ζ(Zeta) / 呉爾羅(Godzilla) 作:AllZ:M
【設定録集/登場人物篇 完成版】
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性別 : 男性
本作の主人公。
K県・
◆容姿
現在の髪は、
後述する事件の以後より、髪色に僅かな藍への褪色が発生しているが、原因は本人にも不明瞭。
◆衣服
『Oo...I!』と正面に印字されたゆとりのあるスウェットとスラックスを愛用しており、劇中では基本的に此の衣服。
◆容姿の変革
以後の服装は腹部、背部が露出した短丈となっている。
◆職
生命科学に関する数多の記事を世界中から編纂する分散型ネットワークサイト「
当該サイトに於ける主要・代表的な執筆記事は主に「深海棲息の自己発光型魚類のメカニズムについて(著)」「
執筆スタイルは徹底して一人称を排した客観的な文体で統一される。
編集部内でも「その筆致から書き手の性別・年齢を推測することはほぼ不可能」と評されているという。
「槻御輿村に飛来する渡り鳥の帰巣本能に関する現像写真を用いた解説」等の映像ファイル等も複数回掲載していたが、其処でも自らの声や顔は一切明かすことはなく、動画内の解説は端末に付随した自動音声読み上げ(Talk aid assistant:
◆略歴
KS県(槻御輿村以南、九州南部)の港町で生を受け、育つ。
幼少期より友人の出来にくい性格であったが、同年の
本編開始時から約十年前、当時にして十五歳だった彼は、当時在住していたKS県の離島型火山島・
其の直後、南邦御威山の第一火口が突発的に大規模噴火を起こし、那は其の被害に見舞われ、英猪を眼前で亡くしてしまう。
噴火より十数時間後に奇跡的に救助された那であったが、心的外傷により一時的に失語状態となり、約一年数ヶ月の回復期間を要した。
以後、其の一件が「自らが彼処で口喧嘩をしたから」「他者と啀むことで災厄が起きる」という強迫的観念へとすり変わっていく。
几帳面に波風を立てず『観測者』に徹す事を選んだ彼で在ったが、以後も夢の中で過去の災害の記憶の反芻に苛まれていた。
◆劇中での動向
早朝の地震の「予感」に目を覚ます。
槻御輿村を包む火山性微動の中、いつもの散歩へと向かう。
その道すがら、河川敷のベンチで奇妙な数式と概念生物を描き続ける女性・
その後、警察官である
伊藤の語る「独立観測者」としての活動、そして彼女が示した鉛筆占いによる予知——その的中を目の当たりにした那は、単なる好奇心を超えた確信を抱き始める。
直後に発生した大規模な地震と噴火。
派出所からの避難行の中、伊藤が路上に自らの血で描いた「血の曼荼羅」を目撃し、那はこの世界の裏側に潜む理を、否応なく受け入れざるを得なくなる。
御輿庵・灯での一夜、那は夢の中で「けだもの」と対峙し、覚醒後の現実の肉体への影響を以て、夢と現実の境界の揺らぎと、自らが観測者でいられたい境地に在ることを悟る。
上色見神宮での探索の末、スキュラの顕現に直面した那は、自らの人差し指を石の角に擦り付け、見様見真似で血の曼荼羅を描き上げる。
かつて「他者に嫌われることを恐れ、輪郭を薄めて生きてきた」那が、初めて自らの意志で世界に爪痕を残した瞬間。
この行為により、
以後、那はアンとの位相的な繋がりを介し、彼女が受けた損傷を自らの右腕にフィードバックとして感知し続けることになる。
芹沢から鎖の真実と使い方を託された那は、伊藤と共に心経を詠唱し、
物語の終盤、右腕に消えない傷跡を残しながらも、那は「排斥せず、対話を続ける」という覚悟のもと、槻御輿縁記残録を継ぐ者としての一歩を踏み出した。
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齢 : 不詳(31〜33)
性別 : 女性
K県・槻御輿村にて那が出逢う、独自の生態系構造と幾何学的理論を提唱する謎の女性。
自称を「独立観測者」とする。
◆容姿
現在の髪は、乱雑に伸び切った藍黒色。
目元の隈が特徴的な顔立ちで、手入れの施されていないボロボロの白衣を常とする。
十五歳前後までの髪型はチャコールグレーのショートカットであったとされ、当時から都市の排気ガスと煤塵に塗れ、僅かに霞みを見せる質感であった。
