【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね??? 作:むにゃ枕
01 一方的に殴られる恐怖を教えてやる!
連邦政府の高官の娘に生まれて、ニュータイプ能力というチートがあった。しかし結構生きづらい。ジャブローの家に引き籠っていても、政略結婚の道具になるだけだ。
だから、地球連邦軍に入った。私が自由になるために。
原作知識を活かして手の届く人を救って、より良い未来を齎したい。それが私の役割だと思うから。
な〜んて、高潔なことを思っていたのは一瞬でした。
政府高官の娘という肩書は非常に便利で、私はポンポン出世していった。
周囲には、私の顔色を伺うカスがたくさん。そして日和見で私をよく思わない真面目な軍人。それから私を諌めるほんの一握りのクソ真面目な連邦軍人。
こんな環境で増長して腐ったのって私が悪いの?? ええ?
私を政略結婚のための道具としか見ていない父親。愛人に家を追いやられ病んだ母。我が物顔で家に居る愛人。金はあるけど愛が無い家庭だ。
我ながら最悪の家庭環境である。そして、軍隊でも家柄のおかげでチヤホヤされるので、私の性格は腐れ果てた。
もう終わりだよ。この連邦政府。私の性格もおしまい。親のコネ使い回りの天下りのカス。私は、連邦政府の寄生虫です。
「ハッチ解放。スカーレット隊発進しろ!」
オペレーターの呼び掛けだ。緊張しているようで声に硬さがある。
「スカーレット隊、発進します」
新人だらけのスカーレット隊がぎこちなく宇宙へと上がってくる。
「リラックスしていこう。楽な相手だ」
「りょ、了解です」
私のフネであるグレイファントムから、艦載モビルスーツが次々に吐き出されていく。目標はオデッサの敗戦で大量に上がってきたジオンのHLVだ。原作知識を活かしてスコアを稼ぎに来たのである。
「ディープブルー隊は、私と長距離狙撃の慣熟訓練を行う。相手はHLVだ。外すなよ」
私がコネで貰ったグレイファントムは新造艦である。モビルスーツ隊も新編部隊であり、スカーレット隊、ディープブルー隊は素人集団だ。
なので、ボーナスステージで経験値を積みに来た。チャンスは活かさなければ。
「あ…あの、メラン大尉。これは、戦時国際法違反なのでは?」
「ジャス中尉。なかなか良い疑問だ。しかし、ジオンのHLVは降伏していないし、国際法上問題はない」
ないったらないのである。
親のコネクションでうちのモビルスーツは全機がジムスナイパーⅡだ。ペガサス級強襲揚陸艦に最新鋭モビルスーツを積んでおいて戦果を挙げられなければ無能である。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね…! 死んじゃえぇぇ!」
「クソ! やらせない!! 俺の仲間を守る!!」
「へぇ〜。そんな重力仕様のザクで何が出来るんですか? もうマシンガンもなくてヒートホークだけでしょう? 一方的に殺される恐怖と怒りを教えてあげますよ。アイランドイフィッシュの恨みをね…!」
絵に描いたような強化人間っぷりを発揮するのは、私がオーガスタ基地から拾ってきた被検体である。名前はリベ。復讐者だからリベだ。彼女の元の名前は知らない。
「大尉…! あれは南極条約違反です! リベ准尉を止めてください!」
「ジャスくん。中尉である君の方が階級は上だろう? 命令したらどうかな?」
「……そ、それは」
黙るなよ。ペーペーだけど君は次席指揮官なんだ。しっかりしてほしい。
私のMS部隊はスカーレット隊、ディープブルー隊、メラン隊で構成されている。メラン隊には、リベとスカーという2人の強化人間がいる。
リベは、アイランドイフィッシュ出身でジオンへの憎しみを増幅されたタイプで殺人狂の拷問好きだ。
スカーは、傷付けたり傷付けられたりするのが好きなタイプ。リスカ跡が目立つ強化人間である。
オーガスタの廃棄品だったものを拾ってきた。それからセックスしないと出られない部屋に2人を閉じ込めてレズセさせた。
それ以来、共依存していて扱いやすくなっている。片方を殺すと脅せば言う事を聞くため、運用しやすい強化人間だ。
「クソォォォ!! 殺してやる! お前ら全員ぶっ殺してやる!! 動けよ! 動けって言うんだ!」
「心が傷付いてますよね? 悔しいですよね? 自分だけ生き残って苦しいですよね? ボクそういうの大好きなんです。人が苦しむところを見ているとボクだけが不幸じゃないって思えるんです!!」
「なんだお前は…?」
「勿体ぶって甚振られて、最期には死んじゃうかもしれない。それってとっても傷つくことですよね!! そういうのボク大好きなんです」
ザクのパイロットが怨嗟の声をあげている。趣味が悪い。敵はサクサク殺すべきだ。遊ぶべきじゃない。
「そろそろだ。ジオンのパトロール部隊が来る前に撤退する」
撤退の合図を出し、スカーレット隊、ディープブルー隊が戻ってくる。しかし強化人間の2機が戻ってこない。あのイカレクソレズ共!! 撤退って言ってんだろ!
