不死身の男   作:ななし

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金カム見て、こういう主人公がいたら面白そうだなという思いつき。


第1話

 

 

硝煙、土煙、血煙……色んな色の煙が立ち込める戦場。

そこで行われる命をかけた戦い。

 

『──ゥオラァッ!』

 

テロリストに囲まれ戦場のど真ん中で鬼神のごとき形相で暴れる少年が1人。

 

『殺してみろ!殺れるもんなら殺ってみろ!』

 

敵の目を指で潰し、そのまま脳みそまで貫く。

首元に噛みつき、そのまま肉を噛みちぎる。

ナイフを心臓に突き立てる、歩兵銃をバット代わりに振り回し顔を潰す……殴り、蹴り、捻り、折り、投げ飛ばし、噛みつき……全身から血を流しているとは思えないほどの狂気を孕んだような様子で暴れる姿は正しく一騎当千。

 

『俺は……不死身だァッッッ!!』

 

そんなセリフとともに少年は敵を屠っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────んが…?」

 

目が覚めた。

心地のいい日差しに、吹き抜ける清々しい風。

目の前に広がるは、緑の木に囲まれた巨大なグラウンド。

 

──いつの間にか寝てたか

 

長い時間ベンチに腰掛けていたからか、体が凝っている。首を捻れば"コキリ"と骨が鳴った。

 

「……平和だなあ」

 

何気なく呟く言葉。

少し前までは考えられないほどに静かな時間。前までなら今頃、"あの戦場"で敵を倒しているような時間だ。

寝ていた時に見た夢のせいか、顔に刻まれた傷跡が少しばかり疼くような感覚を覚えた。

 

「……"船坂"か」

 

ふと、そんな声が横から聞こえた。

見ればそこに居たのは自分の通う学園のトップがいた。

 

「あ、理事長。お疲れ様です」

「昼寝か。まあ今日はのどかだしな。気持ちは分からなくない」

 

そう言って、自然な流れで隣に腰掛ける彼女。

ピッチリと着こなしたパンツスタイルのスーツ。長い髪を後ろでまとめ、女性の中でも長身な方のスタイルも相まって、"出来る女"の理想像のような見た目の彼女は"新宮寺黒乃"。自分の通う学園の理事長を務める女性だ。

 

「一本いいか?」

「確認必要ですかね?俺ら"伐刀者(ブレイザー)"って15歳から成人扱いなんですよ?」

「一応だ。私は教師、お前は生徒。最低限のマナーは弁えているつもりだ」

「そうですか」

 

そう言って、胸の内ポケットからタバコとライターを取り出し慣れた手つきで一本咥え、火をつける。

そのまま、口からふーっ吐き出された紫煙は風に流れて消えていった。

 

「お前も吸うか?」

「あいにくタバコも酒も合わないみたいで。大丈夫ですよ」

「フッ、そうか」

 

断れば微笑みを浮かべる理事長。

 

……伐刀者と、そう呼ばれるものたちがいる。

己の魂を固有霊装として顕現させ、魔力を用いることで異能の力を操ることが出来る千人に一人の特異存在。

重い社会的な責任を負うことになるが、15歳と言う若さで成人として扱われる。飲酒、喫煙、結婚……それらが早い段階で解禁されるのだ。

が、どうにも俺は酒もタバコも性にあわないらしい。大人になりきれない感を感じて少しばかり残念な気持ちがある。

 

「最近はどうだ?」

「暇、ですね。やることもないので、とりあえず去年の遅れた分を取り戻すために最低限勉強頑張ってます」

「……そうか」

 

俺の言葉に理事長は少しばかり顔に影を落とした。

なんというか、この人はほんとに優しい。子供のことを、生徒のことを第一に考えられる人なんだろう。

 

「別に理事長が責任を感じることはないですよ。俺が好きでやってたことでもあるので」

「お前は今と去年、どっちの生活が好きだった?」

「まあ今ですね。去年は理由がありましたけど今はもうないので」

「……すまないな、あまり考えたくないことを考えさせたな」

「いいですよそんな。そこまで考えて会話してたら何も話せないでしょう」

 

