相棒はウルトラマンゼロでした 〜学園を守りつつ、お姉ちゃんに勝ちたいあたしの最強育成計画〜 作:あぶくま
それはそうと佑芽と咲季の誕生日ライブは最高でしたね!H.I.F編実装の発表もありましたし、楽しみがもりもり増えていくことに高揚感を感じています。
今回オリジナル展開と独自設定が多く含まれており、作者のやりたい放題にやってしまいました。相変わらず文面の崩壊が激しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
空からやって来た宇宙人は両腕のハサミからビームを発射して、建物をいくつも破壊した。
夜の街に避難訓練でしか聞いたことのなかったサイレンが鳴り響いて、色んな人達が初星学園の校舎に向かって避難していくのが高台から見える。
あたしもすぐに逃げないとって思う前に走り出して、既に学園に向かっていた。
「慌てないで、みんな!落ち着いて、講堂へ向かって避難して!」
校門で、一際存在感を放つ人が大人に混ざって避難誘導をしていた。この学園の生徒会長さんだったような気がする。あたしはいなかったけど、入学式で在校生代表挨拶としてスピーチをしたらしい。
そんな会長さんもきっと不安なはずなのにあんなに率先して動けるだなんてすごいなぁ、なんて考えていると、あたしの肩が優しく叩かれる。
「花海佑芽ちゃん、だよね。大丈夫?」
「あっ、はい!」
そこには大人びた雰囲気のする上級生の人が立っていた。
確か会長さんと同じ生徒会の人だった気がするけど、まだ名前を知らないせいでなんて呼べばいいのかわからない。
「怪我とかしてないみたいでよかった!避難所はすぐ近くだけど、ひとりで行けるかな?」
避難所の建物を指差しながら先輩は、一緒に行こう?って言ってくれる。
見た目通り優しくて、なんだかすごく温かい気持ちになるような人だった。でも、今は先輩の厚意を受けるよりも先にやらなきゃいけないことがある。
「先輩!お姉ちゃんを見ませんでしたか?」
「お姉ちゃん?佑芽ちゃんのお姉さんっていうと、主席の花海咲季さんだよね?私はここでずっと星南会長を手伝っていたけど、咲季ちゃんはまだ見てないかも……」
「じゃあ、あたし探してきます!」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待って!佑芽ちゃん!」
先輩の話を聞いて、すぐに来た道を引き返した。後ろからあたしを呼ぶ声がするけど、今はそんなの気にしてられない。今はとにかくお姉ちゃんが心配だったから、あたしはすぐに寮に向かう。
プロデューサーさんと一緒なら大丈夫かもしれないけど、もし部屋に戻っていたとしたらどうしよう。
もう八時を回っているし、お姉ちゃんは朝早くに走りに行くせいで寝るのだって早い。だから部屋に残っていて、周りが避難していることに気づいてなかったら大変だ。
「お姉ちゃぁぁぁぁん!!」
急げ、佑芽。もっと早く走れるはず!
その気持ちを全力で声に出して、いつも走っているときよりもスピードを上げる。
逃げている人とは逆方向に向かっているせいで色んな人と身体がぶつかって押し返されそうになるけど、負けじと前に進む。
『フォッフォッフォッフォッフォッ……!』
空から降ってきたセミの宇宙人が街を歩いて、ハサミから光線を撃つたびに建物が燃えた。
焦げ臭い匂いがしてきて、知っている街が火に包まれている。まるで映画みたいな光景だけど、これは現実なんだ。とても悲しい気持ちになるけど、今は大切な人を守らなきゃ。
あたしの大切な人、お姉ちゃん。今はどこにいるんだろう。せめて安全な場所にいてほしい。
「焦げた匂いのせいでお姉ちゃんの匂いが全然わかんないよ……お姉ちゃぁぁぁん!!」
こんなに叫んでいるのに、誰からの返事も返ってこない。
もうみんな逃げてしまったのかなって思って、寮の目の前まで来たら足のスピードを緩めたけど、そこにいたのはお姉ちゃんではなく、別の女の子たちだった。
「しっかりしてください!篠澤さん!」
「……ごめん、もう一歩も歩けない。千奈だけでも、逃げて」
「そんな!お友達を置いて先に逃げるなんてこと、わたくしにはできませんわ!」
寮の入口でしゃがみ込んでいたのは同じクラスの篠澤広ちゃんと、倉本千奈ちゃんだった。
こっそり列に混ざるっていうプロデューサーさんのアイデアを行ったあたしは、あの後この二人と知り合って、すぐ仲良くなることができた。
