エデンの戦士が彷徨うのは間違っているだろうか   作:ノマド

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5話:邂逅日

 朝の冷たい空気が、ギルドの石造りの壁を通り抜けて講義室に流れ込んでくる。窓の外には、朝もやに霞むオラリオの街並みが広がっていた。どこか暗澹とした雰囲気をまとっているように感じる。崩れかけた建物の影が、まるでこの街の現状を象徴しているかのようだ。

 

 この世界に来て()()日目。やっとこの状況に腰を落ち着けられ、周りのところどころにあるほころびをより意識できるようになる。遠目に見える荒廃した建物、時折聞こえる喧騒──この街が『暗黒期』と語られるようになる所以を肌で感じる毎日だった。

 

「──つまり、ダンジョンでの探索の初歩はモンスターの『種族特性』を理解すること」

 

 赤い髪を黒いリボンで後ろに束ねたローズさんが黒板に張られたモンスターの線画を指差しつつ、低くも力強い声が石の壁に反響して部屋中に広がる。彼女の声、いや狼人(ウェアウルフ)特有のとも言うべきか、威厳があり聞いていると自然と息を潜めて耳を傾けてしまう。

 

「特に上層のモンスターなら集団行動を好むか否かは覚えておいて。上層であれば一緒に行動するのはその種族のみで近くに仲間が潜んでいるか否か──こうした判断材料を持っているだけで、探索の効率は格段に上がる。逆にこれを怠れば、後々必ず自分に返ってくるわよ」

 

 彼女の鋭い瞳が私を一瞥する。まるで、この知識が生死を分ける重要なものだと強調しているようだ。うなずきながら、メモを取る手を止めない。

 

「……けど、最近は基本が通用しないことも多くなっていることも頭に入れておいて」

 

 彼女の指が黒板の図の一つを指し示す。それはこの世界にきて散々戦ったあのモンスターの絵だった。

 

「フロッグ・シューター。本来は6階層付近に生息するモンスター……けど、今は4、5階層でも活動している……シキ、あなたも4階層探索で戦ったでしょうけど」

 

「ええ……」

 

 自分は本来の生息階層と違うことも知らず、ただ襲い来る奴等を倒すだけだった。まあこの世界に来て3日目、杖を初めて手にして戦っていた()()()に自分以外の冒険者がそれに気づき、それをギルド報告しかなり大ごとになったらしい。

 

「まあ、あの後説明されてからやっと状況が分かったんですけど……元々ギルドも6階層で異常に増えていた段階で対応に当たっていたのに、一部の個体が逃れて4階層にまで上がっていたんですよね」

 

 元々ギルドはフロッグ・シューターが6階層で増えていたことを把握し、大手の【ファミリア】にここ1ヶ月ほど前に駆除を要請していたが、4階層まで進出していたことを知った途端本格的な駆除計画を建てたという。

 

「冒険者の探索頻度が全体的に低下しているからよ。活発になっている闇派閥(イヴィルス)のせいで多くのファミリアが活動を縮小し、モンスターが増加傾向にあるの」

 

 彼女の説明を聞きながら、内心で焦りを感じる。この世界の状況はダンまち本編の9年後より思っていた以上に深刻なようだ。物語と知っていたダンジョンとはまったく異なる、生きた脅威がそこには存在している。

 

「さらに深刻な問題があるわ」 

 

 ローズさんの眉が少し皺む。

 

「最近では中層以降の特定地帯で怪物の宴(モンスター・パーティー)が発生しているの。フロッグ・シューターの例が可愛く見えるレベルで大量のモンスターが一斉に発生する現象、本来なら対応できる冒険者達でさえ敗走する例が出てきている」

 

「オラリオの治安悪化が、ダンジョンにまで影響を及ぼしている。冒険者たちが上層のモンスターを狩る頻度が減り、数が増えすぎて上の階層まで押し上げられてきている。これがフロッグ・シューターが4階層まで登ってきた原因の1つだけど……」

 

 ローズさんは足を運んで窓辺に立ち、外の霞んだ街並みを見つめる。その細身の背中から、言い尽くせない憂いが滲み出てくるように感じた。

 

「ダンジョンでモンスターから採る魔石は、貿易の要であると同時に、世界中の国々でエネルギー源から道具の素材まで、様々な用途に使われている。それらを賄う量を産出できるのは此処だけ……つまりオラリオの魔石産業が停止すれば、世界中が混乱に陥る」

 

「魔石産業が世界で唯一ということは、それだけオラリオの責任も重大だということですね」

 

「ええ、でも上層部のモンスターが産出する魔石は微々たる量。そのため貿易用の魔石を確保するためには中層以降での探索に力を入れざるを得ず上級冒険者はそれに駆り出され、本来上層部で戦える下級冒険者達は先ほど言ったように活動が停滞気味になっている……悪循環だわ」

 

