The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説   作:裸男祭

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第2話

店内に一歩足を踏み入れると、埃っぽい空気の中に、激しい言い争いの火花が散ってた。

 

「……もう我慢できないわ、兄さん! あの爪がなければ、この店は終わりよ!」

「わかってる、カミラ! だが、相手はあのブリーク・フォール墓地に巣食う山賊どもだぞ! 俺一人で行って、どうにかなる相手じゃない!」

 

店主のルーカン・バレリウスと、妹のカミラ。二人の絶望的な表情が、カウンター越しに俺を捉えた。俺がヘルゲンで身につけた剥ぎ取りの鎧は、まだ血の臭いが染み付いており、よそ者の俺をより一層不気味に際立たせていたはずだ。

 

「……何か手伝えることはあるか?」

 

俺の低い声に、ルーカンは縋るような目を向けた。

 

「ああ、旅の方……! 貴方のような強そうな戦士なら、あるいは……! 実は、店の象徴である『金の爪』が山賊に盗まれたのです。北の山にある忌まわしき古代遺跡へ逃げ込んだ奴らから、それを取り戻してはくれませんか?」

 

カミラが俺の腕に手を添えた。その震える指先が、この村がどれほど恐怖に支配されているかを物語っていた。

 

「お願い……。あの爪は私たちのすべてなの」

 

俺は黙って頷いた。懐は余りにも寂しく、胃袋は鳴っている。ヘルゲンの悪夢を振り払うには、あまりに都合の良い仕事だった。

 

一人で登る雪山は、風の音だけが耳を刺した。

霧の向こうにそびえ立つ、巨大な石のアーチ。古代ノルドの呪われた遺跡。

 

「……フゥ」

 

俺は冷たい吐息を吐き出し、手に馴染まない帝国軍の剣を握り直した。見張りの山賊を背後から仕留め、一人、また一人と影に沈めていく。狩人だった頃の、獲物の気配を消す術が、俺の唯一の武器だった。

遺跡の内部は、松明の光すら吸い込むような深い闇。

蜘蛛の巣が顔に絡みつく広間で、俺はあの卑怯者の盗人、アーヴェルを見つけた。

 

「助けてくれ! 糸を切れ! 爪なら渡す!」

 

巨大な霜の蜘蛛(フロストバイト・スパイダー)を、俺はたった一人で仕留めた。悲鳴を上げる暇もないほど、強烈な剣撃。しかし、助け出したアーヴェルは、案の定、俺を嘲笑って奥へと逃げ出した。

 

「ヒヒッ! 誰が渡すかよ、マヌケ!」

 

だが、遺跡の罠は非情だった。床から飛び出した槍が、彼の薄汚れた野望ごと体を貫く。俺は冷たくなった彼の指から、ずっしりと重い金の爪を引き抜いた。

 

さらに奥へ。一人で進む迷宮は、一歩ごとに床が軋む音が心臓に響く。

金の爪を鍵として、巨大な回転扉を開けたその先。

そこには、言葉では説明できない「重圧」があった。

巨大な石壁。古代の文字が、まるで俺を呼んでいるかのように脈動し、青い光が俺の目を焼いた。

 

「……何だ、今の……?」

 

頭の中で何千人もの戦士が叫んだような残響。その時、俺の背後で石棺の蓋が跳ね上がった。

這い出してきたのは、干からびた肉体を持つ古代の戦士、ドラウグル・オーバーロード。

 

「死者め……眠っていろ!」

 

俺は一人で、その圧倒的な力に立ち向かった。ドラウグルの放つ冷気の魔法に肌を焼かれ、吹き飛ばされそうになりながらも、俺は盾の縁で奴の顔を殴り、剣をその喉元へ突き立てた。

静寂が戻った時、俺の手にはドラウグルが握りしめていた「ドラゴンストーン」があった。

 

山を降り、リバーウッドに戻った頃には、太陽は西の山脈に沈みかけていた。

雑貨屋の扉を開けると、ルーカンとカミラが、祈るような姿で俺を待っていた。

 

「……約束のものだ」

 

俺がカウンターに置いた金の爪は、店のランプに照らされて鈍く輝きました。

 

「ああ……! タロスにかけて、本当に、本当に戻ってきたのですね!」

 

ルーカンは震える手で爪を掲げ、カミラは俺の無事な姿を見て、安堵の涙をこぼした。

 

「貴方は私たちの恩人です。これを……少ないですが、私たちの誠意です」

 

差し出された金貨の袋。それは、俺がスカイリムで自分の力だけで手に入れた、最初の「正当な対価」だった。

 

「ありがとう、ヨルン。貴方のことは一生忘れないわ」

 

カミラの言葉を背に、俺は店を出た。

 

レイロフの案内で立ち寄った小さな村。一人で挑んだ恐ろしい遺跡。

だが、その懐に入った金貨と、ドラゴンストーン。そして魂に刻まれた「声」の種火が、俺を次の舞台――ホワイトランへと導いていた。

 

この時、まだ俺は「ドヴァーキン」などという言葉も知らず、ただ一人の腹をすかせた狩人として、夜の道を歩き始めたのだった。

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