不死身の男 作:ななし
ド深夜に頭働かないまま適当に書きすぎてた。
「くあ……ぁ……」
思わず欠伸が出て少し涙が出てきた。
相も変わらずのどかな日。そんな中、今日はショッピングモールへと足を運んでいた。
今年は勉学に勤しむと決めた。同級生に色々学生として置いてかれている現状だ。少しの焦りがある。
それでもこうして今日出かけてきたのは学業関連の色々なブツを取り揃えるためだ。
なんというかこう……去年の間、ほんとに学生らしい生活じゃなかったために色々やってると、"あ、あれ足りない""あ、これ足りない"なんてことがしょっちゅうあった。
「学生の感覚を忘れる高校生ってなんなんだろ…」
頭をポリポリと掻きながらそんなことを呟いてメモ書きした足りない物を眺める。
文房具やらノートやら、なんなら手持ちのワイシャツとかも少ない。
お金ならまあある。"使い道の無くなった貯金"がたんまりと。
「……色々買ってみるか」
使ってる寮の部屋も家具やら何やら、必要最低限しかない。センスはあまりないが模様替えもしよう。別にミニマリストでもないし、散らかしたくはないがもう少し賑やかさは欲しい。
友達の一人でもいればアドバイスも貰えるんだろうが、あいにく友人関係は全然だ。何せ学校に居無さすぎたからな。
「ま、たまには羽伸ばさせてもらうか」
何の変哲もない平和な日常。そんな日々に感謝しながらいざ目の前の目的の場所へ。
態度には出さないが、少しばかり心を弾ませながら"トレードマークの軍帽"を被り直し足を進めた。
「──ふぅ、だいぶ買っちまったなあ」
昼も過ぎ、現在フードコート。
傍らには大量の買い物袋が積まれている。
買うもの買って、その後ブラブラ散策しながら物色。存外、興味の惹かれるものが多くあれこれと買ってしまった。
家電コーナーで家電も買い換えたため実際にはここにあるもの以上の買い物をした。それなりに大きい荷物は後に宅配で届けてもらうことになった。追加料金がかかったが貯金は全然余裕だし、問題ない。
「さて、腹減ったなあ」
そうして視線はテーブルの上へ。
そこに置かれているものは焼き魚の定食。やっぱ日本人は米と味噌汁と魚だろう。和の心は大切にね。
「それじゃ、いただきます」
手を合わせ料理に対してのいつもの挨拶と感謝を。
そうして、箸を手にして──
「──あれ?船坂君?」
横からかかる声。
手を止め、視線を声のほうへと向ければそこに居たのは、
「お、黒鉄」
数少ない交流のある人物、黒鉄一輝がいた。
傍らには他にも3人。女子が二人に、男子……?が一人。
「帰ってきてたんだね」
「ここ最近……てか、進級してからは学園でのんびりしてるよ」
「そうなんだ。僕は留年しちゃったから顔を合わせるタイミングが減っただけなのかな?」
「なんだ?留年したのか?」
「……まあ、色々あってね」
色々、か。
あまり学園の内情は詳しくないが、黒鉄が学園ぐるみで虐められてたのは何となく知ってた。特に前の理事長が率先して扇動してた節もある。
おそらくだがなんかしたんだろう。
…………。
「……ごめん船坂君。その殺気抑えてくれるかな?」
「え?ああ、悪い。わざとじゃないんだ。だから
「「「……」」」
睨む視線が三人分。
これは悪いことしたな。黒鉄たちも楽しい気分でここに来てたはずなのに要らん事を考えさせた。
「席移動しようか?」
「そんな事しなくていいよ。逆に同席いいかな?船坂君と久しぶりに話したいんだ」
「俺はいいけど……そっちの三人はいいの?」
「お兄様、誰なんですこの人」
俺の言葉に被せるようなタイミングで三人のうち一番小柄な昇叙が黒鉄一輝に向けて口を開いた。
他二人は先程までよりは警戒を解いているがそれでも視線はずっとこっちに向けている。
「ああ、紹介するね。彼は船坂君。僕の……うん、友達だよ」
「船坂佑二だ。三人は新入生?よろしくね」
ペコッと頭を下げれば、軽くだが会釈が返ってきた。
良かった、多少は誤解は解けたかな。
「船坂君にも紹介するよ。僕のルームメイトのステラ、"ステラ・ヴァーミリオン"。そして妹の"珠雫"とその友だちの"有栖院凪"だ」
「え、えーと……よろしく……じゃなくて先輩だろうし、よろしくお願いします…」
「………」
「うふ、アリスって呼んでください」
しどろもどろな挨拶のステラさん、ジト目の珠雫さん、そして──
「アリスさんってもしかして"こっち"の人?」
「ええ、身体は男で生まれた乙女なんです」
「そっか。よろしく」
左手の甲を右頬につけるように、そんな"オネエ"ポーズをとって見れば笑って肯定された。まあ世の中色んな人がいる。そういう人がいてもいいものさ。
「あと、みんなもっと砕けていいよ。ぎこちなくなるくらいならいつも通りの方がこっちも親しみやすいから」
