相棒はウルトラマンゼロでした 〜学園を守りつつ、お姉ちゃんに勝ちたいあたしの最強育成計画〜   作:あぶくま

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えええええええええっ!佑芽のSTEP3発表!!マジですか!?って感じで大興奮していました。
こちらは緩やかなペースで投稿してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


宿敵、プロデューサー、そして侵略者

 

 花海咲季──この世で一人しかいない、あたしだけのお姉ちゃん。

学業も、運動も常に完璧で、漫画の主人公みたいに多くの人から注目を浴びる自慢の家族だった。

恋愛漫画のヒロインみたいに可愛くて、熱血漫画のヒーローみたいに熱い情熱を持った人。

かわいくて、かっこよくて、あたしの憧れたものを全部持っている。

でも、そんなお姉ちゃんに、あたしは一度たりとも勝てたことはない。

最強で、最悪の、花海佑芽の人生最大の宿敵。

でも、たとえ最強でも、あたしは今度こそお姉ちゃんを追い抜いてみせる。

そう心に誓って、次の勝負の場所まで来た。

お姉ちゃんが選んだ、アイドルの養成学校──初星学園の門を叩いて、あたしは今ここにいる。

 

 

 

 そんなあたしは今、道に迷ったせいで、学園に来るだけで相当時間がかかってしまった。

たまに道端にいる人に道を尋ねて散々走り回り、なんとか学園には到着した。

 入学式の会場は、確か学園の敷地にある講堂だということは覚えている。

門を抜けると、周囲には誰も人が居ない。ということは、もうみんな会場の中にいるかもしれない。

講堂だと思える大きな建物に向かうと、ちょうど建物の前に立っているスーツ姿の人に大声で話しかける。

 

「すいませぇぇぇ~~~~~んっ!」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「あの!入学式って、もう始まっちゃってますか!?」

 

 男性の前で立ち止まって、入学式について尋ねると、落ち着いた雰囲気のする男の人は頷いた。

 

「ええ、もう終わるところです」

 

「うひゃ~、間に合わなかった……入学式当日から大遅刻だ~!」

 

 あたしはその場で頭を抱えた。

間に合うつもりだったのに、思うようにいかず大失敗をしてしまった。

入学式が終わって、あたしと同じ新入生の人達が会場から出てくると思うけど、どうやって合流しよう。

その中には絶対お姉ちゃんもいるし、初日からこのざまじゃ合わせる顔なんてない。

 

「ふむ……見たところ、合流の仕方で悩んでいるといったところでしょうか」

 

「そう!そうなんです!」

 

「では、講堂から出てくる際に、こっそり混ざってしまうというのはいかがでしょう?」

 

「おおっ!それです!ナイスアイデア!」

 

 あたしが感心するようなアイデアを、男の人は考える様子すら見せずに思いついた。

すごい、頭がいいですね!と誉め言葉を返したくなったけど、まず名前を名乗っていないことを思い出して、慌てて自己紹介をする。

 

「申し遅れました!あたし、アイドル科の新入生で花海佑芽っていいます!」

 

「花海佑芽……?」

 

 あたしの名前を聞くと、男の人は突然顎に手を置いて考え始めた。

ただ自己紹介をしただけなのに、そんなに悩むようなことを言ったかな?とこっちまで考えそうになったけど、突然スーツの懐に手を入れて、何かを見せてきた。

 

「失礼しました。はじめまして、私はこういうものです」

 

 あたしに見せたのは、この人の学生証だった。

そこには名前と一緒に、所属する学科が書いていて、プロデューサー科とはっきりと記されている。

 

「おぉ~、プロデューサー科の方だったんですね!」

 

 初星学園にはアイドル科とは別にプロデューサー科があることは知っていたけど、まさか入学初日から出会えるだなんて思ってもいなかった。

もう一度プロデューサー科の人の学生証を見つめて、まるで頭の中で光がはじけたみたいにひらめきを得た。

 

「あのっ、あたしをプロデュースしてくれませんか!?」

 

「……唐突ですね」

 

「はい!あたし、アイドル初心者なので!プロデューサーさんが一緒にいてくれたら、心強いなって思ったんです!」

 

