“ひとつなぎの大秘宝”なんかいらねぇよ、オレには家族がいる 作:mooma
ダンディ
それは、中流階級にも関わらず、一流の紳士のように振舞う者
ダンディ
それは、精練された知性を感じさせ、高雅な身形をひけらかす事無く、一流を着こなす者
ダンディ、
それは、イイ男に対する最高の褒め言葉…!
「止せ。絡むのならもっと自分の体格に見合った相手に絡むんだな。例えばそう…オレ、とかどうだ?…フゥー…」
「きゃ~!セニョール~!!vV」
叫びたくなる気持ちも解るよ、だってこの人、無茶苦茶カッコイイ…
食材等の買い込みと賞金首の確認の為に立ち寄った島で、一人見て回ろうとしたのがいけなかったのか、来て早々他人の力量もわからないバカに絡まれていたオレを助けてくれたのは、スーツとシガーの似合うイケメンでした…
「大人の遊び場に迷い込むなんて、イケナイボーヤだ…怪我はないか?」
確認のためこちらを見たセニョールに、オレは埃を落としながら答える
「ああ。オレ一人でもどうにかなっただろうけど、騒ぎは起こしたくなかったから助かった」
あの程度の奴ら、能力を使うまでもないが…町の人間に警戒されることを考えれば、考えなしに暴れてしまうのは避けないとだ
「…だろうな。その身のこなし、中々出来る男と見た」
そういうセニョール自身、スラッと綺麗な戦う身体をしているから実感が篭って聞こえて、少し照れくさい
「フッ…アンタはあいつらと違って見る目があるみたいだな。ここには詳しいのか?オレは今日着いたばかりなんだが…」
町の人たちとは少し雰囲気が違うから、ここがセニョールの生まれた場所、と言うわけでもないだろう
気をつけるべきこととか教えてもらえたら…という下心を踏まえて聞いておこう
「悪い事は言わない…坊主、なるべく早くここを去るんだな」
そういったセニョールは苦々しげで…
最初っから楽しそうなことになりそうだ…!
「なんで?ここには海軍もいるんだろ?」
海軍は、一応は島を護るはずの人間だ
まあ、最もこんな僻地にいる奴らは腐ったヤツも多いが…
「…その海軍が問題なんだ、困ったことにな」
やっぱりか
冬が長く、その冬を乗り切るために力に頼る人が多いこの“
それは派遣されている海軍のガラの悪さも関係しているのかもしれないが…でも、力自慢が多い
「へぇ~?詳しく教えてよ、おニィさん」
苦しんでいる人間が居るなら助けてやろうとするのがオレの信念
特に、海軍…世界政府にはいい想い出がないからな…ちょっくら私怨も晴らさせてもらうとしよう
「場所を変えよう…オレの行き付けの酒場で良いか?」
こういった後ろ暗い話は関係者に聞かれると困るから、人の多い酒場で喧騒に紛れるよう密やかにやった方が安全だ
まだ早いとは思いつつもトレーボルもそう思ってか、オレに酒場での裏の人間の礼儀みたいなのを教えてくれたわけだし
「子供でも飲めるようなもの置いてあるなら何処でもいいさ。酒も飲めないことはないが、持病があるからなるべく控えたいんでね」
折角だからついでにいくらか腹を満たしておくか
今夜は…長くなるかもしれないし
行き付け、というのは本当らしく、入ってすぐに絶妙なポジションの席に案内され、ウェイトレスが注文を聞きに着てくれた
「料理はいつものメニューを。飲み物はウィスキーのボトルと…」
ちらりとオレに目配せをしてくれたのは、オレに自分の分の注文を選ばせてくれようとしてのことか?
