トリニティ・ピンクアーカイブ   作:オサシミの化身

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めっちゃ伸びててアリガタヤ。もっと評価を、評価をぉ!


レイサと友達と○○○

 

休日の昼下がり。部活も友達もペロロ関係も、珍しくなんの予定もなかった俺はいつものラーメン屋でラーメンとチャーハンを食い、火照った体を冷ますように少し大きな公園を散歩していた。

 

風で揺れる草木のざわめきに小鳥の囀り、噴水の水音にキャッキャと騒ぐ子供たちの声。いつも通りゆったりとした穏やかな雰囲気に、パトロールをしていたであろう正実の顔見知りとあいさつを交わしつつ、大きなあくびをひとつふたつ。

 

この公園はトリニティ、もしくはキヴォトスにおいてもいちばん平和な公園なんじゃないだろうか。そう思わされるほどに何も起こらず、いつ来ても銃声どころか銃痕ひとつ見当たらない景色と心安らぐ時間を提供してくれる。

 

微かにそよぐ風が頬を撫でる。少し先にあるベンチ。木陰と丁度よさそうな木漏れ日で気持ちがよさそうだ。お腹もいっぱいになったことだし、昼寝でもしよう。そう思い立った俺はベンチへと足を進める。

 

─────しかし。

 

「あー!」

 

遠くから響く大声が鼓膜を叩く。聞き馴染みしかない、ハツラツとした声だ。

 

あまりに大きなその声に子供たちを見て談笑していた主婦からの視線が集まる。相変わらずだな。そう肩を竦めつつ、声の主のほうへと振り返る。

 

ドタドタと続く駆け足の音、自身の後方にはやはり奴がいた(・・・・)

 

「ジーンーヤーさーん!」

「おぉ、レイサちゃんじゃん」

 

みるみるうちに距離を詰める彼女に、腰を落としてがばりて両手を開いてみせる。するとただでさえ眩しいほどの笑顔だった顔をさらにぱぁっとほころばせ、その勢いのままに俺の胸へと飛び込んできた。

 

「ジンヤさーん!」

「レイサぁ!」

 

みしり、と骨の軋む音と共に、俺の身体はレイサを抱えたまま勢いよく宙を舞い、そして落ちる。

 

─────青と紫のツインテールを振り回す小柄な人物、宇沢レイサ。トリニティの非公認組織、“自警団”のひとりにして、俺の妹分である。

 

「いやぁ、まさかレイサと会えるとはな」

「私もジンヤさんに会えるなんて思いませんでした!お久しぶりです!」

「久しぶりだなぁ。よーしよしよしよしよしよしよし」

「ん〜ふふふふふふふふふふふ」

 

じんわりと熱を持つ背中の痛みを顔に出さないよう堪えつつ、腹の上に跨って無邪気に笑うレイサの頭をガシガシと撫でてやる。

 

するときゃーだなんてらしくないチョケたような声を上げながら俺の手に合わせて頭をあっちへこっちへ振り回す。相変わらず大型犬みたいなやつだ。

 

「んふふ〜。ジンヤさん、撫ですぎですよぉ」

「なーにを、そんなヘニャヘニャ顔で言ったって説得力ねぇっての」

「やーめーてーくーだーさーいー」

 

うりうり、うへへ。うりうり、うへへ。数週間ぶりにやるいつものこれに俺も段々と楽しくなる。そして口元を緩めたレイサからは当然のようにヨダレが垂れはじめ、それが頭を揺らした拍子に俺の顔へと降り注いできて。

 

「─────ぶっ、ヨダレ口ん中入ったんだけど!きったなっ!?」

「き、汚くないですよ!?ほら、歯だって毎日磨いてますし、それにっ」

「うっせぇ、だらしなく口開けてはぁはぁ言いやがって、女の子としてはずかしくないのっ」

「どういう流れでそうなるんですかぁ!」

「虫歯うつんだろ……。言わせんなよ恥ずかしい」

「虫歯なんてありませんがっ!?ほら、見てくださいよぉ!」

「……んむ、綺麗な歯並び。100点!」

「いやったぁ!」

「まぁいいや、そろそろ……。よいせっ」

 

流石にそろそら周囲の目と小石がめり込む背中が辛くなってきた。頭を降った拍子に口へと飛び込んできたレイサのヨダレを吐き出し、彼女の脇の下へと手を入れてもちあげてそのまま立ち上がる。鍛え上げた体幹のなせる技である。

 

「っと」

「……ぁ」

「なんだレイサ」

「あっ、その手、手が、当たって……」

「ん、何に?脇だろ今さら気にすんなよっ」

「……イエ、ナンデモデス」

 

恥ずかしかったのか、脇に入った俺の手をキュッと締め上げたレイサが両手をわなわなと震わせ、顔を真っ赤にする。さすがに恥ずかしかったのだろうか。

 

