“ひとつなぎの大秘宝”なんかいらねぇよ、オレには家族がいる 作:mooma
人は死ぬ
早かれ、遅かれ、人は死ぬ
男も女も、富めるものも貧しきものも、健やかなるものも病めるものも…
いつか、皆等しく死を迎える
その男にとってそれは、病によるものか人の手によるものかだけの違いでしかなかった
だからこそ…
折角の故郷だってのに、檻の中ばかりはつまらねぇ…
そう思って窓から漏れる月明かりを眺める
今頃ルージュはどうしてるのか…
泣いてたりしてねぇか?
いや、あいつはそんな健気な女じゃねぇや、
きっと怒り狂って手当たり次第に八つ当たってんだろ
胎のガキに響かなきゃァいんだけどよ
結局息子か娘か知らねぇままだけど…
おれの勘が息子だって告げてるから息子なんだろうなぁ…
おれとルージュの息子なら、ルージュが大暴れしたところで元気に生まれてきそうじゃねぇか
「なぁ、そうは思わねぇか?無粋な侵入者さんよぉ」
「…あなたの息子なら、きっと燃えるほど熱い男になりますよ、海賊王ゴール・D・ロジャー」
物陰から現れたのは紫色の目が印象的な青年
その身形だけ見ればいいとこの人間なのは見て取れる
「で?堕ちた天竜人が、おれになんのようだ?」
彼がどういう存在なのかは、風が教えてくれる…
姿かたちを誤魔化したところでその中身までは変えられない
「あなたを前に読まれないことはありえないとは思っていましたが…想像以上でした…私の事はどうかシエロと」
驚き、揺らいだ気配になんとなくだが親近感がわいた
他の
「シエロ…空を名乗るたぁ少し格好つけすぎじゃねぇか?」
天竜人の天とでもかけているんだろうか…風がバカにするように笑っていた
「そうですか?…私は風に身を任せ空を翔けるのが好きなのでそう名乗ったのですが…」
無表情で首を傾げたそいつは本気でおれの嫌味に気付いていなかった
こいつにとってはきっとふわっと決まった偽名だったんだろう
「ならおれはヴェントゥスかヴェレかオセアーノとでも名乗ればいいのか?」
船員をからかう時と同じノリでそう声をかければ、一度瞬いて
「ではオセアーノと呼ばせてもらいますね…あの気侭さはあなたに良く似合う」
視線を逸らし、海の近いだろう方向に向けたそいつは、無表情ながらも目にだけは僅かに感情が残り…
ガキにこんな顔をさせてるやつの顔が見てみたくなった
「そんじゃあシエロ、このオセアーノ様になんのようだ?」
そんな気分を振り払うように、再度同じ質問を繰り返す
今度は答えてくれるんだろうな?
「取引を…」
呟かれた言葉に、おれは疑問を抱くほか無かった
「取引だぁ?おれは明日には死ぬ男だぞ?なにを取引しろってんだ」
おれを逃がしてやると言うのは逃げる気のないおれには意味のないことで、
ルージュの事も生まれてくる子供の事もガープに頼んである…
仲間はみんな捕まるような奴らじゃないし、血縁にいたってはむしろおれがいるのかどうか知りたい側だ
だが、そいつと目が合った瞬間に視えた情景に、ゾッと血の気が引くのを感じた
「そうですね…あなたの子が、今のあなたと同じような立場になったとき、私が必ず助けると誓いましょう」
そいつの後ろで闇が嗤っていた…そいつを守ろうとしている光の淡さを掻き消すように、強く、つよくそいつを抱きこみながら
今までもおれのように自然に愛されているやつを見た事はあったが…こいつは一番厄介かもしれねぇ…
海に愛された
「……なにがほしい?」
こいつの望みを叶えるためなら何を壊そうと構わないだろう闇を思えば、
そして、視えた情景の中で朽ちようとしていた息子のことを思えば、答えは決まっていた
「あなた様のお知恵を賜りたく…父の仇を…母の仇を…討たずして死ぬわけにはならぬのです。苦しむ民を救わずに、何が王か」
深く深く闇に囚われてなお、一筋の光だけは失っていないそいつに、なぜあれほどまでに弱っているのに光が傍を離れようとしないのかも解かった…
絶望の中にあろうと、こいつはその願いを手放す気はないんだろう…
そして皮肉な事は、その願いを叶えてあげようと、闇がこいつ自身さえもを壊してしまいながら、献身的に尽くしていることか…
あわれなガキだ…
愛されている事がああも裏目に出てしまうとは…
「…耳と胸に痛ぇ話だ…おまえに、その覚悟はあるのか?」
苦しむ民をおれを継ぐものに託すと言う事は、ある意味では見捨てるのと同義かもしれねぇ…
それでも、時間の残されていないおれが中途半端に遣り残すよりは、丸ごと次代に任せた方がいいと思った…
いつか必ず、そこに辿り着く奴が現れる…
それがおれの血を継ぐものか、おれと同じ血を流すものか、あるいはおれと考えを同じくするものなのかはわからねぇが…
そこに辿り着いたものが、きっと新しい時代をつくるだろう
その、覚悟さえあれば
「父を撃って生き残ったその日に…時の礎になる覚悟を決めました」
…こいつもまた…被害者か…
