相棒はウルトラマンゼロでした 〜学園を守りつつ、お姉ちゃんに勝ちたいあたしの最強育成計画〜 作:あぶくま
至らない点が多々ある私ですが、どうかお付き合いいただけると嬉しい限りです!
よろしくお願いいたします!
「集団幻覚!?……って、どういうこと?」
「まずはそこから説明をしましょうか。咲季さん、いいですよね?」
「ええ、もちろんよ。むしろこの子には必要だと思うからしてあげて」
「わかりました。では」
プロデューサーさんはそう言うと、ここ数日の出来事をあたしに教えてくれた。
入学式の日、初星学園の校門で意識不明で倒れていたところを発見されたあたしは病院に緊急搬送されて今日に至る。その時点であたしは疑問が浮かんで、プロデューサーさんに質問をした。
「街の様子はどうなったんですか!?建物とか、人とか……あのセミの宇宙人にめちゃくちゃにされたと思うんですけど!」
そう聞くと、お姉ちゃんとプロデューサーさんは顔を見合わせた。なんだか説明に困っているみたいで、二人してどう答えるべきか悩んでいる様子だった。
「あのね、佑芽。落ち着いて聞いてほしいの。街の事なんだけど……そんな形跡は何一つないのよ」
「……え?」
形跡がない?しかもお姉ちゃんの話じゃ、セミの宇宙人の事も全く知らないみたいだった。
記憶が多分なくなったわけじゃない、お姉ちゃんやプロデューサーさんたちもあの災害じみてる宇宙人の暴れっぷりは体験してて、でもその痕跡が綺麗さっぱり消えていたのだから、そういうしかないとでもいうべきなのか。
あたしの質問に答えている2人も、そのことに関しては返答に困っているみたいだ。
「ちょ、ちょっとごめん!」
「あ、佑芽!?」
自分の目で確認したくなって、あたしは病室のベッドから飛び出して窓の外を見つめる。
具体的な場所を覚えていないせいではっきりとしたことは言えないけれど、あのとき被害にあった場所はどこにも残っていないような気がする。
「本当に何にもない……でも、あのとき本当に空から宇宙人が降って来たんだもん!お姉ちゃんだって見たよね!?」
「だから落ち着きなさいって!今回の騒動をなんとかするために学園長が報道の取材に応じたわ。その結果、特殊な自然災害による集団幻覚と発表したのよ」
「佑芽さんにもわかりやすく嚙み砕いて説明するなら、世間に対して存在しない被害を報告するわけにもいきません。ですから、天川市全体で起こった災害による避難行動だったと発表することで事態の収拾を図りました」
「それで、みんなは納得したんですか!?」
「天川市の行政機関と協力して、初星学園の学園長と、100じゅうおうプロの社長が揃って記者会見を行ったことでなんとか騒ぎは静まりつつあります」
「じゃあ学園閉鎖とか、もう初星学園に通えなくなるとかいうわけじゃないんですよね!?」
「強いて言うなら、今後学園側で生徒達に対する適切なカウンセリングは行っていくようですが、佑芽さんが思っているようなことは起こらないので安心してください」
「よかったー……じゃあ、初星学園でお姉ちゃんとまた勝負ができますね!」
プロデューサーさんが頷いたのを見て、あたしはほっと胸をなでおろした。
あんなに街がめちゃくちゃになってしまったら、アイドル勝負はおろか、せっかくの学園生活が入学式初日で終わってしまうんじゃないかと心配になっていたが……そういえば、そのことで何かを忘れているような気がする。
「うーん、なんだったっけ……?」
あたしが腕を組んで悩んでいると、お姉ちゃんとプロデューサーさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。体の調子が変だとか、気分が落ち込んでるとかそんなんじゃないけど、あたし個人において最も大事なことを見落としているような気がしてくる。
『だからあれだけ言ったろ?時間を巻き戻したから、痕跡も何も残ってるわけねぇって』
「あーっ!そうでした、時間を巻き戻したから死んだこともなくなって……えっ」
「佑芽、何を言ってるの?」
突然聴こえてきた声に思わず返事をすると、お姉ちゃんの訝しげな目線が刺さった。
気のせいだろうか?今確かに聞き覚えのする声がどこかから聞こえてきたのに、お姉ちゃんには聞こえなかったのかな。
「えっ?い、今の誰ですか!?」
『ちゃんと名乗っただろ。ウルトラマンゼロだってな』
「ウルトラマンゼロ……?あぁぁーっ!そういえばそうでした!」
『おい!声に出すな、不審に思われるだろうが!』
「ちょ、ちょっと佑芽!どうしたのよ!?」
慌てふためくあたしの耳元で確かに声は聞こえる。この声は間違いなくウルトラマンゼロさんのもので間違いないのだが、目の前にいるお姉ちゃんやプロデューサーさんには聞こえていないみたいだ。
「お姉ちゃんたちには聞こえないの!?」
「えっと、聞こえるってなにが……?」
「声だよ!声!今も耳元で──」
その瞬間、あたしの声は突然消えた、というより出せなくなったに近い。
いきなり空中に投げ出されたような、宙に浮かび上がるようなふわりとした感覚。まるで体からあたしという意識が抜け出て、別の場所から自分を見つめているように感じた。
(なにこれ?なにこれぇ!?)