珍しいこともあるなと不思議に思って首を傾げる。そこでふと、レイサの駆け寄ってきた方向に2人の女子が立っていることに気がついた。

 

「あの、あの(・・)高山先輩、ですよね……?」

「そうだけど……」

 

ベージュツインテ女子が不思議そうに、そしてどこか不安そうにこちらを見上げていた。

 

「レイサとどういう関係なんですか?」

「どうって言うと」

 

黒髪ポニテ女子もまた、少しだけ眉間に皺を寄せている。2人の顔からありありと伝わる“警戒”と“不安”に、思わず俺とレイサは目を見合わせる。

 

「レイサは中等部の頃から知っててな。妹みたいなもんだ」

「えぇ、ジンヤさんが正実にいたころにいろいろありまして、その時から妹分としてお世話になってます!」

「正実……」

「妹分……?」

 

レイサに負けないくらいのイケメンスマイルを意識してやると、ふたりは毒気を抜かれたようにキョトンとした顔をして。

 

「─────もしかして、高山ジンヤってやばい人じゃないのか……?」

「─────チャラ男のヤリ○ンカスじゃ、ない……?」

「俺をなんだと思ってるのよ。特にそっちの子!」

「しょっちゅう奇行に走るヤバい人」

「たまにですよ」

「たまにでもねーよ。俺の事なんだと思ってんだレイサ」

「女ったらしでトリニティの2年全員平らげたのに今度は1年でハーレム作ったヤリ○ン」

「たしかに女ったらしですけど、ジンヤさんはそんなふしだらなことしてません!」

「……レイサ、おまえ俺の味方だよな」

「……いえ?」

「なんでだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、そうだったんですね」

「あたしたち、すっかり勘違いしてました……」

 

向かい合うように設置された2対のベンチにそれぞれ2人ずつ別れて座り、キッチンカーで先輩が買ってくれたアイスクリームを口に運ぶ。

 

ここに着くまでとアイスクリームを買う間の会話で、ふたりはジンヤさんの()が誇張されたものだと理解し、すこし申し訳なさげにジェラートを口に運んでいる。

 

それに対してジンヤさんは─────。

 

「いや、いいんだ……。うん……」

「すっごい凹んでる!?」

「うそっ、ごめんなさい先輩っ」

「気にすんなよ……」

 

目に見えて落ち込んでいることがはっきりとわかる様相だった。グレープアンドソーダのカラフルなアイスクリームを、肩を落として目を伏せたまま、ちびちびとすくって食べている。

 

そんなジンヤさんだが、そう噂されても仕方ない部分はある。それも、私でもわかるくらいに。

 

─────あの時だって、ピンチだった私のことを助けてくれて、ボロボロになった私を胸の中に抱き上げて、頬の煤を拭いとりながら真剣な目で私のことを─────。

 

「─────って、レイサはなんで真っ赤になってんの?」

「ホントだぁ」

「うぇぇっ!?」

 

その言葉にぼんやりとしていた意識が覚醒する。どうやらしばらく考え込んでいたようで、ジンヤさんもケロりとした顔で溶け始めた私のアイスクリームを食べていて。

 

顔に集まる熱を誤魔化すように、私はジンヤさん目掛けて吠えた。

 

「なんで私のアイス食べるんですかぁ!」

「美味いなそれ」

「答えになってません!」

「もーひとくちくれ」

「自分の食べてくださいよぉ」

「お前のも気になんだよ」

 

あっちのは食べたし。そう言ってけらけらと笑うジンヤさんの目線の先には、それぞれメロン味とチョコレートのアイスクリームを手に、恥ずかしそうにしている2人の姿があって。

 

「まぁ、あげたけどさ、うん……」

「ちょっと、恥ずかしいなぁ……。あははっ」

「なんで私をほおってふたりとイチャついてるんですか!?」

「おっと、急に修羅場つくんのか。やめてくれ」

 

落ち込んでいたのが嘘のように彼はけらけらと笑って再び私のアイスクリームから1口分を取っていき、ぱくりとそれを食べてしまう。

 

それに対抗するように、私もスプーンをジンヤさんのアイスクリームへと突き刺した。

 

「……やる気か?」

「じょーとーですっ」

 

掬いとった大盛りを口に含み、ニヒルに笑うジンヤさんを見上げて笑い返す。

 

その直後、お互いに加減しながらではあるが、肩と肩とをぶつけ合いながらそれぞれ届かないようにピンと伸ばした腕の先にあるアイスクリームを狙う。

 

私は肩から外れて先輩の膝の上に上体を被せ、無駄に長い手の先にあるアイスクリームを狙うが、その間にも私のアイスクリームはジンヤさんに易々と食べ進められていく。

 

だが、あと少しで手が届く。その瞬間、私の背中に何かがのしかかり、身体が重みと膝に挟み込まれて身動きを封じられてしまう。

 