 ローズさんの表現は、この街の重要性を改めて実感させた。だが同時に、その言葉の裏に隠された重み──彼女自身が長年この街を見守ってきたからこそ感じる、絶望と責任の両面が伝わってくる。

 

「オラリオの秩序が乱れれば、ダンジョンも狂う。これは因果応報というやつね。神々と人の希望と欲望で作られたこの街が、自分たちがそれらを利用してきたツケに飲み込まれようとしているんだから」

 

 その言葉はこの世界で生き延びるためには、単に強くなるだけではなく、この複雑な因果関係を理解し、自分の立ち位置を見極める必要があるのだと、痛感させる。

 

「どうしてこうなったかは、今度また詳しく説明するけど……」

 

 その経緯自体はダンまち本編でも語られていた……発端としては【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】の失墜が全ての始まりだ。

 

「多くの要因が重なっている。神々の諍い、ファミリア同士の勢力争い、そして……人間の欲望。誰かが得るために誰かが失う、そんな構造がこの街を蝕んでるの」

 

 この世界、このオラリオの闇の深さ。単純な善悪では割り切れない、複雑な人間関係や欲望の渦がこの街を荒廃させている。

 

「この街の闇に飲み込まれないように気をつけなさい。自分の目的を忘れずに、進み続けることね」

 

 忠告の言葉には、どこか親身な響きがあった。ローズさんはの態度は表面上は素っ気ないが、わざわざこんな忠告をしてくれたりと本当は私のことを心配してくれているのだろう。自分の目標は定まっている、『日本に帰ること』。これだけは絶対に揺るがないし、お世話になったローズさんやゲパルドさんのためにも()()()()()()()()()

 

「……ご忠告、ありがとうございます」

 

「まあ、まともな装備もするようになって、フロッグ・シューターを駆け出しで対応できた点から新人に絡む連中はいないようだけど」

 

 確かにそれらしい視線は感じていたが、今のところ害はない。とはいえダンまち本編でもそれらのチンピラまがいの冒険者も描画されていたので、より警戒すべきだろう。

 

「モンスターとの戦いは、人間同士の戦いとは違う。予測不能な動きや、常識外れの力を持つ相手もいる。まずは生き延びることを第1に考えて。無駄な英雄願望は命取りよ」

 

 彼女の目には、過去に経験した悲劇のような、深い陰りが見えたがすぐに切り替えて講義を再開した。

 

 

ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー

 

 

 ()()()()の洞窟内を、足音を立てないように慎重に一歩一歩進んでいく。壁面にびっしりと苔を、腰に差したナイフの刃先で丁寧に剥がし、袋の中に仕舞い込んでいく……1週間前には想像もできなかった光景だ。現代日本のオフィスで、蛍光灯の下に座り山積みの書類と向き合っていた自分が、まるで別の人生のように遠く感じられる。

 

 4階層での魔物討伐を数日間探索した結果を見ていたローズさんは眉をひそめて呆れたような口調で5階層に進む分には問題ないと許可してくれた。フロッグ・シューターも問題なく対応できている点を評価してのことだが、同時に『モンスターの傾向が変わり、洞窟の構造も複雑になる。戦闘はできるだけ避け、まずは環境に慣れることを最優先』と厳しく命じられ……その指示通り、無闇に戦わず苔を採集しながら環境を観察することをメインに行動している。

 

「これで今日の採集分は十分かな……」

 

 独り言のように呟きながら歩みを続けるが、冷たく湿った空気が肺に染み渡る。ダンジョンの空気はいつも重く、形容しがたい匂いが時々混じってくる──それでももう慣れたものだ。最初の時は必死で出口を目指していたのに、今では逆に生活費のため、強く為るためにこのダンジョンに潜っているのだから……。

 

 ──その時、遠くから水の滴る音とは明らかに違う響きが耳に届く。甲高い魔物の鳴き声と、金属同士がぶつかり合う鋭い音。誰かが魔物と戦闘をしているらしい。息を殺して足を止め、すぐ近くの洞窟の陰に体を隠す。この10日間の経験が教えてくれた。ダンジョンでは直ぐに状況を把握して、的確に行動判断することが生存の鉄則だと。

 

「「「「ギィィィ!グェッグェッ!」」」」

 

 聞き覚えのある魔物の鳴き声。フロッグ・シューターだ。だが、その数が尋常ではない。異常発生でもしているのか? 慎重に音のする方向へ移動する。幅の広い空間が開けて、そこでは6人組の冒険者集団が数十匹のフロッグ・シューターの群れと戦闘を繰り広げていた。

 

「盾を固めろ!右から新たな群れが来る!」

 

「了解!第2陣形に移行!」

 

 弓使いの威勢のいい掛け声が洞窟に響く。彼らの鎧や武器には、見慣れた像を模した紋章が刻まれている──【ガネーシャ・ファミリア】だ。

 