血腥い戦場、個人的な事情。それらを与してフォローしてくれる理事長。去年までの理事長とは大違いだな。

 

「話題を変えるか。先程な、"黒鉄"と新入生の模擬戦があった」

「へえ、珍しいですね。黒鉄が決闘ですか」

 

黒鉄……"黒鉄一輝"。

同い年で、元クラスメイトという訳でもないが、去年はそれなりに交流があった男。

少ない日数だが学園に"帰ってきてる"間、色々世話になった。

 

「相手の新入生は【紅蓮の皇女】と呼ばれるステラ・ヴァーミリオン。Aランクだ」

「黒鉄ってFランクですよね?なんというか、つくづく試練苦難に囲まれた人生送ってますね」

 

それにお相手の"ステラ・ヴァーミリオン"。ヴァーミリオンと言えばかなりの大国だったはず。それに二つ名に皇女と来れば……、

 

「もしかして皇族かなにかです?」

「ああそうだ。ヴァーミリオン皇国の第二皇女。保有する魔力量が世界一だとかでかなり話題に上がった少女だな」

「なんでまたそんな人と決闘したんです?」

「色々とな……2人をルームメイトにしたんだが、皇女サマの方が難色を示して、それならばと決闘して白黒つけたらどうだと私が言った」

「………」

 

なんというか、優しい人ではあるけどこういう所はなかなかぶっ飛んでるんだよなあこの人。

異性のしかも皇女様を初対面の男と同じ部屋にするとか。まあ黒鉄なら変なことは起きないだろうけど、それでもでしょ。

 

「理事長って頭のネジ吹き飛んでるとこありますよね」

「それをお前に言われるのは心外だ」

「俺は日常生活を送る分には普通なので。それで?どっちが勝ちました?」

「黒鉄だ」

「……何となくそんな気はしましたけど、普通に凄いですね」

「あまり驚かないんだな」

「んー、あんまり黒鉄の負ける姿ってイメージしづらいんですよね」

 

黒鉄の戦ってるところはあまり見た事ない。ただ、去年少しばかり手合わせした時に"勝つ"と言うよりも"負けない"ことに特化した才能を持ってる、なんて印象を持った。

相手が格上でも一矢報いる。そんな雰囲気。

Aランク騎士と言えど年はほぼ同じ。なんなら1つ下。となれば才能を扱う技量もまだ未熟な部分もあるだろうし、そうなると技術を磨き続けている黒鉄が勝ってもなんら不思議なことはない。

 

「黒鉄とお前は似ているな」

「どこかですか。黒鉄みたいな優しい顔つきとは程遠いでしょう俺」

「見た目じゃなく中身の話だ。特別な力も無いのにお前たち二人の負ける姿などあまり想像できん」

「俺のは気合い、黒鉄のは技術。全然違うでしょう」

「まあな。何せお前は"不死身"だものな」

「……人に言われるとなんだかこそばゆいですね」

「なんだ?照れてるのか?」

「……理事長ってたまにお茶目なとこありますよね」

 

どう返せばいいか分からない理事長の言葉に少ししどろもどろになればニヤリとした笑みを浮かべられた。

 

「そういえばなんだが、七星剣武祭の方はどうする?今年から能力値の選抜をやめて代表戦、つまりは戦い合わせて代表を決めるつもりなんだがお前は出るか?」

 

七星剣武祭……そうか、もうそんな時期か。

去年は学園自体にいなかったから不参加だったっけ。

 

「……いや、今年も不参加で。色々と遅れてる部分も多々ありますし、まだ来年もありますから。今年は学生の本分に力入れておきます」

「そうか。まあお前が出ると観客が引きそうな戦いになりそうだしな」

「一言多いんですよ」

 

そうして、理事長は口に咥えたタバコをポケットから取り出したポケット灰皿へと投げ入れた。

 

「さて、一服も済ませたことだ。私はそろそろ失礼する」

「あ、はい。お仕事頑張ってください」

「お前も学生として今年はしっかり青春しろよ」

 

背中を向けて歩き出す理事長。

そんな大人として広い背中を俺は見送った。

 

「……さてと、俺もそろそろ行くか」




続きは書ける時に書くスタイルで。
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