トリニティ・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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前話、ちょっと○○マリーシリーズって感じに変えたかも。


マシロの○○とイチカの○○

 

 

とある日の放課後、今日も今日とて数回程しか銃声の聞こえなかった平和な1日だった。そしてそんな日は、大抵彼女たちも暇なようで。

 

「ジンヤ、今日暇っすか〜」

 

窓際の特等席で外を眺めていると、ずしりと両肩に体重が掛かる。何かと思って上を向くと、そこには俺の両肩に手を置いて、上から俺を見下ろすクラスメイト、仲正イチカの綺麗な顔があった。

 

慣れてきたとはいえ、美人顔にそういう事されると弱いなぁ、なんてことを考えつつ、至って平静を装ってモモトークを確認する。

 

「あー、今日は集合かかってないし暇かなぁ」

「相変わらず緩いっすねぇ、ジンヤのとこは」

「まーなー、それがうちのいい所だぜ」

 

それに集まったってだべりながらスイーツ食べに行くだけだし。

 

「んで、そんな暇人の俺になんのようですかー」

「暇人だってからかいに来た」

「サイテーかよ。泣くぞこらぁ」

 

ジョーダンっすよ。と明るく笑うイチカ。肩から手が離れたのを見てくるりと身体をそちらに向けるとらそこにはもうひとり、イチカと同じ黒い制服を独特のスタイルで着こなし、ぽけっとこちらを見つめる女子がいて。

 

「おっ、マシロちゃんじゃん。おつ〜」

「おつかれさまです。ジンヤ先輩」

 

静山マシロ。正直、俺のいちばん苦手な生徒だ(・・・・・・・・・・・・)

 

と、言うのもだ。

 

「うーん、マシロちゃんさぁ。もー少し気をつけた方がいいかなぁってオニーサン思うんだよね」

「……?」

「ほら、イチカも言ってやってよ」

「いやぁ、男子の目の前なら気がつくかと思ったんすけどねぇ」

「ダメじゃん。もう失敗してんじゃん」

「……?」

 

─────いや、パンツ見えてっから。なんて俺からじゃとても言えないのである。

 

というのも彼女、トリニティにおいて風紀委員会のような役割にある“正義実現委員会”に所属する生徒で、彼女たち固有の黒いセーラー服を着用しており、そしてそれを改造している。

 

その改造というのが、どういう訳か少し緩めの首元に、お腹周りがまるっと露出するセーラージャケットに、膝上よりも股下から測った方が早いくらいの馬鹿みたいに短いスカートである。

 

そして、そんな格好で大きな対物ライフルと荷物を抱える彼女がよくやるのは、スカートをほんの少しだけとはいえ巻き込んでのパンモロ(パンツ丸出し)なのだ。

 

そして今も気がついていないのか、微かにガンケースに引っかかるスカートのせいで、白い綺麗な布地が足の間から少しだけこんにちはしている。

 

「いや首傾げてないでさ、気になんない?……ほら、それ」

「それ……。あぁ、パンツ」

「そうっすパンツっす。ってか、男の子の前っすよ?」

「そーだぜ。もっとこう、きゃー!みたいなのはないのかよ」

「いや、……特には?」

「なんでだよ」

 

すっと巻き込んでいたスカートを直してパンツは隠したが、どうにも彼女は顔色ひとつ変えることはなく、むしろ不思議そうにこちらを見るばかり。

 

「はぁ……。んで、イチカ様はどのよーなごよーけんで?」

「今日は事件も起きてないし、委員会も非番なんで。そしたらジンヤも暇そうだから捕まえただけっす」

「やめてくんない?俺帰ってごろごろしたいんだけど」

「それじゃ面白くないじゃないっすか」

「面白さで俺の事捕まえんのさ、やめない?あー俺の人権どこだよもー」

「あの夜、浜で死んだっす」

「いつの夜だよ。あと勝手に殺すな」

 

勘弁して欲しいものである。俺の好きなことは1に食べること、2に寝ること、3になんぱすることだ。それを奪う権利は誰も持ちえないのである。

 

そしてそんな俺たちのやり取りに受けたのか、ふふっとマシロが笑った。

 

「ほんと、先輩たちって仲がいいんですね」

「ん、そりゃな」

「なんだかんだで、長い付き合いっすもんね」

 

─────そう、たしかあれは1年の春、遅刻しかけた俺はいつもより少し焦り気味で登校していて、交差点の先にいるイチカに気が付かず。そして。

 

「おぉ、まさかの出会いは定番の?」

「あっこら、それはダメだって」

 

─────不良たちを血祭りにあげるイチカとぶつかったんだよな。

 

「─────え?」

「あー、言いやがったなぁ」

「いててっ、ぎぶっ、ぎぶっ!」

 

キラキラとさせていた顔をキョトンとしたものに入れ替えたマシロに笑っていると、後ろからイチカからチョークスリーパーをかけられる。

 