 ……ダンまち本編でも、指折りの大手派閥で治安維持も担っていると描かれていた。まさにその通りで、オラリオで過ごす中で街中のあちこちで忙しく活動しているのをよく目撃していたため直ぐに分かったのである。市民からの信頼も厚く、何か困ったことがあったら相談していたりとオラリオでは本当に欠かせないファミリアなのだ。

 

 恐らく、ローズさんから聞いた『駆除チーム』が彼らなのだろう──前線では身長190cmを超える二人の大男が、鉄のように分厚い盾を構え、魔物の群れの進撃をしっかりと食い止めている。その背後から、片手剣と槍を構えた2人の男性の攻撃手が、盾の隙間を突いて魔物の弱点を狙い、一撃ごとに確実にフロッグ・シューターを仕留めていく。さらに後方の安全な場所では、弓使いの女性が矢を弦に引きながらパーティ全体の指示を出し、その隣の魔法使いの女性が静かに魔法の詠唱を続けている。

 

「……凄い」

 

 思わず感嘆の声が漏れてしまった。

 

 タンクが前方で敵の注意力を引き、アタッカーが敵の数を減らし、弓使いが遠距離から援護と牽制を行う。そして魔法使いが大魔法の詠唱を終えるまでの時間を、全員が連携して完璧に稼いでいる。

 

 そもそも今まで()()()ダンジョン内で他の同業者である冒険者を目撃しなかったのだが、こうやって客観的に物語に出てくるようなパーティの戦い方を見ることでより自分がファンタジー世界に来てしまった実感を覚える。

 

 加えて、やっとこの世界に来て初めて他者の魔法を目撃することができた。魔法使いの女性が、木製の杖を握り締めて一生懸命に詠唱を続けている。周りにはホタルのように淡い光がまばらに立ち上り、足元には複雑な模様の魔法陣が柔らかく輝く

 

 その瞬間、魔法使いの女性が木製の杖を高く掲げた。

 

「我が手に宿る風よ、鋭き刃となりて敵を切り裂け──ウィンドカッター!」

 

 詠唱が終わると同時に、無数の風の刃が彼女の杖から放射状に放たれた。それらは前衛の盾持ちたちの頭上を擦り抜け、前方に迫るフロッグ・シューターたちだけを的確に刻み込み、多くの数が跳ね返るように倒れた。だが全ては殲滅できず、まだ十数体の残党が盾の隙間から前衛に迫る。その隙を突いて、盾持ちたちは盾を突き出してそれらを弾き飛ばし、背後の剣使いと槍使いが一気に前進し喉や腹などの弱点を突いて残党を殲滅していった。

 

(やっぱり自分の魔法とは()()、魔法陣が地面に出ないし詠唱による貯めも必要……しばらくソロ攻略は絶対になりそうだけど……)

 

 より収集してその光景を必死に観察する。あの魔法の威力は──自分が取得した『バギ』の魔法と大差ないように見えた。いや、むしろ威力はこちらが上かもしれない。しかしながら──

 

 【ガネーシャ・ファミリア】の団員たちは手際よく魔石を回収し始める。リーダー格の男が指示を飛ばす声が聞こえてくる。

 

「異常発生の原因を……」

 

「……最近、中層でも……」

 

 団員たちの会話が断片的に聞こえるが、それ以上に頭の中では別の思考が巡る。

 

(……自分の、ドラクエの魔法は一気に広範囲を焼き払うような破壊的なものだけど、彼女の魔法は的確に味方を避けて敵だけを攻撃できる。これは魔法の特性の違いなのか、それとも訓練で磨いた技術なのか……今のところ戦闘で使う際に不便はないけど――こういう細かい制御ができるかどうかも試してみよう。このような集団戦では彼女のような制御された魔法の方が、はるかに有用なのは明らかだし)

 

 【ガネーシャ・ファミリア】の団員たちは手際よく魔石の回収を終え、次の探索に向かって移動を始めた。その旗印がひときわ目に留まりこの混沌の時代においても──秩序を守る大派閥の威厳が感じられる。

 

(……集団戦か)

 

 この世界では当たり前のことだ。ダンまちの本編でも何度も描かれていたが目の前で実際に展開されるパーティの連携戦法は、想像以上に圧倒的なものだった。彼らは見事な連携で自分1人では到底太刀打ちできない数の魔物を、あっさりと制圧してしまった。

 

 あの戦い方――自分はあの連携を1人で再現できるのだろうか?