 もともと嘘をついたりするのは苦手だったから、素直な気持ちを口にする。

あたしがここに来た理由といえばお姉ちゃん。そんなお姉ちゃんには、多分知識の量でも負けている。

なら、アイドルをよく知る専門の人がいてくれたらきっと百人力だし、お姉ちゃんに勝つための秘策を一緒に考えてくれるかもしれない。

 

「一応、初対面でしたので……そんな人間に頼まずともいいのではないでしょうか?」

 

「いえ、あたしはあなたがいいんです!これは直感なんですけど、この人なら、あたしの力になってくれそうだなって思ったんです!」

 

「直感、ですか……」

 

 そう言うと、プロデューサーさんは難しい顔をして、また顎に手を添えて考え始めた。

心のどこかで、あたしにはこの人しかいない。

本当に勘でしかないけど、そう確信を覚えた。だから、あたしは色々考えるよりも先に、この人にプロデューサーとしてスカウトをしてもらおうとしたのだった。

 

「……ところで、花海さん。あなたのお名前が、生徒名簿に載っていないようですが」

 

「ふっふっふっ。それはですね。きっと入学試験の成績がギリギリで、補欠合格だったからですね!」

 

「……なるほど。この話はなかったことに」

 

「えぇー!?ちょちょちょ、ちょお~~~っと待った!!」

 

 自信満々に言ったセリフを聞いてから、一気に落胆したような目をして、あたしから視線を逸らした。

ここで見放されてしまったら、お姉ちゃんに一歩どころか、百歩くらい遅れを取ってしまう気がする。

慌ててプロデューサーさんの前に移動して、なんとか話を聞いてもらおうと口を動かした。

 

「確かにあたしは歌もダンスも筆記もスピーチも、ちょっぴりダメだったかもしれません!いいや、ダメダメだったかもしれません!でも、もしかしたらすっごい実力の持ち主かもしれないじゃないですか!!」

 

「その根拠はどこから出てくるのでしょうか……」

 

「この全身からですっ!!」

 

「な、なるほど……」

 

 なんとか引き止めることに成功したみたいだった。

プロデューサーさんの目があたしを見たのを確認して、言ったことを本当だと思わせるためにちょっと胸を張ってアピールする。

 

「では、動機を聞かせてください」

 

「……へっ?」

 

 聞かれたことが理解できず、張っていた姿勢が崩れた。

動悸のことだろうか?あたしは胸に手を置いて、ドクンと鳴り続ける心臓の音を感じた。

見放されそうになったことに焦ったせいか、ちょっと音は早くなっていたけど、体の調子は健康そのもので間違いはない。

 

「そっちの動悸ではなく、物事の方です。あなたがアイドルを目指した理由。この学園に入ろうと思った理由を聞きたいんです」

 

「あっ、なんだ、そっちの方でしたか!あたしがこの学園に来た理由、それは……」

 

 間違いに照れつつ、胸の前で手を合わせ、まぶたを閉じる。

その姿は目にしなくても、言葉に出さなくても思い浮かべることができた。

 

「勝ちたい人が、いるんです。あたしが生まれたときから、ずっとそばにいて……色んな競技で何度も何度も競い合って……一度だって勝てたことがない、本当にすごい人で、心から尊敬してて……」

 

 目を開けたとき、太陽の光がその眩しさと重なって見えた。

あたしにとって星であり、太陽でもある人で、当たり前のようにそこにある人。今度こそ、その背中に届くために、越えるためにあたしはこの学園の門を叩いた。

 

「だから……今度こそは、絶対に勝ちたいんです」

 

「その人は……この学園に?」

 

「はい。だから、あたしはここにいます」

 

 その気持ちをとても力強く、想いを込めるように言い切った。

それが理由。理屈とか、そんな難しいことを考えることはない。嘘をついて、誤魔化すこともしない。

あたしにはそれが全てだから、どんなに難しくて、遠い場所でも、お姉ちゃんが行くなら、あたしもそこに行きたい。ただ、そう思った。

 

「自信あるのは運動くらいで……才能だって、そんなにないかもしれません。でも、勝ちたい気持ちだけは誰にも負けません。必ず勝ちます。そして、学園で一番のアイドルになります!」

 

