「いたた……一体何が……?」
確か……幻想郷に流れ着いた物を調べていたら、急に歪む感覚がして……それでその歪みに吸い込まれたんでしたっけ…?
「……ここどこですかね…?」
どこかの廊下のようですが……全く見覚えがありません。
はぁ…何かとんでもない面倒事に巻き込まれた気が……
ネタになれば良いんですけどねぇ…
「!?」
突如校舎内に警報音が響き渡り、廊下の奥から何人かの足音が近づいてきます。
「……何かやっちゃいましたかね…」
面倒極まりない……
逃げようと思えば逃げられますが……今は情報が欲しいですからねぇ。
「ん、動かないで!動いたら撃つから。」
出会い頭に銃口を向けてくるとは非常識ですね。
彼女の来た方からあと三人……
……後ろからも一人来ていますね。
こちらのほうが警戒したほうが良さそうだ。
「シロコちゃん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫、この人が原因みたい。」
「あ、貴方は誰ですか?!どうやってここまで……」
「誤解されてるみたいですが、私は別に貴方達に害意を持ってるわけではないですよ。」
高い敵意を向けてくる子供達に弁明はしておく。
実際何もする気はないですし。
「それを簡単に信じられる程の余裕は、今の私達には無いんだよね〜。」
酷く冷たい言葉が聞こえ、背後に銃口が突きつけられる。
警戒していたつもりですが…想像以上に厄介ですね。
この距離で撃たれたら……流石に避けられませんね。
「それは困りましたねぇ……」
「で、どうしたら信じていただけます?」
「まず、貴方は誰?ここに何の目的で来たの?」
「私は射命丸文…目的と言われましても気づいたらここに居たとしか。」
「ふざけないで!まさかお前もアイツらの仲間…!?」
アイツら、ですか。
察するに彼女達を利用する悪い集団ですかね。
そんなもの、私にとってはどうでもいいんですが。
“みんな、一旦落ち着いて。”
奥から男性の声が聞こえます。
彼女達の指揮者のような人ですかね。
少しは話が通じそうな人が来て、安心すべきか……
「先生、どうしますか?」
“私が話を聞いてみるよ。皆は一度銃口を下ろしてあげて。”
「分かった。でも、怪しい事をしたらすぐ撃つから。」
「うへ〜、先生が言うなら一旦下がろうか。」
彼の言葉で二人とも銃口を下げた…特に背後にいたものに関しては雰囲気も変わりましたね。
…ですが、どうやら彼もそこまでは信頼されていない。
まだ交流が浅いのかもしれませんね。
“お待たせ、いくつか聞きたい事があるんだけどいいかな?”
「ええ構いませんよ。迷惑をかけているのはこちらのようですから。」
“(話が通じないというわけではないのか、そうなると彼女はなぜここに…?)”
“君はどうしてここに?”
「先程も言いましたが気づいたらここにいた。ただそれだけですし、ここに来てどうこう……何て気はありません。」
“そうなんだ。ならいいんだけどね。”
“……実は今ここの学校の生徒が一人誘拐されていてね、そのせいで皆、丁度良くここに現れた君を怪しんでしまっているんだ。”
なるほど、それなら出会い頭に銃口は納得できますね……
さて、そうなると私は幻想郷でも、外の世界でもない世界に迷い込んだわけですか……
流石の外の世界も、ここまで銃社会にはなっていないでしょうから。
幻想郷とも外の世界とも違う世界……とても興味深いですね。
「そちらの状況はわかりました。ですが、私も無用な争いは避けたいので、もう少し敵意を抑えて頂きたいですね。」
そう言うと生徒達の方は余計に睨んできます。
それをやめてほしいと言っているんですがねぇ…
“不快な思いをさせたかな?”
「いえ、そういうわけではありません。」
「ただ気を張り詰め続けていれば、疲れるのはそちらでしょう?」
“はは……そうだね。”
“……もう一つ聞きたいんだけど、これから君はどうするのかな?”
「…どうしましょうか……?」
帰る手段もありませんし、生憎持ち合わせのお金もありませんし。
“もしかして行く当てがないの?”