 

 『職業選択の組み合わせの切り替え』と『どうぐ欄の瞬時な装備の切り替え』。状況に合わせて、戦士に変われば盾を持ち、僧侶になれば回復を担い、魔法使いになれば攻撃魔法を撃つことができる。武器と職業の切り替えの速度的には問題ない、だからこそ頭に描いていた将来的な戦い方の理想図の軌跡。

 

(しかし……)

 

 現実は甘くない。いざそのモデルとなる集団戦を見るとその難しさに直面する。

 

 岩陰から身体を少しだけ出し、先ほどの戦闘の痕跡を見つめつつ考察を続ける。頭の中であの戦闘シーンが何度も再生される。タンクの盾の構え方、アタッカーの間合いの取り方、弓使いの射撃タイミング、魔法使いの詠唱のリズム――1つ1つが計算され尽くした動きだった。

 

「……できるだろうか」

 

 無意識に呟く。この世界に来てから、独り言が多くなったような気がする。誰とも話す機会がなく、思考が内に籠もりがちなのだ。

 

(とにかく足掻くしかない、トライ&エラーの精神だ。結局のところ『戦わなければ……生き残れない』のだから――いやこれの元ネタ的には生き残れなかったから……『生き残って強く為ること』にしよう)

 

 それに加えて第1目標である、エデンを探すという目的もある。ウラノス様から与えられた情報によれば、千年以上前に失踪したとのことだが……ある程度余裕が出来てからはその調査も始めなければならないのだ。やることが山ほどある。

 

 ふと、背中のバックパックと腰の袋に手をやる。中には今日採取した苔と、対峙したモンスターから回収した魔石が入っている。日に日にその重さは増していき、それらを換金してきたことでヴァリスもある程度貯まってきた。始められる()()()としてはいい頃合いだ。

 

 そろそろ切り上げようと来た道を戻り始める。

 

 歩きながらも、頭の中は先ほどの光景でいっぱいだ。あの連携を1人で再現するにはどうすればいいか――職業変更の選択、最適な武器の瞬間切替え、状況判断の迅速化……。

 

 こんなに必死に色々考えこむ()()とサラリーマン時代での疲れ果てていた()()が妙に一致しない存在だと皮肉さを覚える。しかしながら周りの警戒を怠らず、ひたすら()()()()()()()()を巡る思考に浸る。

 

 

ーー✳︎ーー✳︎ーー✳︎ーー

 

 

 ギルドでの換金を済ませて、次は納品のためにこの1週間通い詰めている()への道を歩き出す。

 

 ダンジョンでの探索による倦怠感を強く感じる中で、街の喧騒が耳に届き始める。しかし今日も無事に帰還し、魔石とドロップアイテムを換金できた安堵感が少しだけ肩の力を抜かせてくれる。

 

「さて、今日も無事に納品できれば……」

 

 独り言のように呟きながら、人通りの多い大通りへと足を向けた。すると前方から見慣れた小さな影が目に入った。茶髪の犬人(シアンスロープ)の少女、ナァーザが大きな買い物袋を抱えながら、懸命に歩いている。

 

 彼女が働く道具店が、ここ1週間苔を納品している場所だ。

 

 あの後結局色々な店でも納品しようとしたが極東顔の異邦人、新人ということで舐められやすく安く買い叩かれそうになったのを何度も経験した。結果、最終的に彼女がいる道具店へ納品を続けることを決めたのである。

 

 またここ数日、店先で少しだけ会話し……顔見知り程度になった愛柄だ。話をする中で彼女はまだ9歳ということを知ったのだが、大人びた物言いをする印象的な子だった。

 

(声をかけようかな……いや、迷惑だろうか)

 

 少し迷ったが、彼女の抱える袋が明らかに重そうだった。付き人もいないようなのでためらいながらも歩みを速め、彼女の横に並んだ。

 

「ナァーザ、お疲れ様です。お手伝いしましょうか?」

 

 彼女は驚いたように耳をピンと立て、その小さなの瞳をこちらに向ける。

 

「あ、シキさん。いえ、大丈夫ですよ。これぐらい平気ですから」

 

 そう言いながらも、明らかにバランスを崩しそうな歩き方だった。思わず微笑みながら呟いてしまう。

 

「遠慮しないでください。自分も道具店に向かうところですし、ちょうど良かったです」

 

 彼女は少し考え込むような表情を見せた後、ため息をついて同意した。

 

「……じゃあ、お言葉に甘えます。ありがとうございます、シキさん」

 

 買い物袋の一部を受け取ると、予想以上に重かった。中には様々な食材や日用品が詰め込まれているようだ。

 

「随分とたくさん買い込みましたね」

 

「ええ、店長の頼みで。値段もどんどん上がってるし、まとめ買いするようにって」

 

 彼女の表情が少し曇る。今のオラリオならではの事情だ。闇派閥(イヴィルス)の横行で物資の流通が不安定で、さらに状況を悪化させている。重い袋を持ち直しながら、そっと尋ねた。

 

「大変ですね。いつも一人で買い物に行っているんですか?」

 

「ううん、たまに店長も一緒に来るけど……今日は忙しくて……」

 

 彼女は胸を張って言ったが、その仕草がどこか幼さを強調していた。

 

「だって、私だって冒険者でもあるんだから。こんなの朝飯前よ!」

 