「おすすめのエールでビターオレンジって出来るか?」
セニョールのファンなのだろうウェイトレスは、セニョールの方ばかり向いているけれど、さすがにオレの問いかけには答えないわけにも行かず
「…ウィスキーと、ハウスエールを使ったビター・オレンジですね?直ぐにお持ちしますわ、セニョール」
オレの方をチラッと見てからもう一度セニョールを見て、嬉しそうにお姉さんが去っていくのを見届け、お通しらしい固焼きのパンみたいなのに手を伸ばす…うん、悪くない
出来合いのものを出すだけだったのか、或いはいつも同じメニューしか頼まないから既に作り始めていたのか、頼んだものはすぐに運ばれてきて、美味しそうにテーブルを彩っていく…
これを、“いつもの”で頼めるあたり、セニョールは懐には余裕があるのか、あるいはそもそも此処はそこまで高くないのか…周りを見ればどこも似たり寄ったりだから、俺が思っていたほど此処は高くないのかもしれない
「以上ですが…ビターオレンジってそれで良かったのかしら?」
「ん…ああ、美味しいよ。ありがとう」
此処ではあんまり飲まれないのか?ビターオレンジ
ビールやエールの類とオレンジジュースを半分半分にしたカクテルなんだけど…
オレは酒に付き合いながらも胃をこれ以上傷めないようにとアルコール度数を下げておく目的でよくこれを頼むんだけどな…
まあ、ちゃんと持ってきてくれたお姉さんには笑顔をサービスだ
こういう場所で働く人は、ちゃんとした御礼とか言われないことも多いから、ちゃんと御礼を言っておくと味方になってくれやすいってジョーラも言ってたし
オレの笑顔を正面から見たお姉さんはどこかほわ~っとした顔でバーの方に戻っていったのだった
え、ちょっと、なんでそんな顔赤くしてんのさ!?
…まさか…惚れられた、とか…ない、よね…?
「…料理も出揃ったなら…話を聞かせてもらおうか」
お姉さんの事は気にしないことにして、周りの人間がこちらに気を配っていない事を糸と見聞色で確認しつつ、声をかければ
「ふぅ~…坊主は本当に見た目通りの年齢か?…レディに対する礼儀が様になりすぎだ」
呆れたようにしつつ、煙草を消していた
「生憎、育ちは悪くないんでね。女性には優しくと厳しく躾られたものさ」
両親に、という訳ではないけれど…女性に優しくしないとジョーラが怖い
やっぱり、何処でも、一番の実力者は女性なんじゃないか?
麦わらのナミしかり、海軍のおつるさんしかり、我が家のジョーラしかり…
海賊王も嫁には甘そうな人だし、白ひげも娘が居たら甘そうだし…
ふっ…女に勝てる男なんて、いるわけないだろう?
「そうか…まあ、坊主のような人間ならそうであっても不思議はないか…ああ、海軍の話だったな?」
そうして語られ始めたのは、いわゆるよくある話…
政府から委任された権力を自分の権力と誤解しているバカと、そんなバカの傘の下で好き勝手するバカ共と、そんなバカ共に苦しめられている人々の話
セニョール自身もオレが思ったように流れ者とのことで、余所者であるからこそ遠慮なく海兵たちをぶっ飛ばしたりしているそうだが、それもあくまでやり過ぎた奴らだけで、根本的な解決には至っていないそうだ
そんな話を聞いているうちに、酒場の扉が開いて、酒場の中が一気に静まり返る…
現れた男達は海兵の格好をしているだけの賊だった
「おい、セニョール・ピンク!今日と言う今日はゆるさねぇ!!絶対テメェを牢にぶち込んでやる!!!」
それなりの人数はいるが、正直どんだけ雑魚を集めても、雑魚は雑魚
雑魚が本物の輝きを持つヤツに勝てる訳がないだろ?アッタマ悪いなぁ…
「…こいつらの目的はオレか…坊主、あいつらに目を付けられない内に…」
「おいおい、男がダチが喧嘩吹っ掛けられているのを見て逃げられるとでも思ってんのか?安心しろよ、こんな雑魚じゃ、夕飯前の腹ごなしにもならねェが…傷ひとつもらうことなく片せるからよォ!」
オレを庇うように、その背に隠してくれるのはありがたいけど…
オレは、自分のものに手を出されるのが、大ッ嫌いでね…?
調度いい機会だ、どっちが上か、身体に教えてやるとしよう
「生意気なガキだ!まずはテメェから片付けてやる!!」
途中、客やらテーブルやらを問答無用で薙ぎ倒しながらオレらの方まで一直線に来る男達
その下品な声、ほんと耳障り
「ダメよ、逃げて!!」
オレに声をかけるお姉さん…まったく…信用されてないなぁ…
武器を振り上げ、オレ目掛けて振り下ろそうとするけれど…
オレのものに、オレの民に、手を出したことは許さないよ?
ピン!と張り詰めた糸が、男の腕を絡め取って動きを止める
「な、なんだぁ!?う、腕が…!!」
安心していいんだよ?お姉さん
「悪いが…アンタらと遊んでる時間が勿体無いんでね、とっとと終わらせるぜ?」
蹴り上げた足は、リーダーだと思われる男の顎を直撃して、そのまま脳を揺さぶって、男を昏倒させる…泡を吹く男に、みんなあんぐりとしてる
「さ、可愛がられたいヤツからかかって来な、」
「う、うわああああぁぁぁ!!」
くいくいっと指を折って挑発すれば頭を失った烏合の衆は統率を失って、逃げようとする者、立ち向かってくる者、様々だ
でも、逃がすなんてこと、オレが許すと思ったか?
