“ひとつなぎの大秘宝”なんかいらねぇよ、オレには家族がいる   作:mooma

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あたらしいかぞくのはじまり


旅立ち
しどう


部屋に朝日が差し込んで、目が覚める

 

オレを抱きしめる腕を退かして起き上がれば、逃がさないとでも言うように腕をとられ

 

「ん……ドフぃ…」

 

「起きろ、ヴェルゴ。朝だ、しかも今日は朝食会議の日だぞ?遅れたらオレが怒られるんだからな?」

 

「…それは…困る…」

 

寝汚いヴェルゴを叩き起こして、着替えて髪を整える

 

せっかくの綺麗な髪を切るなんてとんでもないざます!と怒られてから少しは伸ばしておくことにした髪は、長いところで肩に着くほどの長さになっていた

 

ヴェルゴにも服を投げて寄越し、身だしなみのチェックに向かう

 

うん、今日も文句なしの美少年!

 

人に見られることを意識しての佇まいだ、断じてナルシストではない

 

ベッドの方に向かえばヴェルゴはまだ半分近く夢の世界にいるようだった

 

「ヴェルゴ~?お前、早く準備しねぇと今日の添い寝は他の奴に頼むからな?」

 

「ダメだッ!ドフィの添い寝はおれの仕事…!誰にも譲りはしない…ッ!」

 

「なら早く着替えろ、置いてくぞ」

 

“あの日”以降、オレは一人で寝ると悪夢に魘され、飛び起きてしまうらしい

 

そうして衰耗していくオレを見ていられないと、いつの間にか添い寝係なるものが制定され…

 

厳粛なる勝負の数々の結果、ヴェルゴがその係を独占している

 

もちろん、オレが誰かを指名する場合はその限りじゃないらしいが

 

ヴェルゴ、色んなとこ触ってくるからなぁ…

 

最初の頃はそんなことを気にしていられるような状況じゃなかったし、最近はあまり気にならなくなってきたし、むしろ、その、嫌じゃないし…

 

もしかして…オレ、ちょっとヤバイ?

 

最近になって急成長しているヴェルゴは大分体格が良くなっていて、毒の後遺症で飯とか食えなかった時期のせいで成長が遅れ気味になっているオレよりも、一回りくらいは大きい

 

そんな奴に一心に思われ、大事に抱きかかえられ、当然のように尽くされ…そりゃあ、絆されてしまうのは仕方が無いと思うんですよ?

 

前は女の子だったから、余計にさ、そういうところもあるのかもしれないし…

 

ヤンデレストーカーの癖に!とも思うけど

 

…ホモ、かぁ…

 

可愛い女の子とか見て、おっ!とも思うから実際にはバイって奴なのかねぇ?

 

そろそろ思春期突入だし、そういうことも、考えなきゃいけない時期か…

 

憂鬱だなぁ…

 

「ドフィ…」

 

抱き寄せられ、朝の挨拶だと米神に唇を落とされても、抵抗するだけ無駄なんだって事は経験から解ってる…

 

コイツはもう懐に入れちまったから強く出られない

 

哀しそうにされると悪いことしてる気分になるし…

 

そうして最終的に断りきれないから、悪化していってんのかなぁ…やっぱり

 

「ほら、行くぞ」

 

「ああ」

 

気にしても無駄無駄!

 

今はそれよりも、朝御飯の心配をしよう!

 

部屋を後にして、食堂へ向かう…そこで度肝を抜かれるような出来事が起こるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

「え~、本日午前9時を持ちまして、おれがボスの組織(ギャング)は解散しぃ、此方にいるドフィ、ドンキホーテ・ドフラミンゴを筆頭とした新設の海賊団、ドンキホーテ海賊団(ファミリー)へと吸収合併されることが決定しました~!はい、どんどんぱふぱふ~!」

 

「は?」

 

あっるぇ~?急に耳が遠くなったぞぉ~?

 

この粘着野郎、いまなんつった?

 

今12歳のガキに海賊団の船長やらせるって聞こえたんだけど、これ、オレの耳がおかしいんだよね?

 

そう思って周りを見ても、みんな嬉しそうに拍手しているだけで

 

「んねーねー、意義のある人はいるの?んねー?」

 

一応、念のために聞いておかないといけないのだろう

 

いるわけ無いよね?と変な自信が篭っている声で、粘着野郎が笑顔で聞いてくる

 

意義ありに決まってんだろうが!!