 その言葉に、内心ほっこりとした気持ちになる。年齢の割にしっかりしているが、所々に子供らしさが滲み出る姿は愛おしい。だが同時に、脳裏には未来の彼女の姿が鮮明に浮かび上がる。

 

「そうでしたね、【ミアハ・ファミリア】所属でしたっけ?」

 

「ええ、でもまだレベル1だから……」

 

 ナァーザの声が少し小さくなる。

 

「でもいつか、立派な()()()になるんだから!」

 

「…………きっと()()()()よ、応援してますから」

 

 自然と笑みを浮かべて答える――だが、その笑みは唇の端だけが上がるだけの、心のこもらないものになっていることに気づく。自分は彼女の辿るかもしれない未来を知っている。いつか彼女はレベル2に到達するが、ダンジョンでモンスターに片腕を食われ、さらに追い打ちをかけるような目に遭って生死を彷徨うことになる。そのトラウマから迷宮に足を踏み入れることすらできなくなり、失われた腕は義手に置き換えられるがその高額な治療費が【ミアハ・ファミリア】を没落へと追いやるのだ。

 

 自身の口から出た「冒険者になれる」という言葉が、喉の奥で汚く渦を巻く。この世界がダンまち本編の歴史通りに進むという確信はまだない。が、彼女がその悪夢のような未来を辿る可能性があることを知りながら、偽りの励ましを口にしてしまったのだ。彼女の純粋な願いが最悪の形で実現し、心と体、そして所属するファミリアまでも壊してしまう可能性を踏まえているのに、そんな言葉を吐いてしまったことへの葛藤が胸の奥を締め付け、嫌悪感が広がる。

 

 その後はその気分を表に出さないように内心必死になりつつも、並んで歩きながら些細な会話を交わした。ナァーザが道具店の仕事の話をし、自身がダンジョンでの苔採集の話を少しだけ共有する――内心そんな気分であったが、同時に奇妙なことにこの短い会話が自身の心をほんのり温かくしてくれた。この世界に来てから、誰かとこんな風に気軽に話すのは初めてだったかもしれない。

 

「シキさんは丁寧な話し方ですね。他の冒険者とはちょっと違う」

 

「そうですか? 特に意識はしてないんですが……」

 

「うん、みんなもっと粗暴だし、すぐに威張りたがるの。シキさんはそうじゃないから、話しやすいよ」

 

 ナァーザの率直な感想に、少し照れくさくなる。まあ現代日本での社会人生活が染みついているのだろう、すぐにはこれは抜けそうにない。

 

 そして市場地区に差し掛かった頃、人通りが一層多くなった。露店が所狭しと並び、活気のある喧騒が辺りを包んでいる。しかしよく見ると、店主たちの表情にはどこか緊張感が漂い、所々で武装した冒険者たちが警戒しているのがわかる。

 

「最近、市場でも事件が増えてるんだよね」

 

 ナァーザが小声で呟く。

 

「昨日も隣の通りで強盗があったらしいし……」

 

「危ない目に遭わないように気をつけないとですね」

 

「うん。シキさんも気をつけてね。あなたみたいな良い人、減っちゃうから」

 

 その言葉が終わらないうちに──轟音が街を揺るがした。

 

 ドッ!

 

 おおよそ日本ではまず聞かないであろう音。最初は何が起きたのか理解できなかった。爆発音とともに市場の一角が炎に包まれ、人々の悲鳴が炸裂する。空中に舞い上がった瓦礫が雨のように降り注ぎ、人々がパニック状態で逃げ惑う。

 

「きゃっ!」

 

 彼女は悲鳴を上げ、買い物袋を落とした。即座に状況を把握しようとするが、煙と混乱で視界が悪い。

 

(テロだ! 闇派閥(イヴィルス)!)

 

 頭の中で警鐘が鳴り響く──この世界に来た初日、ダンジョンの入り口でも経験した……あの爆音。

 

「ナァーザ、こっちです!」

 

 落ちた袋と彼女の手を握り、すぐ近くの出店の影に引きずり込んだ。彼女は恐怖で震えており、大きな瞳に涙が浮かんでいる。

 

「だ、大丈夫ですか? 怪我は?」

 

「ない……でも、あれ……」

 

 彼女の視線を追い、場の惨状を覗き見る。あちこちから現れた黒い装束の集団が爆発する何か……恐らく魔石を加工したものであろう爆弾を投げつけながら、店舗を破壊し、逃げ遅れた人々を襲っている。闇派閥(イヴィルス)の構成員だ。加えて、路地に逃げ込んだ人達にも追撃し始めた。

 

(まずい、ここも安全ではない。もっと離れないと)

 

 ナァーザの手を握りしめ、低く声をかけた。

 

「移動しましょう。ついて来れますか?」

 

「う、うん……」

 

 しかし、ナァーザの足が竦んで動かない。恐怖で足がすくんでいるようだ。

 

(無理にでも連れて行くべきだ、その上で──この状況で最適なのは?)

