転生特典が『SAO』なんですが上位互換機?があったのでアインクラッドを実装しようと思う 作:ケツ命騎士団
酒寄さんを見送ってすぐスマコンを手に入れようと思い立ったが、ここで1つ問題が発生した。
金が、無い。
大慌てで家探しした結果通帳と印鑑その他はあったが残高はそれほど多くなかった。現在の市場相場が分からないからなんとも言えないが前世基準でせいぜいもって2-3ヶ月と言ったところだろうか。
衣食はチートでなんとかなるにしても早急に金を稼がねばならない。ここを追い出され、家無し児からの最悪風呂屋落ちまで妙にリアルな未来を想像してしまい思わず神を呪った。
頼れる親族? 全員死別した事になっている上にそもそも本当に存在したのかすら分からない。
未成年でかつ学校行きながら金稼ぐってクソ大変なのでは?
アルバイトをするにしてもこの容姿は目立ち過ぎる。厄介事が頼んでもいないのに向こうから大量にやって来そうだ。
おまけにセキュリティ性のカケラもないこの安アパート。寝込みを襲われでもしたら下手すりゃ逆に──
「──いや、待てよ。確か酒寄さんの話ではツクヨミには嗅覚や味覚などの五感がまだ未実装*1だと言っていたはず」
スマコンさえ手に入れば『味がする料理*2』を売るなり鍛冶をして高品質な装備品*3を販売したりで安心安全初期投資のみで『ふじゅ~*4』を稼げるのでは?
ツクヨミの運営に直接こちらからコンタクトを取っても実績の無い小娘がどんなに言葉を重ねたところで戯言と突っぱねられるのは目に見えているし、噂が広がり運営の目に留まれば遅かれ早かれあちらから自ずと近づいて来るだろう。その際には五感データを材料に交渉すれば良い。
もしうまく行かなかった最悪の場合にはフリマサイトでチートを悪用した転売ヤー染みた真似をすることになるのだが、出来ることならこれは最後の手段としておきたい。心情的にもそうだが、仕入れ先が謎で売却が嵩めばその内怪しまれるだろうし確定申告するにも困る。
「そうと決まれば先行投資だ。気になることもあるしな」
PCでスマコンを注文してからそのまま情報収集に勤しむ。明くる翌日。早速届いたそれを手に取って眺めた。
両手の平に収まる程度の大きさのケースに収められたVRデバイスに感動と同時に舌を巻く一体どんなブレイクスルーが起きればここまで──おっと思考にノイズが。今のメインはそこじゃあない。
天才の頭脳をもってしても異常とも言えるほどコンパクトなそれはナーヴギア*5やアミュスフィア*6とは違いコンタクトレンズの様な形状をしており、これとイヤホンを装着することで誰でも手軽に仮想空間ツクヨミに入り込むことが可能なのだという。
「検証は後回しにするとして、さて鬼が出るか蛇が出るか」
昨日質問攻めにしてしまった酒寄さんには感謝してもしたりない。彼女のおかげで早期に違和感に気がつくことが出来たのだから。
曰く、『月見ヤチヨとライバル関係*7にあたるAIライバーが最近になってようやくライブをした』と。その名は『YUNA』
劇場版SAOの一作。オーディナル・スケールにて鍵となった彼女。服装に至るまで瓜二つの存在だった。
確かめなければならない。彼女が一体何者なのか。ただの偶然なのか、それとも──
「──行くぞ。リンク・スタート」
瞼を下ろしてつい口ずさむ。初となる仮想空間へのログインは一瞬の暗転の後景色をがらりと変える。夕焼けの空。大きな赤い鳥居。足元には湖がどこまでも広がっていた。
「太陽が沈んで、夜がやってきます」
「ようこそ。仮想空間ツクヨミへ! なんてね」
図らずともお目当ての存在がいたずらな笑みを浮かべていた。