澪が加入した翌日の放課後、私と澪はあてがあると言っていた翠の後を追い廊下を歩いていた。
「そんで結局だれなん?こっから勧誘行くんは?」
「もうちょっとだから、もう少し我慢しなよ。」
放課後の今まさに勧誘に行くという時なのに、私たちはまだその人を知らされていなかった。学年も組も教えてもらっていないし、その人物がラブライブを知っているのかもわからない。今日まで私以外の人を勧誘している様子は見てこなかったので翠の言う2人は加入してくれそうな人ということより加入してをしい人ということなのかもしれない。
「ここ、ここにいるはずだよ。」
教室を出てしばらく歩いていた翠の足が止まる。
「ここって…図書室じゃん」
到着したのは図書室。放課後になれば部活に所属している人は部活に行くか、それがない人はさっさと帰ってしまうのがほとんどなのだが。こんなところに人がいるのかと私が思っていると、翠がノックもせずに扉を開けて図書室に入っていく。
「邪魔するよ。」
そう言って本棚を抜けて奥に入っていくので私たちもそれに続く。図書室に入ったのなんて1年生の頃の学校案内くらいだ。周りに見える本の中には漫画やライトノベルのような私が普段読むような本は見当たらない。この様子なら、もしこの図書室に来ることがあったとしても興味が引かれる本が見つかることはなかっただろう。
本棚の奥に貸し出し口のようなものが見えるがまだ私たちが探しているだろう人は見えてこない。そのまま進んでいく翠に続き本棚の間を抜け貸し出し口の全容を見渡すもまだ人影は見当たらない。
やはりこの場所にはいなかったのではといぶかしげに翠を見る。翠も少し意外そうな顔をして周りを見渡しているがやはり見つからないようで
「おかしいな、放課後はここにいるはずなんだけど。」
「もう帰ってしまったんとちゃうか?」
「うーん、そんなはずは…」
翠がうなった顔をして悩んでいると
「くちゅん」
「ん?」
「なんや?」
「…」
今のは…くしゃみか?貸し出し口のほう、正確にはその机の下?から聞こえた気がするが…。
私たちの間に静寂が満ちて数秒、先ほど音がしたほうからまた
「…にゃおーん」
「「「・・・」」」
「な~んや猫か~。こうも学校の中忍び込む子もいるんやなぁ。」
「…ふふ、そうだねぇ。てっきり机の下にだれか隠れてるのかと思ったけど猫ちゃんだったかぁ。」
「…(翠、悪い顔してるなぁ)」
アニメでありがちなごまかし方をした誰かに同情しつつ、おそらく今隠れている人が翠の言うあてなんだろうと思う。明らかにばれていることは理解しているだろうに一向に机の下に隠れたまま顔を出さない誰か。そんな誰かにしびれを切らした澪が内側に入ろうとするのを翠が手で制す。
「みど?」
「…今日はあきらめようか。」
「いいの?」
「うん、この後職員室に行く用があるからさ。」
「「用?」」
「そうなんだよ、なんでも…」
翠が少し貯めてからわざとらしく大きな声で言う。
「なんでも図書委員の子が放課後の図書室を使って自作の夢小説を書いt
「ゴンッ」
机のほうから響く音。そして、
「いった~~~。うぅ…。」
そういいながらよろよろ机の下から這い出てくるのは眼鏡をかけた長髪の少女。同じクラスではないが廊下で顔を合わせたことがあるのでおそらく私たちと同じ2年生だと思う。
「はぁ~、やっと出てきた。全く私の情報が間違ってたのかと思って焦ったよ。」
「翠、この人が?」
「そう、この子が。」
「なんや不審者みたいな子やなぁ。」
いまだ頭の痛みが消えないのかうずくまっている彼女を眺める私たち。そのなんとも情けない姿から私は目の前の彼女がメンバー候補だという事実に一抹の不安を覚えるのだった。