この髪色が藍黒色へと変質したのは、後述する上色見神宮での最初の邂逅——高次存在との直接接触の際に「ちぇれんこふ」に類する現象を浴びたことに起因するとされる。
以後、伊藤の髪は一切の手入れを拒むように伸び続け、劇中で那と出会う頃には長く乱れた輪郭を形成していた。
◆所持品
常としてクロッキー帳とドローイングペンを携帯しており、その記述の中には「視覚で可視化できない情報を、絵に落とし込む」というプロセスを内包した、全く新たな生態系構造が渦巻いている。
クロッキー帳の筆記の為に必要な顔料は、土や雨水、或いは自らの血液を混ぜ合わせた混合液体剤によって調達される。
◆クロッキー帳
伊藤が携帯している絵画用クロッキーノート。民間の廃棄品から調達したものとされているが、詳細は不明。
頁にはありとあらゆる数式や幾何学的なフラクタルが記述されており、時折に「概念生物」と呼称される怪獣達のスケッチが記述されている。
其れらは平面的な描画であるにもかかわらず、高次元の実体を人間が記述することで「三次元空間に"高次元にこのような生物が存在する"という怪獣概念の確在」を実現している。
目に見えないものを物理的に描画する観測者が存在する事で、概念生物は"存在"そのものの立証が約束されているのであると、先の
◆出自
SO県の漁村で生を受け、小笠原の諸島で育ち、十数歳になった事を皮切りに、SO県の借家へと移住する。
父は地元の漁船「
暮雄丸は元来、地域の小さな底引き網の木造漁船に過ぎなかったが、伊藤が物心つく頃には既に老朽化が進み、父の代で廃業に近い状態にあった。
成人齢まであと僅か、となった時期に、父の乗る暮雄丸が小笠原の
以後、父の生死は不明のまま行方不明扱いとなり、伊藤はただ一人、SO県に在る家宅に取り残されることとなる。
数年にわたる悶着の末、その借家すらも失った伊藤は、帰るべき此処も、温もりを想起させる場所すら存在しないまま、次第に定まった住所というものを持たない生活へと移行していく。
◆略歴
伊藤の人生における大きな転機は、十数年前の
当時、都市を漂流する「流浪者」として生活していた伊藤は、街頭モニターに映し出されたその光景を目の当たりにした刹那、脳裏の最も深い領域に高次存在の「触れ」を受け、三次元的な視覚情報を拒絶する高次の数理構造のヴィジョンを見る。
その中心に刻まれていたのが、彼女を独立観測者へと覚醒させることになる、あの「
以後、伊藤は廃墟と化した関東の街で、瓦礫から拾い上げたスプレー缶を用いて壁面に異様な
やがて脳内に響く「来い」という指令に導かれるまま、
数十日にわたる過酷な行軍の末、伊藤は上色見神宮へと辿り着く。
其れに際するチェレンコフ光に酷似した閃光と、肉体への直接的な干渉を経て、彼女の髪はチャコールグレーから藍黒色へと変色し、以後、彼女は自らを「独立観測者・伊藤」と定義し、称するようになった。
この邂逅の後、伊藤はクロッキー帳に自らが見た高次の意匠を写し取る生活を約数年ほど続け、槻御輿村付近の河川敷にて早朝の観測を行っていたところを、那に発見されることとなる。
◆劇中での動向
那との出会いを機に、伊藤の孤独な観測の円環に変化が訪れる。
当初は他人との対話に強い困難を抱え、警察による事情聴取の場でも吃音を隠せないほどの動揺を見せていたが、那の真摯な姿勢に触れるうちに、彼女の凍結していた精神は僅かずつ融解していく。
伊藤が予言した地震と、その直後の大規模な噴火を経て、彼女は松中派出所前の路上に、自らの血を用いて「血の曼荼羅」を描き上げる。
この行為は、彼女がこの地に呼び寄せられた真の理由である"高次存在からの「問い」を現世に定着させる"という使命を果たすための、決死の儀式だった。
御輿庵・灯での療養中、伊藤は高熱にうなされながらも、村に伝わる「
数百年周期でこの地を訪れる高次の存在、そしてそれを「修正」しに来る何か。
その手引きをするよう、自分は選ばれたのだと彼女は語る。
翌日、白河御が保管していた古書「槻御輿縁記残録」との対面を経て、伊藤は先代独立観測者・芹沢の存在を知る。
以後、那・凱・オクヤスと共に上色見神宮へと向かい、地下通路にて「