此処は既にオレの
糸で強く閉じられた扉が開くわけなどなく、恐慌状態のまま扉を開けようとする男達の惨めな姿が晒されるだけで
「…来ないならこっちから行くがな!」
がぁん!と振り下ろした脚で、目の前の邪魔なクズの意識を刈る
恐怖に駆られ、やたらめったに剣を振りながら向かってくる奴は、イトで武器を奪って呆けた瞬間に鳩尾に拳を一発
人の壁で視界が覆われているうちにと振り下ろされた剣は、バク転で避けて着地と同時に左手を払って下手人ごと酒場の壁に縛り付ける
「な、なんだ!?こ、こいつまさか能力者か!!?」
「ひ、ひぃぃぃ!!」
パンパンパン!
って銃弾はやめてよ!流れ弾で人が怪我したらどうすんのさ!?
まあ、鉛玉程度、オレのイトイトの前では無意味なんですが!
ひとつがふたつに、ふたつがよっつに…そうして細切れになっていった銃弾はイトの壁に当たってパラパラと地面にこぼれ
銃は邪魔だな…右手を払って、銃は取り上げておく
うん、武器の取り上げは効果的
とりあえず…“
撃ってきた奴らには練習中の覇王色の練習台になってもらって、髪をかきあげる
セニョールも何人か沈めていたようで、もう残りはほとんど居ない
「さぁて…喋れなくなるされる前に言っておきたい事は?有益な情報をくれた奴は逃がしてやってもいいんだぜ?」
両手を広げてそう言いながら近づいていくオレはまさに悪役!
こういう風に威圧する事も、大事なんだぜ?
「…死にたくなきゃ、とっとと話すんだな」
ガン!と後ろの扉に足をつけ、そんなことを言うオレの声に、ぴたりと揃って動きを止めたのを見て、本当は殺す気ないんだけどなぁ…と思いながらもニタァっと笑う
オレ、悪役街道まっしぐらっすね…
まさか…ここまでだとは…
行き付けの酒場で海兵を伸した後、坊主は酒場の店主を始めとした町の人々に頼まれ、この島で悪政を行なっている海軍を倒すべく、彼らの基地へと向かったのだが…
五人だけで、何が出来る?と侮っていた部分もあったのだろう…彼らの実力も履き違えていたのかもしれない
だが、たった五人で、彼らはこの基地を落としたのだ
向かい来る銃弾も邪魔な建物でさえも細切れとなり、
どれほど強固な扉であろうと一撃の下に開け放たれ、
剣を取って向かい来る者たちは一閃で切り伏せられ、
建物の敷地図を見ているかのように要所だけを潰しながら、
誰一人怪我を追う事無く、彼らはこの基地を落として見せたのだ
近くでありありと見せられ、煙草を落としてしまったことにも気付かないほど、オレは彼らの手際に魅入っていた
そして、こんな硝煙の舞う中で、いっそ神々しいまでに光り輝く王者に、オレは魅せられていた
「や、やめろ…!貴様らわかっているのか!?私は海軍の…!!海軍の大佐なんだぞ…!!?」
喚く豚が喧しい…
「大佐ねぇ…グランドライン基準に直せばたかだが大尉クラスだろ?ハッ!オレたちを倒したきゃ最低でも本部佐官クラスはつれてこないとなァ」
豚を足蹴にして、縛り上げながら、部屋を漁るトレーボルに目配せをする
イトイトは便利だが、こういう時はベタベタの方が向いている
ドロリと溶け出したトレーボルにはそのまま部屋一面を這い回って、粘液が通るほどの隙間を探してもらう
「…ドフィ、見つけたよ~!」
やっぱりあったか、隠し金庫
「中身は?」
そちらの方を見ることなくイトイトで金庫の鍵を開け、トレーボルに尋ねる
オレはデスクの方を漁ってみるか
「あったよドフィ~、不正の証拠がザックザクだね~!証拠はコピーを取ってから町の人たちに渡すのはわかるんだけど~、お金の方も返すの~?」
「当たり前だろ?元々町の人間のカネなんだぞ?オレ達の取り分は、コイツらが海賊から押収した品の方だ。コラソンとディアマンテが見つけてくるのを期待しておけ」
チラッと確認してみれば、隠し金庫にはかなりの金額が保管されていて、ムカついたから豚にもう一発蹴りを入れておいた
「ドフィは優しいね~、おれなら半分くらいは貰っていくのに~」
まあ、確かにオレたちの現時点での急務が資金調達であることを考えれば、トレーボルの考えも間違いとは言い切れないが…
