相棒はウルトラマンゼロでした 〜学園を守りつつ、お姉ちゃんに勝ちたいあたしの最強育成計画〜   作:あぶくま

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続・宿敵、プロデューサー、そして───

 

 そこはずっと暗闇が続く、出口のないトンネルのように感じた。

何も聞こえないし、何も匂わない。視界も効かないから、何も見えない。

上も下もわからないくらい体の感覚はなくて、ずっとその場に浮いていた。

 

「もしかして、あたし……しんじゃったのかな」

 

 ここがだんだん死んだ人が来る場所のように感じてきて、とても寂しい気持ちになった。

千奈ちゃん、広ちゃん、プロデューサーさん、そして……お姉ちゃん。

もっと話すはずだった、もっと仲良くなるはずだった、もっと勝負をするはずだった。

それなのに、ここがあたしの終わりだなんてそんなのは嫌だ。

 

「……まだ、終わらせたくない。あたしはまだお姉ちゃんと勝負すらしてない!あたしはまだ、終われない!!」

 

 気合と根性を燃やして無理矢理体を動かすと、体が光を帯びて元の感覚が戻ってきた。

手をグーパーさせて感覚を確かめていると、「マジかよ」って呟いた声がどこかから聞こえてくる。

 

『自力で動ける奴がいるなんてな……お前、見かけによらずとんでもねぇ奴だな』

 

「だ、誰ですか!?」

 

 聞こえてきたのは、知らない男性の声だった。

その声を出している人が見えないことに狼狽えていると、その人はあたしの目の前で半透明な形となって現れた。

まるで幽霊みたいに透けていて、その姿はさっきセミの宇宙人と戦っていた巨人のように見える。

 

『突然驚かせてすまねぇが……お前に言わなきゃならねぇことがある。俺たちの戦いに巻き込んでお前を死なせてしまった。すまん……』

 

「し、死んだ!?えーと、急にそんなこと言われても困るというか……!」

 

 突然そんなことを言われて、驚かないはずがない。

弱々しい声で喋る巨人に対して、あたしはどう反応するべきなのかわからなくなって、とりあえず自己紹介からしてみようと思った。

 

「あたし、花海佑芽っていいます!」

 

『俺はゼロ、ウルトラマンゼロだ。こんなことになって、色々と混乱してると思うが聞いてくれ。ここはいわゆる俺とお前の意識が入り混じったような場所でな。簡単に言うと、俺とお前が一つになったから生まれた空間ともいえる』

 

「意識が、入り混じった場所……?簡単にって言われても余計わかんなくなっちゃったんですけど……」

 

 なんだか小難しいことを言われて、頭がちんぷんかんぷんなあたしにウルトラマンゼロと名乗った人、というか巨人は申し訳なさそうにしている気がした。

 

『……順を追って説明をしねぇとな。まずは単刀直入に言う。花海佑芽、お前は落下してきたバルタン星人のハサミの下敷きになって、命を落とした』

 

「あー、なるほど!さっき死んだってのは下敷きになってしんじゃったからなんですねー……って、えぇぇぇー!!??」

 

『驚くのも無理はねぇ。いつもなら人間と一体化したときにソイツの負った傷も回復させられるが、今回はその手段は使えなかった。だから、特別な力で時間を巻き戻して、お前を元に戻したってわけだ』

 

「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!時間を巻き戻したとか、元に戻したとか、ゲームみたいなこと普通に言ってますけど!全っ然理解が追いつかないですよぉ!」

 

『まあ、そうだろうな……』

 

 巨人さん、もといウルトラマンゼロさんは困惑したようにあたしを見下ろした。

困惑したいのはこっちだ。変な場所にいきなり連れてこられたかと思えば死亡宣告をされて、その直後には時間が巻き戻ったから大丈夫だなんて信じられるはずがない。

 

「あの!あたし、死んだんですよね!?セミの宇宙人の大きい腕に潰されてペシャンコにされましたよね!?想像したくもないですけど、明らかにペーストみたいになっちゃってると思うんですけど!」

 

『めっちゃ喋るな、お前……』

 

「当たり前ですよ!!うわぁ!!やっぱりあたし死んだんだ!!やだぁぁぁぁ!!」

 

『泣くなって。ちゃんと一から十まで説明してやるから!』

 

 そう言われても、生きてないんじゃ希望なんてもう無いじゃないか。

もう二度とお姉ちゃんと勝負できない、そう思ったら目の前が真っ暗になるような気がして、堪えきれずにその場で泣き叫んだ。

 

「わぁぁぁぁっ──!!お姉ちゃぁぁぁぁんっ!!!」

 

『全然聞いてねぇし!?はぁ、しょうがねぇな……あー!おい、俺の話を聞けって!』

 

「…………なんですか?」

 

 大きな声を出されて、あたしは涙が引っ込むとまでいかなったが、目の前の巨人の顔を涙で視界が潤んだまま見上げる。

 

『いいか。もう一度説明するが、お前は確かに死んだが、時間を巻き戻したことによってその死はなかったことになった。そして、お前の友達も無事だ。ここまでで質問は?』

 

「……えっと、ウルトラマンゼロさんは何者なんですか?」

 

『俺はこの地球より遥か遠くにある星、M78星雲の光の星から来たウルトラマンだ。あと、ウルトラマンっつうのは、まあ俺みたいな奴のことを指す名前と思ってくれればいい』

 

「遠くにある星ってことは……じゃあ、あなたは宇宙人なんですか!?」

 

『そういうことだ。なんだ、ようやくわかってきたじゃねえか』

 