乱堂好景の介入と死、呉爾羅の完全顕現という事態を経てもなお、伊藤は「排斥ではなく対話を」という自らの信念を捨てなかった。
那と共に鎖を曼荼羅へと撃ち込み、心経の詠唱を行うことで、菩薩ヶ魏怒羅の顕現と呉爾羅の凍結・土着を成し遂げる。
物語の終盤、右腕から首にかけての火傷の痕を残しながらも、伊藤は那と共に長期のリハビリ生活を送る。
かつて彼女の思考を阻んでいた不連続な吃りは、この頃には完全に脱落しており、その双眸に宿る知的な光彩は、かつての暗い狂気から、穏やかな知性へとその位相を変えていた。
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齢 : 49歳
性別 : 男性
K県・槻御輿村の松中派出所に在中する、自称「草臥れ刑事」。
◆容姿
精悍な面持ちと彫りの深い表情、オールバックに固めた髪が特徴。
皺の深いスーツを無造作に着崩しており、初対面の那と伊藤に声をかけた際も、その着こなしは終始弛緩したものであった。
革ジャンを常備しており、槻御輿村を離れる際にはスーツの上からこれを羽織る場面が見られる。
◆略歴
K県内の警察署に長らく勤務し、槻御輿村・松中派出所への配属となって以後、地域の広域な人脈と多分野にわたる知識を蓄えてきた人物。
刑事としての経験則から、人間の嘘や隠し事を見抜く観察眼には定評があるが、科学的言説やオカルト的言説については本人も自認する通り疎く、伊藤の語る概念や数式を前にした当初は、その大半を理解の外に置いていた。
その関係の詳細な経緯については、白河御の子息の友人の女性が直接の起因にあるとされているが、詳細は不明。
◆好物
槻御輿に
◆劇中での動向
早朝の河川敷にて、伊藤の異様な振る舞いに気づき、部下のオクヤスと共に那・伊藤へと接触したことが、四人の協力関係の端緒となる。
当初は事情聴取という名目のもと、那と伊藤を松中派出所へと同行させたが、伊藤の示した鉛筆による予知と的中を目の当たりにしたことで、凱の中で「オカルトと切り捨てられない現象」への態度が、実直な受容へと転じていく。
大規模な地震と噴火の後、凱は自らの個人的な人脈を頼り、御輿庵・灯への一時退避を主導する。
この判断は、警察官としての職務の枠を大きく超えたものであり、以後の凱の行動は「私の個人的な興味からの私事」という彼自身の言葉に象徴される通り、公私の境界を意図的に踏み越えたものとなっていく。
槻御輿縁記残録との対面、上色見神宮への同行、そしてスキュラ・アン・ギラスの顕現という超常的な事象を目の当たりにしてもなお、凱は逃げることを選ばなかった。
彼の刑事としての職業的な性分である、数多の偽造や隠蔽を暴いてきた経験に裏打ちされた、紙面上の「違和感」を見抜く観察眼は、この現象の解明においても随所で発揮されている。
乱堂好景の登場後、その異質な存在が「二次災害」をもたらすであろうことを誰よりも早く察知したのも凱であった。
呉爾羅の完全顕現という事態に際しては、鐡の蛾の群体からオクヤスや伊藤、那を守るべく、負傷を厭わず戦い続けている。
物語の終盤、警察という組織の枠組みではもはや対応し得ない事態であることを認識した凱は、解雇という形で警察官としての職を離れる。
文字通りの「草臥れ男」となった後も、槻御輿の特産である「
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齢:29歳
性別:男性
K県・槻御輿村の松中派出所に在中する巡査。通称「オクヤス」。
◆容姿
短く刈り上げた髪と、僅かに鋭い目付き。
どこか頼りなげな印象がある面持ちと、律儀に着崩した制服が特徴。
凱と共に行動する際も、その制服の着崩し方だけは終始一貫しており、本人なりの「型」として定着しているものと思われる。
◆略歴
槻御輿村の出身であり、地元の交番勤務を経て松中派出所へと配属された。
村民には割かし慕われており、村の老人たちからの愛称は「オクさん」「ヤっちゃん」。
◆趣味
仕事の場以外では生粋の
ジャンルに囚われず、様々な
とりわけダイキャスト製の可動プラモデルシリーズである「
現在の一番のお気に入りは、同シリーズで展開されている商品の「