「そう?ならそうさせてもらうわ」
「それじゃああたしも」
順応が早い。まあ、そっちの方がいい。
変に敬語を使われるとこっちもむず痒いというかなんというか。
「それじゃあ、みんなも相席いい?」
「私はいいわよ。イッキの友達なら悪い人じゃないだろうし」
「アタシも構わないわ」
「えっと、珠雫は?」
「お兄様がそうしたいなら私はいいですよ」
そんなこんなで唐突に五人でのお昼が始まった。
と言ってもご飯は俺だけで他はクレープだけだが。
まあ昼も回って少し経ってる。黒鉄たちが今さっきここに来たのならお昼はもう済ませてるんだろう。
そんなことを思っていると、目の前に黒鉄を挟んだ形で珠雫さんとステラさんが挟む形で腰掛けた。
「それじゃあ、隣失礼していいかしら?」
「ああ、いいよ」
隣にはアリスさん。
目をあわせ軽い会釈。
……なんだろう、この人……まあいいか。何かあればその時はその時だ。
「船坂君は今日は何をしに?」
「買い物だ。必要なものを買いに。あとは部屋が寂しいからついでに家具とかも。去年は学校にいる方が少なかったからものがなくても困らなかったんだけど今年からは"あっち"は休んでこっちに専念しようと思ってな」
「それじゃあもういつでも会える感じになるのかな?」
「まあ、そうだな」
そんな会話をしながら橋を進めていく。
うん、美味い。魚の焼き加減もさることながら塩気も丁度いい。ここにポン酢と大根おろしもトッピングしてみれば……うん最高だな。ご飯が進む。
「顔の傷すごいわね。"カプセル"使わなかったの?」
ステラさんからそんな質問が飛んできた。
カプセル……IPS
四肢の欠損、臓器の損傷程度なら治せる優れもの。大抵の傷は傷跡なんか残らず綺麗に完治するものだ。
一般には普及してないが伐刀者なら気軽に使えるようになっている。
「使ったんだが……いかんせん放置しすぎたみたいでな。跡が残っちまったんだ」
「なんでそんな放置したのよ……」
「はは、まあ……そうだな」
答えれば呆れたような様子。
だいぶ"あの時"はやばかったからなあ。めずらしく死んだかもなんて考えたほどだった。
「その軍帽はいつも被っててるのかしら?」
「ああ、これは親父のもので譲ってもらったんだ。被ってると気合いが入るんだよ」
「いいわね、親から子へなんて。受け継がれる意志……みたいなものかしら?」
「ははは、そんな大層なものじゃないさ」
アリスさんの目が優しげだ。
……なるほど、悪い人じゃなさそうではあるか。"臭い"が俺に似てたがまあそこまで警戒はしなくていいか。去年の俺みたいに"ああいう場所"に行ってたとかかもしれないしな。
「黒鉄たちは何してるんだ?」
「ああ、珠雫に誘われて映画を見にね」
「へえ、みんなで映画か。いいじゃん」
「船坂君も一緒に見る?」
「え?俺も?」
大丈夫か?俺はいいが……お邪魔にならないか?
少なくとも第一印象は良くなかった男が合流って大丈夫?
「あらいいじゃない。あたしもユージさんともう少し仲良くなりたいわ」
「センパイがいいなら私も別にいいわよ?」
ステラさんとアリスさんは快く。
だが、遊びに発端である珠雫さんはと言うと無言で見つめてくるだけ。なんというか、ほんとに俺を、というか周囲の人間を信用してないんだなあと感じる態度だ。
しかし、そんな珠雫さんもはあとため息をこぼした。
「今さら一人増えても変わりませんしねこの状況は。いいですよ私も」
「ありがとうね珠雫さん」
「……いえ、別に」
素直に感謝すればそっぽを向かれた。
そんな彼女に頬をかきながら苦笑いが浮かぶ。
「そういやなんの映画を見るんだ?」
「あ、それは僕もまだ聞いてなかった。珠雫、今日はなんの映画見るの?」
「普通のラブストーリですよ」
「やっぱり。そんなことだろうと思ったのよ。ほんと着いてきてよかったわ。それで?タイトルは?」
「"私は妹に恋をした"」
「それのどこが普通のラブストーリーなのよッ!!」
ステラさんの声が響く。
実の兄と兄妹の禁断恋愛モノの映画を観るとは。なんとも神経が図太いというかなんというか。しかも、モールの中でポスターを見かけたけどR15指定じゃなかったか?濡場アリとか空気凍るって。
そんなことを思いつつ、隣に座るアリスさんの耳に口を近づけ小声で聞いてみた。
「もしかして珠雫さんって黒鉄の事……」
「……フフ」
ニコッと笑顔だけが返ってきた。
まあ、いろんな愛のカタチがある。別に否定する気は無い。ただもう少しアプローチの仕方は考えた方がいいんじゃないかとは思う。
さてと、そんなことより──
「あら?ユージさんどこ行くの?」
「食器を片付けてくるよ。あとみんなのこと見てたら甘いの食べたくなってきたしついでにクレープでも買ってこようかな」