細くて華奢な腕が確実にのどを締め上げると共に、後頭部で微かに感じる確かな柔らかな母性の象徴に思わず顔が赤くなる。それに、とてもいい匂いがする。

 

「あー、ジンヤ先輩がヤラシイ顔してる」

「だー、うるせぇぞマシロ!余計なこと言うなっ」

「まだまだっ、元気そうっすね……っ」

「そりゃ俺も、それなりに頑丈だからな……っ」

「……やっぱり」

 

より力強く締め上げるためか、俺の後頭部は彼女の胸にしっかりと押し付けられるかたちになった。恐らく正面からみるマシロからは完全にニヤけているようにしか見えないだろう。

 

だが、そこでマシロは裏切った。ムスッとした顔でイチカに耳打ちする。

 

するとどうか、俺が胸の感触を楽しんでいたことがイチカにもバレたようで、俺の体は締められた首を支点に投げ捨てられ、そして隣の席にぶつかって崩れ落ちた。

 

「なっ、何よろこんでんの、この変態っ」

「いやっ、無茶言うなやっ。自分からおっぱい押し付けてきたくせにっ」

「おっ、なにいってんすか!そ、それにだからって黙ってるっすか普通!?」

 

激昂し胸を押さえるイチカの横で、マシロは我関せずといった様子でそっぽを向く。

 

「おいマシロっ、おまえ、なんでおまえのパンツはよくてイチカのおっぱいはダメなんだよっ」

「おっぱいとか言うなっ!」

「ぐむっ」

 

倒れ込んだままの俺の顔に、イチカの上履きキックが突き刺さる。

 

それを見ながらマシロはうーんと唸り、やがてひとつうなづいて答えた。

 

「なんか、ヤラシイ顔だし“正しくない”かなと思いまして」

「ざっけんな、男の子としては“正しい”んだよ……っ!」

「……そうなん、ですか?」

「このケダモノに騙されちゃダメっす。何も正しくないっすよ……っ!」

 

ゲシゲシと蹴ってくる足は、控えめではあるし痛みはないが、やられっぱなしなのもあんまり面白くはない。 俺はSなのだから。

 

蹴られつつもじっと観察し、ここだっ、というタイミングで手を伸ばす。すると。

 

「ひゃっ」

「よし……っ!」

 

俺の右手の中にあるのは、イチカの足。蹴りに伸ばされた瞬間を狙ってくるぶしの上の辺りをがっしり掴んだ。

 

「……イチカ、おまえ」

「な、なんすかっ。その、足を離して欲しいんすけど……っ」

「え、やだ」

「なんでっすか……っ!」

 

ぷるぷると震える足に、イチカの顔はどんどん真っ赤になっていく。左手でふくらはぎの当たり、ハイソックスを引きずり降ろして真っ白な足をそっと撫でる。すると。

 

「ひゃっ、ちょ、やめっ」

「……あっ、なんかすまん」

「─────いや、なんでちょっと引いてんすか」

 

そっと掴んでいた足をおろし、ハイソックスを戻してやる。俺がやりたいのはそういうのじゃないのだ。そんなに色っぽい声出されても困る。

 

「いや、なんかそういうのは、いらないので……」

「何がっすか!?人の足撫でて嬌声あげさせといて、何が“違う”っすか!?」

「嬌声とかいうな。生々しくてえろい」

「こいつ……っ!」

「……イチカ先輩、なんかかわいいというか、すっごい色っぽい声でしたね」

「マシロはマシロでなんのコメントすかそれ!」

 

もーやだ。なんて言いながら頭をかかえるイチカ。こっちだってなんか妙に色っぽい声出されて悶々としているのだ。許して欲しい。

 

ようやくやんだ蹴りの雨に落ち着き、下から2人のパンツを見ていると、今度はマシロが1歩近寄ってきて。

 

「また、パンツですか?」

「……何聞いてんすかマシロ!?」

「うん」

「うん、じゃなくてっすねこの変態!」

「そんなにパンツが好きなんですか……。やっぱりよくわからないですね、先輩って」

 

うーんと頭の上で手を組み、ぐっと上体を反らせて伸びをするマシロ。だが、俺はそんな彼女をしたから見ているうちに、衝撃的な事実に気がついてしまった。

 

─────マシロ、ブラ、してなかった。

 

なにせ、お腹周りがすっかり空いたセーラージャケットは上体を仰け反ったことで下から胸の辺りを覗くことができ、そしてそこにはなだらかな丘とぽっちがふたつ─────。

 

「─────って、何鼻血出してんすか!?」

「……え?」

「ほんとだ、ティッシュティッシュ」

 

びっくりしたようなイチカに言われて鼻を拭ってみると、そこには血がべっとりと付いていて、更に両方の穴からダラダラと血が流れている感覚がはっきりとしてきて。

 

