The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説 作:裸男祭
サルモール大使館の緊迫した空気から一転、俺とウスガルドが辿り着いたのは、霧に煙る湖畔の都リフテンだった。
ここは「盗賊の都」の名に相応しく、腐った木材の臭いと、誰かの懐を狙う刺すような視線が入り混じっている。俺が背負うウースラドの輝きすら、この街の湿った影に吸い込まれていくようだ。
「おい、ヨルン。あそこの男……ずっとこっちを見てるよ」
ウスガルドが顎で示したのは、市場の露店で暇そうに座っている赤髪の男――ブリニョルフだった。
俺が市場を通りかかると、ブリニョルフが不敵な笑みを浮かべて声をかけてきた。
「よう、あんた。いい体格をしてるな。だが、その懐の金貨は、見かけほど重くないんじゃないか?」
「……何が言いたい」
「あんたみたいな腕利きには、もっと相応しい稼ぎ方があるってことさ。ちょっとした『仕事』を手伝わないか? 難しくはない。あそこのエルフ、マデシの金庫から指輪を失敬して、隣のブランド・シェイのポケットに滑り込ませるだけだ」
俺は一瞬、同胞団の誇りと、ドラゴンボーンとしての使命を思い出した。だが、リフテンの地下に潜むエズバーンを見つけ出すには、この街の裏側に通じている連中の協力が不可欠だ。
「……いいだろう。リフテンのやり方に従わせてもらう」
「話が分かるな! さあ、俺が騒ぎを起こす。その隙にやれ」
ブリニョルフが偽の薬の宣伝を始め、群衆が集まる。俺はノルドの巨体を伏せ、影に紛れた。
(……同胞団の連中が見たら泣き出すだろうな)
冷や汗をかきながら指輪を盗み、標的のポケットへ。指先の感覚が、戦槌を振るう時以上に研ぎ澄まされる。
「見事だ、友よ。あんたには才能がある」
ブリニョルフは満足げに頷き、地下への入り口――ラットウェイへの鍵を渡してくれた。
「……泥棒の手伝いかい? 導き手様も随分と多才だね」
ウスガルドの皮肉を背中に受けながら、俺たちは悪臭漂う地下迷宮へと降りていった。
ラットウェイは、行き場を失った荒くれ者と、盗賊ギルドの残党が蠢く地獄だ。
「FEIM(フェイム)!!」
暗闇から放たれた矢を霊体化ですり抜け、俺は戦斧を振るって狂人たちをなぎ倒した。
最奥の、何十重にも鍵がかかった鉄扉の前。
「失せろ! 私は誰とも話さん! サルモールの犬め!」
扉の向こうから、怯えた老人の声が響く。
「エズバーン! デルフィンの使いだ! 彼女が『30日の霜の月』を覚えているかと言っている!」
静寂。……そして、いくつもの閂が外れる重い音がした。
現れたのは、埃まみれの古文書に囲まれた、痩せこけた老人――エズバーンだった。
「ドラゴンボーン……? ああ、預言は真実だったのか!」
エズバーンを救出し、俺たちはデルフィンと合流してマルカルス近郊のカーススパイアーへと向かった。
そこには、ブレイズの古代の本拠地、スカイ・ヘヴン聖堂が眠っていた。
入り口の巨大な顔の彫刻。俺が己の血を床の文様に垂らすと、数千年の封印が解け、巨大な扉が音を立てて開いた。
聖堂の最奥。そこには、巨大な石壁がそびえ立っていた。
「アルドゥインの壁」。
エズバーンが震える指で壁のレリーフをなぞる。
「見てください。古代の英雄たちがアルドゥインを倒した時の光景だ。彼らは……武器だけでは勝てなかった。ある『声』を使ったのです。アルドゥインを空から引きずり下ろす、禁断のシャウト……」
「ドラゴンレンド(竜墜とし)か」
俺は壁を見つめた。
「だが、その言葉を知る者は、もうこの世にはいない。……唯一、古代の時を知る、グレイビアードの師、パーサーナックスを除いては」