The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説 作:裸男祭
ウステングラブの重厚な石扉を押し開くと、冷たく湿った空気が俺たちを迎え入れた。ここはただの墓所ではない。かつて「声」を極め、そしてその力の虚しさを悟った男、ユルゲン・ウィンドコーラーの安息の地だ。
俺はウスガルドに合図を送り、戦槌の重みを確かめながら奥へと足を踏み入れた。
内部は複雑な三層構造になっていた。
「……ヨルン、見てみな。あそこだ」
ウスガルドが指差した先には、三つの魔法の石柱が並んでいた。近づくと赤く光り、前方の格子戸が一瞬だけ跳ね上がる。だが、普通に走っても到底間に合わない。
「『声』を使えってことか……。よし、ウスガルド、離れてろ」
俺は深く息を吸い込み、三つの石柱の間を駆け抜ける。
「WULD(ウルド)!!」
旋風の如き速さで空間を切り裂き、閉じる直前の格子戸を滑り抜けた。背後でウスガルドが感心したように口笛を吹く。
だが、安息は長くは続かない。
最下層の広大な広間に辿り着いた瞬間、床の棺がいっせいに弾け飛んだ。
「死霊術師どもの差し金か……! 叩き潰してやる!」
現れたのは、強化されたドラウグル・ウォーカーの群れだ。俺はウースラドを振り回し、迫り来る死者の腕を次々と断ち切る。ウスガルドの剣もまた、闇の中で鋭い軌跡を描き、腐った肉を切り裂いていく。
激戦を終え、広間の隅にある滝の裏側に違和感を感じた。
「手紙に書いてあったのは、ここか……?」
滝をくぐり抜けると、そこには本殿とは切り離された隠し小部屋があった。中央に鎮座するは、あの不気味な光を放つ「言葉の壁」。
壁に近づくと、耳の奥でささやき声が響く。
「FEIM(フェイム)……無」
その言葉が魂に刻まれた瞬間、俺の体から実体感が消え、一瞬だけ陽炎のように透け通った。
「霊体化か。……あの手紙をくれた『友』は、俺がこの力を必要とすることを知っていたのか?」
正体は未だ不明だが、そいつは俺の成長を特等席で見守っているらしい。薄気味悪さと同時に、奇妙な高揚感が胸を焼いた。
ついに最奥、ユルゲンの棺が置かれた巨大な広間へ。
水面から突き出た石像の手が、俺を導くように並んでいる。俺は畏敬の念を込め、祭壇へと歩み寄った。
だが、そこにあるはずの「ユルゲン・ウィンドコーラーの角笛」は……なかった。
「……空っぽじゃないか。誰かに先を越されたってのかい?」
ウスガルドが呆然と呟く。
角笛が置かれていたはずの場所には、一通の小さなメモが残されていた。
「ドヴァーキンへ。
角笛は私が預かっている。返して欲しければ、リバーウッドの宿屋『スリーピング・ジャイアント』の屋根裏部屋を借りろ。
――貴方の『友人』より」
「……リバーウッドだと?」
俺はメモを握りしめた。ホワイトランのすぐ近く。俺が旅を始めた場所だ。
グレイビアードの修行、同胞団の誇り、そしてドラゴンボーンとしての運命。それらすべてを手玉に取るかのような、この「友人」と名乗る人物。
「行こう、ウスガルド。屋根裏部屋なんてない宿屋に、どうやって部屋を借りるか……そいつに直接聞いてやる」
俺は戦斧を担ぎ直し、出口へと続く隠し通路を睨みつけた。
スカイリムの霧は、深くなる一方だ。