The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説 作:裸男祭
「いい返事だ。その意気だよ、ヨルン!」
ウスガルドが俺の背中を力強く叩いた。リフテンの湿った地下空気から一転、ハイ・フロスガーの冷徹な静寂が肌を刺す。だが、今の俺たちにはナイチンゲールの影の加護と、ギルドを立て直した自信がある。
アーンゲールら長老たちの導きにより、俺たちは寺院の裏手、これまで固く閉ざされていた「世界のノド」への門の前に立った。
門を抜けた瞬間、視界が真っ白に染まった。
そこは、ただの雪山ではない。神々の怒りのような猛吹雪が吹き荒れ、一歩進むごとに体温と体力を根こそぎ奪っていく。
「……くっ、これじゃ進めないよ! 鎧が凍りついちゃう!」
ウスガルドが盾を風除けにしながら叫ぶ。
「任せろ。このためにじいさんたちから教わったんだ」
俺は肺の底から、空を、雲を、そして運命をねじ伏せる「声」を放った。
「LOK VAH KOOR(ロク・ヴァ・クール)!!」
晴天の空。
その咆哮が響き渡った瞬間、荒れ狂っていた吹雪が嘘のように割れ、黄金色の陽光が山肌を照らした。雲を眼下に臨み、スカイリム全土を見渡せるほどの絶景が広がる。だが、目指す頂上はまだ先だ。
七千階段のさらに上、文字通りスカイリムの「頂」に辿り着いた。
そこにあるのは、風に削られた古い石碑と、一頭の巨大な……ドラゴンだった。
「……ドラゴンだと!?」
ウスガルドが即座に剣を抜く。だが、そのドラゴンは襲いかかってくる気配を見せない。石碑の上に静かに降り立つと、古びた革のような翼を畳み、深い慈愛を湛えた瞳で俺を見つめた。
「Drem Yol Lok。挨拶をしよう、ドヴァーキン。私はパーサーナックス」
その声は、地鳴りのように低く、だが驚くほど穏やかだった。
「……あんたがグレイビアードの師か? ドラゴンが、ドラゴンを倒す術を教えるっていうのか」
「かつて、私はアルドゥインの右腕だった。だが、人間の『声』の可能性を信じ、彼らに反旗を翻したのだ。……お前が求める『ドラゴンレンド(竜墜とし)』。それは、ドラゴンが理解できぬ『死』という概念を声に込めたもの。我らには教えられぬ」
パーサーナックスは、遥か彼方の地平線を見つめた。
「時そのものを遡り、古代の英雄たちがシャウトを放ったその瞬間を、お前自身の目で見ねばならぬ。そのためには……星霜の書(エルダー・スクロール)が必要だ」
星霜の書。世界の理を記述した、触れるだけで狂気に陥ると言われる伝説の巻物。
俺たちはパーサーナックスの助言に従い、ウィンターホールド大学の偏屈な書記官を訪ね、北極圏の氷の底に隠されたドゥーマーの巨大遺跡「ブラックリーチ」へと向かった。
そこは、地上とは切り離された、巨大な発光キノコが広がる幻想的な地下世界だった。
「……なんて場所だい。スカイリムの下に、こんな世界が広がってたなんてね」
ウスガルドも、流石に圧倒されたように周囲を見渡す。
最奥の「ムザークの塔」。
複雑なレンズと光のパズルを解き、古代の機械が唸りを上げる。
巨大なシリンダーが開き、その中心から、眩い光を放つ「星霜の書」が現れた。
「……手に入れたぞ。これで、アルドゥインを空から引きずり下ろせる」
俺は重厚なケースに収められた巻物を背負い、再び「世界のノド」へと引き返した。
山頂に戻った俺は、時の割れ目の前で「星霜の書」を開いた。
視界が歪み、過去と現在が混濁する。
目の前には、古代の英雄たちがアルドゥインと死闘を繰り広げる光景が広がっていた。
「JOOR ZAH FRUL(ジョール・ザ・フル)!!」
英雄の一人が放ったその叫び。
死すべき運命、命の終わり、その圧倒的な「重み」がアルドゥインを縛り付け、地上へと墜落させる。
その言葉の「意味」が、時を越えて俺の魂に焼き付いた。
「……覚えたぞ。ドラゴンレンドだ!」
その瞬間、空が真っ黒に染まった。
「……来たか、ドヴァーキン! 我が玉座を脅かす小癪な虫けらめ!」
世界の喰らう者、アルドゥインが、俺の首を狙って急降下してくる。