「さっきから様子が変よ!どこか調子が悪いなら、ちゃんとお姉ちゃんに話しなさい!」
『……なんでもねぇ、じゃなくて、なんでもない。お姉ちゃん』
「っ……佑芽……?」
あたしがお姉ちゃんに向かって喋っている。でも、そこで話しているのはあたしじゃない。
不審がるお姉ちゃんとプロデューサーさんに対して落ち着いた様子でごまかすと、そうですか、とプロデューサーさんは納得したみたいだった。
それから、あたしは体に何の異常もないことから病院を退院できることになり、プロデューサーさんが呼んでくれたタクシーに乗って帰ることになった。
学園の寮に戻ってくると、寝ている(フリ)をしているあたしをお姉ちゃんが車から運んでくれて、ゆっくりとベッドに寝かしつけてくれた。
「よいしょ、っと……少し前なら軽々と抱えられたのに、ほんとに大きくなったわね。……ゆっくり休むのよ。おやすみ、佑芽」
お姉ちゃんの温かい手が頭を撫でてくれて、優しい声でお姉ちゃんは部屋から出ていった。
意識はあるのに体の自由が利かない。我慢できなくて暴れ回ろうにも、暴れる体がないからどうにもならなかった。
(ぐぬぬぬぅ……!はぁ~、ダメだ!あたし、幽霊みたいになっちゃった!)
実際に幽霊になったことなんてないけど、人が亡くなったときはもしかしたらこんな風になるのかな、なんて考えた。
もしかしたら、あたしが死んだときもこんな感じだった?でも、あの時はこんな感覚すらなかったような気がする。本当は死後の世界なんてないのかな?そう思いそうになって、意識だけでも頭をぶんぶんと振ってみせた。
あたしは今生きてる、だから不安になる必要なんてないんだ。そう思うと、何故か全身が実体を得ていくような気がした。
(この感覚……そうだ、あの時も……今ならいける気がする!うぉぉぉおおおおおっ!)