「あらそう。クレープ屋さんは端の方よ」
「ああ、ありがとう」
食器の乗ったお盆を手にし立ち上がる。
未だ言い争うステラさんと珠雫さん。それに挟まれアワアワする黒鉄を尻目に笑顔を零しその場から離れた。
船坂が去ったテーブル席。残ったのは四人。
ステラも珠雫も一旦の落ち着きを取り戻し一息ついた。
「全く、ほんとに何考えてるんだか……それにしてもセンパイ、話してみると普通に優しそうな人ね」
「顔の傷で勘違いしてたけどいい人よね」
「私はまだ信用してませんけどね。雰囲気が普通の人と違いすぎます」
気を許した二人と未だ警戒の珠雫。
そんな妹の様子を見て一輝はまあそれもしょうがないかと納得はしていた。
「船坂君は入学した当時とだいぶ変わったからね」
「去年なにかあったみたいな話だったわよね?何があったの?」
「特別招集に行ってたんだ。それも何回も」
"特別招集"。
学生騎士の中で実力者に協力を要請し、実践の場に駆り出されるものだ。
「そんなに強いの?」
「と言うよりも最初は自分で売り込んだらしいんだ。彼のランクはDランクだし、普通なら声はかからないだろうからね」
「自分から志願なんて、理由は知ってるの?」
「お金のためだね。父親は早くに亡くなって、母親が育ててくれてたみたいなんだけど母親も持病があってそれが悪化したからって理由で破軍に来て特別招集でお金を稼ごうとしてたみたい」
「「……」」
一輝の言葉にステラとアリスは沈黙した。
自分たちの先輩の重い話。
「……なんか軍帽のこと、気軽に聞いちゃいけなかったかしら」
「まあ、船坂君は気にしないと思うけどね。逆にアリスが気にしてると船坂君の方が気を使わせちゃったななんてこと思っちゃうから」
「……優しいのねユージさんは」
「うん、凄く優しいよ」
そんなことを言う一輝の顔は穏やかで優しげな笑顔が浮かんでいた。
「じゃあ顔の傷もその時にってこと?」
「うんそうだね。基本一週間くらいで帰ってきてたんだけど一回だけ一ヶ月間帰ってこなかったことがあるんだ。かなり危険な任務だったらしくて傷まみれでほぼ死にかけた状態で帰ってきた」
「……確かに一ヶ月も傷を放置すればカプセルでも完治は難しいわね」
「去年の一年間、帰ってきては一日の休息をとってその次の日には別の任務に出発……多分30回近く行ってると思うよ」
「はあ…!?何そのハードな生活…!」
「なんて言ったらいいか。人間とは思えないわね」
一月に一回でも行けばかなり言ってると言われるレベル。それの三倍近いペースでの任務。狂気の沙汰と言っても過言では無い。
「……軍帽に顔の傷。それにそんな高頻度の特別招集……もしかして、ユージさん、"不死身の男"だったりする?」
「アリス知ってるの?」
アリスの言葉に珠雫が反応した。
「意外と有名よ。特別招集に参加した学生騎士たちはもちろん、一般の伐刀者の間でも噂されてる人物。船坂って苗字を聞いてまさかとは思っていたけれどまさか彼があの"不死身の船坂"なのね」
「うん、例え致命傷を受けても絶対に倒れることなく、自分の流した血なのか敵の返り血なのか分からないほど全身血まみれで、それでも敵目掛けて突貫していく……正しく鬼神のような男。それが彼だよ」
「そんな風には見えなかったわよ?」
「あくまで戦ってる時の話。普段は気さくで優しい人なんだよ」
そんな一輝の言葉に三人は納得したように頷く。
会話の姿しか見てなかったが、出会い頭のあの殺気。今までの話に説得力ができた。
「それにしてもそんなに特別招集って……初めはセンパイからだとしてもそれ以降もセンパイから行きたいって言ってたの?」
「多分二回目からは学園側からの指示だと思う。戦果が戦果だからね。今の所任務達成率100%、"
「「「……」」」
これまたとんでもない話、噂にもはや口が開かなくなった三人。
そんな三人を見て一輝はその反応もしょうがないかと愛想笑いを浮かべるしかなかった。
「──なんの話してるの?」
「「「「……っ」」」」ビクッ
唐突な声。
声の主は話題の男、不死身の船坂。両手に持ったクレープにかぶりつきながら首を傾げた。
「見る映画決まった?」
「え、えーと、まだ決まってなくて」
「せ、センパイは見たいのとかないの?」
慌てる後輩たちにハテナが浮かぶ船坂だが、ステラの言葉に気になる映画はないか頭を巡らせる。
そういえばとインパクトのある映画のタイトルがあったな。ポスターを見かけて、なんだか覚えていた。
「"ガンジー、怒りの解脱"」
「「「「なにそれめっちゃ気になる」」」」
四人の声がハモった。
それじゃあ早く行こう。そんな声とともにアワアワと準備し出す四人に船坂はまたもや首を傾げるだけだった。
口調って難しいな、って思いましたまる