予想通り撃ち放題フリータイムは終了した。敵の増援が来たのだ。こちらは素人集団なので損害は避けたい。楽して勝つのだ。ジオンよ、卑怯とは言うまいな?
「おっ、輸送艦だ。603か? ヅダを出してきたってことはそうだな」
強化人間コンビに挑んだヅダは、速度勝負に出たようだ。しかしジムスナイパーⅡの性能の前に、速度を出し過ぎて自壊した。
そもそもジムスナイパーⅡの方が出力と推力が高いんだよね。ヅダはゴーストファイターだったよ。
敵艦が続々と来ている。ロングレンジ・ビームライフルで砲身を使い捨てながらムサイ級を沈めているが、私の狙撃能力だって無敵ではない。私は遠距離芋砂ウーマンだから近付かれたら死ぬ。
「おい! 置いていくぞ!」
苛つきを隠せない。早くしろっ! 行動が遅いんだよ! いつもレズセしやがって!
ようやく戻ってきた2人に反省の色はない。戦闘後のモビルスーツが並ぶ格納庫でイチャついてやがる。
「懲罰房行きだね」
「そ…そんな」
「私は敵を甚振って楽しく殺してただけなのに……救いは…救いはないんですか?」
コイツらは同族嫌悪はあるものの、共依存しているので、引き剥がすと精神ダメージを与えられるのだ。歯向かったら片方を人質にすると簡単に処分できる。とても便利で画期的な強化人間の運用方法だ。
グレイファントムの初陣としては上々の結果だろう。この分ならスカーレット隊も開始一分で全滅ということにはならないはずだ。
艦長であるマシケ少佐と、その他幹部を交え今回の戦闘についてのカンファレンスを行う。
マシケ少佐は小太りのハゲだ。脂ぎったおじさんで小物である。自分第一の事なかれ主義者で私と気が合うタイプだ。私の方が立場が上なので実質的には部下だ。グレイファントムは私ことメラン・メラーラ大尉の私兵集団と言える。
「今回の戦闘については、私を含めた新兵が戦場の空気を吸う良い機会になったと思う。それに、スカー軍曹とリベ准尉の働きも見えた」
「大尉、あの2人はなんなのです? 公然と性行為を行なっており艦の風紀を悪くしています。何らかの性依存です。医療者としては見過ごせません」
すごく真っ当な倫理観だ。びっくりするくらいの真っ当さである。医療者だし当然か。
「む? 知らないのか? オーガスタと聞いた時に察しなかったのか?」
「リベ准尉に関しては凄腕のモビルスーツパイロットとしか……それにスカー軍曹については全く知りません!」
「知る必要は無いよ。あの子たちは強化人間だ。不満があるならこのフネを降りれば良い。その後の君の安全は保障しない。参謀本部の手は長いからね」
若い女性軍医は、暗い表情を浮かべ黙った。不満そうな表情だ。気が強いのだろう。
「発言します……あの戦闘は、っ、虐殺でした。あんなの戦闘じゃありません……」
「ジャス中尉、アレは国際法違反ではない。それにグレーな行為だが、連邦政府が勝てば戦後の追及もないよ。コロニー落としをしたジオン相手だからな。多少は許される」
「あの戦闘が、多少なんですか??」
「ああ。多少だとも」
「……分かりました」
「ジャス中尉も同罪だよ。君も攻撃をしたんだ。HLVには軍属も乗っていただろうし、ジオン兵の家族も乗っていたかもしれない。中には子供や老人、赤子もいたかもしれない。おや、想像してなかったのかな? 君が殺したんだよ」
顔面蒼白の中尉は下を向いたまま、言葉を発さなかった。新米将校ってのはお固くて大変だ。もっと隣のハゲ親父や、父親の権力を振りかざす私を見習えば良いのに。
「あー。メラン大尉。よくやってくれた。この戦闘はグレイファントム隊にとって良い経験となった。君の発案が良かったからだね。うん。これでカンファレンスを終わろう」
マシケ少佐は、腹の中が分かっているのでとても都合が良い。HLV攻撃に賛成してくれて助かった。
まだグレイファントムの旅路は始まったばかりで、前途多難だ。私の功績づくりのために役立って貰わなければ。