上半身と下半身が分離し、独立して駆動する機構が「フェティッシュ過ぎる」と豪語しているという。
◆人柄
おちゃらけた言動が多く、僅かに場の空気を読み切れない節があり、本人も其れは自戒とする処である。
凱とは「唯一腹を割って話せる程度の関係」を築いており、口では茶化し合いながらも、互いに強く信頼し合っている。
◆劇中での動向
凱と共に、河川敷で伊藤に接触したことから、四人の協力関係の端緒に立ち会う。
当初は那と伊藤に対し、若さゆえの直情的な疑念——「怪しい宗教の勧誘」「密告スパイ活動」を口にするなど、事態の深刻さをまだ測りかねている様子が目立った。
伊藤の示した鉛筆による予知の的中、そしてその後の地震・噴火という現実を目の当たりにしてもなお、当初は「鉛筆占いの時間ですか」と軽口を叩く余裕を見せていたが、凱の峻厳な横顔を見た瞬間、その笑みは徐々に焦燥を帯びていく。
以後、事態がオクヤス自身の理解の範疇を超えていくにつれ、その態度は次第に率直な恐怖の表明へと変わっていった。
呉爾羅の完全顕現を目撃した際には上擦る声を上げて尻餅をつき、危機的状況の中でも「マズいマズいマズい」と叫び続けるなど、その狼狽ぶりを隠すことがなかった。
しかしこの正直さは、周囲を白けさせるものではなく、むしろ極限状態の中で場の緊迫感を際立たせ、同時に一同の現実感を繋ぎ止める役割を果たしている。
槻御輿縁記残録の解読の場面では、英語表記の資料を読み解く那の姿を見て「僕、オ馬鹿の僕には砂座間さんが理的に見えて仕方ない」と自嘲するなど卑屈になりがちな一面も見せるが、凱からは「人はみな適材な長短所というものがある」と、その都度励まされている。
上色見神宮への同行、鐡の蛾の襲撃、そして呉爾羅との最終決戦に至るまで、オクヤスは終始、恐怖を隠さぬまま、それでも逃げ出すことなく凱と那・伊藤に付き従い続けた。
物語の終盤、凱が警察官としての職を解雇されると、オクヤスも迷うことなくそれに従い、警察組織を去る。
「凱さんがクビになるなら、一緒に辞職の記述を提出するだけです」という彼の言葉には、微塵の揺らぎもない忠誠が込められていた。
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齢:不詳
性別:男性
政府学会が第二次スーパープリュームによる火山災害に際して設立した、地震波観測研究室・
◆容姿
無精髭を蓄え、やや縮れた銀髪をオールバックに固める。
壮麗たる機敏さを感じさせる立ち姿でありながら、その所作の端々には、どこか歪なナルシズムに裏打ちされた律動が滲んでいる。
着古した白衣は常に清潔に保たれている反面、眼鏡は常にレンズが指紋で曇っている様子がみられる。
◆言動の特徴
語尾には常に「…うん」という確認の一言が付き添う。
その語り口は独特の粘り気を帯びており、聞く者に対して常に一歩先んじた優越感を漂わせる。
其の素行は、白河御にして「肌が粟立つのを抑えきれなかった」と言わしめるほどの異質な気配を帯びている。
◆思想
乱堂の持論は「この現実は九つの重層的位相によって構築されており、我々が知覚できるのはその最表層、わずか一皮分に過ぎない」というものである。
地質学の部門ですら異端とされている「震源が移動する」という解釈を真っ向から退け、「世界を構成する公理そのものが、別の公理に浸食されている」という独自の高次的な解釈を打ち立てていた。
伊藤の創り出した概念生物の存在についても、それを「証明すべき数式」としてのみ捉え、その実証のためであれば、他者の意志や命の危険すら意に介さない。
「言語化できない主観はノイズでしかない」「重要なのは、何が起こったかという結果だけだ」という彼の発言には、観測されるものの内面や苦痛を一切勘定に入れない、徹底した数式主義が貫かれている。
◆其の過去
詳細は不明であるが、第二次スーパープリュームに際する調査に際し、地質学的調査と称して南極基地付近へと調査視察を行った、という経歴が判明している。
彼の遺留品であるメモには、其処で「(中略)…第一層の氷河の下方に、巨大な、白無垢の■■を持った■■類■猿の■■の存在が…(中略)」と、一部が黒く塗りつぶされた痕跡のある殴り書きが確認されていた。