「ジンヤぁ、サンドイッチっ!」

「くっ、くぅぅぅっ!卑怯ですよっ」

「卑怯で結構コケコッコー!」

「ぬぅぅぅぅっ、ぉぉぉぉぉおおおっ!」

 

変わった匂いのするズボンに顔を押し付けられ、一方的にアイスクリームを奪われるこの状況を打開すべく、うねうねと身体を揺らしてみる。

 

背中の上に乗ったジンヤさんは私の身動ぎ程度では少しも気にかける様子もなく、むしろ私の背中に顔を埋め、音を立てて息を吸い。

 

「なんかレイサからいい匂いする。でもやっぱ汗の匂いもする。昔っから変わんねぇなぁ」

「嗅がないでくださいよぉ!へんたいっ!」

「すぅー、ふぅー」

「んんー、背中が生暖かくて気持ち悪いぃ」

 

ちょうどホック(・・・)の少し下の当たりに感じるなんとも言えない生暖かさに身震いしていると、ふと対面に座る2人の顔が目に入って。

 

「なんか、その、仲、よさそうだね」

「す、すごいスキンシップだねっ」

 

一気に顔が暑くなるのがわかる。それと同時に、声を上げて笑うジンヤ先輩が身体を起こしたことでようやく私は開放された。

 

それに意外なことに、私のアイスクリームは全く減っていなくて。

 

「食べて、ない?」

「そりゃそうでしょ」

 

ふたりが手を打って笑う。何故かと首を傾げていると、にんまりと笑って話し出した。

 

「だって、レイサと先輩、同じ味頼んでるのにお互いのやつ食べる意味ないじゃんか」

「─────あっ」

 

膝の上から上体を起こし、勢いよくジンヤさんを見る。手にもつアイスクリームをスプーンでかき混ぜながらニマニマと笑っていた。

 

「いやぁ、少し溶かしてやろうかと思ってな(・・・・・・・・・・・・・)

「え……?」

「お前、緊張してたろ」

 

─────バレていた。そんな思いが胸を占める。

 

当たり前だ。私が緊張しないはずがない。気心知れたジンヤさん相手とはいえ、“友達”と“先輩”に挟まれるのは、初めての経験な上にどうにも居心地が悪かった。

 

そんな私の内心を、ジンヤさんは見透かしていて、そのうえで─────。

 

「─────ジンヤさん……っ!」

「まぁ、ただ久しぶりのレイサで遊びたかっただけなんだけどな」

「─────はぁ…………」

「なんでため息つくんだよ」

 

結局いつも通りの先輩だったようだ。微かに感じた私の胸のときめきはなんだったのだろうか。

 

それにしても、とコーンにかぶりつくジンヤさんはニヤニヤと笑い、向こう2人の顔を交互に見やる。

 

「俺は嬉しいぞ、レイサの友達が見れるなんて」

「……な、何を言い出すんですか」

「えー、そうなんですか?」

「おう、こいつ昔っから仲良いのは俺とカズサ……、古い付き合いのやつくらいだからな」

「なんでそういうこと言うんですか?」

「たしかにそんな感じする〜」

「わかるかも」

「ふたりともっ!?」

 

うんうんと頷くふたりに、ジンヤさんは満足気に何度かうなづいて。

 

「んじゃ、友達からみたレイサについて教えてくれよ」

「いいよ、色々と話せることあるし」

「なら、私たちは先輩からみたレイサちゃんについて教えて欲しいなぁ」

「おう、まかせとけっ」

 

─────そこから先、私は恥ずかしさのあまりずっと顔を伏せていた。

 

─────ただ、私の髪が綺麗だ、と呟いたジンヤさんの言葉だけは、どうしてか耳から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「杏山カズサ!」

「……何。うっさいんだけど」

「実は私、この間の休日に友達と、ジンヤさんとアイスを食べに行きました!」

「……はぁ?なんの報告?」

「そこでグレープ味とソーダ味のふたつが混ざったカラフルなアイスを奢って貰いまして」

「べつに、奢りとかジンヤならやるじゃん。なに、そんなことでマウント?」

「それがですね、─────このアイス、レイサの髪みたいで綺麗だな。って頭を撫でながら褒めてくれたんです!」

「─────はっ」

「かわいい色合いだなって、俺は好きなんだよなって。……えへへっ」

「─────だから、なに」

「それだけです!友達を待たせていますのでっ。では!」

 

宇沢の背中がどんどんと遠くなっていく。よほど気分がいいのだろう。スキップなんてしちゃって。

 

「─────まずはジンヤから締める」

 

その次はアイツだ。そう心に決めた私はジンヤのいる教室に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 






この作品の評価が赤でいっぱいになったら、ゲヘナピンクも投稿するんだ♪

というわけで投稿ペース決めてくかも。

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