風が教えてくれた出来事に、こいつにこんな表情をさせている元凶が見えた
泣くことも出来なくなったガキほど哀れなものはねぇな…
こういうのはとっとと白ひげに拾われちまえばいいんだ
あいつならどんなガキだろうと甘やかして苦しみを解かしちまうからなぁ…こういう子を任せるにはうってつけだ
「もっと楽に生きようとは思わないのか…?そんな雁字搦めの人生、おれならぜってぇ遠慮する!」
風の性質が強いおれにとっては自由がないことほど苦痛なことはないが…
「…知っていますか?時代を変えるのには少なくとも三人は上に立つ人が必要なんだそうです」
「は?」
こいつが言い出したことが、どう繋がっているのかすぐにはわからなかった
「古い時代を壊すもの、新しい時代の礎を築くもの、そしてその新しい時代をおこし、もりたてるもの…」
どうしておれがしようとしている事を知っているのか…なぜ未来に起きうることを知っているのか…大事なのはきっとそこではないのだろう
「…おまえは、繋ぐ気なんだな?おれと、おれの望む奴の間を」
「ええ。それが出来ぬのなら、私が更に壊して見せましょう…それが、私の責任ですから」
そこではじめて目に見えて表情を変えたそいつは、愛おしげな微笑を浮かべ…
もったい、ねぇなぁ…
「おまえ自身がおれの後を継ぐ気はないのか?」
こういう、誰にも消せない光を持ったヤツが、世界を照らせれば全部変えられるだろうに…
「私ではあなた方“ディー”のように嵐を呼ぶ事はできませんよ…精々その真似事くらいです」
それが真に意味するところも知りはしないだろうに、ただただ自身の勘に従って信じ続けられる強さ
こいつを切り捨てたヤツらはただのバカに違いない
敵に回して、後悔する様が目に見えるぜ…?
ははは!ザマァみやがれ!
「おれたちに関われば、おまえだって死ぬかもしれないんだぞ?」
どれだけ互いを信頼したところで、理を変えるのは難しい
こいつがおれらDの一族に関われば、互いの気持ちに関係なく“呪い”のように災厄が降り注ぐこともありえるってぇのに…
それでも、こいつにおれの子の運命を任せてみるのもいいかもしれないと思っているおれがいる
「天命を果たすまで、私は死ねません…それに…それより前に私を殺せる“ディー”はきっと一人だけですから」
胸に手を置いて、目を閉じたそいつからはそれが誰だかは読み取れなかったが…それでもとても大事に思っている事は見て取れた
まだ出逢っていないだろうに…その愛情深さも光の性質だったか
「そいつになら…殺されてやるのか?」
「その子が望むのなら…それもいいとは思っています」
雪に眠る人影…泣き叫ぶ子供…
こんなのが未来だと言うのなら…どうしておまえは…
「…歪んでるな」
もう、変えられないと諦めているのに、諦めきれない
闇に呑まれた奥底で、懸命に光に手を伸ばしているってぇのに…
「自覚していますので、わざわざ指摘していただかなくて結構です」
また無表情に戻ってしまったくせに、声にだけはひやりとした音が篭っている
「でも…そういうのも嫌いじゃねぇぜ?」
ほんと、こういう奴は嫌いじゃない
自分から雁字搦めにされに行くところは理解できねぇけど、まっすぐに自分の信念を貫こうとするところには共感を覚えるぜ?
「ありがとうございます、とお答えしておきましょう」
おれの言葉は響かなかっただろうが…いまはそれでもいいだろう
いつかきっと、こいつのそういうところを治してくれるやつが現れるだろうからな…
おれの前に、ルージュが現れたように
「…本当に、おれの子を助けてくれるのか…?」
もう聞くまでもなく、こいつならそうしてくれるだろう事は解っている…
だが、万一のためにも言質はとっておきたい
こいつの性質を考えれば、口にした事は決して裏切らないだろうからな
「…悪魔にとって、契約は絶対なのですよ?オセアーノ様…私の魂と、両親の名に誓って、必ず助けてみせます。例えそれでどれほどの不利益が私に起ころうとも…絶対に、助けます」
こいつがどれほど本気なのかを改めて感じ、疑うのもバカらしくなってきた
親の名に誓うなんて、普通はただの宣誓文のようにしか言わないってぇのに、こいつが本気でそう思ってることに風も驚き、興味を惹かれていて
「……変だけど、おもしろい奴だな、おまえ。あと何年か早く出会ってたら、おれの船に乗せてたんじゃないかって思うくらいにな」
ほんと、もったいねぇ
なんでおれはグランドラインに入る前にもう一度北の海に行かなかったのか…
風もおもしろいこと起きるかもっつってたのに…
…ああ…あそこの病気に煩い奴に見つかりそうだったからだったな…捕まったら最後死ぬか治るかするまで逃げられそうに無かったから、あいつに見つかる前にグランドラインに特攻したんだった…
「お褒めいただき光栄です。それで?いかがなさいます…?」
顎に人差し指を当て、首を傾げて聞いてくるそいつは相変わらずの無表情で…
ちょっとは顔色変えろよ、怖ぇから!