「─────流石に、お腹いっぱい(キャパオーバー)だぜ」

「何カッコつけてんすか。ほら、ティッシュ詰めるっすよ」

「持ってきました」

「ならこれで……。これ、除菌シートじゃないっすか。……まぁいいか」

「よくねぇだろぉ!?やめっ─────やめろぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、美味かったっすねぇ」

「満腹です」

「くぅ、財布が空だ……」

 

その後、1時間くらい安静にして鼻血の収まったジンヤ先輩とそれをネタに笑うイチカ先輩と一緒に、私たちはラーメンを食べました。

 

お店はいつものラーメン屋。オートマタの大将さんがやって見えるお店で、ジンヤ先輩曰く、隠れた名店なんだとか。

 

「にしてもイチカ、おまえトッピング全部はやりすぎだっての」

「たまにはいーんすよ」

「太るぞ」

「今なんか言ったっすか?……そういえば、デザートにアイスでも」

「太るぞぉ!」

「なっ、うっさいっすよ!」

 

変な声をあげさせられて、それに興奮して鼻血を出した罰だとイチカ先輩はトッピングもりもりの高級ラーメンをジンヤ先輩に奢らせていた。

 

私もまぁ、普通のラーメンと唐揚げをまとめて奢っていただいた訳だが。

 

それよりも、ひとつ気になることがあった。

 

「そういえばジンヤ先輩」

「んぁ、なんだマシロ」

 

イチカ先輩に頬を引っ張られたまま、ジンヤ先輩は不思議そうにこちらを見た。

 

「その、もしかして見ました?(・・・・・)

「─────あー」

 

─────図星の反応だ。

 

というのも、今日の最後の体育の時間、思っていたよりも汗をかいた私は制汗シートで汗を拭く際、そのままブラを付け忘れてしまったのだ。

 

そして、ジンヤ先輩はそんな状態で下から私の上着を覗き込んだわけで。そしたらたまたま見えて(・・・)しまって、それに興奮して鼻血を出したのではないか、と思ったのだ。

 

まさかとは思っていたが、今のジンヤ先輩の反応を見るに確定でいいだろう。そしてその事実に、顔がかぁっと熱くなるのがわかった。

 

「そのぉ、わりぃ、このお礼、いや、謝罪はまた今度、な?」

「そう、ですね。そうしてください」

「……え、なに?なんすかふたりして」

 

話についていけないイチカ先輩は頬をつねっていた手を緩めてあれれと首を傾げるが、ジンヤ先輩は心底気まずそうに目を逸らした。

 

「もー、なんなんすかいったい」

「いや、なんでもないよな、マシロちゃん!」

「はい、私とジンヤ先輩の秘密です」

「ほんと、なんなんすか急に……」

 

そっと、胸に手を置いてみる。恐らく真っ赤であろう顔と一緒に、心臓が信じられないほど早く、うるさいくらいに高鳴っている。

 

そして、理解した。私は今、胸を見られて恥ずかしくて堪らないんだと。

 

「やっぱり」

「ん?」

「責任、取ってもらうのもいいかもしれませんね」

「うげっ!?」

「ちょ、何があったんすか……っ!?」

 

慌てる先輩ふたりを見て、私はひとり笑った。いつもなら狙撃時にうっとおしいこの鼓動を今は少しだけ、心地よく思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、俺とマシロこっちだから。じゃあな」

「では、失礼します」

「2人とも、気をつけてかえるっすよ〜」

 

送り狼にならないように、と言えばジンヤはそんなことするかと笑い飛ばす。そして、2人が並んで歩くその後ろ姿に、わたしは気が狂いそうになった(・・・・・・・・・・・・・・)

 

何時からだろうか、彼が他の女子生徒と絡んでいると、最近はなりを潜めていたこの“凶暴性”が、どうしようもなく抑えられなくなりそうな時がある。

 

これまで持てなかった趣味も、こうしてジンヤと出かける度に増えていったし、ギターだってジンヤが褒めてくれたから、ずっと続けていられる。

 

これといってなかった目標も、理想も、信念だって。悩んでいた1年の頃に親身になってくれたジンヤがいたお陰で、今なお何とかなっている。

 

なら、なにが私の中に“何か”をここまで掻き乱すのか。そう考えた時、ひとつの存在に思い至る。

 

─────放課後スイーツ部。

 

1年生達で結成された部活で、正義実現委員会から高山ジンヤを奪った存在(・・・・・・・・・・・・・)

 

彼女たちがいなければ、今だってジンヤは私と一緒に肩を並べて─────。

 

そこまで考えて、久しぶりに自己機悪に陥る。ジンヤが絡むといつもそうだ。本当に腹が立つ。

 

離れていく2人の背中に背を向けて、私も歩き出す。正面に見えるカーブミラーには、妖しく光る瞳の私が写っていた。

 

 

 

 

 





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