◆劇中での動向
NEO:GQの前哨基地にて、槻御輿村周辺の異常な地震波形を確認した乱堂は、部下である端湫琢弥に旧式のアナログ計器を確認させながら、既存の地球物理学の枠組みでは説明のつかない現象——「震源そのものが地下を移動している」という、常識を逸脱した現状に、むしろ昂揚を覚える様子を見せる。
噴火と地震の混乱の最中、御輿庵・灯へと単身で乗り込み、白河御の制止を振り切って槻御輿縁記残録を強奪する。
芹沢の遺した記述を読み解くにつれ、その瞳には未知の真理の端を掴んだ者だけが抱く、歪んだ「飢え」への変質が見られた。
那の首に巻かれた黒い鎖に直接触れることで、那とアン・ギラスの接続の記憶を断片的に読み取り、「九層の最深の触覚」を感知した乱堂は、その情報を得たことのみに満足し、単身で松中派出所前にある伊藤の描いた血の曼荼羅の座標へと向かう。
血の曼荼羅を「励起」させ、ζの正体を白日の下に晒そうと目論んだ乱堂であったが、曼荼羅を守護する鐡の蛾のコロニーによって全身を痛烈に攻撃され、右脚を折り、白衣を引き裂かれた状態で絶命寸前まで追い詰められる。
那と伊藤に発見された際、既に虫の息であった乱堂が最期に残した「一方的に選ばれた人間、自ら破滅を望んだヒト、死に体のホモ・サピエンスに、何が出来るか、其れを…三途の河辺から傍聴させてもらう」という呪詛を遺す。
その直後、乱堂の肉体は物理的な質量を放棄し、チェレンコフ光にも似た発光を伴いながら蒸発、消滅する。
この死は、血の曼荼羅の中心部に「情報の供物」をもたらす結果となり、呉爾羅の完全顕現を引き起こす最終的な引き金として機能した。
乱堂好景という一個の知性は、皮肉にも、彼が生涯をかけて追い求めた「証明」そのものの一部となって、この世界から姿を消したのである。
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齢:不詳
性別:女性
槻御輿村の深い森の奥、御輿庵・
◆容姿
濃紺の着物を寸分の隙もなく着こなし、背筋を真っ直ぐに伸ばした立ち姿は、実年齢を推し量ることを拒絶するような、神秘的な瑞々しさを湛えている。
鈴を転がすような、しかし芯の通った声が特徴的で、その物腰は終始、慈悲深く、しかし決して馴れ合いを許さない一線を保っている。
◆略歴
御輿庵・灯の経営を、先代から引き継ぐ形で担ってきた人物とされる。庵の来歴、そして先代との関係についての詳細は、凱にすら多くを語っていない。
凱とは数十年来の付き合いがあり、他者が立ち入る隙のない特異な信頼関係を築いている。
凱がこの庵を「私の知人が切り盛りしている寂れた旅館」と呼ぶ際の言葉の端々に、単なる商売上の顔なじみを超えた、深い信頼が滲んでいる。
◆槻御輿縁記残録
槻御輿村の北端の山奥に住む知人の住む古洋館・
書物の内容そのものについては、長らく理解の及ばぬまま、ただその不穏さだけを察知していた様子である。
◆人柄
伊藤の精神状態に潜む異常を一目で看取るような、「既に見抜いているかのように、鋭く、それでいて慈悲深く細められた」瞳が印象的な人物。
那たちが土足で庵に踏み込んできた際にも、動揺を露わにすることなく、静かに一行を迎え入れた。
その一方で、乱堂好景という異質な来訪者に対しては、宿泊者としての礼儀を保ちながらも、生理的な拒絶に近い疑念を抱いている。「肌が粟立つのを抑えきれなかった」という一節に表れる通り、彼女の直感は、乱堂の内に潜む「羅刹」としての本質を、誰よりも早く見抜いていたと言える。
◆劇中での動向
噴火と地震の混乱の中、負傷した伊藤を那たちが連れて庵を訪れた際、白河御は多くを問わぬまま、奥の座敷へと一行を迎え入れる。
伊藤の高熱と、その譫言に潜む異様な情報量を前にしても、彼女は取り乱すことなく、那たちの介抱を静かに支えた。
那が伊藤の言葉に耳を傾けようとした際には、「彼女の言葉に耳を傾けるのは、幾か先にしておいて。それは、今の貴方が受け止めるには、重すぎるかもしれない」と諭し、まだ事態を飲み込みきれていない那の精神を、それとなく気遣う場面も見られる。