「まぁ……そうですね。この世界のことは何も知りませんから。」
“やっぱり君も外から来たんだ。”
「外…まぁそうなりますかね。」
彼の言う外が幻想郷の外と同じなのかは分かりませんが、どうやらこの人も外から来たようですね。
“もしよかったら私達に協力してくれないかな?”
「せ、先生本気ですか!?こんな怪しい人と…!」
生徒さん達の方が困惑してるじゃないですか…まぁ気持ちは分かりますよ。
ですが別に互いにとって悪い訳ではなさそうですね。
「協力…ですか。なるほど、貴方達からすれば怪しい私を監視下に置けるし、私からすれば少なくともこの地で野垂れ死ぬことはない……」
「いいですよ。ただ、住む場所の保障をしていただけるならですが。」
“そのぐらいなら何とかするよ。”
「……私が言うのも何ですが、お人好しすぎませんか?いつかその身を滅ぼすことになっても知りませんよ。」
“私に出来ることはこのぐらいだからね。”
“アヤネ、この校舎の空き教室を彼女に貸し出すことはできる?”
「で、できますけど……本当に大丈夫なんですか…?」
“大丈夫かどうかはまだ分からないけど、怪しい存在なら近くに置いて監視したほうがいいでしょ?”
“それに彼女にもヘイローがない。私と同じような存在かもしれないからね。”
頭上の光輪はヘイローと言うんですか。
ですがこれが何の役割を果たすのかは分かりませんね。
「先生と同じ……?」
“つまり、銃弾一発でも致命傷になり得るってこと。”
…つまり、ここの住民は銃弾を受けても平気なんですか?
流石の妖怪でもそんな強度してませんよ……
「そういう事ですか……貸し出すって事はしばらく校舎に住む事になるんですよね……どうしますか、ホシノ先輩…?」
「そうだね、おじさんは別にいいと思うよ。」
「今その人を見逃して、後から犯人でした…なんて言うのが一番面倒だからね〜。」
(……それにこの人、私よりも強い。怪しいけど敵になるよりはマシだね。)
「私もそれでいいと思う、それにこの人数ならいつでも制圧できる。」
「私もいいと思いますよ〜。」
「皆さんがそう言うなら……」
“一応聞くけど、君もここに住むってことでいいかな?”
「文でいいですよ。あと住む場所は最悪雨風さえ凌げればいいので。」
「それだけでいいの?」
「風はともかく、アビドスは雨振らないんだけどね〜」
「雨が降らない…?」
「アビドスは砂漠地帯ですから……その代わり砂の方が大変です。」
「あぁなるほど……それは大変ですね。」
「ここに住むんですから、これから砂の掃除も手伝ってもらいますからね。」
「もちろん、住まわせてもらうんですから手伝える事はやりますよ。」
「ん、意外と真面目。」
「ちょっと意外です……」
「……いくら何でも失礼ですよ?」
“あはは……とりあえず文の事は一段落かな。”
「そうだね〜それじゃ次はセリカちゃんを取り返しに行こっか!」
“そうだね!文もくる?”
「さっきの誘拐された生徒のことですか、もう場所は分かってるんですね。」
“あはは……まあね……”
「こっそり連邦生徒会の権限を使って調べたんだよね〜、バレたら始末書物だね、先生。」
それ本当は駄目なやつでは……
いや状況が状況だから仕方ないか……。
「そうですねぇ……一人ですることもないですし、面白そうなので私も行きます!」
“よし、じゃあ皆出発!”