 

「ちょ、ま、ん~!んん~ッ!!」

 

そう思って声を上げようとしたところ、ヴェルゴに口をふさがれて…

 

満面の笑みを浮かべる変態野郎…テメェも一枚噛んでやがるのか!!

 

「はい、意義なーしだね~!じゃあ、そういうことで、席替えしよォ~!」

 

そう言っていそいそと席替えが行なわれ、座らされた上座のボスの椅子

 

く…ッ!同い年の奴に抱き上げられるとか屈辱的だ…!!

 

「ぷはッ!…お前ら…ッ!これ、前々から計画してただろう!?なんだってこんな…!!」

 

ようやく口を覆っていたヴェルゴの手を退かして四人に目を向ければ、オレの怒りなど何処吹く風、自分は悪いことなどしていませんって面しやがって…!

 

「え~?だっておれがボスやるよりドフィが上に立ってくれた方が安心なんだよね~」

 

でもあと三年くらいは待てよ!オレ、前世あるとはいえまだ12だぞ!?

 

「ドフィは上に立つために生まれてきたんだろ?ほら、覇王色の覇気使えるんだしよォ」

 

それは今関係あるのか!?つーか年齢考えてよ一応常識人!!

 

「…ドフィなら、みんなに優しいボスになれる…だから協力した…」

 

いや…お前は…うん、事の重大さを理解してる?ねえ

 

「ドフィ、照れなくていい。おれははじめてドフィに会ったあの日から、こうなる事をわかっていた。すべての生き物は(ドフィ)の前に跪くべきだ…これはその第一歩でしかない」

 

はい、お前の意見は聞いてない!!それとお前はオレを絶対視しすぎ!!!

 

「うるせェぞヴェルゴォ!!オレが、いつ、そんな、ことを、望んだァ!!?うあがぁぁぁ!!!」

 

足の甲を踏みつけ、腹に拳を叩き込み、そのまま顎も殴り、玉を蹴り上げて、ヴェルゴを沈めたオレは、あまりの予想外の展開に頭を掻き毟るしか出来なくて

 

「まあまあ、落ち着くざます。ほら、水でも飲むざます…でもあたくしもドフィちゃんがボスの方がいいと思ってるざます」

 

水を受け取り、喉を潤しながら言われた言葉に、ああ…あなたもか…と、もうオレの味方はいないのだと察した

 

「それに、こうしたらみんなドフィの家族になれるだろォ~?だっておれ達は海賊団(ファミリー)!」

 

嫌がるオレを宥めるように言われた言葉に、泣きそうになったのは、絶対、教えてやらねェ!!

 

もう、いい…こうなったら開き直ってやる…!!

 

「ッ!…ああ、もう!!わかったよ!!テメェら全員オレが面倒見ればいいんだろ!!?ボスでもドンでも船長でも大将でもやってやんよ!!!そ・の・代・わ・り!!」

 

でも…オレにだけ、重責を背負わせるなんて、させないぜ…?

 

ニィッと笑顔を浮かべて、オレは一人ずつオレを嵌めた奴らを見つめていく

 

「そ、その代わり…?」

 

ゴクリ、と喉を鳴らしたのは誰だったか…

 

「計画立てたそこの四人、テメェらは道連れだァ!!オレの権限で持ってテメェらを最高幹部に任命してやる!!精々オレのために馬車馬のように働け裏切り者ォォ!!!」

 

そう言われた四人は嫌がるどころか、むしろ嬉しそうで…

 

え?なに、お前ら三人も虐められて悦ぶタイプなの?

 

ヴェルゴがそうなのは知ってたけど

 

うわぁぁ…

 

…オレの周りには、変態しか、いないのか…

 

改めて確認させられた事実に、出来ることなら十年前くらいからやり直したいなぁ…と思う今日この頃なのであった

 

 

 

朝食の後、オレと新設されたドンキホーテ海賊団(ファミリー)の最高幹部になるメンバーは別室の会議室へと集まっていた

 

「…これから海賊団(ファミリー)になるにあたって、いくつかやらなくてはならないことがある」

 

某人型決戦兵器アニメの司令官を真似て、顔の前で手を組みながらそうオレが口にすれば、四人は表情をさらに引き締め、オレに目を向ける…

 

「まずは、我が海賊団(ファミリー)のモチーフや海賊団(ファミリー)内での役割についてだ。何か意見がある者はいるか?」

 

