トリニティ・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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謎の2話目投稿かも。あと今回もヤバめかも。


セリナと○○○

 

 

「─────何をやっているんですか、まったくもう……」

「はい、ごめんなさぁい」

「……本当に思ってる……?」

「飯食う時どうしよかなって思ってる」

「……はぁ…………」

「ちょ、そんな深刻そうにため息つかないでよ」

 

呆れたと言わんばかりにため息をつくのは同級生の鷲見セリナ。桃色の髪とひと房垂れたササミ(・・・)が特徴的な女の子で、救護騎士団というトリニティ自治区の医療全般を担う組織に所属する主力のひとり。

 

ジトリ、と後片付けをしていたセリナがこちらを見やる。

 

「今、何か変なこと考えなかった」

「いや、晩飯はササミでも食うかなぁって」

「まだ言ってたの!?」

 

サッと左側にゆったサイドテールを退け、その下から覗く大きな羽毛を見せつけるように持ち上げて。

 

「ほら、立派な羽毛ですから、もうささみって呼ばないでっ」

「ほうほう、どれどれ〜」

 

立ち上がってセリナの前に移動し、少し前かがみになってセリナの顔を左側から覗き込むようにする。そして右手でその羽毛を撫でようとして─────。

 

「あだ、あだだだっ」

「あーほら、変なことするから」

「んな事言ったってさぁ……。あだだっ」

 

指を動かした途端にズキズキと痛み出した右手。そしてそれを押さえようとして動かした左手まで痛み、思わず情けない声が漏れてしまう。

 

「くっそ、イッテぇなぁ」

「なんで動かさないでくださいって言ってるのに、余計なことしようとするの?」

「セリにゃん、照れるかなって」

「気持ち悪い、それ」

 

再びため息を着くセリナ。ようやく痛みの収まった両手を手術前のドクターのように掲げた。

 

「……ほんと、どこのだれが教室に投げ込まれた手榴弾を両手で迎えに行くの」

 

彼女の言う通り、俺の両手の怪我は教室に投げ込まれた手榴弾によるものだった。

 

さっきイチカから連絡はあったが、なんでも過去の俺に恨みのあったスケバンによる犯行だったということと、製品自体は合法でコンビニ(エンジェル24等)でも買える市販品だが、異常に火薬を詰め込んだ改造爆弾だったらしい。

 

窓ガラスを割って飛び込んできたそれを俺は反射的に手に取り、その爆発を手のひらと誰もいない方向に向けて受けた結果、破片と爆発で手のひらがズタボロになってしまったのである。

 

「だってさ、だれか受け止めないと危ないじゃん?主に俺の命が」

「う〜ん」

 

確かに、いくら改造されているとはいえ手榴弾で誰かが死亡するなんて事はありえない(・・・・・・・・・・・・・・)のだが、もし万が一にもその爆発で誰かの素肌が晒されたりしてみろ。

 

─────その時は俺がクラスメイトに殺される。

 

「勘弁だぜ。確かに、かわいい女の子のえっちなとこは見たいけどよぉ」

「ばかっ」

「だっはっはっ……っ」

 

控えめにとはいえ、脛を小突かれ、それを手で迎えに行こうとして更に痛み、つい喘いでしまう。

 

「……その様子だと、私生活にも難あり、って感じするなぁ」

「お、おう、結構きちいかも」

「うーん。ちょっとまってて」

 

そういうと、セリナはスマホを取りだしてどこかへ電話をかけ始める。数コールして出たその声は、俺にも聞き覚えのある人物だった。

 

「お疲れ様ですセリナです」

『お疲れ様です。どうしましたかセリナ。彼の“救護”に何か問題でも?』

「いえ、そういう訳ではないのですが、彼。ちょっと両手の負傷の関係で私生活が厳しい様子なんです。それで……」

『……そういう事ですか。えぇ、そういうことなら彼の事を優先してください』

「ありがとうございます。それでは、失礼します」

『しっかり助けてあげてくださいね、彼のこと。では、また明日』

 

 

30秒ほどの通話を終え、何も言わずにそそくさと自分のカバンと俺のかばんを手にしたセリナが振り返って。

 

「それじゃ、ジンヤくんの家に帰ろっか」

「………………は?」

 

笑顔でそういった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや」

「もう、諦めてって」

 

あれから、家で介抱をすると言って聞かないセリナと共にスーパーによって惣菜を買った俺たちは、1度セリナの家によって着替えを確保して俺の家に帰宅し、朝のうちに炊いてあった米と惣菜で晩飯を済ませた。

 

─────いや、済ませたと言ってもほとんどセリナに食べさせてもらった訳だが。

 

慣れてますから、で押し切ろうとするセリナに大人しくご飯を食べさせてもらう俺、なんてまぁそんな恥ずかしい話はともかく。俺は今、それよりも恐ろしい事態に直面していた。