槻御輿縁記残録を那たちに開示し、先代独立観測者・芹沢の存在、そして「客神」の伝承について語ることで、物語の核心へと繋がる重要な手がかりを提供した。
乱堂が単身で庵に押し入り、槻御輿縁記残録を強奪した際には、その無遠慮な振る舞いに制止を試みるも、力及ばず、書物を奪われる結果となる。
この一件は、白河御にとって、自らが長年守り続けてきたものが、ついに彼女の手の届かぬところへ流出してしまったという、痛切な出来事であったと推察される。
那たちが上色見神宮へと再び向かう際、彼女は「御無事で」と一行を見送る。
以後、呉爾羅の起こした一遍の事後においては、負傷した四名を庵で匿っていたようである。
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齢:27歳没〜以後不詳(外見上の老化は完全に停止している)
性別:男性
一七七五年、第一次世界の大戸村(後の槻御輿村)において呉爾羅の存在に感応し、先代独立観測者となった人物。
◆容姿
右眼に藍黒の眼帯を当て、幾度もの演算と観測の歴史を物語る、着古した白衣を身にまとっている。
齢は、那とさして変わりはない。
第零次元における彼の存在は、時間という一方向のベクトルが完全に無効化された領域に属しており、それゆえに変質も腐食も存在しない。
数百年の歳月を経てもなお、老化を一切見せることのないその肉体は、この特異な位相の産物である。
◆思想の変遷
当初の芹沢は、
其の過程で、古生物学に精通していた学者であった
其の数ヶ月後、オランダの学者からコアリションの研究を提案された芹沢がNS県の港から諸外国へと渡る最中に、出島から出航した船が不法な異国船と誤認されてしまい、それによる錯誤誤射が引き起こした一端の事件「出島事案」によって、其の右眼を失明する事になる。
其の瞬間から、彼の存在しない眼窩に在る暗闇に、「ζ」の文字が常として浮かび続けることになる。
以後、芹沢は他人への忌避と拒絶の念を抱き、許嫁であった恵美子とも疎遠になってしまう。
其の過程で、彼は自らの眼窩に宿り続ける「ζ」の蒼白文字を解明するために、研究へと没頭する事になる。
一七七五年、NS県から大戸村へと移り住んだ芹沢は、この地で呉爾羅の存在に直接感応する。
眼窩の奥で燻り続けていたあの文字が、単なる後遺症でも幻視でもなく、この地に眠る巨大な存在からの「問い」そのものであったことを知ったのは、この時が初。
以後、彼は自らを
一七七七年、芹沢は呉爾羅の抹殺を目的とした計画の一端として、大戸村の地に初めて血の曼荼羅を筆記する。
この時の曼荼羅の写しは、後に那たちの手に渡る縁記残録にも収録されているが、当初のものには、後年書き足されることになる「鎖」の意匠はまだ存在していなかった。
一七七八年、疎遠になっていたはずの山根恭平との縁が、思わぬ形で再び結ばれる。当初「痴話は憚れ」と芹沢の研究を諭す立場にあった山根であったが、芹沢の語る高次存在の実態と、その解析の緻密さに触れるうち、次第にその探求へと魅入られていく。
以後、山根は縁記残録の共同執筆者として名を連ねることとなり、高次存在の生体発光の特性や、チェレンコフ光との関連性に関する指摘を書き加えていった。
この時期の芹沢にとって、山根との共同研究は、失明と婚約破棄によって失われた人との繋がりを、いくばくか埋め合わせるものであったとも推察される。
一七八〇年、二人の研究は、ついに高次存在の解析によって齎された「
芹沢はこれを行使し、三年前に記述した血の曼荼羅付近より顕れた身長約五十メートル程の個体であった"最初"の呉爾羅を「押し返す」形で撃退することに成功する。
しかし、この勝利は破滅の始まりに過ぎなかった。
第零次元の内で破壊を齎された呉爾羅は、むしろその進化速度を加速させ、頻出するバグの歪みとして並行していた観測世界の怪獣たちを巻き込み、「概念生物」として第零次元へと誘致していく事態を引き起こす。
この光景を目の当たりにした芹沢は、呉爾羅の真の目的——「其の存在が存在しない世界がある限り、数多を食い尽くすまで、決して止まらない」という、生きることへの意志そのものを悟る。
