はトールマンで使えるのは珍しい、それは非常に繊細な魔術コントロールを必要とするのとノウハウが一般に公開されていない事、そして危険な事だ。

 

失敗すると即死しかねない魔術の代表が転移形の魔術。座標の設定を間違えて自身の体内に物体を転移させて死んだ魔法使いは歴史上後を経たない。使えるのは長年研鑽を重ねたしっかりとしたノウハウのある一部のエルフや高い身分のものたちだけが使うのが一般的だ。もっとも簡易的な魔法陣に手を加えないものなら一般的だけどね。

 

彼女が使うのは幻術に精神操作魔法、転移術、使役術、音と雷の魔法。うーん、音を除いて繊細さが要求される魔法ばかりだ。

 

幻術や精神操作は言わずもがな、下手な人がやるとかからないし。

転移術は先程言ったように危険。使役と音の魔法はポピュラー。雷は指向性や威力によって難易度が特に変わるピーキーな魔術。まだ何を書こうかな・・・。

 

ーーーーー

 

私はミミル・トーデン、転生者だ。性別は女だが中身はオッサンの男だぞ。

目標は「すべての魔術を納めること」という大蛇丸様と似たような夢を持つただの一般人だ。

 

目の前のエルフがうーん、と悩ませながら私ことを見ては筆を走らせる。

マルシル・ドナトー。私の夢の共感者で研究を共有している。

 

彼女の夢は種族間の年齢差を無くすことらしい。彼女は魔法を使い、それをなくしたいらしい。いわばハードウェア的な解決方法。

 

私のやり方は違った。それぞれの体感時間や認知時間をコントロールし、肉体をより頑強なものにすれび擬似的に解決できるのでは?が私の研究項目。

 

人だけでなく、生き物は見たいものしか見ない、話したいことしか考えられない。つまり自認によって意識はあって、その認識自体を魔術的にコントロールすれば年齢差を解決できるのでは?と言うのが私の意見だ。

 

例えば身体をエルフかハーフエルフのようなものにして、意識だけをその肉体に移り変える。そうすれば解決である。

 

私からすると肉体を作り、そこに精神を移せるならそれは実質的な不死だ。私の魔術を納めるという目的にも合致する。

だから話したら「うーん、黒魔術・・・・」とドン引きされた。何でさ。

 

ちなにこれをエルフ(特に西のエルフ)に話すと一発で投獄されるらしいのですごい危険な話題らしい。

昔、似たようなことを考えて実際にやっていたらしいのだが、その研究は西エルフが持っているか、失われたらしい。

 

残念だが、ないなら作ればいいのである。

そんなことを考えていると窓辺から使い魔であるフクロウが飛んできた。

口元には手紙を加えていてプリティーだ。

受け取って撫でると愛らしい声を出して、撫でさせてくれる。

なかなか私の精神操作魔法も上手くなったものだ、野生のフクロウを撃ち落として、治癒して精神操作をかけたのだ。

何と言うか邪法感がすごい。

 

手紙を見ると宛先は私とマルシル、送り主は妹のファリン・トーデンからだ。

 

「マルシル手紙」

「え、?私?誰からだろうお母さんかな」

 

手紙を綺麗に開けようと試行錯誤するマルシルを尻目に、バリと適当に手紙を開ける「あーー!!!」とか聞こえるけど聞こえない。

 

内容は兄であるライオスを助けにマルシルか私のどちらかでもいいからダンジョン攻略に手伝いに来て欲しいとの事。

 

ついに来たか、この時が。

私はダンジョン飯の世界を知っている。だからこそ、翼獅子の力を利用して超越者になるのが目的だ、そのためには翼獅子の裏をかかないといけない。このままダンジョンに行けば私の記憶が読み取られてライオスは敗北するであろう、そして私も欲望を食われて衰弱して死ぬに違いない。

 

だからこそ私は誰よりも精神操作に関して研鑽を積んできた。

少なくとも安全に自身の記憶を抹消して、再合成させられるように。

そうすれば翼獅子に記憶を除かれても無いものは見れないし、あの傲慢で適当な悪魔の事だ深くは調べまい。というか調べても理解ができない。

 

あくまで奴は無限であり、人の本質を理解できない。

言葉によるコミュニケーションはできても理解はできないのである。

だからこそ付け入る隙がある。

私が不死を手に入れて、魔術の深淵を覗くには無限の力は必要なのだ。

 

「で?マルシル一緒に行くか?」

「えっと、いいの?正直私一人で行くものばかり」

「親友と妹を置いてはいけないさ」

「ミミル・・・・!」

 

やめて欲しい、そのキラキラした目で見るのを。

なんか悪いことをしているみたいじゃないか。

コラ,抱きつくな、罪悪感が出てくる。

 

「じゃ!早速出発の準備ね!」

「なんか楽しそうだね」

「そんなことないよぉ〜」

 

なんか友達とお泊まりする時の子供と似た雰囲気を感じる・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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