 

 メニュー画面を出し、直ぐに決断する。

 

ーーーーーー

【シキ】

レベル:8

HP:78/78

MP:28/45

職業:武闘家★★★☆☆☆☆☆

かけもち:盗賊★★☆☆☆☆☆☆

ーーーーーー

 

 ()()を切り替えるとホイミ等の魔法が使えなくなったことを感じるが、それに反比例して体が身軽になった感覚が湧いてくる。

 

「失礼します」

 

 そう告げて、荷物と共に彼女を軽々と抱き上げた。システムの力なしでもこれくらいなら、9歳の少女など軽いものだ。

 

「えっ? し、シキさん!?」

 

「安全な場所まで移動します。しっかり掴まっていてください」

 

 市場の様子を観察する構成員の数は10人ほどか。武装も様々で、明らかに訓練された動きをしている。一般の冒険者よりも危険な連中だ。

 

 意識すると、遠くの複数の箇所でも同じような爆発音。どうやら、このテロはこの市場だけではないらしい。

 

(この規模……【ガネーシャ・ファミリア】達の様な治安維持対応の人はもすぐには対応できない──)

 

 ナァーザの震える小さな体を抱きながら、冷静に状況を分析する。煙と埃が混じった空気が肺を刺すように疼く。市場の方からは続く爆発音と、人々の悲鳴が不気味に反響してくる。

 

 タイミングを見計らって出店の影から次の隠れ場所へと素早く移動する。現状の()()()()の補正が最も高い組み合わせ、()()()()()のおかげだ。煙と瓦礫が散乱し人々が混乱するの中でも俊敏な動きを可能にしてくれる。そうして何度か移動を繰り返すと、

 

「シキさん……早いね」

 

 懐から漏れる小さな声に、一瞬だけ視線を落とす。ナァーザは震えてはいたものの、恐怖よりも驚きの方が先に表れており、少し余裕を持った口調で話している。肩口に滲む涙の感触は残るものの、彼女が少しでも安心できているのが確かだった。

 

「大丈夫です。必ず守りますから」

 

 さらに市場の中央部から離れた位置にある路地の角に身を潜める。周囲からは続く爆発音と人々の悲鳴、闇派閥(イヴィルス)の構成員達が叫ぶ威嚇の声が聞こえてくるが多少落ち着いた場所に避難できた。

 

(……ここまで来れば一旦様子を……)

 

「あ……」

 

 突然、懐中のナァーザが小さく息を呑んで指を差し出す。その指先の方向を見ると、遠目に通りの中央に取り残された──1人の少年。

 

 その少年に向かって、構成員の男が剣を握って向かっているのが見えた。

 

「助けなきゃ……!」

 

 ナァーザが身を乗り出そうとするのを、しっかりと抱き留めて止める。同時に意識を集中させ、()()()()()()()()()()、『どうぐ欄』より投擲用に『よろずや』で買っていた()()()()()()()を取り出す。

 

ーーーーーー

【シキ】

レベル:8

HP:78/78

MP:28/45

職業:船乗り★★☆☆☆☆☆☆

かけもち:盗賊★★☆☆☆☆☆☆

ーーーーーー

 

 ここ数日、練習していた()()を想起し……浅く一呼吸した瞬間、世界が一瞬だけスローモーションになったような感覚が襲う。周囲の喧騒や爆発音が遠ざかり、視界はただその男の剣の鍔だけに絞られる。その瞬間、横に腕を振り抜き──ナイフを放った。

 

「シッ!」

 

 その瞬間、空気が弾ける音と共に()()()()()の補正によって走る鈍いブロンズ光。導かれるような軌道を描き、男の方向へと一直線に飛ぶ。

 

 闇派閥(イヴィルス)の男が剣を振り下ろそうとする瞬間──ナイフは剣の鍔の根本に正確に命中。衝撃で男の手から剣が弾き飛ばされ、遠く離れた位置まで滑るように地面を転がる。

 

「なっ……!?」

 

 男が驚きに染まった様子で周りを見渡し、警戒を始めた。どうやら、どこから飛んできたか分からないようだ。しかし、傍にいる少年は怯えて動こうとしない。

 

(ナァーザを抱えて、こちらに誘導してしまうリスクが……いや正面からの軌跡に気づかないとなると、もう一撃いけるか?)