「ああ…取引だ。息子は頼むぞ、シエロ」
「…ええ、必ず、助けて差し上げますよ、オセアーノ様」
ガープの奴がしくじるとは思わねぇが…保険は付けておいて損はない
それに…こいつの知っている通りに歴史が動くなら…この選択が息子を助けてくれることだろう
抱いてやる事もできねぇ子供に、出来るだけのことはしておきたいからな…
「シエロ、」
聞きたかった話を聞き終え、その場を去ろうとするそいつを呼び止めたのは、きっと見ていられなかったからだろう
その心に、一陣の風を届ければ、僅かな間でも闇を払い除けて、その光に届くと思ったから
「この建物の上に立ち、月を正面に見て四時の方向、大体300メートルくらいのところに、おもしろいものがあるから、帰る前に見ていけ」
「…?…なぜ、そんなことを…」
訳がわからないといった表情を浮かべるそいつに、にぃっと笑顔をみせてやる
「おれからの、サービスだ。受け取り拒否はさせねぇぜ?」
息子が世話になるかも知れねぇ人間だ、ちょっと位のおせっかいなら焼いてやったって許されるはずだろ?
「…わかった」
訝しげな表情のまま去っていったそいつが、おれの思惑が成功したらどんな顔を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない
「ちゃんとおれの代わりに見といてくれよ~?」
誰も居ないのをいい事に、風に声をかければ、クスクスと楽しそうな笑い声が聞こえてきて…
自由人気質なのも、悪戯好きなのも、風が持ってる性質だからな、おれ以上にきっと楽しみにしていることだろう
まったく…まだまだこの世界にはおもしろい事がありすぎて、死ぬのが惜しくなってきちまったじゃねぇか!
おれの最後の夜は、まだ明けない…
ゴール・D・ロジャー
人には見えないものが見え、彼らとお喋りすることが出来る、いわゆるシャーマン的な能力を持つ。
その生まれ持った能力ゆえに当たり前のように風と対話する、風に愛された、自由の申し子。
見えている世界が普通とは違うので、昔はよくそれに基づいた発言をしてレイリーに物理的ツッコミを受けていた。
シエロの肩に乗って寄り添う小さな光と、シエロを覆い隠すように抱え込んでいる大きな闇を見ている。
ロジャー的見解
風 自由人気質で悪戯好き、束縛を嫌う
光 基本的に真面目で愛情深いがたまに天然
闇 大事なもの以外は全て無価値、自他共に歪ませる
海 気紛れで嫉妬深い、惚れっぽいのに本気になったら一途
白ひげ あんなに海に愛されててよく周りの人間無事だったなぁ…あ、なんだ、見えてないくせに両思いなのか
シエロ あのままじゃ闇に潰されそうだし、本人無自覚なだけで歪み製造機と変わらないぞ?あれ…今の内に何とかしとかないと!
シエロ = ドンキホーテ・ドフラミンゴ (17)
裸眼で髪は下ろし、ほぼ無表情かつなるべく敬語キャラ。
いつもの眼鏡とニヤニヤ笑顔を辞めただけでも変装の効果はバッチリである。
闇にヤンデレ的に溺愛されているせいで、自分も含め周り全てがオカシくなっている。
今回ロジャーに色々聞いたので政府の秘密をバッチリ理解した…と言う設定になった。
闇
ドフィ近辺での元祖ヤンデレ。
ドフィの願いを叶えてあげたいと思って献身的に頑張っているが、その過程でドフィをも壊していることに気がついてない。
ほかにも何人かお気に入りがいるが、ドフィが一等大好き。
闇に影響されるとSAN値がゴリゴリ削られていくので…ヴェルゴのヤンデレが狂化している元凶だったりする。
普通の人間には見えない。
色々見える人 ロジャー
色々見えそうな人 バジル・ホーキンス
感じられる人 マダム・シャーリィ
時々感じられる人 エース、白ひげ(海限定)
多分今後は出てこない設定なのでスルーしてもいいです。
あくまで、ロジャーから見た場合なので、此処だけになると思います、この謎のファンタジー設定。
…一応ほかにも気に入られてたり好かれてたりするキャラは設定してありますが…。