その二人がピンチだと知って、居ても立っても居られなかった。どうしよう、とか、何かあったのかなとか考えるより先に二人の元に駆け寄った。
「千奈ちゃん!広ちゃん!」
「花海さん、無事でしたのね!」
「佑芽が来てくれてよかった。お願いがある。動けない私を置いて、千奈を連れて行ってほしい」
「広ちゃん、どこか怪我したの?」
「ううん、ただ動ける体力がないだけ。でも、このままじゃ私だけが足手まといになってしまう。それだけは絶対に嫌、だから……おねがい」
そう言うと、広ちゃんは苦しそうに息を吐きながらその場に座り込んだ。
千奈ちゃんが慌てて肩を支えようとするけど、その千奈ちゃんだってなんだか苦しそうだった。もしかしたら黒い煙を吸って、体調が悪くなったのかもしれない。
あたしなら二人を背負って走れるかな。ううん、できなくても、なんとか避難所まで連れていくことができれば、きっと三人とも助かることができる気がする。
「大丈夫だよ!あたしがまとめて避難所に連れて行くから!」
「はいっ!?い、いくら花海さんでも、それは大変なんじゃありませんか!?」
「大変だろうとなんだろうと、命がかかってるならやるしかないよ!さあ、千奈ちゃん広ちゃん!あたしに掴まってて!」
二人は顔を見合わせると、ちょっと困惑しながらあたしの手を握る。二人の手をぎゅっと握り締めて、それから勢いよく二人の体を持ち上げて両脇に抱える。
「お、重くありませんか?」
「むしろ軽いくらいだよ!それじゃ今から全力で走るから、しっかり掴まってて!行っくよおおおおお!」
「わ、わたくしたちが掴まるというよりかは、花海さんが途中で落とさないかが心配ですわぁ!ひゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
「すっごく速い。けど、これは……別の意味でままならないことになりそうだ、ね……」
二人の悲鳴が風の音に混ざって聞こえたけれど、今はスピードを緩めることなんてできない。
街で暴れるセミの宇宙人とすれ違う形で、千奈ちゃん、広ちゃんを抱えたあたしは来た道を戻り、さっきの避難所を目指して走り抜けた。
天川市に落下した光の戦士、ウルトラマンゼロは崩れた建物の瓦礫から身体を起こし、勢いよく立ち上がる。ふと自身が纏っていたウルティメイトイージスがなくなっていることに気づいてブレスレットを見るとなんらかの損傷を受けて割れてしまい、その結晶に宿っているはずの輝きが失われていた。
『また壊れちまったか……すまねぇ』
ブレスレットが破損したことに謝りつつ、ゼロはバルタン星人に向き直る。
過去の恨みを晴らすかの如く街を破壊し、人々の密集する場所を目指してバルタンは進んでいる。その向かう先に学園らしき建物が見えるが、各地で逃げ回っている人間たちが目指す場所もおそらくそこだ。
バルタンはこの街に住む住民を一人残らず抹殺するつもりなのだろう。逃げ回る人間を見つける度に両腕のハサミから赤色冷凍光線を発射し、浴びた人間達が次々と凍り付いていく。
『ッ……それが故郷を失った奴のすることか!』
ゼロは頭部からゼロスラッガーを抜くと、バルタン星人に投擲。二つの刃がその体を貫いたかのように見えた。しかし、貫かれた箇所には傷一つ入っておらず、バルタン星人の体をすり抜けてゼロの元へ戻ってきた。
『なっ、分身だと!?』
バルタン星人お得意の分身が、ゼロを囲むようにして現れる。一瞬の動揺、それをバルタン星人が見逃すはずはなく、全ての分身が両腕から白色破壊光弾を放った。
『シェアッ!』
しかし、ゼロとて幾多の戦いを重ねた歴戦の戦士である。冷静さを失わず、素早く上空に飛び上がることで光弾を回避する。空へ飛んだゼロを追うようにハサミの向きを上へと向けるが、そこには青い光に包まれて変化したルナミラクルゼロが浮いていた。
『ミラクルゼロスラッガー!』
ゼロの手から放たれた光の刃が拡散し、無数に分裂しながらバルタンの分身達に降り注ぐ。
切り裂かれた分身は次々と消滅し、本体の姿が見えないまま街からバルタンの姿が消える。
『クッソォ……どこ行きやがった……』
時折何もない場所から聞こえてくるバルタンの声だけがゼロの耳に触れる。聞こえてくる声に惑わされそうになるが、視界に頼らずゼロは感覚だけでバルタンの気配を探る。
暗闇の中で視えてきたのはバルタン星人の姿。その輪郭が離れては近づいてを続けていたが、しばらくするとゼロの目の前までやって来た。
───後ろだよ!