 

 さらに追撃を掛けようとブロンズナイフを取り出した、その瞬間、

 

「続け! 正義の執行だ!」

 

 その場を一瞬にして静まり返るような、清々しい大声が市場に駆け抜けた。

 

 すぐにその声の主のほうへと視線を向けると、武装した5名女性集団が市場の入り口から一斉に突入してきた。各々の武器を振り上げ、闇派閥(イヴィルス)の構成員たちに向かって突進するのは──

 

「「「アストレア・ファミリアだ!」」」

 

 逃げ惑っていた人々の中から歓声が上がる。老若男女問わず、この反応である。……彼女らの噂はこの世界に来て1週間だがそれとなく耳に入っていた。このオラリオの治安維持で活躍する【ガネーシャ・ファミリア】と並ぶ、剣と翼のエンブレムを背に正義を掲げるファミリア。

 

(! あれが……)

 

 ナァーザを抱きしめたまま、路地の影から状況を見守った。【アストレア・ファミリア】団員たちは訓練された手つきで闇派閥(イヴィルス)の構成員を次々に制圧し、混乱した市場の秩序を取り戻そうと奮闘していた。

 

 先頭で指揮を執るのは赤髪の少女──彼女のことは知っている。【アストレア・ファミリア】の団長、アリーゼ・ローヴェル……『アストレア・レコード』を代表する登場人物だ。

 

 彼女の号令と共に、団員の規律正しい動きは、混乱した状況の中でも明らかに目立ち、瞬く間に場を制圧し始める。

 

「右側から回り込んで! 逃がすな!」

 

 アリーゼの声が鋭く響く。

 

「了解しました!」

 

 団員たちの返事が重なる。

 

 その光景を見ながら、ほっと息をついた。ナァーザをしっかりと抱き、路地の影に身を隠したまま状況を見守る。彼女の震えはもう収まっていたが、まだ自分の服の裾を強く握りしめている。

 

「あれが【アストレア・ファミリア】……」

 

 内心では複雑な思いが去来する。彼女たちの活躍は【アストレア・レコード】を読んでいたので知っていて──彼女らもまたナァーザと同じ暗い未来があるのかと脳裏にその光景がチラつく。

 

「もう少しここにいて、落ち着いたら移動しましょう」

 

 次々と鎮圧される市場。もうこの調子なら大丈夫だろう。ナァーザに声をかけ、立ち上がる。

 

 ──その時、背後から冷たい声が響いた。

 

「動くな」

 

 一瞬で背筋が凍りつく。ゆっくりと視線を後ろへ向けると、そこには金髪のエルフが立っていた。恐らくこれまで会ってきた女性の中でも最も……こんな人がいるのかと戦慄するレベルで整った顔立ち。青空を彷彿させる澄み渡る瞳は鋭く、手にした剣が自身の首元を指している。

 

「その娘を離せ」

 

 ()()()()()()()の声には、磨き上げられた短剣のような鋭さが宿り、その裏には一切の迷いすら存在しなかった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! これは完全な誤解です!」

 

 喉元が詰まりそうになりながら慌てて叫んだ。この状況がどれだけ危険なのか、一瞬で理解した。

 

 ナァーザもすぐにリューの方に小さな体を向け、声を張り上げて叫んだ。

 

「あの! シキさんは闇派閥(イヴィルス)じゃありません、剣を下ろしてください!」

 

 しかし、リューの凍りついたような瞳はほんの少しも緩まず、その表情は鉄の仮面のように変わらなかった。

 

「ナイフを持っているな。彼女に何をするつもりだ?」

 

 その言葉を聞いてはじめて、右手に握り締めていたブロンズナイフに気づいた。

 

(しまった……新しく投げようと出したままだった!)

 

 この緊張下でそのまま握り続けていたのだ。心臓がドキドキと激しく鼓動し、慌てて刃先を地面に向けて静かに足元に置いた。

 

「違います! これはさっき闇派閥(イヴィルス)が少年に襲いかかっていたのを防ごうとして……」

 

「リオン、待って!」

 

 遠くで指揮していていたはずのアリーゼが鎧の金具をカチカチ鳴らしながら駆け寄ってくる。

 

「アリーゼ……ですが」

 

「この()の言う通りだよ、彼は少年を助けてただけ」

 

 アリーゼは自分の方に視線を落とし、指をこちらに向けてにっこり笑う。

 

「さっき遠くから見てたけど、見事な投擲だったわ。あの距離で相手の剣を正確に弾き飛ばすなんて……速度も申し分なし! 100点満点!」

 

 そんな陽気なアリーゼのセリフに、場の雰囲気が一気に緩む。どうやら自身の行動の一部を見ていたらしい。

 

「私が保証する。彼は大丈夫よ」

 

 アリーゼの言葉に、リューが剣を下ろしを鞘に収め、肩の力を一気に抜いた。その絶対零度な表情もすぐに収まり……気まずい顔となる。

 

「申し訳ありません、誤解をしてしまったようで……」

 

「いえ、そんな」

 

 胸につかえていた息を一気に吐き出し、ほっとした。汗が額から流れ落ちてきた。

 

「緊急事態ですから、そう反応するのも当然ですよ」

 

 それをわき目にしつつ、アリーゼは話を畳み掛けてくる。

 

「あ! 自己紹介ね。私は【アストレア・ファミリア】団長のアリーゼ・ローヴェル。君は?」

 

 こちらを値踏みするような仕草だが、不快感が全くない。ある種の()()()()()ともいうべきか、すでに場は彼女のペースに支配されていた。

 