そう言って四人を見渡せばひょこっと手が上がった

 

「んねーねードフィ、まずはドフィの最終目標を教えてよ。んねー、それでそこから考えていったほうがいいんじゃないかなぁ?」

 

まだ“ひとつなぎの大秘宝(ワ ン ピ ー ス)”の実在が証明されていない今の時代、海賊の目標は様々だ

 

オレの知るところでは、『世界中を見て回りたい!』だの『おれぁ家族が欲しいだけだ』だの『すべてを支配してやる…!』だの…ホント十人十色だ

 

これがあと五年もすれば『“ひとつなぎの大秘宝(ワ ン ピ ー ス)”を手に入れ海賊王になる!』ってのが普通になるんだろうが…

 

「最終目標、か……前にも言ったと思うけど、オレは、世界政府に独裁された今の世界のあり方を変えたい。人間には、上も、下も、本来はないはずなんだ。天竜人は神なんかじゃない、先祖の業績を笠に着て、自分たちは偉いと驕っているただの人間だ。魚人、巨人、人魚、有翼人種、他にも沢山いる、オレたちとはどこか違った見目の奴らは本当にオレらに劣っているのか?いいや、そんなはずはない。言葉が通じ、誰かを大切に思う想いがある限り、通じ合う事が出来る…オレたちは同じ“ヒト”なんだ…!」

 

自分より強いものは、確かに怖いかもしれない

 

でも、少し待って欲しい

 

彼らは本当にオレたちに牙を向けてくるのか?

 

誰かを傷つけたいと、そう思うヒトは、あまりいないとオレは思う

 

誰だって家族と幸せに暮らして生きたいと思っている…

 

少なくとも、オレがあの天の地獄で見たものたちは、みんなそう言っていた

 

彼らが、牙を向けてくるのは、オレたちが彼らの大事なものを傷つけたときだけだ

 

お互いの考えを尊重して、お互いを理解することが出来れば、彼らはオレたちと同じ“ヒト”だ

 

…いま、“ヒト”でないのは、一体どちらなのだろうな…

 

「オレは、どんな“ヒト”でも差別される事なく、“ヒト”として自由で、“ヒト”としての権利が保障された生活を送れる世界を作りたい…!“王”とは!ヒトビトを傷つけるものであってはならない!“王”とは!ヒトビトの生活を護り、慈しむものでなければならない!!そんな“王の道”を違えたものに!そんな“王”を忘れてしまった世界に!オレは!“王”が何たるのかを知らしめたい!!世界は!!こんな!苦痛に満ちたところであってはならないんだ!!!」

 

飢える子供がいる…

 

食べていくために子供を捨てる親がいる…

 

食べ物を得るために隣人を殺す人間がいる…

 

なのに、だれも、たすけようとしない…!

 

天の豚どもは、自分の欲を満たすのに忙しく、

 

ヒトビトを助けるためにあるべき世界政府は、そんな豚どもを擁護するだけ

 

誰も、底辺の人間のことなんて考えていない

 

お前らが彼らを見捨てるというのなら!

 

オレが彼らを拾っても問題ないだろう!!?

 

オレのこの両手はまだ小さく、沢山のものを取りこぼしてしまった…

 

でも!

 

十年後はどうだ?

 

二十年後は?

 

三十年もあれば、世界はどれだけ変えられる!?

 

オレは、諦めないと、誓った

 

父の望んだ、優しい世界をつくるんだ

 

それが、オレに出来る、唯一の親孝行になると信じて…!

 

「ドフィ…」

 

「…オレは、もう、だれにも、オレたちと同じ苦しみを味わってほしくないんだ…」

 

“あの日”、引き金を引いたのは、たしかにオレだったけど…

 

“あの日”、引き金を引かせたのは、自分さえ良ければいいという人間の醜い感情だ

 

ここには、オレと同じように、そんな人間の醜い感情のせいで苦しめられてきた仲間たち(か ぞ く)がいる…

 

「そんなオレでも…ついてきて、くれるか…?」

 

窺うように一人ずつ、顔を見れば、誰一人として拒否する様子がなくて

 

「おれは、はじめて会ったあの日に、何があってもドフィについて行くと決めた。その気持ちは今も変わらない」

 

「お前に付いて行った方が面白そうだしなァ…安心しろ、ドフィ。お前がおれに寄りかかりたい時は避けずに受け止めてやるぜ」

 

「べへへへへ…おれ達は海賊団(ファミリー)だからなァ~、ついてく、ついてかないの話じゃない…ついていきたい、なんだよね~!」

 

「…ドフィ、おれはドフィがおれを助けてくれたようにドフィを助けたい…どんなドフィでも、おれを助けてくれたことに変わりはないだろう…?」

 

そんなこと、いわないで…

 

「~ッ!ば、バカかお前ら!!オレは世界相手に喧嘩売るつってんだぞ!?死んじまったらどうすんだよ!!?」

 

おまえらに、なにかあったらオレは…ッ!