『…………なにっ!?』
「……えぇぇぇぇぇいっ!やったー!あたしの体、動けるようになったぁ!」
自由に声が出せるようになり、体が急に動くようになるとその場でぴょんぴょんと跳ね回り、全身で喜びを表現した。じっとすることなんてできないあたしにとって身動きの取れなかった時間は苦痛そのもので、自由に動けるようになった途端の解放感はすごく気持ちがいい。
『まじかよ。無理矢理体を取り返しちまうなんてな……これで二度目だぜ』
「あーっ!この声はさっきの!よくもあたしの体を好き放題してくれましたね!」
『人聞きの悪いことを言うな。お前が俺の事をバラそうとするから、秘密を守るためにちょっと体を借りただけだぜ』
「体を借りた!?乗っ取ったってことですか!?ひどい!最低だよ!」
『悪かったって、そう怒んなよ。俺にも色々と事情ってもんがあってだな、他の奴等に俺の事は話さないでくれるか』
「えっ?ど、どうしてですか?」
『どうしてもだ。一つはお前を危険にさらさない為だが……ま、話したところで普通は信じてはもらえねぇと思うがな』
「勝手に体を乗っ取って、それで黙ってろだなんて……エッチ!」
『エッチじゃねぇ!変態扱いすんな!』
ようやく声の正体、ウルトラマンゼロさんことゼロさんと意思疎通が取れると、あたしは徹底的に抗議をした。それから一時間くらい言い争って、『ウルトラ戦士の誇りが』とか、『本来の俺の強さはビックバンだ』とか意味が分からないことを言っているゼロさんにだんだんとイライラしてきた。
「もうっ!早くあたしの体から出て行ってくださいよ!」
『悪いがそうはいかねぇ!大体、俺が居なかったらお前は死んだままだったんだぜ!言うことは聞かねぇにしても、礼の一つくらいは言ってほしいもんだな!』
「むきぃぃい!別にあなたに生き返らせてほしいなんて頼んでないですけど!」
『なっ……お前、本気で言ってんのか』
「うっ……」
突然重みのある声でそう言われて、あたしは言葉に詰まった。
ムキになって言ってはならないことを言ってしまったという自覚をして、心の中で深く反省をした。
多分この人は善意であたしのことを助けてくれたはずだ。なのにあたしときたらこの人の話をちゃんと聞かず、酷いことを言ってばかりだった。
謝らないとって思ったけど、でも見えない相手にどう謝ったらいいのかわからなくて、あたしは胸の前でぎゅっと手を添えて考え込むだけだった。すると、突然部屋のドアがノックされた。
「佑芽、なに騒いでるの?」
「お、お姉ちゃん!?えっと、その……!な、なんでもない!大丈夫だから!」
あたしはドアの外には顔を出さず、声だけでお姉ちゃんに元気だと伝わるように振る舞った。
それでお姉ちゃんを誤魔化せるとは思えなかったけど、数分の間が空いて、「わかったわ」とドア越しに聞こえてから、間隔を空けてドアが閉まる音がした。
多分お姉ちゃんが自分の部屋に帰って行った音だと思うけど、その音が聞こえてからあたしはほっと息をつく。
『……お前がどう思ってるのかは知らねぇが、話だけでも聞いてくれ』
「……あの!さっきはあんなひどいことを言ってしまって、ごめんなさい!」
『気にしてねぇよ。むしろ、お前を混乱させてしまった俺も悪かったからな』
それからゼロさんはあたしにわかりやすく地球にきた理由を説明してくれた。
M78星雲、光の国から来たというゼロさんは、怪獣墓場という場所で侵略を企む宇宙人の軍団を発見して、侵略を阻止するために戦ったこと。
ウルティメイトフォースゼロという仲間の人達に背中を押される形で地球に向かう一団を食い止めるために戦っていたけど、不意打ちを食らって地球に落ちてしまい、そこからは高台で見たゼロさんの状況に繋がったみたいだ。
「侵略者ってことは、あのセミの宇宙人もその一人なんですか?」
『セミの宇宙人……?ああ、バルタン星人のことか。アイツもこの街に降りて真っ先に暴れ始めてたから、間違いねぇだろうな』
「ぐぬぬぬ!地球を侵略しに来たってのも許せませんけど、あたしの住む大事な街を壊すだなんてもっと許せません!」
『あいつらの中には俺達ウルトラマンへの復讐で地球を襲いに来たって奴もいるだろうが、それとは別で昔からウルトラマンと協力してた地球人達にも、相当な恨みを持ってたんだろうぜ』
「それ、逆恨みですよね!?もっと許せないじゃないですか!」
そんな悪い人達、もとい宇宙人達がいるだなんて想像もつかないけど、少なくともあのバルタン星人は悪意のようなものを持っていた気がする。
それにゼロさんの話だと、襲ってくるのはバルタン星人だけじゃないとのこと。
色々思うことがあったり、考えたことが山ほどあったけれど、それをうまく言葉にできずにいた。
ただでさえ頭を使うのは苦手なのに、異星人からの侵略なんていうスケールの大きな話を聞き続けて頭がこんがらがってきた。
あたしは一度頭を整理したくて、制服から練習着に着替えて、学園の周辺を走りに出かけた。
『おい、どこに行くんだ?』
「ランニングに行ってきます!頭がいっぱいになったときはいつも体を動かして、すっきりさせるので!」
『考えるよりまずは行動するタイプか。そういうの嫌いじゃねえぜ』
全力で走り出すと、ゼロさんは感心したようにあたしの横であれこれ聞いてくる。
そして、いつの間にか「もっと腕を振れ!」とか、「呼吸を乱すな!今のペースのまま走れ!」とかまるでレッスンのトレーナーさんみたいに発破をかけてきた。
(ゼロさんの言うことがスッと頭に入ってくる。さっきは難しいことばかり言ってる人だなって思ってたけど……なんだかすっごく楽しくなってきた!)
