河合さんに手を引かれて強引に一緒に帰ることになってしまった。手は少し前に話してもらった。
一緒に歩き始めてから河合さんはありきたりなことを話してきた。昨日のことがあったので勧誘に関する話をされるのかと思い警戒していたのだが、案外楽しく話せていてた。
「そういえば、夢小説、やっけ?どんなの書いてるん?」
「あぁ…あれは、まぁその…夢小説というのは自分を主人公とした小説のことで…」
普段ならそんなこと話すわけはないがここまで一緒に話していて妙にほだされていた。校門で会ってからここまで一緒に話していて河合さんが小さなことで人を馬鹿にするような人ではないということを感じていたが
「…ごめんなさい、あまり面白い話でもないので。」
「そか、また機会があったら読ませてな。」
えぇと返して私たちの会話が一時的に終わる。
河合さんから聞いてきてくれたというのにそれをないがしろにしてしまったようで気まずく感じてしまう。この空気を取り除きたくてこちらから話題を振れないものかと頭を回す。
「その…河合さんはどうしてスクールアイドルを始めようと思ったんですか?」
しばらく彼女と話していて、彼女は私のようなオタクではないと思っていた。そのためどうしてスクールアイドルを始めようと思ったのか謎だった。あの生徒会長の勧誘だろうと予想はしているものの、どういう気分で始めようと思ったのか気になって思わず聞いてしまった。
「あ~それな、えっとうち今週始めてラブライブ知ったんよ。」
「今週ですか、ずいぶん最近ですね…。」
今週のうちにラブライブを知って昨日までには加入していたというのはなんとも行動力のある人だと内心思う。
「アニメを見て感動してもうたんや。そんで、やりたいって思ったんや。」
「…え?それだけですか?」
「え?うん。」
それだけ、やりたいと思ったからやる。それはラブライブの中にもあった言葉だけれどそれができる河合さんはやはりすごい人だ。
「そうですか…。河合さんあなたスクールアイドル向いてると思いますよ。私も力になれることは少ないかもしれませんけど応援していますから。」
「なぁ…」
?急に足を止め先ほどまでと違う、なんだか真面目な顔で見つめる河合さんに身構えてしまう。私は純粋に河合さんを称賛しただけなのだが何か気に障ることでも言ってしまっただろうか。
「こはっちゃんはさ、なんでスクールアイドルやらへんの?」
固まっていた私の体が跳ねる。今までされてこなかったそれに関する質問。
「ですから、昨日言ったように私はあなた達と共にスクールアイドルをするつもりは…」
「そういうことやない。どうして昨日断ったのかが聞きたいねん。」
雰囲気の変わった河合さんは先ほどより圧が強くてたじろいでしまうが頭の中で河合さんの質問について考える。
「どうしてと言われても…急なことでしたし、現実でそんなことするなんて考えたことなかったですし、それに…」
「それに?」
「…私がステージに立っても足手まといになるだけです。」
私が考えた答えを話しまた会話が途切れる。
数分経っただろうか、気まずさに耐えきれなくなり一人で帰ってしまおうかと考え始めた時河合さんがまた話し始めた。
「…やりたくない、とは言わへんのやな。」
「え?」
うつむいていた顔を上げ河合さんに顔を合わせると、彼女はまあ締めな顔からにやりと笑っていた。
「…今日は楽しかったわ!朝と放課後にツバサ公園で練習してるから、よかったら来てや。」
それじゃあなと言い、大きく手を振りながら走っていく河合さんの背中を見る私は、先ほどの彼女の言葉が反芻していた。