 

そんなオレの気持ちを察してか、年長者二人は顔を見合わせ、

 

「え~?そんなことになる前にドフィが助けに来るだろ~?んね~?」

 

「だろうなァ、お前、家族の危機にはいつでも颯爽と現れるし?ドフィ以外にも頼れる仲間(かぞく)がいるしよォ、誰か来るまでなら耐えられるだろ、おれでも」

 

変態は満面の笑みを浮かべ、

 

「ドフィのために死ねるのなら、これ以上ないほどの幸福だ」

 

袖を引かれて横を見れば、

 

「…おれ、死ぬのは怖いから…防御力上がる悪魔の実がいい…」

 

そんな可愛い事を言われ…

 

「そういう…!だぁぁぁ!!もう!!バカばか馬鹿!お前ら全員大馬鹿者だッ!!でも…そんなバカなテメェらが大好きだぁぁぁ!!!」

 

感極まって抱きつきに行ったオレは悪くない

 

 

 






「…で?結局、モチーフどうすんの?」

「あ…」

「べへへへへ!ドフィ、忘れてたな~?自分で言ったのに!んねーねー、どんな気持ち?ねー、それ指摘されて今どんな気持ちなのドフィ~?」

「う、ううう~…ッ」

「やめろ」

「ヴェルゴ…!(助けてくれるのか…!?)」

「ドフィを虐めていいのはおれだけだ」

「だと思ったよ、畜生!期待させやがって!」

「…トランプ…とか…?」

「トランプだァ?なんだってトランプなんざ…」

「…トランプ…四種類あるし…海賊は賭け事とかに使うし…」

「ん~トランプ、トランプか~…トランプだったらたしかに学がなくてもわかりそうだよね~」

「そうなるとドフィはどの札にも勝てるジョーカーの札か?」

「それいいね~!」

「ん?え、なに、トランプで決定の方向なの?」

「みてェだな…で?おれ達はどの札なんだ?ジョーカー」

「んねーねー、ドフィが決めてよォ~!ドフィがボスなんだし~!」

「え~?…じゃあ、クラブのキングは、オレにとって知識を補ってくれるボスに。三人寄れば文殊の知恵って言うしな…これからよろしく、“トレーボル”」

「…っ、よろしく、“ジョーカー”…!」

「ハートのキングは、オレの心の支えにもなってくれているヴェルゴに。いつでもオレの心に寄り添ってくれると嬉しい…よろしく、“コラソン”」

「ああ…おれの“(ハート)”はドフィのものだ…これからもよろしく頼む、“ジョーカー”」

「ダイヤのキングは、オレが常識(かがやき)を失ってほしくないと考えている先輩に。これからもその常識感(かがやき)でみんなを軌道修正して(み ち び い て)ほしい…よろしく、“ディアマンテ”」

「おう!任されたぜ、“ジョーカー”」

「スペードのキングは、恐れを抱いていてなお、オレのために立ち上がってくれた小さな戦士に。その剣を振るう相手を違えぬよう祈って…よろしく、“ピーカ”」

「…ああ…おれの剣は、傷つけるより護るために…!…頑張るから、“ジョーカー”」

「んねーねー!せっかくドフィが名付けてくれたんだし、今日からトレーボルって呼んでよ、ねー!?」

「それなら、おれのこともコラソンと…!」

「あ~…ドフィ以外はいっそのことそれでいいんじゃねェか?…あっちの二人は止めても止まりそうにないし…なぁ、ドフィ?」

「あ~…うん、そうするか。お前らもその方が良さそうだし…でもオレの事は名前で呼んでほしいなぁ~なんて…(ジョーカーとか厨二臭いし…)」

「ドフィはドフィでしょ?ね~?」

「その通り、ドフィはドフィだ」

「…コクコク…!」

「決まったみたいだな?じゃァ、改めて…今日から頼むぜ、ドフィ船長!」

「…ああ!」

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