 

それは─────。

 

「風呂は流石にダメだろ……っ!」

「ダメ、私が洗うから……っ!」

 

俺のお風呂、どうするか問題である。

 

というのも、現在俺は両手が使えない状態にある。一応ビニール袋で保護さえすれば入れなくはないだろうが、それでも身体を洗おうと思うとかなり厳しいだろう。

 

そこでここぞとばかりに手を上げるのはセリナだ。まさかの水着を持ってきているという理由から俺は身体を洗われそうになっている。

 

食事を食べさせられるのはまぁいい。過去にもやったことはある。だが、風呂はダメだ。たぶんそれは、超えてはいけない一線だ。

 

だが、流石に風呂に入らないという選択肢は年頃の女子に囲まれる俺にとって絶対に選択できないものであって。

 

「くそっ……お願い、します」

「任されました」

 

俺は両手にビニール袋を巻いたまま、頭を垂れることしか出来なかった。

 

だがセリナは、そこでさらに追い打ちをかけてきた。

 

「それじゃ、脱がすね」

 

ひとつ、またひとつ、ワイシャツのボタンが外されていき、そして。

 

「はい、しゃがんでばんざーい」

「……ばんざーい」

 

するり、とシャツが剥ぎ取られた。そしてその勢いのまま肌着まで脱がされ、あっという間に上裸へ。そして─────。

 

「はい立って。次はズボンを……」

「いや、それはダメだろ」

「わがまま言わないのー」

「いや、わがままとかじゃなくてぇ。いやちょ、ほんと、やめっ」

 

カチャカチャとベルトを外し始めたセリナに待ったをかける。だが、両手の使えない俺はその強行を止めることはできない。更にセリナはなんて事ない顔でベルトを解放してボタンとチャックを解放し、俺のズボンをずりおろした。

 

「きゃー!」

「変な声あげないの。はいじゃあパンツさげるよー」

「いや本気!?本気で下げる気!?俺のリトルジンヤくんがオープンフェイスだぜ!?」

 

するとセリナはキョトンとした顔でこちらを見上げ。

 

「─────もう何回も見てるから」

「……え?」

「それに、医療行為だから恥ずかしくな─────」

「まっていつの間に見たんだよぉ!?」

 

しばらくの無言。そして、セリナがパンツの両サイドに手をかけて。

 

「そんなこと気にしないのー」

「いや気にするしっ、普通に脱がせやがったなぁ!?」

 

ズボンとパンツから足を出すためにしゃがんだセリナ。頭の真横にリトルジンヤくんがこんにちはしているとは思えない冷静さだ。これが女子高生の落ち着きようだろうか。なんだか妙な気持ちになるより、緊張して力が入らなくなってきた。

 

ここまで来たら仕方がないとズボンとパンツを足から外し、その勢いで靴下まで剥ぎ取られる。その度にリトルジンヤくんが左右に揺れた。ときおりくすぐるセリナの髪の毛がこそばゆい。

 

そこまで終わって初めてしゃがんでいたセリナが立ち上がり、彼女の頭がリトルジンヤくんから離れる。こんなシチュエーションだと言うのに、緊張からかリトルジンヤくんは一向に立ち上がらなかった。流石、紳士だ。リトルジンヤくん。

 

「それじゃあ、私も脱ぐね」

「はぁい先風呂入ってまぁす!そのまま10分くらいかけてぬいでていいから、うん!」

「脱ぐだけだし、そんなにかかんないよ?」

「水着着てねっ」

 

肘で浴室の扉を開けて飛び込み、再び肘で閉める。

 

普段なら頭も身体も洗うところだが、俺はそのままの体で湯船に飛び込んだ。熱々のお湯が心地いい。

 

いっそのこのまま、セリナが入ってこなければ。そんな俺の儚い望みは、呆気なく砕かれた。

 

「それじゃ。はいるね」

「おぅ─────」

 

そっとそちらを見て、愕然とした。セリナは、裸のままで入ってきたのだ。

 

声にならない声が漏れ出る。顔も一気に熱くなる。直ぐに目をそらさないといけないはずなのに、視線はピタリと吸い寄せられる。

 

いつもサイドテールになっている髪はすらりと下ろされ、そこそこ大きな胸とキュッとしまったクビレが─────。

 

「そんなに見られると、流石に恥ずかしいって……」

「ごめん」

 

声がカスカスだ。なんとか目を背けるも、今度は彼女の体を洗う音に思わず生唾を飲む。

 

「ジンヤくん、いっつも身体洗わずに湯船に浸かるの?」

「いっいやぁ。今日はそういう気分だっただけだぞぉ」

「ふーん。いきなり湯船に浸かるのは体に悪いってことだけ言っとくね」

 

