「ねぇ、スクールアイドル始めない?」
「は?」
朝一番のまだ人の少ない教室で椅子に座る私、
翠はこの学園の生徒会長をしていて少しまじめなところもあるけれど、よくアニメなどの話をしている私の親友の一人だ。そのためアニメ関連の話題を振ってくるのはよくあるのだが…
「朝から唐突すぎない?それにスクールアイドルってアニメの中の話でしょ?」
私たちが仲良くなるきっかけになったアニメ、それがラブライブというスクールアイドルたちが主役の物語だ。高校生活の中で部活としてライブなどのアイドル活動をする人たちのことをスクールアイドルという。アニメの中の挿入歌や、それらのライブを声優さんが再現する実際のライブなどが魅力で多くの人に愛されている。もちろんそれらはアニメの中の話なので現実で活動している人などおらずそんな発想もこれまでなかった。
「なんで急にそんな話を?別に昨日スクールアイドル知ったわけでもないでしょ」
「ん~…別に最近やりたいって思い始めたわけじゃなくてさ。初めて見た時から思ってたよ、私もやりたいって!」
「はじめてって、ラブライブ入ったのって虹ヶ咲からだよね?てことは一年前ってこと?」
私の言葉に翠はうなずく。これまでやりたいとは思っていたけれど今始める決心をしたということだろうか。まぁ冗談かそこまで本気ではないだろうけど。
「正直断られるだろうとは思ってたからそれはいいんだ。でもひとつわかっててほしいことがあるの。」
顔を上げ目の前に立つ翠の目を見る。
「私は本気だよ。冗談とか思い付きじゃない。」
翠の鋭い目が刺さる。そこには灯がともっているような気がして、
「私も輝きたいの」
今まで見たことがない顔だった。
私たちの間に緊張感のある空気が漂う。彼女の決意のこもった瞳が私から離れることはなく目がそらせない。初めて見るその顔はまるで昨日までの翠とは別人みたいで、
(いったいなにがあったんだろう)
初めて見た時からやりたかったといった。ならこれだけの思いを一年間も閉じ込めていたということなのだろうか。でも、今伝わってくる思いはそれほど小さなものではなくて、そんな思いを解き放つきっかえがあったといことで、
「翠…なにかあっt」
「おはようさ~ん。聞いてや~、うち今日な朝からタイヤパンクしててん。ほんま災難やったわ~」
「…そっか。そりゃあ大変だったね。」
「大丈夫?みおっちの家結構遠かったでしょ?」
…話をさえぎられてしまった。いつの間にか時間がたっていてようで教室の中はクラスメイトがほとんど集まっている。
そのあとは翠からスクールアイドルの話を出されることはなく私からも言い出すことができなくて、授業が始まってからも私の頭からは翠の真剣な顔が離れなかった。