ゼロが察知する前に、誰かがゼロに向かってそう叫んだ気がした。
『そこだ!オラァァァァッ!』
赤い光に包まれてストロングコロナゼロへとモードチェンジ。背後に振り返ると、バルタンの顔面目掛けてパンチを叩き込み、そのままウルトラハリケーンで空高く投げ飛ばし、ブレスレットに右手を添えて光を集めた。
『ガルネイト……バスターァァァァッ!!』
右拳に集中した光が灼熱の炎へと変わり、上空に打ち上げられたバルタンに向かって放たれる。
まっすぐに体を捉えた赤熱光線は遙か空までバルタンを吹っ飛ばしていき、大空で大爆発を起こした。
「わぁっ!見てた?千奈ちゃん、広ちゃん!赤?青?どっちかわかんないけど、あの巨人が勝っちゃったよ!」
「すごい迫力でしたわ!まるでアクション映画みたいでしたけど……これって現実、なんですわよね?」
「気になるなら、頬でもつねってみる?それで現実かどうかがわかると思う」
「それだ!よぉーし!」
先程バルタンが狙っていた学園の方で、キャッキャと騒ぐ女子生徒達の姿が見えた。
ゼロを見上げて喜んでいた三人は今身長の低い女の子の頬を二人して引っ張って、引っ張られた子は「それはわたくしの頬ですわ~!」と喚いている。
『フッ、にぎやかだな……』
その光景に思わず笑みがこぼれた。
このまま三人の様子を眺めているのも悪くはなかったが、自分がすべき仕事はもう終えている。
長居はせず、上空に飛び立とうと上を見上げた、その時だった。
『っ!やべぇ!』
突然空から降ってくる大きなはさみ。それは間違いなくバルタン星人から切り離された体の一部で、それぞれ二か所の地点に落下しようとしていた。
一か所は学園の中心、大勢の人達が避難しているであろう講堂の建物。もう一つは三人の女子生徒のちょうど真上に位置する場所だった。
『おい、お前ら!そこにいるとあぶねぇ!今すぐ逃げろ!』
談笑をしている三人に呼び掛けると、学園に降ってきているハサミに向かって走り出した。二つとも同時に防げればよかったが、ゼロの体は一つしかない。
光線で破壊しようかとも考えたが、万が一破片が残ってしまった場合、被害の範囲が広がる可能性があった。
「あの巨人。今私達に、逃げろって言った気がする」
「えぇ!?に、逃げろと言われましても、どちらに逃げればよろしいんですの!?」
「うーん?…………あっ!」
一番体格の良い女子生徒が考えを巡らせるかのように腕を組んで、ふと頭上を見上げた。
その瞬間、自分達にかかっている影の正体に気づいたようだ。考えるよりも先に少女の体は動いていた。
手を前に突き出し、二人の友人の体を渾身の力で影の下から押し出した。
「うぐっ!は、花海さん!?」
尻餅をついた二人と、友人を助けようと行動した少女の間の時間が緩やかに進んでいるような気がした。
三人はそれぞれ見つめ合い、影の下にいる少女が申し訳なさそうに頭をかいた。
「ごめんね!ちょっと荒っぽいけど、二人は……友達だから!」
「佑芽───」
時間は遅く感じていても、頭上に振ってきている物体の時間は止まっていなかった。
体格の細い少女が小さな声で何かを言おうとした、その時。
固いものがぶつかった衝撃と、それによって巻き起こった突風が二人の少女の体を紙のように吹き飛ばした。
およそ数メートル離れた地点まで転がっていくと、寝転がった姿勢のまま土煙の中に目を凝らした。
「花海さん……!花海さんっ!!」
「佑芽。返事をして……佑芽!」
事なきを得た二人が慌ててさっきまでいた場所に駆け寄ろうとした。しかし、そこに行こうにも、目の前にある物体のせいで行けなかった。
先程まで佑芽と呼ばれた少女が居た場所に、数メートルはあるであろう巨大なハサミが横たわっていた。そのハサミの下には、想像したくもない残酷な現実がきっと広がっている。