「答えは、問いの中にあった。消去ではなく受容、排斥ではなく共存、位相の固定が必要」という認識の転換が、後の独立観測者たちへと受け継がれる「土着凍結と対話」の方針の、根本的な礎となった。
その後、芹沢は後世へと「土着の未来」を託すため、自らの血を媒介にしつつ、
上色見神宮の最奥へと三対を縛り付けた後、彼は第零次元に誘致される形で、現世からその姿を消した。
◆劇中での動向
那が第零次元の深淵——カメーバとの接続を通じてその核心に触れた際、芹沢は空間の裂け目から手を差し伸べ、白熱光による消滅の寸前にあった那を、現世への帰路へと引き戻す。
白磁に満たされた「無」の位相にて、芹沢は那に向き直り、呉爾羅の出自、そして自身がかつて辿った過ちと後悔を、淡々と、しかし確かな重みを持って語る。
その語りの中では、G世界における呉爾羅の消滅——高次構素破壊剤の原型たる兵器によって肉塊となり、骨となり、無へと帰していく巨獣の姿が、並行世界の記録として那の眼前に投影される。
那が携えてきた「魏の鎖」の真実。
それが「平行世界の観測情景から象った意匠をもとに、ゴジラに相対するに相応しい形態へと自律的に変換される」という属性を持つことを明かし、後の菩薩ヶ魏怒羅の顕現に至る道筋を示したのも、この対話においてであった。
現世の因果が那を呼び戻そうとする刹那、芹沢は「此処に残り、因果の底を支える」という役割を静かに受け入れる。
「君達の健闘を、第零次元の彼方から見守っている」という別れの言葉は、数百年にわたり孤独に世界を見つめ続けてきた先代観測者の、静かな祈りとして響いた。
槻御輿村での決戦時には、呉爾羅、及び
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■その他の登場人物
◆
NEO:GQ阿蘇外輪前哨基地に所属する若い研究員。
施設の壁に規則的に設置された、時代にそぐわない旧式のアナログ計器を担当しており、乱堂からの指示に忠実に応じる姿が見られる。
現代科学の精密な電子機器では捉えられない高次の現象を、あえて「別の言語」で観測しようとする、施設内での独自の役割を担っていたと推察される。
呉爾羅が完全に起き上がった瞬間、噴火の余熱に追われながらもその光景を注視し続け、「これ程迄の、異質な生物が居るとは」という諦念に近い呟きを漏らした直後、火砕流によって前哨拠点ごと呑み込まれた。
乱堂という異質な室長のもとで働きながらも、最後まで科学者としての観測の視線を失わなかった人物。
◆
芹沢大助の知人であり、古生物学に精通した学者。
当初は自らの娘・恵美子と芹沢との縁談を進める立場にあったが、出島事案による芹沢の失明と、それに伴う婚約の破談を経て、両者の関係は一度疎遠となる。
一七七八年、芹沢の語る高次存在の実態と、その解析の緻密さに触れたことをきっかけに、山根は「痴話は憚れ」と当初諭していた立場から一転し、その探求へと深く魅入られていく。
以後、縁記残録の共同執筆者として名を連ね、高次存在の生体発光の特性や、チェレンコフ光との関連性についての指摘である「ちぇれんこふ 其が希滅の汽笛」の一節を書き加えた。
山根自身のその後の消息については、縁記残録にも詳細が記されておらず、彼がどのような結末を迎えたのかは不明のままである。
◆
那の幼馴染であり、唯一の友人。那にとって数少ない、他者と何かを成し遂げた成功体験の記憶を共有する相手であった。
十五歳の折、那と共に南邦御威山への登山に向かうも、登山ルートと帰宅時間を巡る些細な口論の最中、突発的な大規模噴火に見舞われる。
那の眼前で灰の奔流に呑まれ、その命を落とした。
以後、英猪の記憶は那の人格形成における決定的な楔として機能し続けている。
「他者と啀むことで災厄が起きる」という那の強迫観念の根源であると同時に、彼が生前口にした些細な言葉たちは、那が長らく無意識のうちに大切にしてきた記憶の一つでもあった。
第零次元にて那と再会を果たした際、英猪の残像は那の内に積もり続けていた後悔と自責を静かに受け止め、「往きなよ」という言葉と共に、彼の背中を押した。
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◆What IF…? [未観測領域]