 必ず勝つ。その気持ちは絶対変わらない。

真剣な顔であたしの話を聞くこの人にも、それを証明してみせる。

無言で聞いていたプロデューサーさんの瞳が、あたしの姿を映して少し揺れていた。

ちょっと引かれてしまったのかもしれないと思って、最後に「いい物件ですよ。いかがでしょ~かっ!」なんて付け足してみて、笑いをとれるかな、なんて思っていたけど。

 

「花海佑芽さん」

 

「はい!」

 

 押し黙っていたプロデューサーさんは、あたしをまっすぐに見つめて口を開いた。

その反応はきっと、悪くないものだろうと感じた。

入学試験のときよりも、はっきりと自分の気持ちを口に出せた気がしていたし、この人はずっと黙ってあたしの話を聞いてくれていた。

正直それだけでも嬉しかった。馬鹿にせずに聞いてくれたこの人と、一緒に頑張ってみたいと強く思い始めてた。

 

「残念ですが、お断りします」

 

「はいっ!」

 

 やった、これであたしも立派なアイドルに────今なんて言いました?

オコトワリシマス。その言葉が頭の中で再び聞こえてきて、返事がイエスではなくノーだということに遅れて気がついた。

 

「ええぇ~~!今の流れ、オッケーしてくれそうだったじゃないですか!」

 

「こちらとしても、本当に残念な気持ちでいっぱいです。ですが、これにはちゃんと理由がありまして……」

 

 プロデューサーさんが、あたしに丁寧に理由を説明してくれようとしている。

言葉自体はちゃんと聞いていた。でも、あたしの耳には別の音が聞こえていた。

 硬い靴が、地面を踏みしめる音。多分新品の革靴の音だと思う。

あたしはその音を聞いただけで、誰が来るのか予想はできていた。

 

「その人は、わたしのプロデューサーだからよ!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

 やっぱり、見間違えようのないその姿はお姉ちゃんだった。

ピンクの制服に、かわいい顔が自信満々そうな笑みを浮かべている。

間違いなく、今日一緒にこの学園に入学した、あたしの大大大好きなお姉ちゃんだ。

 

「まったく、初日から遅刻するだなんて。どうせ迷ったんでしょ?」

 

「う、うるさいなー!それより、今言ったことってほんと!?」

 

 嘘をついても、どうせお姉ちゃんにはすぐバレてしまう。

だから今はあたしが一番気になったことを聞いてみる。お姉ちゃんの目線はプロデューサーさんの方を見つめていた。

 

「その人は、わたしのプロデューサーよ。あなたが来る前に、その人からスカウトを受けたの」

 

「えぇっ!?ほんとなんですか、プロデューサーさん!?」

 

 あたしが聞いたことに対して、プロデューサーさんは申し訳なさそうに頷いた。

その後、二人がよければ姉妹揃ってプロデュースすることもできる、なんて提案をしてきたけど、あたしとお姉ちゃんは口をそろえて、それは絶対イヤ!!と拒否する。

お姉ちゃんと一緒だなんて、それじゃあ勝負の意味がない。必ず別々のチームで、結果が出る競技で勝負をするというのが姉妹のルールみたいなものだから、それは譲れない。

 

「というわけですので、花海さんのお誘いは受けられません」

 

「ぐぬぬぅ~~~!プロデューサーさんも、あたしの宿敵だったなんてぇ~!」

 

 すっかり先を越された気になったあたしは、プロデューサーさんのことを恨めしく見つめる。

実際にこの人はもうお姉ちゃん側の人だから、この瞬間からあたしの敵であり、ライバルの一人なのだ。

 

「お姉ちゃん!プロデューサーさんも!あたし、絶対に負けないから!」

 

「いいわよ!相手になるから、かかってきなさい!」

 

「余裕ぶりやがって〜!それはそれとして、プロデューサーさん!お姉ちゃんをよろしく!」

 

「よ、余計なこと言うんじゃないわよ!」

 

「ひひ〜!じゃあ、またね!」

 

 照れるお姉ちゃんを見られただけで、あたしはイタズラが成功したような気持ちになった。

でも、本当にこの人ならお姉ちゃんの事を任せられる。そんな気がしたあたしはお姉ちゃんを揶揄いながら、その場から逃げるように走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時間は過ぎて放課後。

