The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説 作:裸男祭
バナード・メアの喧騒が、一瞬で静まり返った。
暖炉の火がパチパチと弾ける音だけが響く中、俺とウスガルドは宿屋の中央で対峙した。
「さあ、来なよ! その細い腕で、あたしの鋼鉄を動かせると思ってるのかい?」
ウスガルドが野太い声で挑発し、素早く拳を突き出した。俺は狩人として培った動体視力を全開にし、その一撃を紙一重でかわした。拳が空を切る風圧が、頬をかすめる。
俺は懐に飛び込み、彼女の腹部に鋭い一撃を叩き込んだ。だが、彼女の腹筋は石のように硬く、逆に俺の拳が痺れるほどだった。
「ははっ! 蚊が刺したようなもんだね!」
ウスガルドの裏拳が俺の肩を捉え、俺は数歩後退した。視界が火花を散らすが、ここで退くわけにはいかない。俺はあえてガードを下げ、彼女が大きな右を振りかぶるのを待った。
「そこだ!」
彼女の広大な胸元が空いた瞬間、俺は渾身の力を右拳に込め、彼女の頑丈な顎を正確に撃ち抜いた。
ガツォォォォン!!
鈍い衝撃音が店内に響き渡った。ウスガルドの動きが止まり、その巨体が糸の切れた人形のように、ゆっくりと後ろへ倒れ込んでいく。
「……うそだろ、ウスガルドが……負けたのか?」
野次馬たちが息を呑む中、彼女は床に大の字になり、深い眠りについたかのように完全に気絶していた。
俺は荒い息を整えながら、倒れた彼女を見下ろした。嫌味な女だったが、その拳には嘘偽りのない誇りが宿っていた。俺は店主のフルダに金貨を投げ、短く告げた。
「彼女に部屋を。それと、俺にも一晩の休息を」
俺は気絶したウスガルドの巨体を背負い上げた。鋼鉄の鎧の重みが肩に食い込むが、不思議と不快ではなかった。二階の狭い客室へ彼女を運び込み、ベッドに横たえた。兜を脱がせると、意外にも穏やかな寝顔がそこにあった。
「……あんた、いいパンチだったよ」
俺は隣の部屋を借り、倒れ込むようにベッドに沈み込んだ。ヘルゲンからの逃走、ブリーク・フォール墓地の死闘、そしてこの殴り合い。泥のような眠りが、俺の意識を深い闇へと引き込んでいった。
翌朝、窓から差し込むホワイトランの眩い朝日が、俺の目を覚まさせた。
階下へ降りると、そこには昨夜の乱れなど微塵も感じさせない姿で、テーブルに座りハチミツ酒を啜っているウスガルドの姿があった。
彼女は俺の足音に気づくと、ゆっくりと顔を上げた。その顎には青痣ができていたが、瞳には清々しい光が宿っていた。
「……起きたかい、ヨルン。あたしの頭をあんなに揺らしたのは、あんたが初めてだよ」
彼女はジョッキを置き、椅子から立ち上がった。そして、無骨な籠手で覆われた右手を、真っ直ぐに俺へと差し出した。
「認めよう。あんたは弱虫じゃない。あたしを負かした男だ。……約束通り、あんたの旅に付き合ってやるよ。このスカイリムで、あんたの背中を守る盾が必要なんだろう?」
俺はその手を力強く握り返した。
「ああ。頼りにしてる、ウスガルド」
「よし! なら決まりだ。まずはあの高い場所にある宮殿へ行って、首長にその重そうな石版を叩きつけてやろうじゃないか。あたしが横にいれば、衛兵どもも余計な口は挟ませないよ」