「……シキと申します。【エデン・ファミリア】に所属しています」

 

 名乗ると、アリーゼの目が輝いた。

 

「【エデン・ファミリア】? 聞いたことないなあ。新しいの?」

 

「ええ、最近設立されたばかりで……」

 

 質問を軽くかわしながら、内心では冷や汗がにじむ。

 

(あまり深く追求されると困るけど……嘘が通用しなさそうな相手だ)

 

 アリーゼはゆっくりと自分の周りを1周するように観察し、顔を近づけてくる。彼女の容姿もまた、非常に整っている絶世の美女、正直より緊張してしまう。

 

「黒髪に黒目……そしてその顔つき、あなた極東出身?」

 

「……日出づる、東の国(日本)出身です」

 

「へえ、そうなの……」

 

 アリーゼは再度前に立つ。そのタイミングでナァーザは傍に寄って来る。

 

「あなた【ミアハ・ファミリア】のお店の店員さんよね、前に見かけたことがあるわ」

 

 迷惑かけてごめんなさいと、ナァーザの頭を撫でるが自分の袖口を小さな手で強く引っ張り、リューの方に向かって頬を膨らませた。

 

「シキさんは優しい人なんだから! 間違えないでね!」

 

「!? 先ほどは失礼しました! 状況を正確に把握せず、無闇に剣を向けてしまって……申し訳ない」

 

 リューが慌てて一歩前に進み出て、少しうつむき加減でナァーザを見つめながら言った。先ほどの姿と打って変わって、年頃の少女が幼女に平謝りする奇妙な光景に少し吹き出しそうになる。

 

 アリーゼは周囲の荒廃した市場を見回し、眉をひそめた。倒れた店舗の看板や、散らばった野菜の残骸が目に入る。

 

「わたしたちはまだここに残るつもり。シキ君は……この娘を家まで送り届けてくれる?」

 

「もちろんです、というより元々そのつもりで一緒にいたんです。必ず送り届けます」

 

「じゃあ、お願いね」

 

 アリーゼは明るく手を振り、再び仲間たちの方に走り去って指揮を執り始めた。その背中は逞しく、頼もしかった。リューは少しためらいながらも、自分の目を一瞬だけ見つめてうなずいた。

 

「気をつけてください。まだ辺りに闇派閥(イヴィルス)が潜んでいるかもしれない……安全とは言えません」

 

「はい、周囲には十分注意します」

 

 そう言い残し、傍にいるナァーザに申し訳ない顔をしながらリューは去る。その姿を見届けたナァーザが小さく息を吐き出して肩を落とした。

 

「……あのエルフの人、すっごい怖かった」

 

「ナァーザのことを心配していたんですよ」

 

 口を小さくするナァーザを見下ろしつつ、頭を軽く撫でた。

 

「さあ、もう行きましょう」

 

 ナァーザは大きくうなずき、自分の手を小さな手で強く握りしめた。その小さな手の温もりが、今まで緊張していた心を少しずつほぐしてくれるようだった。

 

 荒れ果てた市場を抜け、比較的被害の少ない人気が多い大通りを通って道具店に向かう途中、ナァーザが小さな声でつぶやき始めた。

 

「さっき……あの男の子を助けようとしたとき、すごくかっこよかったよ」

 

「咄嗟にナイフを投げただけでしたし、結局彼女達が来なかったらどうなっていたか……」

 

 苦笑しながら答えた。さっきの咄嗟の行動を思い返すと、まだ心臓が鼓動する。彼女を守ることを優先すべきだったのにあの行動は……()()だったのか。

 

「でも、あんな遠い距離で正確に相手の剣に当てるなんて、普通の冒険者じゃ絶対にできないよ」

 

 ナァーザの目が星のように輝いている。その瞳には純粋な敬愛の念が映っていた。

 

「シキさんって、本当はすごく強いんじゃない?」

 

 胸には複雑な思いがよぎる。この力はシステムのおかげだ――そう言えばどれだけ説明が楽だろうに。だが、その秘密は誰にも明かせない。システムの存在が知られたら、自分だけではない、この世界で知り合った人達に危険が及ぶかもしれない。

 

「まさか! 冒険者になってまだ1週間くらいの駆け出しです」

 

 遠目に見えるバベルが夕日に照らされて放つ反射光に目をひそめて、そう答えるのが精一杯だった。




評価・感想ありがとうございます。じわじわと数が増えてきて、戦々恐々です。戦闘描写ってホントに難しい……。
意図してはいなかったのですがタイトルが3文字縛りになっているのに気づき、まあこのままでいいと決めたはいいもののより頭を捻ることになる今日この頃です。文字数を抑えればもっとも早く投稿できるのですがどうしても増えてしまう・・・1話の文字数って多いと読みづらいのでしょうか? であるならばもっと小分けにしようかと考えてます。
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