「ぁ……ぁあ……花海、さん……花海さぁぁぁぁぁんっ!!」
「…………」
背の小さい少女はその場で座り込み、大粒の涙をこぼして号泣し、細い少女は何も言葉にできずその場に立ち尽くした。
『あっぶねぇ!危うく間に合わねぇところだったぜ!さっきの奴らは!?』
建物の真上スレスレでキャッチしたゼロは、バルタン星人のハサミを抱えて上空に飛んだ。
さっきの三人が居た場所は、確か学園の入口にあたる校門のすぐ近くだった。夜の街で重力を無視して飛行し、少女たちが居た場所を見下ろした。
『……は?おい……マジかよ……』
号泣する少女と、立ち尽くしている少女の二人で、その場に一人足りない。
目の前にはコンクリートの地面に小さなクレーターを作って横たわるバルタン星人の大きなハサミ。その下で少女が生き残っていると考えるには無理があった。
『…………クソがぁぁぁぁっ!!』
憤るあまり手にしていたバルタンの体の一部を粉砕すると、天に向かって咆哮する。
もちろん戦いを終えて、油断しきっていた自分も悪かった。それでも目の前に広がっている現実は受け入れがたく、あまりにも酷いものに感じた。
自分はウルトラマンだ。それなのに、どうしてこんな事態を招いてしまったのかと自分を責めずにはいられない。
街を見ても各所で火の手が上がっている。今回自分が守りきれたものはあまりにも少なかった。
『俺は……俺は、一体何をしてやがる……!』
手のひらに爪が食い込み、力のあまり震えるほどにまで拳を握り締めていた。
ブレスレットも壊れ、守らなければいけない者たちすら守れなかった。その後悔を振り返るかのように、ゼロはブレスレットを見つめた。
『……力を使えるのは、あと一回ってところか……』
ほんのわずかな小さな光が暗転した結晶の中から見えた。ゼロの中で少女たちの命と、自分が守り抜いた街の平穏が天秤にかけられていた。
ウルトラマンは本来人間達だけではどうにもならない怪獣や宇宙人を相手にしたとき、彼らの道筋に寄り添うかのようにその選択を見守りつつ戦ってきた。
その最中で彼女のように、体を張って他の命を守ろうとした勇敢な者達をゼロは何人も見てきた。そして、今回も──。
『迷うまでもねぇ……!』
逡巡するまでもない、とゼロは飛翔する。
その最中で黄金の光に包まれて、その体が三度目の変身を遂げる。
『シャイニングウルトラマンゼロ……!』
夜の闇に溶け込んだ街に、太陽のように眩い金色の光が煌めいた。
絶望に染まった少女たちがその姿を見上げる。神々しい輝きが暗く沈んでいく心を照らすように、思わず目を覆いたくなるほどの眩しさを感じて目を細める。
『ハアアアアアアァァァァァァァァァッ!!!』
天に向かって掲げられた右掌に光が集約していき、その手から太陽のような光球が生み出される。
その光球から降り注ぐ輝きが世界を包み、崩れた建物が元の形に戻り、火災が消え、冷凍光線によって殺害された人達が息を吹き返していく。そして、遺体すら残らなかった少女にも降り注ぎ、再び世界は今日と同じ朝日が昇った。
『……こりゃ光の国に戻ったら、修行のやり直しだな……』
大幅に体力を消費したゼロが荒い息を吐いて自嘲しながら、元の姿へと戻った。
少女たちが居た場所を見下ろすと、そこには朝日に照らされて、川の字でスヤスヤと眠りにつく三人の姿がある。
『……あばよ。……しばらく、休ませてもらうぜ……』
そう呟いたゼロの体は光の粒子となって、虚空に消えていく。
「うーん、……えへへ。おねえちゃぁん……」
地べたに寝転がった佑芽という少女は、幸せそうな夢を見て満足気な笑みを浮かべている。
彼女の右手には、身に覚えのない冷たい金属の感触だけが残っていた。