あたしは肩を落としながら、学園を歩いていた。

 

「ぜんっぜんダメだぁ~~!」

 

 あれから色んな人に声をかけ続けてみたが、あたしが入学試験で成績ギリギリの、補欠合格者だと聞いてみんな落胆したように肩を落とし、あたしの目の前を去っていった。

気づけば陽が沈み、学園にいる人達はだんだん少なくなってきている。もうじき寮の門限時間にもなるし、今日のところは諦めて帰るしかないんだろうか。

 

「はぁぁ……いけるとおもったんだけどなぁ……」

 

 自信とは裏腹に、失敗続きでどうも調子が上がらない。

まだ入学式を終えて初日とはいえ、お姉ちゃんに先を越されて内心では焦っていた。

このままではどんどん先に行ってしまう。お姉ちゃんの成長スピードはただでさえ速くて、才能に満ち溢れているのに、アイドル勝負でも負けてしまうのだろうか。

 

「くっそ~~~!負けてたまるかぁぁぁっ!!」

 

 中庭で生い茂った草むらの上に大の字に寝転がって、抑えられない気持ちを空に向かって吐き出した。

プロデューサーさんが付いたお姉ちゃんは間違いなく強い。そうでなかったとしても、きっとお姉ちゃんは自分の力で成長していただろう。

プロデュースさんとお姉ちゃん、二人の相性はすごく良い。

これから時間をかけて信頼し合うようになり、お互いの背中を任せられるような、そんな関係になる気がした。

そんな二人はきっと、あたしのみならず、色んな人にとって強敵になるだろう。

 

「いいなぁ。あたしにも、相棒になってくれるような人がいるといいのになぁ……」

 

 あたしの呟きを聞いたかのように、夕暮れの空にキラリと星が輝いた。

まだ夜にもなっていないのに、その星の色はとても澄んだ青い色をしていて、すごく綺麗に見える。

 

「……なんていう星だろう、見たことないや」

 

 思わず立ち上がって、まぶたを広げてその星を凝視する。流星みたいに、青い尾を引いて光る星はまるで生き物みたいに動いた。

ずっと見つめていると、青い星は何度も位置を変えて色んな方向に動いている。そう考えると、多分アレは星じゃない。

 

「あわわわ!なにあれ!?」

 

 あまりにも不思議な光を放っているそれが、なんだかすごく気になって、あたしは学園を飛び出し、一番空が見えるであろう高台に向かって走る。

その間にも星は動き続けて、なんだか下の方に降りているような気がする。つまり、星は地面に向かって進んでいるということだ。

隕石?宇宙衛星?どう考えても星の正体とは結び付かず、高台のてっぺんにたどり着くと、もう一度目を凝らしてみる。

 

「…………人?」

 

 それは人間のように、手足を持っていた。

青い体になんだか鎧のようなものを着ていて、頭に刃物みたいなものを付けている。

体の色からして普通の人間の色じゃないし、サイズだってびっくりするぐらい大きい。

その見た目に言葉を失って、思わず呆然とする。

まもなく地上に落ちてくるかといったところで、星のように見えた巨大な生き物は後から降ってきた火の玉とぶつかり、街中で大きな地震と土煙を上げた。

 

「わわ!?わわわわ~~!?」

 

 その場でふらついてしまい、揺れが収まるまで地面にしゃがみ込む。

やがて揺れが小さくなっていったのを確認してから、空から落ちてきたものが何なのかを知るために見つめる。

街の中に落ちた青い方はまだ土煙から姿が見えないけど、ぶつかった火の玉の方はその姿が見えた。

 セミのような巨大な目と、両手に大きなハサミ。

青白くて、ぬるりと光る不気味な姿がそこにはあった。

 

『フォッフォッフォッフォ……』

 

 その生き物が立ち上がると、不快な羽の音と共に、ハサミをカチカチと鳴らした。

その時思った。振って来たのは神様とかいう良いものではなく、すっごくヤバイ奴なんだっていうことに。

 

 




佑芽の入学式のシーンは、初星コミュ1話と2話から選びました。
咲季は親密度のストーリー通り、プロデューサーと二人三脚で進んでいく流れになります。
佑芽の心情など、独自の解釈が含まれます。ご容赦いただけますと幸いです。
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