指示をクリアすると、次はもっと難易度を上げた指導をしてくる。それをこなすと新しい内容がどんどん出てきて、気づいたら夕方になるまでずっと色んな特訓をしていた。
「すごいです!こんなに楽しい特訓メニューがあるだなんて、あたし知らなかったですよ!」
『マジかよ、簡単にこなしちまうとは。レイトならひぃひぃ言ってたであろうメニューだったんだがな……』
「レイト?誰の事ですか?」
『ああ、悪い。別の宇宙の地球にいた頃に一緒にいた奴でな。そいつはサラリーマンをやってたんだが、まぁアスリートみたいなお前と比べるのはお門違いだったか』
「みたいな、じゃなくて、元アスリートです!」
『元ってことは、今は何やってるんだ?』
その質問を待ってましたとばかりに、あたしは両手を横腹に付けて胸を張る。
当然目の前にゼロさんはいないけど、声高らかに言葉を発する。
「ふっふっふっ!聞いて驚かないでくださいね、今のあたしはアイドルを目指して特訓中なんです!」
『アイドル?そりゃ意外な気もするが……どうしてアイドルを始めたんだ?』
「えへへ、やっぱり気になりますか?気になりますよね!?」
『なんだよ、もったいぶらずに教えろよ』
すごく興味を持ってくれていることが嬉しくて、あたしはついもったいぶってしまった。思えば入学式初日のときも、こんな風にあたしの話を聞いてくれていたのはプロデューサーさんくらいだったような気もする。
寮に向かって帰る道を進みながら、ゼロさんにだけ聞こえる程度の小さな声量であたしは答えた。
「あたしがここ、アイドルの養成学校である初星学園にいる目的は、勝ちたい人がいるからなんです。その相手は、あたしのお姉ちゃんなんですけど」
『もしかして、あの咲季ってやつか?一目見ただけでなんつーか只者じゃないオーラはしてたが、そんなにあのお姉ちゃんってのはすごい奴なのか?』
「もちろんですよ!すごいなんてものじゃないです!強くて、かっこよくて、あたしなんて全然歯が立たなくて、何をやっても最っ強のお姉ちゃんなんです!」
『……へぇ、最強ねぇ』
お姉ちゃんのことを興奮しながら紹介すると、ゼロさんは興味深そうに呟いた。
「お姉ちゃんとは何度も勝負をしてきたんです。スポーツも、テストの点数も、入学式の初日のレッスンの内容でだって勝負をして……でも、一回も勝てたことはなくて、悔しくて……」
『それで、その一回も勝てたことのないお姉ちゃんに勝つために特訓中ってことか。なるほどな』
「はい!あたしは今度こそアイドル勝負でお姉ちゃんに勝ちます!お姉ちゃんにはプロデューサーさんっていう味方が付いてますけど、そんな障害は乗り越えてみせますよ!」
『お前の自信のほどはよくわかった。けど、その最強のお姉ちゃんに勝つための秘策とかあるのか?』
「今のところはありません!」
『はぁ?それでどうやってお姉ちゃんに勝つんだよ。今まで真っ向から勝負を挑んでも勝てなかったんだろ?』
「うーん……ねえ、ゼロさん!どうすればお姉ちゃんに勝てると思いますか?」
『俺に聞くのかよ。そういうの、自分で考えて行動を起こしてみるもんだと思うがな』
あたしがそう尋ねると、ゼロさんは途端に呆れ返ったような様子だった。
初日のレッスンでもお姉ちゃんにぼろ負けして、既にアイドル勝負でも差は開き始めているような気がした。だからこそ色んな人にアイドルの事や、プロデューサーの事を尋ねて回って、その日のうちにバルタン星人の騒動に巻き込まれてしまった。
この数日間で、何にもできなかったことが悔しい。きっとその間でお姉ちゃんは実力を伸ばしていたはず。だとすれば、もうあたしとお姉ちゃんの差は開いているに違いない。