 あたしが理解したと勘違いしたウルトラマンゼロさんは、よしっと頷く。

正直今の状況を理解すらしてなかったが、とにかくこの人は宇宙人で、この人のおかげであたしはこうして生きているんだってことはわかった。

それでもまだ聞きたいことは山ほどあるから、あたしは授業のときみたいに手を上げる。

 

「はい!次の質問です!」

 

『ん、なんだ?』

 

「ゼロさんって大きいですよね?このまま街にいても、大騒ぎになると思うんですけど」

 

『それなら問題はねぇ。俺はお前と一体化することで、その姿を隠しているような状態だからな』

 

「い、一体化!?」

 

『なんつーか、合体?みたいな』

 

「合体!?え……え……」

 

 その瞬間、あたしの脳内でよからぬ想像が駆け巡った。

まさかこの人はあたしを復活させるためにそのようなことをしたのだろうか。ともすれば、この人はものすごーくそういう人なんだっていうことに違いない。いや、きっとそうだ。そもそも死んだあたしを復活なんて時点ですごく怪しかったんだから。

 

「……ですよ」

 

『え?悪い、なんて言ったか聞こえなかった。もう一回言ってくれ』

 

「そういうの、えっちですよ!!」

 

『……は?はあああああっ!?』

 

「だってそうじゃないですか!合体とか、一体化とか!女子高生になんてことをするんですか!」

 

『何を想像してるのかわからねぇが、一体化ってのはそういうことじゃねえよ!』

 

「じゃあどういうことなんですか!?」

 

『俺達ウルトラマンは地球で活動するのに人間と一緒になる必要があるんだよ!わかったか!?』

 

「全っ然わかりません!えっちなことの説明にもなってませんし!」

 

『だあああっ!とにかく、俺は今お前の中にいるってだけだ!そのえっちなんちゃらってこともしてねぇし、俺はこれでも宇宙の平和を守る……』

 

「はいはい、そういう設定なんですね。でも、女の子の体に勝手に入ってくるのはやっぱりデリカシーがないと思います!」

 

『設定じゃねえ!くそっ、隣で寝てた二人よりかは体もデカくて素質が1番ありそうだったのに、俺の二万年の誇りがお前のせいでズタボロだぜ……!』

 

 嘆き悲しんだゼロさんはそういって何もないところを見上げると、突然一筋の光が差し込んだ。

それはあたしとゼロさんの真上からまるでスポットライトみたいに降り注ぐと、無意識のうちにその光に向かって手を伸ばしていた。

 

 

───佑芽! 起きなさい!佑芽!!

 

 

「お姉ちゃんの声だ!」

 

『……今は元の場所に戻るとするか。そこでお前のことを待ってる奴等もいるだろうしな』

 

「えっ!?そう言われても戻るなんてどうやって……あ!だんだん光が!」

 

 視界に入った光が、どんどん広がっていく。

その度に聞こえてきたお姉ちゃんの声は大きくなって、あたしの手はまるで導かれるみたいに吸い込まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佑芽ってば!起きなさい!!」

 

「花海ちゃんさ、もうやめといた方がいいって……」

 

「はぁ!?何言ってるのよ、わたしの妹よ!たった一人しかいないわたしの大切な妹なのに、どうしてそんなことが言えるわけ!?」

 

「気持ちはわかるけどさ、見てらんないって!花海ちゃんもちょっとは休みなよ……」

 

「ぐすっ、いやよ……佑芽、どうして起きないの?またいっぱい勝負しましょ?まだ決着だって着いてないじゃない!」

 

「花海ちゃん……」

 

「ねえ、藤田。花海の妹はどこも悪くないんでしょ。なのに、なんで目を覚まさないわけ?」

 

「医者でもないのに、そんなことわかるわけないじゃん……月村サンもさ、あんまり今は余計なこと言わない方がいいよ」

 

「余計なことって何?本人がわかんないなら、ちゃんと事実を伝えるべきでしょ」

 

「何をだよ。だから別に妹ちゃんは死んでるわけじゃないって……あ、花海ちゃんのプロデューサー、どうでした?」

 

「やっぱり精密検査でも異常は見つからなかったそうです。医者も原因はわからないそうで……」

 

「そっか。じゃあほんと、なんで起きないのかわかんないですよね……」

 

 お姉ちゃんと、プロデューサーさんの声。あと聞こえてきたのは誰だろう?わかんないけど、あたしが寝てるせいですごく困ってるみたいだ。なら、今すぐ起きないと。

 重りを背負ったみたいに動きづらい体に力を込める。でも、うまく動かせない。

さっきは無理矢理動こうとしたらなんとかいったのにどうしてだろう。

 

「お腹いだから目を覚まして……佑芽ぇええええっ!!」

 

「…………お姉ちゃぁぁぁぁんっ!!」

 

「……!?佑芽!ぐぇっ!!」

 

 突然お姉ちゃんに体を殴られた途端、動かなかった体に力がこもって自由になった。そのまま飛び起きると、目の前にお姉ちゃんがいたことが嬉しくて抱きついた。

 

「起きた!?いや、死んでないから当たり前なんだけどさ!」

 

「普通に生きてるし、わざわざ心配して損した……」

 

「……何はともあれ、目覚めたのでしたら安心でしょう。ね?咲季さん」

 

「た、確かに安心したけど、重っ……じゃなくて!一回離れなさい!佑芽~!」

 

 こうしてあたしはどうにもならなかった状況から、奇跡の生還を果たした。

さっきまで一緒にいたウルトラマンゼロさんはどこに行ったのか、これからの生活がどうなるのかはわからなかったけど、今のあたしはお姉ちゃんに再会できたことがなによりも嬉しかった。

 

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