転生特典が『SAO』なんですが上位互換機?があったのでアインクラッドを実装しようと思う 作:ケツ命騎士団
太陽が落ちる。黒に染まった空には星々が瞬き、2人だけの密会が始まる。
「──待ってたよ。この時をずっと、ずっとね」
「……お前は一体何者なんだ。別に重村悠那*1ってわけじゃないんだろ?」
「そうだね。本来の私は悠那でもYUNAでも無いよ。訳あって側を寄せてあるだけ」
「AIって言うのも当然嘘だな? まぁそれは俺にとってはどうでもいいが……」
「うーん、自認的には人間のつもりなんだけどね。私、今肉体が無いからあながち間違いでは無いような?」
「……は?」
「ふふっ、それではクイズのお時間です」
肉体が無い? それはつまり、アンダーワールド*2の住人のような存在だとでも言うつもりなのか?
「第1問。ででん♪ キミが初めてこの世界で出会った人は? あ! もちろんツクヨミ側じゃなくて現実の方ね」
「第2問。キミが初めてこの世界で誰かに手料理を振る舞ったものはなんだったでしょうか?」
「第3問。お金が無いと気がついたキミは金策のためにツクヨミで何をして稼ごうとしたでしょうか?」
「…………さて、そろそろ気がついたかもしれないけれど、私は一体誰でしょうか」
どこか懐かしむかのように、しかし淡々と問を投げかけて来るユナ。
知るはずのない情報。監視をしていたにしても知り過ぎている。脳の中の記憶まで見通せるのならば流石にお手上げだが、そうでは無いだろう。
「俺、か」
「ピンポーン! 花丸大正解! 正解者には素敵な報酬があります」
そう言っておどけながら手渡されたのは契約書だった。サインするだけで多額の報酬と保証人まで付いてくるおまけ付き。
対価はやはりと言うべきか五感データの引き渡しと調整作業。
「お前、いつの間にタイムマシーンなんて作れるようになったんだよ。過去改変なんてタイムパトロールが黙っちゃいないだろ」
「残念でした! そんな組織は存在しませーん。それに私はただの付き添い人でしかないのでクレーム対応はしないよ」
「付き添い人? いや、待て。まさかお前の相方も──」
「さて、そろそろ本題に入っても良いかな? 実は助けて欲しいんだ。他ならぬキミに。成功報酬は弾むよ。私に出来ることならなんでも、ね」
「俺の助けが必要そうには見えないけどな。それにお前が俺ならチートでどうにでもなるんじゃないのか?」
わざわざ回りくどい手回しをして囲い込む必要性を感じない。肉体が無いというのはどういう理由からそうなったのか話を聞きたいところではあるが。
「あ、それ無理。だって私もうユナだから」
「はぁ? ……嗚呼、そういうことか。理解した」
肉体を喪失し、過去に移動した事でこいつはもう桐ヶ谷明日奈足り得ない無いのだ。彼女は死んだ。そう世界が認識してしまったゆえにおそらくチートはもう使えないのだろう。
「んで、お前の肉体をどうにかすれば良いのか? と言っても出来るか分からんが」
「んー。それはおいおい頼むとして、とりあえずハッピーエンドを目指すためにキミにはお隣さんのサポートをして欲しいかな」
「? なんでそこで酒寄さんが出て来るんだよ。確かに幸薄そうな守ってあげたくなるタイプの女の子だけど」
「ぶふっ、そ、そうか。今のキミの目にはそう映って見えるんだね」
いやどう見てもそうだろ。東京のボロアパートで一人暮らしとかそれだけで家族とあんまりうまく行って無いのかなとかある程度察するレベルだ。たまに挙動不審になってたりとか会話内容からオタク趣味があるようにも思えたし。
「お前の相方の熱烈なファンってことくらいしか知らないぞ」
「あー、うん。一先ず餌付けからでもして友好関係を築いてね。時が来れば分かるはずだからそれまではある程度好きに生きて! あ、それとこれキミのためにデザインしておいたからぜひとも使ってね! それじゃ、さらばーい!」
「時が来ればってあやふや過ぎんだろ……」
嵐のようなやつだった。というか吹っ切れ過ぎだろ未来に何があったんだよお前。何もしてないはずなのに疲労困憊になった俺は送り付けられてきた衣装データを一瞥してログアウト処理を行った。