『アイドルのことはよく知らねぇが、相手が最強なのに何の成長もなしじゃ勝てないだろ』
「うぐっ……そんなの、あたしが一番わかってます!」
ゼロさんの言葉に立ち止まって、あたしは拳をぎゅっと握りしめた。
お姉ちゃんはいつだって先を走っている。スポーツだって、勉強だって、そして今度のアイドルだって。どんなに必死に手を伸ばしても、お姉ちゃんはもっと先へ、もっと高くへと行ってしまう。
「さっきも言ったじゃないですか。お姉ちゃんは最強なんです。あたしが寝てる間だって、絶対にトレーニングを欠かさない人なんです。だから……今のままじゃ、一生追いつけない!」
『相手が最強だって認めちまうなら、もう勝負は決まりじゃねえか』
「いえ、まだです!追いつけないなら、もっと速く走るだけです!届かないなら、もっと高く飛ぶだけです!あたし、お姉ちゃんに負けっぱなしで終わるのはぜぇーったい嫌なんですよ!」
寮の入口まで戻ってきたあたしは、誰にも見えない相手に向かって、ハッキリと言葉を叩きつけた。
「お姉ちゃんに笑われるのが一番悔しいんです!今度こそお姉ちゃんの度肝を抜いて、あたしのことを認めさせたいんです!そのために……ゼロさん、もっとあたしを鍛えてくれませんか!」
『……おい、自分が死にかけたばっかりだってことを忘れてねぇか?それに言ったろ。俺はアイドルについて全然詳しくないって』
「これは直感なんですけど……この人となら強くなれるって気がしたんです。あたしの勘はよく当たるんです!」
『勘って、お前な……俺はお前のいうプロデューサーってやつじゃねえ。それに、ウルトラマンとしての戦いは遊びじゃねぇんだ。お前だって一度死んでわかってんだろ』
「あたしだって、お姉ちゃんとの勝負は遊びのつもりじゃありませんッ!!」
あたしが大きな声を出して、ゼロさんから言葉が聞こえなくなった。
しばらくの間、遠くで聞こえる寮の人達の声だけが耳に届く。
それからどれほどの時間が経っただろうか、ようやくゼロさんの重々しい声が聞こえてきた。
『……言っとくが、俺は誰かを鍛えるとなったら手加減はしねぇぞ。俺もそうやって鍛えられて、強くなってきたからな』
「もちろんです!厳しい特訓とか大好きです!もっともっと、あたしにそういうことを教えてください!」
『いい根性だな。その言葉に二言はねぇな?』
「同じことを何度も言わせないでください。お姉ちゃんに勝つまではあたし、意地でも死にませんから!」
『──ははっ。そうか、ははははっ!』
あたしが断言した言葉を耳にして、ゼロさんは笑い出した。
馬鹿にしているっていう雰囲気じゃなかった。あたしの覚悟を聞いて、どこか嬉しそうで、それでいて楽しそうに笑っているように感じた。
『お前のこと、少しだけわかってきたぜ。自分の人生をかけてでも、勝ちたい相手。そいつと戦うために俺の力がいるってことか。面白くなってきたじゃねぇか……花海佑芽!』
「はい!」
『決まりだ。なら、その最強のお姉ちゃんとやらを追い越して、宇宙一の頂点まで駆け上がってやろうじゃねえか!』
「はいっ!これからよろしくお願いします、ゼロさん!」
銀河の彼方からやって来たあたしの師匠──ウルトラマンゼロ。
その出会いを含めて、こんなことがあったんだって誰かに話してもきっと信じてはもらえないだろう。だけど、この人とならあたしはアイドルになって、そして、あたしのヒーローを超えられる。
その勘はいつのまにかただの直感ではなく、自分の中で確信に変わっているような気がした。
?「ゼロ師匠ぉ!?俺まだ弟子として認めてもらってないんですけど!ウルトラ不条理ですぞ〜っ!」
そんな嘆きは、多分ゼロ本人には聞こえていない。