「町の人間のものに手を出したらオレ達はコイツらと同じクズになる…オレたちが奪うのは、あくまで奪う人間からだけで、奪われている人間からさらに奪うようなゲスにはなりたくないし、なってほしくない」
うちは少数精鋭タイプの幹部陣ぐらいしか目立ってはいないとはいえ、実際には船を担当していたり、戦闘を担当していたりする人員が他にもいるから、実際には結構お金が掛かっている
海賊をやるにも、お金がいるのだ
オレたちがやったことでオレたちが飢えるのは仕方ないけど、他人まで飢えさせてしまうのは違うからな
でも、この島をオレたちの
この島は輸出に使えそうな嗜好品が多く採れ、その品質も悪くないときた
実際酒場で食べた燻製肉の類もなかなか美味しかったから、これならリピーターもついてくれるだろう
「それに、ドンキホーテ
「べへへへへ…それもそうか~」
流通を制する者は世界を制する…
この世界においては、正しくその通りになりえる言葉だ
定期便が存在しない場所も多く、他の島との行き来に支障がある場所も多い…そんな中で、世界政府の加入国だろうと非加入国だろうとお構いなしに繋げる物流ラインができれば、どうなる?
ヒト、モノ、カネの流れを掌握できる
技術だって、船で運べる
ある場所からない場所へとモノを運びやすくなる
物流自体が安定していないこの世界で、オレが安定した物流経路を立ち上げることができれば、それが及ぶ範囲がオレの帝国だ
フッフッフッ!
そう、まずは
地盤固めを疎かにする奴は足元を掬われる…
ちょっとずつ、確実に、バレない内に…
この島は、その、第一歩だ
「もう、行くのか?坊主」
「ああ。オレにはやらなければならない事があるからな」
「そうか…オレはセニョール、セニョール・ピンク。坊主は?」
「コードネーム“ジョーカー”…でも折角だから本名も教えてやるよ。オレの名はドンキホーテ・ドフラミンゴ、このドンキホーテ
「…船長、だったのか…なるほど…それならあの強さも説明がつく」
「じゃあな、セニョール。また風が向いたら会うこともあるだろう」
「ああ…お互い風任せ波任せの根無し草…またいつか道が交わったなら会おうじゃないか」
「んねーねードフィ~?よかったの?んねー、よかったの?気に入ってたんでしょ~?あのセニョールって男~」
「あ~?うん、気に入ってるな」
「んじゃぁ、ど~して誘わなかった~?んねーど~して誘わなかったのさ~?」
「フッフッフッ…いいか、トレーボル。オレが船に乗ってくれって言って乗ったヤツ、うちにいるか?」
「…そういえば、いないよね~?」
「アイツがオレの下に付く
「そう、か~…ん~、偉大な王なら家臣は向こうからやってくるってことだね~?」
「その通り」
「…ドンキホーテ
「おいおいセニョール、随分と早い再会じゃねぇか。オレの
「…んねードフィ…もしかして、知ってた?」
「まさか!偶然だぞ、偶然!でも…天はオレの味方だってことだろ?」
「ふぅ~……ドンキホーテ・ドフラミンゴ、オレはアンタに頼みがあってきた」
「なんだ?ダチの頼みなら聞いてやってもいいんだぜ?」
「オレも、アンタの船に乗せてほしい。アンタの男気に惚れた、誰かの舎弟になってもいいと思ったのは初めてなんだ」
「ああ、別にいいぜ?乗せてやるよ、オレの船に。これからよろしくな、セニョール」
アンケートの結果を踏まえて、このままBLで行く男バージョンと、NLで行く最初っから女の子バージョンの二種類を更新していくことに決めました
話の流れは途中まであまり大きくは変わりませんが、男バージョンはより仄暗く、女バージョンは若干ポップに行く予定です。
もしよろしければ両方あわせてご愛読いただければと思います。
セニョール・ピンク (17)
年齢詐称疑惑のあるハードボイルドなイケメン。
女にモテすぎて逆に女には飽き飽きしている。
でもベーコンレタスな趣味はない。←一安心
現在は某ハム兄貴より少し露出を控えたような格好をしている。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ (12)
順調に悪役っぽくなってきている?
長い脚を活かしての壁ドンはちょっと楽しかった。
セニョールは兄貴みたいなダチだと思っている。
早くもふもふとチビちゃんがほしい今日この頃。