The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説   作:裸男祭

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第10話

ジョルバスクルの地下、暗く湿った「アンダーフォージ」へと足を踏み入れる。そこは、かつて俺が知っていたホワイトランの明るい陽光とは無縁の、鉄と獣の匂いが立ち込める場所だった。

松明の炎が壁を赤く舐める中、同胞団の重鎮たちが俺を待っていた。

 

「来たか、ヨルン」

 

腕組みをして立っていたのは、スコール。そしてその傍らには、獣のような鋭い瞳をした狩猟の女神アエラがいた。

 

「同胞団の真の姿を知る覚悟はできているか? 我々の血には、古代より受け継がれてきた『祝福』……あるいは『呪い』が混ざっている」

 

アエラが、その場で自らの腕を切り裂いた。滴り落ちる血が、石造りの盆を満たしていく。だが、その血は人間のものとは思えないほど赤黒く、ドロリとしていた。

 

「これを飲め、ヨルン。そして選べ。ただの鋼の戦士として死ぬか、夜を統べる『野獣』として生きるか」

 

俺は躊躇わなかった。スカイリムで生き抜くには、力が必要だ。ドラゴンの魂を宿し、さらに獣の血をも喰らう。それが俺の選んだ道だ。

盆を手に取り、その血を喉に流し込む。

……鉄の味が、爆発した。

 

「ぐ、あああああッ!!」

 

心臓が、肋骨を突き破らんばかりに跳ねる。

視界が赤く染まり、筋肉が悲鳴を上げながら膨張していく。全身の毛穴から硬い毛が突き出し、爪が鋭く伸びる。

人間の理性が、濁流のような殺意に飲み込まれていく。

俺は咆哮した。それはノルドの叫びではなく、月夜に響く狼の遠吠えだった。

意識が遠のく中、俺はホワイトランの街を影のように駆け抜けた。

衛兵の叫び声、夜風の冷たさ、そして獲物の鼓動……すべてが鮮明に、暴力的なまでに研ぎ澄まされていた。

 

 

 

翌朝、俺が目を覚ましたのは、街から少し離れた荒野の真ん中だった。

全裸で、体中が返り血で汚れている。だが、不思議と体は羽のように軽く、全身に力がみなぎっていた。

 

「……目覚めたか」

 

アエラが近くに立っていた。彼女の瞳には、仲間を受け入れた者特有の信頼が宿っている。

 

「お前はもう、我ら『サークル』の一員だ。だが、この力には代償がある。シルバーハンド……獣の血を引く者を狩る狂信者どもが、お前の首を狙い始めるだろう」

 

俺は黙って立ち上がり、捨て置かれた革鎧を身に纏った。

剣の重みは変わらない。だが、俺の手は、今やドラゴンの炎と、獣の爪を同時に宿している。

 

「シルバーハンドか。……ちょうど、この新しい牙を試したかったところだ。ノルドの面汚しどもが、同胞団の誇りに泥を塗ろうってのか」

 

俺は地面に吐き捨て、戦槌の柄を強く握りしめた。アエラの冷徹な瞳が、満足げに細められる。

 

「いい返事だ、ヨルン。奴らはギャロウズ・ロックに陣を敷いている。我々の同胞、スコールが……あそこで奴らの汚い刃に倒れた」

「……何だと?」

 

胸の奥で、昨日植え付けられたばかりの「獣」が低く唸り声を上げた。スコール。俺をアンダーフォージへ導き、この力を授けてくれた男が。

 

「行こう。あいつらの喉笛を、俺たちの牙で食い破ってやる」

 

 

 

砦の周囲には、見せしめのように狼の皮が吊るされていた。シルバーハンド――獣を狩ることを至上の喜びとする、狂信的な集団。だが、彼らが狩っているのはただの獣じゃない。俺たちの「家族」だ。

 

「正面から行くぞ、アエラ。隠れるのはノルドの戦士に似合わねえ」

「……フン、勇ましいことね。背後は任せなさい」

 

俺は砦の重い鉄扉を蹴り破った。

 

「同胞団のお出ましだ! 命が惜しい奴からかかってこい!」

 

奥から飛び出してきたシルバーハンドの戦士たちが、銀の剣を抜く。

銀の刃は、俺たちの血に対して毒のように作用する。かすっただけでも焼けるような痛みが走るが、当たらなければどうということはない。

俺は戦鎚を風車のように振り回し、迫り来る銀の剣をまとめて叩き折った。

 

「YOL!!」

 

炎の吐息が通路を駆け抜け、奥にいた弓兵を焼き払う。阿鼻叫喚の地獄絵図の中、俺の意識は次第に熱を帯び、視界が赤く染まっていく。

 

(……出ろ。俺の中の『獣』よ!)

 

理性の鎖をあえて緩める。

骨が軋み、肉が膨れ上がる。服が弾け飛び、俺は再び巨大なウェアウルフへと姿を変えた。

 

「グオォォォォォン!!」

 

咆哮一閃。

シルバーハンドの戦士たちが恐怖に顔を引きつらせる。俺は四足で石床を蹴り、一瞬で距離を詰めた。鋭い爪が一振りされるたびに、銀の鎧は紙細工のように引き裂かれ、鮮血が壁を飾る。

 

 

 

最奥の広間で、俺たちは変わり果てたスコールの姿を見つけた。

シルバーハンドのリーダー、通称「皮剥ぎのクレヴ」が、血に染まった剣を手に笑っていた。

 

「野獣め、よく来たな。お前の皮も、こいつの隣に並べてやる」

 

だが、俺の耳にその言葉は届かない。

理性を失った獣の咆哮が、広間の天井を震わせる。

俺はクレヴの突き出した銀の剣を左腕で受け流し(肉が焼ける臭いがしたが、構わん)、右の爪で奴の胴体を真横に薙いだ。

 

「ガ、アッ……!?」

 

クレヴの体は、まるで巨人に叩きつけられたかのように吹き飛び、石柱に激突して動かなくなった。

 

 

 

戦いが終わり、俺はアエラの傍らで人間の姿に戻った。

スコールの亡骸を前に、俺たちは言葉を失った。復讐は果たしたが、失ったものはあまりに大きい。

 

「……スコールは、最後まで誇り高き戦士だった」

 

アエラが静かに呟く。俺は自分の手を見つめた。返り血で汚れ、かすかに震えている。

ドラゴンの魂、そして人狼の血。俺の体は、もはや純粋なノルドのそれとはかけ離れたものになりつつある。

 

「アエラ。俺たちはこれからどうなる?」

「戦い続けるだけよ。……だが、忘れないで。お前はもう、一人じゃない」

 

彼女の手が、俺の肩に置かれた。その温もりが、冷え切った砦の中で唯一の救いだった。

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