そのあともシャンプーとリンスの話だったり、体を洗う時は手で優しく洗ったりなんて話をなんとか受け答えていると、ついに地獄の瞬間がやってきた。

 

「じゃあ、次ジンヤくん洗おっか」

「……はい、おねしゃす」

 

ザパリと湯船から体を起こし、極力セリナを見ないようにして風呂椅子に腰掛ける。

 

「じゃあ、頭からいくよー。少し上向いてね」

「はい……」

 

固く目を瞑っているとシャワーでお湯が通され、細い指が髪の間を通っていく。それが流されて、続けてリンス。準備がいいというかなんというか、用意してくれていたハンドタオルで頭と顔の水気を優しく拭き取ってくれる。

 

「じゃあ、次は身体ね。洗うのは、これでいい?」

「はい……そのボディタオルでおねしゃす……」

 

しとり、と肩に手を置かれ、やがて泡立てたボディタオルで身体をゴシゴシと洗われる。非常に変な気分だ。

 

「じゃあ背中洗ったから、次は前を─────」

「流石にそこは頑張りまぁす!」

 

痛む手を無視してセリナからボディタオルを奪い取り、その勢いで体の全面からリトルジンヤくんにかけてを擦り上げる。

 

「……もう、無茶しちゃって」

「誰が同級生に体の前洗われて冷静でいられんだよ……っ!」

「気にしなくていいのに」

「するっての!」

 

太ももの上に投げ捨てたボディタオルを手にしたセリナがふふっと笑うと、シャワーで泡を流してくれる。そして流し終わると同時に、俺は浴室から出ようとした。だが。

 

「だーめ。しっかり暖まろ?」

「─────」

 

手を引かれ、そのまま振り返る。何度見ても裸んぼのままのセリナは、そっと俺の二の腕を掴んで引いていて。

 

「はい、浸かります」

「よろしく」

 

俺は、固く目を結び、再び湯船へと身を沈めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────暖かいなぁ。

 

湯船もそうだが、私の背中から感じる()もまた、私の身体を温めていた。

 

高山ジンヤ。1年生の頃からのクラスメイトで、大切なともだち。私たちの出会いは、思い返せばかなり変だったと思う。

 

彼と出会ったのは、彼が“正義実現委員会”のエースとして活躍していた頃。クラスにいるすごい人、くらいのイメージしかなかった私は、ある日救護騎士団の関係で彼の治療にあたった。

 

そこで彼は1言目、こんなことを言ってきた。

 

『あー、とっとと治療頼むわ。俺、ちょっと寝るから』

 

信じられなかった。確かに怪我と言っても膝周りの擦り傷ぐらいなものだったとはいえ、そんなに軽く頼むものかと。

 

そこで興味を持った私は、彼について色々と調べて回った。そしてわかったのは、彼は同期を助けるために24時間どんな修羅場にも飛び込んでいくということだった。

 

それからも彼の生傷は絶えることなく、ついに私は彼の専属スタッフとして着くことになった。

 

その頃くらいだろうか、私のことをササミ(・・・)だなんて呼んでいたのは。

 

だがそんな彼はある日、正体不明の武装集団との交戦(・・・・・・・・・・・・・)によって瀕死の重症に陥ったのだ。

 

未だに犯人は不明だが、全身に銃創と切り傷、爆発による火傷を負った彼は、あの日、トリニティ郊外の路地裏で発見された。

 

今、身体を洗った時だって、あの時に着いたキズが山のように残っているのだ。

 

─────そっと、一緒に湯船に浸かる彼に、背中を預けてみる。

 

ビクリ、と大きく震えた彼の反応に少し顔が赤くなる。ここまでは医療行為だと割り切っていたし、実際、これまでの治療の過程で彼の体は全身目を通している。

 

とはいえ、よく良く考えれば私は水着を持ってきておいて何故裸で入ってしまったのだろうか。途端に恥ずかしくなってきた。

 

「……セリナ、ありがとな」

「ん……?」

「今日だけじゃなくて、今までも」

 

身を捩って彼を見ると、こちらを見ないようにするためか、顔は天井を向いたままだった。

 

今までも、だなんて珍しいことい言うなぁと笑ってしまう。そんな今生の別れみたいな挨拶を。とは思うがそれもそうだ。もう、彼も怪我をすることはほとんどないのだろうから。

 

彼はその一件以降、復学して知り合った後輩の女の子たちと一緒に平和な部活へと転部したのだ。放課後スイーツ部という、戦いとは無縁であろう部活へ。

 

そんな彼女たちが、今の穏やかな彼を作ったのだと思うと、私の中に何か黒いものが生まれて。

 

─────ぽたりと落ちてきた天井の雫は、私にはやけに冷たく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






高評価とか高評価とか高評価とか貰えるとモチベ上がるかも。

あとタイトルはレッドにならないかも。
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