先生のその言葉を合図に、全員が車に乗り込みました。
私が最後に見た車よりもだいぶ発展しているみたいです。
恐らくこの世界の技術力は外の世界と同じ……いやそれ以上かもしれませんね。
学校を出て数十分経った頃でしょうか。
「そういえば皆さんの名前聞いてませんでしたね。」
“そういえばそうだったね。一応自己紹介しよっか。”
“私は連邦捜査部シャーレのーーーー。皆からは先生って呼ばれてるよ。”
名前の所だけが聞こえなくなりましたね。
まあ、私も先生と呼べばいいか……
「アビドス高校3年の小鳥遊ホシノだよ。よろしく〜」
言動はふわふわしていますが……もう少しこちらに向ける敵意を抑えてほしいですね。
……いやどちらかといえば敵意というよりは警戒か。
「私は2年の砂狼シロコ、よろしく。」
シロコさんは大人しくて冷静な方、この中では真面目そうな方ですね。
「私は2年の十六夜ノノミと申します♪」
こっちはちゃんとふわふわしてる方ですね。
ただこういう人を怒らせるのが一番怖いんですよねぇ、気をつけなければ……
「アビドス1年の奥空アヤネです。」
あぁ、1年生だったんですね。
一番真面目な方なのでもう少し上かと思ったんですが。
「そして誘拐された子が1年の黒見セリカ、以上5人が対策委員会のメンバー。」
5人…?それに対策委員会とは?
対策というぐらいですからね……今一番の問題に見えるのはこの砂ですかね?
それか誘拐された生徒さんを助ける為に…?いやその方、メンバーの中に入っていましたね
「シロコちゃん、多分よくわかってないと思うよ。」
「完璧に分かってもらうには今のアビドスの状況から説明しないと仕方ない。」
「何か、大きな問題でも?」
「実は今のアビドスは廃校寸前の状況なんです。」
廃校……なるほど、この砂嵐でまともに生活できなそうですし、そうなれば人はいなくなるだけですから。
もしかしたら全校生徒がこの5人しかいない事も考えられますね。
「なるほど、この砂の影響で……もしかして、全校生徒はそのセリカさんを含め、5人だけですか?」
「はい……それに元の原因はこの砂なんですけど、今は違うんです。」
「……?」
今は違う…?
砂が元の原因であることは変わり無さそうですし、そうなると……
「……大方、砂対策に大きな借金をしたって所ですかね。」
「…!文さんの言う通りです……」
「でもアビドスはなぜこんな砂まみれの所に?」
「最初は一部が砂漠化している普通の都市だったんです。でも十数年前から大きな砂嵐が起きて……」
「それでここまで砂漠化したと……」
それでも皆さんがここを離れないのは……この土地への愛着、ですかね。
ですが、借金のことを考えると持ってあと数年になりそうですが。
“凄いね文、理解力がかなり高い……”
「まぁこれでも元の世界で新聞記者をしてましたから。」
「えっ!文さん大人なんですか!?」
大人というか……それどころではないというか……
何と言ったものか。
「ま、まぁ皆さんとさほど変わりませんけどね…!」
全くの嘘ですけど。
妖怪なんて話してより警戒されるよりかはいいですね。
“そっか…てっきりまだ高校生なのかと思ったよ。”
「まぁよく若くは見られますね。でも、それ程気にすることではないですよ。」
「そ、そうでしょうか…?」
「私が例え大人でも今やる事は変わりませんから。」
それに年齢何てただの数字に過ぎないですからね。
私の実年齢なんてとうに数えるの辞めましたよ。
(ん、もしかしてこの人いい人……?)
「そういえばですけど、セリカさんが誘拐されたのは何時ごろなんですか?」
「予想になりますが、昨日の22:00頃になります。」
現時刻は8:00……となると10時間経っているわけですか。
「位置情報は何から特定したんですか?」
「セリカちゃんのスマホからです。」
スマホ…あぁ確かそんな名前の物聞いたことありますね。
「位置情報からだと、セリカちゃんは学校から1時間程の距離にいます。」
セリカさんも結構疲弊していそうですね。
……無事見つかるといいのですが。
もしかすると、スマホなどの荷物だけその場所にあって、セリカさん自体はそこに居ないなんてことも……
いえ、考えるのはやめましょう。
「まもなく着きます!」
“みんな、準備は出来てる?”
「ん、大丈夫。」
「もちろんです!」
「さっさと終わらせちゃおうか〜」
「絶対にセリカちゃんを取り返しましょう。」
皆さんすごいやる気ですね、まぁ当たり前か。
車が停車し、外に出ます。
“それじゃ皆、作戦開始!!”
(……さて)
(この世界、どんな“ネタ”が転がっているのやら!)