The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition発売記念プレイログ小説   作:裸男祭

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第7話

死闘の余韻が残る静寂の中、俺は荒い息を整えながら、崩れ落ちたデス・ロードの亡骸を見下ろした。奴が最期まで守っていたもの、それは玉座の後ろにそびえる、半円形の黒ずんだ石壁だった。

 

「……こいつは」

 

松明を近づけると、煤と苔にまみれた石の表面に、奇妙な文様が刻まれているのが見えた。ただの装飾じゃない。それは、スカイリムの各地に点在する古代の遺跡、その最奥にのみ刻まれているという――「竜の言葉」だ。

爪で引っ掻いたような、鋭く、力強い文字の羅列。

見つめていると、頭の奥が痺れるような、奇妙な感覚に襲われた。

 

(……何かが、呼んでいる?)

 

俺は引き寄せられるように、石壁へと歩み寄った。

文字の一つが、かすかに青白い光を帯びて見えた。いや、光っているのではない。俺の意識が、その文字に吸い込まれていくのだ。

鼓動が速くなる。デス・ロードとの戦闘とは違う、もっと根源的な、魂を揺さぶるような熱が、指先から全身へと広がっていく。

俺は、その光る文字に触れた。

 

――!!!――

 

その瞬間、頭の中で爆発が起きたような衝撃が走った。

視界が真っ白に染まり、轟音が耳を劈(つんざく)。

それは、数千年の時を超えて響く、竜の咆哮だった。

悲しみ、怒り、傲慢、そして絶対的な力。

無数の感情と記憶が、奔流となって俺の精神に流れ込んでくる。

 

(う、うあああああ!)

 

俺は頭を抱えて蹲った。脳髄が焼けるようだ。

古代のノルドたちが、竜から奪い、そして受け継いできた「声(スゥーム)」。

その一片が、今、俺の魂に刻み込まれようとしていた。

どれほどの時間が過ぎたのだろう。

嵐のような感覚が去り、意識が現実に戻ってきた時、俺は石床に両手をついて激しく喘いでいた。全身が冷や汗で濡れている。

ゆっくりと顔を上げると、石壁の文字は、もう光っていなかった。

だが、俺にはわかった。

 

「……『ファイアブレス(Yol)』」

 

口から漏れた言葉は、俺自身の声でありながら、同時に、もっと古く、巨大な何かの響きを含んでいた。

まだ、その力を完全に引き出すことはできない。だが、その「言葉」の意味と力は、確かに俺の魂の一部となったのだ。

俺はふらつく足取りで立ち上がり、砕け散ったデス・ロードの兜を一瞥した。

奴はこの力を守っていたのか、それとも、この力に囚われていたのか。

 

「……ソブンガルドで見守っててくれ、じいさんたち。俺がこの力を、どう使うか」

 

戦槌を担ぎ直し、今度こそ遺跡の出口へと向かう。

背後に残された竜の言葉の壁は、再び静寂の中に沈んでいった。だが、俺の胸の中には、消えることのない新たな「炎」が、静かに灯っていた。

 

遺跡を後にした俺を待っていたのは、肌を刺すような吹雪と、どこまでも続く松林のざわめきだった。

 

「……ふぅ、死ぬかと思ったぜ」

 

吐き出す息は白く、重い。だが、不思議と足取りは軽かった。胸の奥に刻まれた「竜の言葉」が、内側からじわじわと体温を押し上げているような感覚がある。

ファルクリースの門が見えてくる頃には、陽はすっかり落ち、街道沿いの灯火が吹雪の中でぼんやりと揺れていた。

 

宿屋「デッドマンズ・ドリンク」。

 

重い木の扉を押し開けると、安っぽいエールの香りと、パチパチとはぜる暖炉の熱気が俺を包み込んだ。

 

「おい、ヨルン! 生きてたか」

 

カウンターで酒を注いでいた主人のコーパルスが、顔を上げて声をかけてくる。俺の革鎧が返り血で汚れ、肩に担いだ袋が重そうに音を立てるのを見て、彼は小さく口笛を吹いた。

 

「相当な荒事だったようだな。エールか? それともハチミツ酒か?」

「……一番強いのを頼む。喉がカラカラだ」

 

俺はカウンターの隅の席にどっかと腰を下ろした。運ばれてきたジョッキを一気に煽る。冷えた喉を、焼けるようなアルコールが通り抜けていく。その瞬間、ようやく「生きて戻った」という実感が湧いてきた。

 

人心地ついた俺が、懐からデス・ロードが持っていた黒檀の剣を取り出し、布で拭き始めようとした時だ。

 

「……見事な業物だな、ノルドの友人よ」

 

背後から、低く、落ち着いた声がした。

振り返ると、部屋の隅の暗がりに一人の男が座っていた。フードを深く被っているが、その隙間から覗く鋭い眼光は、ただの旅人のものではない。

 

「あんたは?」

「ただの放浪者だ。だが、お前がその遺跡から持ち帰ったのは、その剣だけではないだろう?」

 

男は立ち上がり、ゆっくりと俺のテーブルへ近づいてきた。

その歩き方、気配の消し方……。帝国軍の斥候か、あるいはスカイリムに影を落とす「ブレイズ」か。

 

「お前の瞳の奥に、見慣れぬ光がある。……古代の言葉を、その身に刻んだ者の光だ」

 

俺は無言で戦槌に手をかけた。

宿屋の喧騒が、急に遠のいたような気がした。暖炉の火が爆ぜ、男の影が壁に長く伸びる。

 

「警戒するな。俺はお前の敵じゃない。ただ、その『声(スゥーム)』をどう使うか……それを決めるのは、お前自身だと言いに来ただけだ」

 

男はそれだけ言うと、テーブルに数枚のセプティム銀貨を置き、吹雪の吹き荒れる外へと消えていった。

 

「……何だったんだ、あいつは」

 

コーパルスが怪訝そうに呟く。

俺は手元に残された黒檀の剣を見つめた。

竜の言葉、謎の男、そして内乱に揺れるこの大地。

ただの狩人だった俺の日常が、あのヘルゲンでの出来事から決定的に変わってしまったことを、俺は確信していた。

 

「……ホワイトランへ戻るか」

 

そろそろウスガルドの傷も癒えた頃だろう。

俺は最後の一口を飲み干すと、暖炉の火を見つめながら、静かに拳を握りしめた。




意味深なだけのただのおじさんでした(´・ω・`)
もう出てきません。
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